告訴事実文例集 刑法犯【元刑事が解説】
※非常に長いページなので、ページ内検索でお探しの罪名を見つけてください。
告訴事実文例 基本編(窃盗罪)
告訴状を作成するのに当たり、一番難しい項目が「告訴事実」です。逆に言えば、「告訴事実」以外の項目は難しくはありません。告訴事実さえ書けてしまえば、告訴状自体の作成は8割方終わったようなものです。
告訴事実を作成するに当たり、まず何罪かを特定しないとなりません。参考書などを読むと「告訴状に罪名と法律条文の記載は必須ではない」などと書いてありますが、実務上、これらの記載が無い告訴状はあり得ないと考えます。よって、告訴事実を作成する前に、犯罪被害にあった内容がどの法律の何条に該当するかをまず特定しないとなりません。今回は、犯罪の中でも最も発生の多い、刑法第235条窃盗罪の告訴事実を取り上げます。
窃盗罪とは、他人が所持、保管、管理する物を無断で持ち去る(盗む)行為です。預けていたものを着服するのは横領罪になりますし、騙されて金品を渡せば詐欺罪になるので注意が必要です。盗むとは、被害者の同意なしにこっそり無断で持って行って「自分のもの」とする行為です。似ている犯罪に器物損壊罪があります。こっそり他人のバッグを持ち去り、すぐにそれを川や海に捨てれば、「自分のもの」としておらず、その目的でもないので、器物損壊罪になります。
さて、職場で置いておいた財布が同僚に盗まれたとして、その告訴事実を書いてみます。
告訴事実
刑法第235条、窃盗
被告訴人は、令和6年9月23日午後1時25分頃、東京都世田谷区○○1丁目23番5号ますだやビル5階○○株式会社経理課内において、告訴人がトイレに行くため席を離れたすきに乗じ、同人が事務机上に置いていた同人所有の現金2万円入りの革製財布1個を窃取したものである。
解説
犯罪日時については、犯行が一瞬で終わったような場合で、ある程度時間が絞れていれば、事例のように○○分頃とします。反対に旅行中に家に空き巣に入られたような場合であれば、「令和6年9月1日午前10時0分頃から同年同月3日午後5時30分頃までの間」とします。犯行を目撃していて、同時に誤差のない時計で発生時刻を確認したのでない限りは「頃」を付けるのが一般的です。
発生場所については、番地を東京都江東区豊洲1-4-10などとせずに、住居表示通りに正しく記載します。事例のように「○丁目○番○号」の場合もあれば「○丁目○番地の○」などの場合もあるので注意が必要です。住居表示方法がわからない場合は、地元の市町村役場に電話すれば教えてくれます。番地以下の場所名については、わかる範囲でなるべく詳しく書きます。株式会社については、略して(株)としないようにしてください。
「告訴人がトイレに行くため席を離れたすきに乗じ、」この部分は必須ではありません。何のために席を立ったか記憶が曖昧であれば、入れる必要はありません。
被害品については、所有者を必ず記載します。また、事例では「現金2万円入りの革製財布」としましたが、「革製財布(時価合計2万5000円相当)などと記載する方法もあります。財布の中に免許証やキャッシュカードなどが入っていた場合は、告訴状の「その他」の項目又は添付の陳述書等で明らかにします。現金の金額がよくわからない場合は「現金2万円くらい」と記載します。内訳がわかれば「一万円1枚、五千円札1枚、千円札5枚くらい」のように記載します。窃盗罪の場合、結びの言葉は必ず「窃取したものである」になります。
自動車盗の場合
告訴事実
刑法第235条 窃盗
被告訴人は、令和6年5月7日午後5時0分頃、東京都杉並区杉並本町2丁目3番5号吉田義男方駐車場において、同所に駐車中であった同人所有の自家用普通乗用自動車(トヨタ、クラウン、黒色、練馬330ま4455、時価300万円相当)1台を窃取したものである。
置き引きの場合
告訴事実
刑法第235条 窃盗
被告訴人は、令和6年5月7日午後5時0分頃、東京都杉並区杉並本町2丁目3番5号所在のカフェ・ドロールにおいて、告訴人が椅子に同人所有の現金約5万円入りの財布(ブルガリ製、時価2万円相当)1個を置いたままトイレに行ったすきに、同財布を窃取したものである。
告訴事実文例 侵入窃盗罪
基本編に続き、今回は侵入窃盗(空き巣)の場合の告訴事実の書き方をご案内いたします。侵入窃盗とは、屋外で行われる自転車盗や置き引きなどとは違い、他人の住居等入ってはいけない場所に侵入して盗みを行う犯罪手口です。置き引きなど非侵入窃盗の場合、罪名は窃盗罪だけですが、侵入窃盗の場合は、住居侵入罪+窃盗罪と二つの罪に該当することになりますので、告訴事実もそのように作成しないとなりません。
なお、このように二つの罪が「手段」と「目的」の関係にあることを「牽連犯」(けんれんはん)と言います。私文書偽造、同行使罪と詐欺罪の関係も同じです。このような場合、重い方の罪の罰則によって判決が下されます。
告訴事実
刑法第130条、同法第235条 住居侵入罪 窃盗罪
被告訴人は、令和6年8月31日午後4時0分頃から同日午後5時0分頃までの間、現金等窃取の目的で、埼玉県吉川市○○町2丁目200番地所在の告訴人方にベランダの窓ガラスを何らかの方法によって割ってクレセント錠を解錠して侵入し、告訴人の不在中、居間のテーブル上に置いてあった封筒内から、告訴人所有の現金15万円を抜き取り、窃取したものである。
解説
犯行日時については、防犯カメラ等があればそこに記録されている日時、無い場合は、告訴人が出かけてから帰宅したまでの時間とします。侵入場所と侵入方法はわかる範囲で記載し、窓に鍵をかけていなかった場合は、「無施錠のベランダ窓から侵入し」のように記載します。盗まれた物が大量の場合は、「居間のタンス内等から別紙被害品一覧表記載の現金10万円他腕時計等30点(時価合計約40万円相当)を窃取したものである。」などと記載します。別紙の記載方法はこの表を参考にしてください。
被害にあった家に家族と一緒に住んでいて、盗まれた物の所有者が異なる場合には、別表に「所有者」の列を設けてそこに氏名のみを記載します。
侵入窃盗(空き巣)の告訴事実の書き方
侵入窃盗(空き巣)は、住居などの侵入禁止場所に入り込んで財物を盗む犯罪行為です。本記事では、侵入窃盗の告訴事実の正しい書き方を詳しく解説します。窃盗罪単独の非侵入窃盗(置き引きや自転車盗難)とは異なり、侵入窃盗は「住居侵入罪(刑法第130条)」と「窃盗罪(刑法第235条)」の二つの罪に該当します。そのため、告訴状を作成する際には、両方の罪名を適切に記載する必要があります。
告訴事実を作成する際の重要ポイント
① 犯行日時の記載方法
侵入窃盗の発生日時を明確に記載することが重要です。
防犯カメラ映像がある場合 → 映像に記録された時間を基に記載
証拠がない場合 → 被害者(告訴人)が外出した時間から帰宅までの間を記載
例:
「令和6年8月31日午後4時0分頃から同日午後5時0分頃までの間」
② 侵入経路・方法の詳細記載
侵入窃盗の手口をできる限り詳細に記載します。窓ガラスの破壊や鍵の解錠方法など、判明している事実を具体的に記しましょう。
例:
窓ガラスを破壊した場合:
「ベランダの窓ガラスを何らかの方法で割り、クレセント錠を解錠して侵入し…」
無施錠だった場合:
「無施錠のベランダ窓から侵入し…」
③ 被害品の具体的な記載
盗まれた財物の詳細をできる限り正確に記載します。被害品が多数ある場合は、別紙「被害品一覧表」を作成し、それを添付するのが望ましいです。
例:
単一の被害品:
「居間のテーブル上の封筒内から現金15万円を窃取した。」
多数の被害品:
「居間のタンス内等から、別紙被害品一覧表記載の現金10万円、腕時計30点(時価合計約40万円相当)を窃取した。」
告訴事実作成時の注意点
被害品が多い場合は一覧表を別途作成し、告訴状に添付すること
事実を省略せず詳細に記載すること
被害の状況を正確に伝えるため、侵入方法や被害品の記述を明確に
防犯カメラ映像や目撃証言があれば、それを証拠として活用
暴行罪と傷害罪の告訴事実のご案内:簡単な事実と注意点
告訴事実文例 暴行罪・傷害罪
暴行罪と傷害罪の告訴事実について解説します。これらの罪は詐欺罪などと比較して、一般的には比較的簡単な事実とされていますが、状況によっては複雑になることもあります。
暴行罪の告訴事実とは?
暴行罪とは、相手に対して暴力を振るうことによって成立する罪です。よくある暴行の態様としては、握りこぶしで殴る、足で蹴る、手で押し倒す、水をかける、または物を投げつけるなどが挙げられます。物を投げつけた場合、当たれば当然成立しますし、当たらなくても体の直近に強く投げつけた場合は「間接暴行」として成立することもあります。
傷害罪とその違い
暴行罪による攻撃が原因で、相手がケガを負った場合、傷害罪が成立する可能性があります。例えば、内出血や切り傷などのケガが発生すると、暴行の結果として傷害罪が適用されます。傷害罪の場合、暴力の結果として傷害が生じることが要件となります。なお、外見上ケガがあれば傷害罪が成立するのですが、実務上は医師の診断書が必要となります。包丁で切られて指を切断したような場合は診断書がなくても傷害罪で受理されますが、内出血や打撲の場合は、診断書がないと暴行でしか受理してくれないことがほとんどです。
暴行罪が成立するケース
暴行罪が成立するのは、攻撃が比較的軽度で、暴行の瞬間には痛みを感じてもすぐに回復する場合が多いです。
告訴事実
刑法第208条 暴行
被告訴人は、令和6年6月29日午後4時15分頃、茨城県牛久市○○町4丁目345番地先路上において、告訴人に対し「おまえ、俺のことバカにしてただで済むと思うなよ。」なとど言いながら、右手拳で告訴人の左頬を1回殴打する暴行を加えたものである。
暴行罪の供述書を作成する際の記載方法について解説します。日時や発生場所、攻撃の態様など、正確に記載するためのポイントを詳しく説明します。
1. 暴行罪の【日時】の記載方法
暴行罪の供述書では、時間の範囲を広げすぎないのが一般的です。例えば、以下のように記載します。
適切な記載例:「4時0分頃」
不適切な記載例:「4時0分頃から4時3分頃までの間」
暴行の回数が2~3回程度であれば、通常2~3分程度で完了するため、時間の幅を持たせる必要はありません。ただし、暴行が10分以上続いた場合は「4時0分頃から4時10分頃までの間」としても問題ありません。
2. 暴行事件の【発生場所】の書き方
発生場所は、供述書の重要な要素の一つです。具体的な書き方は以下の通りです。
道路上の場合:「○丁目○○番地 路上」
店舗前の場合:「○丁目○○番地 セブンイレブン○○駅前店前路上」
建物内の場合:「株式会社山田商事 1階エレベーターホール前」
事件が発生した場所を明確に記載することで、供述の信憑性を高めることができます。
3. 【暴行時の文言】はシンプルに
暴行時の状況を説明する際は、冗長にならないように注意しましょう。短く簡潔な記載が望ましいです。
適切な記載例:「○○先路上において、告訴人とすれ違う際に傘と傘がぶつかったことに激高し、右手拳で…」
無言だった場合:何も記載しないか、前後関係から理由が明白なら簡潔に記載
4. 【攻撃の態様】を正確に記録
攻撃の仕方については、以下の点を正確に記載します。
攻撃の手段:「右手拳」「左手拳」「持っていた傘」など
攻撃部位:「左頬」「右頬」「右足」「左足」など
攻撃回数:「2回」「3回」「4、5回程度」(思い出せない場合は曖昧な表現可)
左右どちらの手で殴ったか思い出せない場合は、「左右いずれかの手拳で…」と記載すると良いでしょう。
【まとめ】暴行罪の供述書は明確かつ簡潔に!
暴行罪の供述書を書く際は、以下のポイントを押さえましょう。
✔ 日時はできるだけピンポイントに記載する
✔ 発生場所を具体的に書く
✔ 暴行時の状況は簡潔に
✔ 攻撃の態様を正確に記録
次は傷害罪の告訴事実記載例です。
告訴事実
刑法第204条 傷害
被告訴人は、令和6年6月29日午後4時15分頃、茨城県牛久市○○町4丁目345番地先路上において、告訴人に対し「おまえ、俺のことバカにしてただで済むと思うなよ。」なとど言いながら、右手拳で告訴人の左頬を1回殴打する暴行を加え、よって、告訴人に対し、全治10日間を要する左頬打撲傷の傷害を負わせたものである。
暴行罪と傷害罪の違いを理解することは、法律に関する知識として重要です。実際に、暴行罪の告訴事実と傷害罪の告訴事実は、結語部分を除いてほぼ同じ内容になります。これは、傷害罪が暴行罪の結果的加重犯であり、**「ケガの有無」**が両者を分けるポイントだからです。
1. 傷害罪と暴行罪の違い
暴行罪:暴力を振るったが、ケガがない場合
傷害罪:暴力によってケガを負った場合
傷害罪で重要になるのが、医師の診断書です。診断書には「負傷名」や「全治期間」が記載され、これが告訴の根拠となります。
2. 診断書がない場合の対応
診断書がない場合、「全治不明の左頬打撲傷等の傷害を負った」といった記載を行います。
「全治○日」と「加療○日」は異なるため、適切に記載する必要があります。
医師の診察のみを受けた場合は、「全治10日間を要する見込み」などと表現します。
PTSDの場合
告訴事実
刑法第204条 傷害
被告訴人は、令和6年5月7日頃から同年10月5日頃までの間、東京都杉並区杉並本町2丁目3番5号被告訴人方から、同区同町2丁目3番6号告訴人方に居住する告訴人に向けて、告訴人に精神的ストレスによる精神障害が生じる可能性があることを認識しながら、あえて、連日早朝から深夜に至るまで、大音量でテレビやラジオを流し続けて告訴人に精神的ストレスを与え、もって告訴人に対して全治不明の睡眠障害、うつ等の障害を負わせたものである。
傷害致死
告訴事実
刑法第205条 傷害致死
被告訴人は、山元夏夫(当時39歳)が、自己が貸し付けた現金30万円を返済しないことに激怒し、令和6年5月7日午後5時0分頃、東京都杉並区杉並本町2丁目3番5号先路上で同山元を待ち伏せ、通りかかった同人の顔面、胸部などを自己所有の包丁で数回にわたって切りつけるなどの暴行を加え、その結果、同人に顔面切創、胸部切創などの傷害を負わせ、よって同日午後8時0分頃、同区荻窪3丁目3番5号所在の荻窪西病院内において、上記傷害による失血により、同人を死亡するに至らせたものである。
同時傷害
告訴事実
刑法第207条 同時傷害
被告訴人吉本貞夫は、令和6年5月7日午後5時0分頃、栃木県小山市立木33番5号先路上において、告訴人に対し、両手拳で数回殴打し、その際、被告訴人園田益男も、告訴人の顔面を両手拳で数回殴打し、被告訴人両名による前記暴行により、告訴人に対し、全治3週間を要する顔面打撲、鼻骨骨折の傷害を負わせたが、それぞれの暴行による。
告訴事実文例 脅迫罪
脅迫罪は、他人又はその親族の「生命、身体、自由、名誉、財産」に対して害を加えることを告知した場合に成立します。具体的に例を挙げます。
「生命」~殺すぞ。
「身体」~殴るぞ。ケガさせるぞ。
「自由」~拉致するぞ。ここに閉じ込めるぞ。
「名誉」~裸の写真をネットに公開するぞ。
「財産」~有り金持って行くぞ。車を燃やすぞ。
などになります。「死ね」「死んでやる」では成立しません。
よく問題になるのが、「謝罪しなかったら、警察に言うぞ。」「金返さなかった裁判するぞ。」などと、「害悪」とは言えない社会的に正当な行為の告知が脅迫罪になるかどうかという点です。これについて古い裁判例では「害悪の告知は必ずしも違法である必要はない。」としており、「裁判するぞ」「告訴するぞ」なども「その予定がなく」「濫用すれば」脅しになるとしています。
脅迫罪の告訴事実の記載例です。
告訴事実
刑法第222条 脅迫罪
被告訴人は、令和6年7月21日午後10時30分頃、神奈川県平塚市○○町4丁目7番8号居酒屋八兵衛において、告訴人に対し、「おまえ、コンクリートで固めて相模湾に沈めるぞ。」と語気鋭く申し向けて脅迫したものである。
解説
「語気鋭く申し向け」の部分は「怒号し」「怒鳴りつけ」「大声で叫び」などでもいいでしょう。
メールによる脅迫の記載例
告訴事実
刑法第222条 脅迫
被告訴人は、告訴人を脅迫しようと企て、別紙犯行一覧表のとおり、令和6年1月2日から同年2月3日までの間、前後10回にわたり、群馬県高崎市内又はその周辺から、被告訴人使用のスマートフォンを使用して「殺されたくなかったら早くお金返して。」「来週中に返さないと家燃やします。」などの内容のメールを告訴人のメールアドレス宛てに送信して、いずれもその頃、各メールを告訴人をして閲覧させ、もって、告訴人の生命及び財産に害を加える旨を告知して脅迫したものである。
解説
被告訴人の送信場所についてはわからない場合が多いでしょうから、「住居地又はその周辺」と記載すればいいでしょう。
裸の画像をメールで送信した場合の記載例
告訴事実
刑法第222条 脅迫
被告訴人は、令和6年7月下旬まで告訴人と交際してものであるが、その頃、告訴人から別れを告げられたことを恨み、告訴人を脅迫しようと企て、令和6年9月7日午後5時0分頃、東京都府中市又はその周辺から、被告訴人所有のスマートフォンを使用して、「お前が俺をバカにするから制裁を加えることにしました。この画像を地球上全てのSNSに実名入りで貼りまくります。」との内容のメールに告訴人の裸体画像データを添付したメールを、東京都三鷹市下連雀9丁目5番4号告訴人方にいた告訴人のスマートフォンに送信して受信、閲覧させ、もって告訴人の名誉等に害を加える旨を告知して脅迫したものである。
告訴事実文例 詐欺罪
詐欺罪は、手口や態様が非常に多いため、今回は発生の非常に多い無銭飲食に絞って告訴事実の記載例を説明します。また、詐欺罪は刑法の条文の中でも「最も難しい罪種」と言われることもあります。難しい一端を次の事例で考えてみます。
例1
Aは、お金が無いのに、店員を騙してただで飲食しようと考え、飲食店に入って料理を注文して食べた後、店員のすきを見て逃走した。
例2
Bは、お金を持っていて、支払もするつもりで飲食店に入り、料理を注文して食べた後、突然お金を払うのが嫌になり、「店員を騙して逃げよう」と思い、レジにいた店員に「ちょっと電話してくる。すぐ戻る。」と言って店員の承諾を得た上で店外に出てそのまま逃走した。
例3
Cは、お金を持っていて、支払もするつもりで飲食店に入り、料理を注文して食べた後、支払をしようとレジに行ったところ、近くに店員が誰もいなかったことから、とっさに「このまま逃げればお金払わなくていいじゃん」と考え、そのまま逃走した。
解説
結論から言うと、例1のAは1項詐欺罪(金品の提供)、例2のBは2項詐欺罪(債務猶予という財産上不法利益)、例3のCは無罪となります。詐欺罪は、事件成立の条件が決まっており、その条件が充足されないと犯罪が成立せず、ただの民事上の債務不履行になってしまいます。
詐欺罪成立の条件とは、
欺罔行為(被疑者が被害者を騙す行為)
↓
被害者が騙される
↓
錯誤による財産的処分行為(騙された被害者が被疑者に金品を渡す又はサービスを提供する若しくは支払を猶予する)
となります。
例1で考えると、Aは最初から騙す気持ち満々ですので、店に入って店員に料理を注文する行為が欺罔行為になります。通常、店に来た客は飲食した後に料金を支払うのが当たり前ですから、店員は料金を払ってくれるものと思って注文を引き受けます。もしも、客がお金を持っておらず支払う気もないとわかっていれば注文を受ける訳はありません。つまりこの時点で騙されたことになります。そして、注文通りに客に料理を提供した時点で1項詐欺が成立し既遂になります。よってその後店から逃走したのは事件成立とは関係なく、逃げずにそのまま店内にいても詐欺罪の成立に影響はありません。
例2は、料理を食べ終わるまでは料金を払うつもりだったので、この時点ではまだ犯行の着手はありません。しかし、逃げることを思いつき、レジで「ちょっと電話してくる。すぐ戻る。」と嘘を言ったことは欺罔行為であり、犯行の着手時期となります。そしてこれを信じた店員が、一時的であれ支払の猶予を与えたことは2項詐欺罪の「財産上の利益」を提供したことになり、錯誤による財産的処分行為と認められ、詐欺罪は既遂となります。
例3は、Cはレジに行って店員がいないことに気付くまではお金を払うつもりでおり、気付いた時点で悪気を起こして逃走したものです。「食い逃げ」という点では例1例2と同じなのですが、詐欺罪に一番重要な「欺罔行為」つまり騙す行為がどこにもありません。当然、店側の誰も騙されてはいません。錯誤による財産的処分行為もありません。結果として例3は詐欺罪に必要な3つの条件が全て無いことになり、詐欺罪は完全に成立しないのです。
未遂について
犯人が被害者を騙そうとして嘘をついたが、被害者は嘘を見抜いて騙されなかった。しかし、哀れに思って、お金を渡した。
この場合、一見、詐欺罪は既遂(完了)したようにも思えますが、詐欺罪の完成には「被害者がだまされてそれによって財産的処分行為をした」ことが必要です。したがって、財産的処分行為あったとしても、それが錯誤によるものでなければ、詐欺罪は未遂となります。
詐欺罪(例1 1項詐欺無銭飲食)の告訴事実記載例です。
告訴事実
刑法第246条第1項 詐欺
被告訴人は、令和6年5月5日午後8時0分頃から同日午後9時0分頃までの間、東京都荒川区○○町1丁目5番6号中華料理○○屋において、真実は支払う意思も能力もないのにこれらがあるように装い、同店店員山田花子(当時23歳)に対し、順次料理等を注文し、同人をして飲食後は料金の支払を受けられるものと誤信させ、チャーシュー麵等5点(代金合計5,000円相当)を提供させ、よって人を欺いて財物を詐取したものである。
解説
犯行日時は、入店から飲食終了後までとなります。注文を受けた店員が複数人いる場合は「同店店員山田花子(当時23歳)ら」として複数形にします。たまに「詐取」ではなく「騙取」とする記載を見ますが、「騙取」は昭和の時代の言い方で現在は「詐取」を使います。
詐欺罪(例2 2項詐欺無銭飲食)の告訴事実記載例です。
告訴事実
刑法第246条第2項 詐欺
被告訴人は、令和6年5月5日午後8時0分頃から同日午後9時0分頃までの間、東京都荒川区○○町1丁目5番6号中華料理○○屋において、チャーシュー麵等5点(代金合計5,000円相当)を注文しその提供受けたが、飲食後、同店店員に嘘を言って、代金の支払いを免れることを思いつき、同日午後9時5分頃、同店店員山田花子(当時23歳)に対し、「ちょっと電話してくる。すぐ戻る。」と嘘を言い、その旨誤信した同人から代金支払の猶予を得て店外に出て逃走し、もって、上記代金相当の財産上不法の利益を得たものである。
解説
事例1の場合は、入店から飲食終了までを犯罪日時としましたが、本件の場合は、飲食後に犯行着手が始まっているため、中段以後に着手時刻を入れています。2項詐欺罪の場合は、結語が「詐取した」ではなく、事例のようになるので注意が必要です。
告訴事実文例6(詐欺2オレオレ詐欺)
オレオレ詐欺は平成20年(2008年)頃から主として関東地方で流行が始まりました。当初は、一過性の流行で終わるものと警察関係の誰もが予測していたのですが、被害地域は徐々に全国に広がり、手口もオレオレから還付金、不正請求、キャッシュカードすり替えなど次々に新しいものが出て、一過性で終わるどころか反社や不良グループの定番犯罪となってしまいました。
高齢の被害者宅に電話をかけるというやり方は流行開始時から一貫して変わらないのですが、その電話をかける場所が国内から国外が主流となり、かけ子と呼ばれる騙し役の検挙がより一層困難になってきています。有効な検挙策がなかなか見つからない中、高齢の親族を持つ方には以下の点に留意してほしいと思います。
1 固定電話の廃止
騙しの電話が入ってくるのは固定電話がほとんどです。高齢者は固定電話に対する思い入れが強く、廃止をすすめてもすぐには了承しないと思いますが、携帯電話で用は足りることを説明して説得しましょう。
2 銀行口座の管理
年齢を取るに従って判断能力は下がります。認知に入る前に口座管理を息子や娘に任せることを提案しましょう。
3 警察官、銀行協会、弁護士からの電話は詐欺
これらをかたる人から電話があったら一度切って息子や娘に電話するように会うたび話しましょう。
オレオレの詐欺の告訴事実記載例
告訴事実
刑法第246条 詐欺
被告訴人は、金員を詐取しようと企て、令和6年7月21日午後3時0分頃、いずれかから、東京都品川区○○町5丁目4番3号告訴人方に同人の息子を装って電話をかけ、電話に出た告訴人に対し、「おれだけど、会社の金を使い込んでしまって今日中に返さないと警察に逮捕されてしまう。すぐに500万円を振り込んでほしい。」などと嘘を言い、同人をしてその旨誤信させ、よって、同日午後4時30分頃、同人をして、同区○○町4丁目3番2号所在の東京銀行東大井支店において、同支店に開設された告訴人名義口座(普通1234567)から、山口県宇部市○○町1丁目2番6号宇部銀行宇部支店に開設された被疑者が管理する米山洋子名義口座(普通1234567)に現金500万円を送金させ、もって、人を欺いて財物を交付させたものである。
被告訴人の犯行場所については、先に説明したとおり、最近は国外が主流になってきていることもあり、発生段階では全くわからないのが当然ですから、ここでは「いずれかから」としましたが、あえて記載しなくても良いかと思います。騙しの文言については、実際のオレオレ詐欺では近況を話したり、風邪を引いて声が変わったなど、かなり長時間の会話があることが珍しくありませんが、そういった会話内容は陳述書等で明らかにすればいいので、告訴事実内には要約した必要最低限の文言を記載します。オレオレ詐欺の場合は、1項詐欺になるのか2項詐欺になるのか微妙なところがありますので、告訴の段階では特定する必要もないので、明記しなくて構いません。
結婚詐欺は、妻帯者であるのに独身であると偽って交際し結婚を匂わせてお金を騙し取る場合、独身ではあるが職業等を偽って資産家であるように思わせて一時金などの名目で騙し取る場合と二つに分けられます。上記2例に分けて告訴事実の記載例を挙げます。
1 独身を装った場合
告訴事実
刑法第246条第1項 詐欺
被告訴人は、妻子があるのに独身であると偽って告訴人と交際し、真実は告訴人と婚姻する意思がないのに、令和6年7月下旬頃、告訴人に対し婚約を申し込みその受諾を得たところ、告訴人がこの婚約の申し出を信じ込んでいることに乗じて現金を騙し取ろうと考え、令和6年9月25日午後8時0分頃、東京都板橋区北板橋1丁目4番6号イタリア料理パルチ店内において、「結婚後は会社を辞めるから、フランス料理店を開いて一緒にお店をやろう。僕が1000万円出すからきみは残りの1000万円を出してほしい。」と申し向け、告訴人をして、1000万円を出せば告訴人と結婚してフランス料理店を開業できるものと誤信させ、よって、当月30日午後0時10分、告訴人の○○銀行○○支店に開設された告訴名義口座(普通1234567)から被告訴人が管理する○○銀行○○支店に開設された被告訴人名義口座(普通1234567)に現金1000万円を送金させ、もって人を欺いて財物を交付させたものである。
解説
詐欺罪は、どうしても「言った」「言わない」になってしまうので、事実中の欺罔文言(騙し言葉)はできれば会話ではなく、証拠が残っているメール文などを引用したほうが得策です。事例は、そうしたものが無いと仮定して会話文だけで構成しました。事例は、現金の交付方法として銀行振込を想定し、1項詐欺としました。本来預金債権の増加は現金受取ではありませんので、財産上利益の2項詐欺だと思うのですが、最近は起訴状でもこのように1項詐欺とすることが多いのでそれに倣っています。
2 職業を偽った場合
告訴事実
刑法第246条第1項 詐欺
被告訴人は、医師資格は無いのに医師であるかのように装って告訴人に接近し、医師であると信じた告訴人が被告訴人と結婚したがっていることに乗じて現金を騙し取ろうと考え、令和6年1月6日午後7時0分頃、東京都荒川区新荒川1丁目7番8号告訴人方において、「新橋駅前にクリニックを開業するのにあと1000万円足りません。1000万円出してくれれば、クリニックを開業してその後に君と結婚できます。」なとど嘘を言い、真実は被告訴人は医師ではなく無職であり、クリニックの開業予定もなく、結婚の意思もないのにこれらがあるように装い、告訴人をして1000万円支払えば開業医の妻となれる旨誤信させ、よって、令和6年2月8日午前10時0分、告訴人をして、三菱銀行荒川支店に開設された告訴人名義口座(普通1234567)からさくら銀行新橋支店に開設された被告訴人名義口座に現金1000万円を振込送金させ、もって、人を欺いて財物を交付させたものである。
地面師詐欺とは、不正な転売を通じて、土地の所有者に成りすました偽者が、無知な買い手を騙してお金を奪う犯罪手法です。この詐欺は、詐欺師が本物の所有者と全く関係ない場合に行われ、被害者が金銭を支払っても、残念ながらそのお金を取り戻すことは困難です。
特に注目されているのは積水ハウス事件であり、この事件は55億円以上の被害額に達しました。このような詐欺は昭和時代から存在し、最近ではネット配信ドラマでも取り上げられ、多くの人々にその実態が知られることとなりました。
地面師詐欺の特徴と手口
地面師詐欺は、振り込め詐欺と異なり、面接犯による犯罪です。犯人は偽の土地所有者として登場し、土地を売るふりをして相手を騙します。最終的に犯人が逮捕される可能性は高いものの、金額が非常に大きいため、犯人たちは刑務所から出たり入ったりしながら、この犯罪を繰り返しているのが現実です。
地面師詐欺の主犯と共犯者
地面師詐欺の主犯格は、通常、犯罪常習者であり、その人相が悪いことが多いです。所有者役には、身近な高齢者を選ぶことが一般的で、借金を返せない人々を利用することがあるとも言われています(真偽は不明)。このような人物は、犯罪の共犯者として逮捕されます。
典型的な手口
地面師詐欺には様々な手法が存在しますが、ここでは偽者所有者が売るふりをする典型的な手口について詳述します。このような詐欺に巻き込まれないためには、警戒心を持つことが非常に重要です。
まとめ
地面師詐欺は、非常に巧妙で金額が大きいため、被害を防ぐためには慎重な確認が不可欠です。詐欺に巻き込まれないように、土地の購入時には所有者確認を徹底し、信頼できる専門家に相談することが重要です。
告訴事実
刑法第246条第1項 詐欺
被告訴人らは、令和5年3月8日、埼玉県越谷市西越谷11丁目3番6号デニーズ西越谷店内において、告訴人に対し、埼玉県八潮市西茜町1丁目5番8号所在の土地の所有者は西岡修平であり、被告訴人らには何の権利もなく、前記西岡から売買の仲介を受けた事実もないにもかかわらず、被告訴人らのうち甲田次郎が前記西岡になりすまし、「私が所有者の西岡修平と申します。この土地は私が父親から相続を受けたものですが、家を建てる予定も住む予定もないので売りたいと思っています。抵当権等もありませんので、5億円払っていただければ、所有権移転できます。」などと嘘を言い、告訴人をして、前記甲田が土地所有者の西岡であり、同人に売買代金の5億円を支払えばその所有権を取得して登記変更できるものと誤信させ、前記甲田との間で上記土地を価格5億円で売買する旨の契約を締結させ、よって、同月30日、埼玉県吉川市新吉川1丁目5番6号新日本銀行吉川支店第一決済室内において、告訴人から売買手付金名目で現金5000万円の交付を受け、もって、人を欺いて財物を交付させたものである。
ホテルの無銭宿泊
無銭宿泊は、部屋の貸し出しというサービス提供(2項詐欺)と飲食物の提供という物品交付(1項詐欺)の両方に該当することになります。このような場合、罰条は単に「刑法第246条」として「1項」「2項」を記載しません。マンガ喫茶も同じです。
告訴事実
刑法第246条 詐欺
被告訴人は、令和6年5月4日午後4時0分頃、埼玉県深谷市深谷南3丁目45番地所在の「ホテル深谷荘」において、同ホテル店員山下達夫(当時45歳)に対し、代金支払の意思も能力もないのに、これあるように装い、「仕事で大阪から来てるんだけど、今日から3泊したい。食事は朝と夜お願いしたい。料金は最終日にクレジットカード一括で払う。」と申し向けて宿泊と朝夕食を申込み、同山下をして、チェックアウト時には料金の支払いが受けられるものと誤信させ、よってその頃から同月7日午前11時0分頃までの4日間にわたって同ホテルに宿泊滞在し、その間宿泊と飲食代金合計4万5600円相当の宿泊サービスと飲食物の提供を受け、もって人を欺いて財物を交付させ、かつ、財産上不法の利益を得たものである。
他人名義クレジットカード不正利用
告訴事実
刑法第246条第1項 詐欺
被告訴人は、窃取した東京クレジット株式会社発行の花田かおり名義のクレジットカードを使用して、同社のクレジット契約加盟店から購入名下に商品を詐取しようと企て、令和6年2月4日午後5時0分頃、千葉県柏市西柏4丁目5番5号所在の株式会社家電の横山柏店(告訴人)において、同店店員山中彩花(当時24歳)に対し、代金支払の意思がないのにあるように装い、前記花田になりすまして、前記クレジットカードを提示して腕時計(ローラックス製、AAFF-54、販売価格55万円)1個の購入を申込み、同店員をして、被告訴人が同クレジットカードの名義人であって正当な使用権限を有し、かつ、後日所定の支払方法で代金の支払いをするものと誤信させ、よって、その頃、同店員を欺いて、告訴人管理にかかる前記腕時計1個を詐取したものである。
取り込み詐欺
告訴事実
刑法第246条第1項 詐欺
被告訴人は、千葉県柏市西柏4丁目5番5号において、電気店「川辺でんき」を経営していたものであるが、同店が経営不振となり、近い将来倒産が避けられないことがわかっていたにもかかわらず、これを秘して、商品を詐取しようと企て、令和6年5月7日午後5時0分頃、前記電気店から東京都足立区足立9丁目5番6号所在の株式会社シンコー電気(告訴人会社)に電話をかけ、同社営業課長横田信二(当時45歳)に対し、代金を支払う意思も能力もなく、かつ、商品の納品後はこれを購入額以下で廉価販売する意図であるのにこれを秘し、「パナ社製AA型の40型液晶テレビを20台売ってほしい。代金はいつも通り来月末日に一括で払います。」などと嘘を言い、前記横田をして、商品の代金は同年6月末日に一括で支払いを受けられるものと誤信させ、よって同年5月11日、液晶テレビ20台(パナソニック製、AA型、販売価格合計150万円)を前記電気店に納品させ、もってこれらを詐取したものである。
解説
取り込み詐欺は、通常の商取引との線引きが難しいとされています。これは、商品等をメーカーや問屋などから仕入れて販売する業者が、経営難から資金が不足したり、または、あるはずだった入金が受けられなかったこと等から、仕入れた商品の代金が支払えなくなり倒産することは珍しくないからです。よって、実務で取り込み詐欺かどうかを見分ける一つのポイントは、「納品直後に仕入金額より安く販売」したことを目安にします。仕入金額より安く販売すれば当然赤字ですから、長在商品を除き、まともな会社なら普通やりません。また、初めから取り込み詐欺をやる目的で始めた会社は、社員が全員偽名を使います。取り込み詐欺の手口等詳細についてはこちらでご案内しています。
保険金詐欺
詐欺罪は刑事の扱う罪種ですが、例外的に交通事故を装った保険金詐欺は「交通部」の取り扱いとなります。交通事故の偽装は、交通事故扱いのプロである交通捜査が担当したほうが適役ということなのでしょう。なので、警視庁本部の交通捜査課には、知能犯捜査経験のある元刑事が結構います。
告訴事実
刑法第246条第1項 詐欺
被告訴人は、故意に自動車を衝突させて損壊させ、これを過失による交通事故と偽って保険金名下に告訴人会社から金員を詐取しようと企て、令和6年5月7日午後5時0分頃、被告訴人所有の自家用普通乗用自動車(トヨタ、カローラ、足立520し1234)を運転して、東京足立区足立9丁目4番先路上において、東京電力設置所有の電柱(東電柱、足立2-33)と故意に衝突させて同車両を損壊させ、その頃、これを警視庁足立警察署の警察官に過失による交通事故と申告して交通事故証明書の交付が得られるようにして、同日午後8時0分頃、被告訴人をして、同人運転の前記車両について自家用自動車保険契約(対物賠償限度1000万円)を締結している告訴人会社の事故通報センターに電話をして、電話に出た同社従業員山野美里(当時40歳)に対し、事故発生の事実と修理代金の支払を要求し、同月12日、東京都葛飾区亀有9丁目4番6号所在の西山自動車整備工場において、同車両の損害調査に赴いた長谷部損害調査株式会社調査員木下義男に対し、故意に同車両を衝突させたことを秘し、被告訴人の過失による事故で130万円の損害が生じた旨の虚偽の説明をし、前記木下をして、同車に130万円の損害が生じた旨の損害調査報告書と保険金請求書を作成させ、これらを同年5月22日、東京都中野区中野9丁目5番5号所在の告訴人会社において、保険金支払の決定権限を有する同社調査室長今野洋平(当時50歳)に提出させて自家用自動車保険金の支払いを請求し、同人を被告訴人の過失によって同人の所有の前記車両に損害が生じたものと誤信させ、よって、同年6月20日、告訴人会社が管理する株式会社横浜銀行中野支店に開設された告訴人名義口座(当座1234567)から、被告訴人が管理する明治銀行亀有支店に開設された同人名義口座(普通1234567)に130万円を送金させ、もって人を欺いて財物を詐取したものである。
告訴事実文例 横領罪
横領罪は、単純横領、業務上横領、遺失物横領に分かれています。面白いのは、これらは同じ「横領罪」であるにも関わらず、罰条の重さが大きく異なることです。単純横領は「5年以下の懲役」、業務上横領は「10年以下の懲役」、遺失物横領は「1年以下の懲役又は10万円以下の罰金若しくは科料」となります。懲役の刑期だけで比べると遺失物横領は業務上横領の実に10分の1です。しかも「科料」があります。「科料」とは、罰金と同じ刑事罰なのですが、金額が1000円以上1万円未満となっており、わずか数千円という、交通違反の反則金並の金額です。落ちている物を拾ってついつい自分のポケットに入れてしまうという行為は、計画性も無く、誰もがその誘惑に乗りそうになるという観点から軽い罰条になっているのだと思われます。
これとよく似た関係にあるのが、通貨偽造・行使罪と拾得後痴情行使罪の関係です。通貨偽造・行使罪は偽札等を作ったり、それを使う行為で、どちらも無期(!)又は3年以上の懲役です。実際に無期懲役になった人がいるかどうか知りませんが、殺人でも数年の懲役判決があることを考えるとすごく重いですね。さて、拾得後痴情行使罪ですが、こちらは受け取ったお金が偽札であるのに気付いたものの、警察に届け出る等せずにそのまま使ったときに問われる罪です。この罪の罰条は、なんと罰金と科料しかありません。懲役も禁固もないのです。「知らずに受け取ったお金に偽札があったら、つい面倒でそのまま使ってしまう気持ちはわからなくもない」ということなのでしょうが、少々軽すぎるような気もします。
さて横領罪に話しを戻します。横領罪は、基本的に「他人の物を自分のものにする」行為であり、窃盗罪と似ています。(※自己所有物でも、官公庁に差し押さえられていた場合、これを売却等すれば本罪が成立する例外もあります。)実務でも、窃盗か?横領か?で悩むことがよくあります。
例えば、新聞販売店で、配達員が配達用のバイクを乗ったまま夜逃げすることがよくあります。この場合、バイクの持ち去り行為が窃盗になるか?横領になるか?、正解は「どちらにもなり得る」です。というのは、バイクの貸与状況によって結論が変わってくるからです。
販売店が、配達員に対し、バイクを配達業務中は当然のこと、通勤や休日の足として、自由に使わせていたとします。この場合、販売店は配達員を信用し、貸与していたものと見なすことができます。よって、これを乗り逃げ(拐帯)する行為は横領罪となります。
一方で、販売店がバイクの管理を厳正にし、配達員には配達業務以外には使用させず、鍵も店内で保管していたとします。この場合、配達員は業務以外でのバイク使用は認められていませんから、業務を逸脱して乗り逃げを開始した時点で窃盗罪の既遂となります。
なお、再度刑期の話しになりますが、上記2例は同じような「乗り逃げ」です。しかし罰則は横領が先に書いたように懲役5年なのに対し、窃盗は10年以下の懲役又は50万円以下の罰金となっています。やった行為はほぼ同じなのに、懲役に関しては倍の差があるのが面白いと思います。
単純横領の告訴事実記載例です。知人に腕時計を貸していたら勝手に売られた事案です。
告訴事実
刑法第252条 横領
被告訴人は、令和6年3月1日、告訴人から告訴人所有の腕時計1本(ロレックス製、型式AB-000、製造番号BB0000、時価90万円相当)を借り受け、同年4月1日に返却する約束の下預かり保管中であったが、同年3月5日、東京都墨田区中墨田町1丁目5番6号所在のリサイクルセンター松屋において、ほしいままに、前記腕時計を代金90万円で売却し、もって横領したものである。
ローン支払中の商品を転売
告訴事実
刑法第252条 横領
被告訴人は、令和5年12月20日、株式会社大日本通販(告訴人会社)から、初回代金1万5000円、残余金40万円は毎月1万円ずつ40か月月賦払いとし、代金完済後は同社から被告訴人に所有権を移転する契約で、同社から同社が所有する18金製ネックレス1本(販売価格38万円)を購入して交付を受け、預かり保管中、残余代金の支払いが終わっていないにもかかわらず、令和6年3月4日、東京都台東区御徒町9丁目4番33号所在のリサイクル店「ハッピーエンド」において、告訴人に無断で、前記ネックレスを20万円で売却し、もって横領したものである。
土地を売却後に他人に根抵当権設定登記をして横領
告訴事実
刑法第252条 横領
被告訴人は、令和6年5月7日、自己所有の千葉県市川市市川4丁目77番44号の土地約300平方メートルを代金完済と引き換えに所有権移転登記する約束で、代金3000万円で告訴人に売却し、同年6月1日、同代金を受領したが、同土地の所有権移転登記がなされない状態であって、同土地を告訴人のため預かり中のところ、同月2日、近藤春男から3000万円の融資を受けるに際し、ほしいままに、その担保として同土地を提供する契約をし、同日、同県船橋市船橋2丁目77番55号所在の千葉法務局船橋出張所において、同近藤のため極度額を4000万円とする根抵当権設定登記をし、もって同土地を横領したものである。
業務上横領の告訴事実記載例です。業務上横領の場合、発覚した時点で被害が多数回、多額になっていることが多く、事実内容の一部を別表にするのが一般的ですので、別表と併せて掲載します。
告訴事実
刑法第253条 業務上横領
被告訴人は、平成32年4月2日から、東京都新宿区本新宿1丁目5番7号所在の株式会社新日本○○の総務部経理課員として勤務し、同社の現金及び預金等の保管管理、給与の計算と支払、経費の支払等の業務に従事していたものであるが、令和4年12月1日から令和6年8月31日までの間、同社代表取締役山田邦彦から、同社の現金準備金等として現金を預かり、同社のために預かり保管中、別紙犯行一覧表のとおり、前後120回にわたり、同社内において、現金合計1500万円を着服して横領したものである。
最後に一番刑が軽い遺失物横領の告訴事実です。
告訴事実
刑法第254条 遺失物横領
被告訴人は、令和6年7月4日、東京都港区西港南3丁目4番5号先路上において、告訴人が遺失した告訴人所有のスマートフォン1台(iPhone18、黒色、製造番号ADC90809、黒色ケース入り)を発見したが、警察署長に届け出ることなく、ほしいままに、これを自己の用途に供する目的で拾得して横領したものである。
告訴事実文例 恐喝罪
恐喝罪は、他人を**恐喝(脅迫)**して、金品を交付させたり、財産上の利益を得たりすることで成立します。この罪が成立するためには、脅迫によって被害者が畏怖し、その畏怖に基づいて金品を要求する必要があります。
恐喝罪と脅迫罪の違い
脅迫罪は、害悪を告知して人を畏怖させるだけで成立しますが、恐喝罪はその畏怖に乗じて金銭などを要求する行為です。つまり、脅迫罪は金品の要求がない場合に成立するのに対し、恐喝罪は金品を求める行為がなければ成立しません。
恐喝罪と強盗罪の違い
恐喝罪と強盗罪は、どちらも金品を脅して取得する点で共通していますが、以下のように異なります:
- 強盗罪には、被害者の反抗を抑圧するための暴行または脅迫が必要です。反対に、恐喝罪では畏怖する程度の脅迫または暴行で十分です。
- 金品の取得方法も異なり、強盗罪は「奪う」という手段を用いるのに対し、恐喝罪は「交付させる」方法を取ります。
恐喝罪の構成要件
恐喝罪の成立要件は以下の通りです:
- 恐喝行為(脅迫または暴行)
- 畏怖(被害者が恐怖を感じる)
- 財産的処分行為(金品の交付)
この構成は、詐欺罪の構成要件である「欺罔行為→錯誤→財産的処分行為」に似ています。
恐喝行為における欺罔(嘘)について
恐喝行為において、欺罔(嘘)が含まれていても、詐欺罪は成立せず、恐喝罪のみが成立します。
恐喝罪における暴行の扱い
恐喝罪における暴行は、強盗罪に至らない程度の暴力です。例えば、「次は本気で殴るぞ。嫌なら金出せ」という言葉を使い、被害者に軽い暴行を加えることで成立します。この場合、暴行は恐喝罪の一部として扱われ、暴行罪が別途成立することはありません。
恐喝罪の未遂と既遂
恐喝罪には、未遂処罰規定があります。財産的処分行為が行われなければ未遂となり、金品の交付があれば既遂となります。
恐喝罪(たかり)の告訴事実記載例です。
告訴事実
刑法第249条 恐喝
被告訴人は、通行人から金品等を喝取しようと企て、令和6年7月4日午後11時30分頃、東京都台東区千束3丁目6番台東区立横山公園前路上において、通行中だった告訴人に対し、いきなり両手で告訴人の首を絞め、「おい、絞め殺されなくなかったら金目の物を出せ。スマホでもいい。」などと申し向けて金品の交付を要求し、この要求に応じなければ、告訴人の生命、身体に危害を加える気勢を示して恐喝し、これにより告訴人を畏怖させ、よって、告訴人から現金11万円とスマートフォン1台(iPhone19、黒色、製造番号DG568777、時価5万円相当)の交付を受けてこれを喝取したものである。
元交際相手によるメール利用の性的画像ばらまき(リベンジポルノ)恐喝罪記載例です。
告訴事実
刑法第249条 恐喝
被告訴人は、かつて告訴人と交際していたものであるが、交際当時に撮影した告訴人の裸体画像をインターネット上に公開すると脅して現金を交付させようと企て、令和6年5月7日午前9時0分頃、東京都昭島市又はその周辺からスマートフォンを使用して、「去年の夏に撮ったおまえの素っ裸のアップの写真あるじゃん。あれインスタとかXとかに貼りまくろうと思う。嫌なら10万円、俺の口座に今日中に振り込め。無視したら今夜貼りまくるから。」との内容のメールを告訴人所有のスマートフォンに送信して現金の交付を要求し、この要求に応じなければ、告訴人の裸体画像をインターネット上に公開して告訴人の名誉を毀損する気勢を示して恐喝し、その旨畏怖させ、よって、同日午後2時0分頃、告訴人をして、東京都小金井市小金井1丁目7番7号所在の三井銀行小金井支店に開設された告訴人名義の口座(普通3334455)から、被告訴人が管理する東京都昭島市昭島1丁目6番5号所在の三菱銀行昭島支店に開設された被告訴人名義口座(普通1234567)に現金10万円を送金させて喝取したものである。
不倫をネタにした脅し行為
告訴事実
刑法第249条 恐喝
被告訴人は、告訴人が勤務先の部下である横山千里と不倫関係にあることを知り、それを種に告訴人から金員を喝取しようと企て、令和6年5月7日午後5時0分頃、告訴人のスマートフォンに電話をかけ、「足立さん(告訴人)、千里ちゃんと不倫してるでしょ。北千住のホテルから出てくるところ偶然見ちゃって、とっさにスマホで写真撮っちゃいました。これ消してもいいんですけど、50万円くらいでどうですかね。嫌なら5ちゃんとかに貼りますけど。」などと申し向けて金員を要求し、これに応じなければその名誉に多大な害が及ぶかもしれないと告訴人を畏怖させ、よって、告訴人から同月10日午後8時0分頃、東京都足立区足立9丁目5番6号先路上において、告訴人をして現金50万円を交付させて喝取したものである。
企業恐喝
告訴事実
刑法第249条 恐喝
被告訴人は、右翼活動家であり、インターネット上に「日本国賊征伐隊」の名称で掲示板サービスを運営しているものであるが、令和6年5月7日午後2時0分頃頃、東京都品川区大井町4丁目65番55号所在の吉田製作所グループ株式会社(告訴人会社)本社応接室において、同社お客様相談室長本田明夫(当時55歳)に対し、「うちの掲示板に広告載せてみませんか。この業界の会社は皆さん載せてますよ。一枠20万円でお願いしてます。」と申し向け、同本田がこれを断ったところ「そういうことなら、お宅の会社が経理課の柳川くんって社員を上司のパワハラで自殺に追い込んだことをうちの掲示板とか5ちゃんねるとかツイッターとかいろんなところに一斉に書き込むけどそれでいいの。うちには優秀なエージェントがたくさんいるから時間はかからないよ。」などと申し向け、この要求に応じなければ、同社の元社員が社内のパワハラが原因で自殺したとの情報をインターネット上に拡散させる方法により同社の信用が失墜するかもしれないと前記本田らを畏怖させ、よって同日午後5時0分頃、同所において、現金20万円を広告掲載料名目で交付させて喝取したものである。
告訴事実文例 恐喝罪
告訴事実文例 住居侵入罪
住居侵入罪が成立にするには「正当な理由なく」立ち入ったことが必要です。これは裏を返せば「不法な目的があった」ことになりますので、目的が判明している場合には告訴事実にもその旨を記載します。よく問題になるのが借金取りが来て帰らないというのがありますが、家の中まで同意なく入れば住居侵入罪が成立します。
マンションなどで、個人の居室内にまで入れば住居侵入ですが、エントランスや通路等共用部分の場合は「邸宅侵入」と罪名が変わりますので注意してください。なお、罪名が変わるだけであり、条文や罰条は同じです。建造物侵入も同様です。人の居住のための建物か、それ以外かという違いだけです。
また、住居侵入罪は未遂の処罰規定がありますので、ドアや窓を壊して入ろうとしたが、失敗して入れなかった場合は住居侵入未遂罪になります。空き巣犯人が泥棒をしようとして侵入に失敗した場合は、窃盗未遂罪ではなく本罪が適用になります。
不退去罪は、「適法に入った」者が、管理者の退出要求に従わずに居座ることで成立します。よって、不法に侵入した罪と不退去罪が両方成立することはあり得ません。
一戸建て住宅の住居侵入
告訴事実
刑法第130条 住居侵入
被告訴人は、令和6年5月3日午後10時0分頃、金品窃取の目的で、群馬県高崎市北高崎1丁目7番8号告訴人方ベランダ掃き出し窓ガラスを何らかの工具で割り破ってクレセント錠を解錠し、告訴人方内に侵入したものである。
オートロック式マンションの邸宅侵入
告訴事実
刑法第130条 邸宅侵入
被告訴人は、令和6年2月3日午後9時30分頃、告訴人と性交する目的で、千葉県松戸市西松戸2丁目5番9号新西松戸マンション1階エントランスに設置されたインターフォンを押下して告訴人と通話し、宅配業者だと偽って告訴人に同所のオートロック式ドアを解錠させ、同所からエレベーターホール内に侵入したものである。
不退去の場合
告訴事実
刑法第130条 不退去
被告訴人は、令和6年6月7日午後0時0分頃、千葉県柏市西柏町3丁目5番6号所在の洋菓子店ナポリ店内において、元店員である横山千紗に面会を求めて大声で騒ぎ、同店店長である告訴人が前記横山は既に退職して店内にいない旨を再三説明するも聞く耳を持たず、このため店の営業に支障を来したことから、同日午後0時30分頃、告訴人が直ちに店外へ退去するように要求し、被告訴人もその旨認知したにもかかわらず、この要求を無視して午後2時0分頃まで同店内にとどまり、もって正当な理由がないのに人の看守する前記場所から要求を受けて退去しなかったものである。
解説
不退去罪の場合、場所への侵入自体は合法であったことが前提になります。前2例のように、不正な手段で侵入すればその時点で住居侵入罪が成立しますので、そのまま居座ったとしても新たに不退去罪が成立することはありません。また、不退去罪の成立には、その場を管理する責任者的立場にある者による明白な退去の要求が必要です。アルバイト店員や一般社員などでは役不足であり、店なら店長、会社なら社長などの代表者が直接相手に要求することが大切です。
退去しなかった時間ですが、これについて明示した裁判例が見当たりません。10分では足りないとするものがある一方で、数十秒で成立するというものまであります。事例に挙げたように退去を求めてから90分間居続ければ成立に問題はないでしょう。
告訴事実文例 私文書偽造罪
文書偽造には 「有形偽造」 と 「無形偽造」 の2種類が存在します。しかし、刑法で処罰の対象となるのは「有形偽造」のみ です。本記事では、有形偽造と無形偽造の違いを詳しく解説し、どのようなケースが文書偽造罪に該当するのかを具体例を交えて説明します。
文書偽造とは?有形偽造と無形偽造の違い
文書偽造とは、他人名義で書類を作成したり、文書の真正性を損なう行為を指します。具体的には 「有形偽造」 と 「無形偽造」 の2つに分類されます。
- 有形偽造 :他人の名前を使って文書を作成する行為(例:他人名義の契約書を勝手に作成)
- 無形偽造 :本名で文書を作成するが、内容が虚偽である行為(例:学歴を詐称した履歴書を提出)
無形偽造は犯罪にならない?履歴書の学歴詐称はどうなる?
例えば、あなたが就職活動中に 履歴書の最終学歴欄に「東京大学法学部卒業」と虚偽の記載 をした場合、これは犯罪になるのでしょうか?
答えは「無罪」です。
なぜなら、履歴書には自分の本名を記載しており、他人の名前を使っていないため「文書偽造罪」には該当しない からです。また、「偽造私文書行使罪」にも当たりません。このように、本名で作成し、内容のみ虚偽の文書は「無形偽造」とされ、処罰の対象外 となっています。
文書偽造罪が成立するケース
では、どのような場合に 「私文書偽造罪」や「公文書偽造罪」 が成立するのでしょうか?
✅ 私文書偽造罪の成立要件
- 他人の名義で文書を作成する
- 例:他人の名前を使って融資申込書を作成し、金融機関に提出
✅ 公文書偽造罪の成立要件
- 公務員が権限を持つ公文書を偽造 (例:公務員が虚偽の公文書を作成)
- 一般人が公務員になりすまし公文書を偽造 (例:住民票や戸籍謄本を偽造)
どのような文書が「文書偽造罪」の対象になるのか?
文書偽造罪が成立する文書の条件は、「権利・義務・事実証明に関する文書」であること です。例えば、
- 対象になる文書 :契約書・申込書・戸籍謄本・住民票
- 対象にならない文書 :単なる個人の手紙や日記(事実証明の役割がない)
「有印」と「無印」の違い
文書偽造罪には 「有印私文書偽造罪」 と 「無印私文書偽造罪」 があります。ここでの 「印」 とは 「印鑑」だけでなく、作成者の氏名が記載されているかどうか を指します。
- 有印私文書偽造罪 :氏名や印鑑がある文書を偽造(例:印鑑付きの契約書を偽造)
- 無印私文書偽造罪 :氏名の記載がない文書を偽造(※実際の事件ではほぼ見られない)
まとめ
✅ 文書偽造には 「有形偽造」 と 「無形偽造」 がある
✅ 処罰されるのは有形偽造のみ(他人の名義で文書を作成する行為)
✅ 履歴書の学歴詐称は無形偽造のため無罪
✅ 公文書偽造罪は、公務員の権限が関係する場合に成立
✅ 「権利・義務・事実証明に関する文書」が偽造罪の対象
年金証書の偽造
告発事実
刑法第155条第1項 有印公文書偽造
被告発人は、宮城県○○部○○課に勤務する公務員であるが、令和7年9月1日、同県仙台市○○区○○町1丁目2番3号所在の同県庁3階○○課事務室内において、行使の目的で、ほしいままに、同課備付けの年金証書用紙を使用して、その記号番号欄に「イ7-33778」と記入し、受給権者欄に、「宮城県仙台市○○町1-2-3、平成元年1月2日生、熊田敦夫」と存在しない人物を記載し、年金金額欄に「22万円」と記載した上、作成者欄に宮城県知事のゴム印を押すとともに、同県知事の角形公印を盗捺し、もって、同県知事作成名義の年金証書1通を偽造したものである。
社員証を偽造して行使した場合の告訴事実作成例です。
告訴事実
刑法第159条第1項、同法第161条 有印私文書偽造、同行使
被告訴人は、令和6年5月上旬頃、山梨県山梨市内又はその周辺において、行使の目的で、ほしいままに、いずれかの方法により入手した山本印刷株式会社経理部近藤孝彦(告訴人)の社員証画像をパーソナルコンピュータ等で編集し、氏名欄の「近藤孝彦」の部分を「今村義男」に変更した上、これをプリンターを用いて用紙に印刷して今村義男名義の同社社員証を偽造し、同月13日午後1時0分頃、山梨県山梨市東山梨1丁目5番4号山梨中央銀行本店営業部において、同店営業部山本洋子(当時43歳)に閲覧させ、行使したものである。
解説
文書偽造罪は「行使の目的」が必要なので、事実中に「行使の目的で」が必須になります。偽造方法は、鑑定しないとわかりませんので、告訴段階ではわかる範囲で記載します。もし全くわからなければ「何らかの方法により」で構いません。
なお、文書偽造罪に行使の目的が必要なのは書いたとおりですが、文書偽造と同行使罪はそれだけで完結することは滅多になく、詐欺等本来の目的である犯罪の手段として行われることがほとんどです。
住民異動届を偽造、行使して虚偽の住民票登録をさせた場合の告発事実記載例です。
告発事実
刑法第159条第1項、同法第161条第1項、同法第157条第1項、同法第158条第1項 有印私文書偽造、同行使、電磁的公正証書原本不実記録、同供用
被告発人は、令和6年5月7日、東京都杉並区杉並本町2丁目3番5号所在杉並区役所において、行使の目的で、ほしいままに、同所備付けの住民異動届用紙の年月日欄に「6・5・7」、新住所欄に「杉並区杉並9丁目55番44号」、旧住所欄に「群馬県高崎市高崎5丁目5番1号」、世帯主欄に「枝川雅也」、本籍欄に「群馬県高崎市高崎5丁目5番地」、筆頭者欄に「枝川雅也」、届人欄に「枝川雅也」と記載し、その右側に「枝川」と刻印された印鑑を押捺し、もって枝川雅也作成名義の住民異動届1通を偽造した上、その頃、同所において、同区役所住民課係員今野弥生に対し、前記偽造にかかる住民異動届を真正に成立したもののように装って提出して行使するとともに、枝川雅也が旧住所の群馬県高崎市高崎5丁目5番1号から新住所である東京都杉並区杉並本町2丁目3番5号に転居した旨の虚偽の申告をし、よって、その頃、情を知らない前記今野係員をして住民基本台帳の原本として用いられる電磁的記録に不実の記録をさせ、これを真正なものとして備え付けさせて公正証書の原本としての用に供したものである。
●参考
私文書偽造、同行使罪は、この罪名だけで事件化されることはかなり希です。なぜなら、通常、この罪は、詐欺や公正証書原本不実記録(虚偽登記など)等、他の犯罪の「手段」として行われることが多く、実際に事件化される際にはこうした罪名とセットで立件されることがほとんどです。このように、二つの異なる罪種が手段と目的の関係にあることを「牽連犯」(けんれんはん)と言います。空き巣の場合の「住居侵入」と「窃盗」も同じ牽連犯です。刑罰は、二つの罪のうち、重い方の刑罰が適用されます。
告訴事実文例 虚偽告訴罪
虚偽告訴罪とは、特定の人物に刑事処罰を受けさせる目的で、警察や検察などの捜査機関に対して虚偽の申告をすることで成立する犯罪です。例えば、実際には犯罪が行われていないにもかかわらず、「〇〇さんに暴行を受けました」と嘘の訴え出をする場合、虚偽告訴罪に該当します。
ただし、犯人を特定せず、単に「駅前で人が包丁で刺されています」と虚偽の通報をした場合は、軽犯罪法の虚偽申告にしかなりません。
虚偽告訴罪は「告訴」だけでなく「被害届」でも成立
「虚偽告訴罪」という名称から、「告訴」しなければ成立しないと誤解されがちですが、実際には警察官への口頭申告や被害届の提出でも成立します。そのため、嘘の被害届を出した場合も虚偽告訴罪となる点に注意が必要です。
このように罪名が紛らわしいため、「虚偽処罰親告罪」といった名称に変更されることも検討の余地があるかもしれません。
虚偽告訴罪は未遂がなく、申告時点で成立
虚偽告訴罪には未遂の規定がなく、捜査機関に申告をした時点で既遂(犯罪が成立した状態)となります。つまり、警察や検察が受理したかどうかに関わらず、申告した時点で罪が成立するのです。
●虚偽告訴罪と似た犯罪に軽犯罪法1-16違反の「虚構申告」があります。嘘の事件や災害の発生を公務員に申告することで成立します。「特定の人物の処罰」を求めない点で、虚偽告訴罪と分けられます。
口頭で虚偽告訴を行った場合の告訴事実記載例です。
告訴事実
刑法第172条 虚偽告訴
被告訴人は、告訴人が詐欺の犯罪を犯したことがないのに、告訴人に刑事上の処分を受けさせる目的で、令和6年7月7日午後1時0分頃、東京都葛飾区東葛飾1丁目2番5号所在の警視庁堀切警察署堀切東交番において、同交番で勤務中であった同署地域課司法警察員巡査部長山本大悟に対し、「私の中学校時代の同級生である吉岡洋介(告訴人)が、北千住駅近くのマンションで振り込め詐欺のかけ子をやって年寄りを騙して大金を受け取っています。お年寄りを騙すなんて許せないので逮捕して刑務所に送ってください。」などと虚偽の申告をしたものである。
郵送で告発状を送付した場合の告訴事実例です。
告訴事実
刑法第172条 虚偽告訴
被告訴人は、告訴人が覚醒剤を所持したことも使用したこともないのに、告訴人に刑事上の処分を受けさせる目的で、令和6年5月7日頃、東京都墨田区又はその周辺において、警視庁新宿警察署長宛てに、告訴人が1年以上前から告訴人自宅内等で常習的に覚醒剤を吸引等している旨の虚偽の事実を記載した告発状を作成した上、同日頃、これを同都墨田区内から同都新宿区新宿4丁目55番78号警視庁新宿警察署長宛てに郵送して、同月9日午前10時10分頃、同署長に到達させて虚偽の申告をしたものである。
告訴事実文例 過失傷害罪
過失傷害罪とは、注意義務を怠った結果、他人にケガを負わせる罪です。本罪は親告罪であるため、被害者からの告訴がなければ検察官が起訴できません。
一方、自動車事故など業務に関連する過失傷害は、業務上過失傷害罪に問われる可能性があります。かつては「免許が必要な業務かどうか」が判断基準とされていましたが、現在では**「反復継続して行う業務かどうか」**が重視されるようになっています。
また、業務上過失傷害罪は非親告罪であり、被害者の告訴がなくても起訴されるため注意が必要です。
✅ 関連キーワード:過失傷害罪とは、業務上過失傷害罪、親告罪と非親告罪の違い、過失傷害の成立要件、自動車事故と過失傷害
単純過失傷害罪の告訴事実記載例です。
告訴事実
刑法第209条 過失傷害
被告訴人は、令和6年7月7日午後2時0分頃、東京都足立区千住1丁目2番3号JR東日本株式会社常磐線北千住駅1番線ホーム上を駆け足で進行していたが、当時同ホーム上には電車の到着を待つ利用客が多数存在しており、常に周囲の利用客の動きを注視しながらゆっくりと歩いて進む等、他の利用客との衝突等の危険を回避すべき注意義務があったのに、これを怠り、漫然と駆け足進行を続けた過失により、同ホーム上に立ち止まって電車を待っていた告訴人と衝突して転倒させ、よって、告訴人に対し、加療約2か月を要する右前腕部骨折の傷害を負わせたものである。
業務上過失傷罪の告訴事実記載例です。
告訴事実
刑法第211条 業務上過失傷害
被告訴人は、東京都足立区足立1丁目5番6号所在の足立遊園地の管理部長として、同園内の遊具の保守管理業務の責任者であった者であるが、令和5年12月1日に実施された園内遊具一斉点検の際、必要な点検作業手順を遵守せず、漫然と点検作業を行ったことから、第一号滑り台の天板固定ボルト8本のうち3本が破断しているのを看過し、もって、同滑り台の倒壊事故の発生を未然に防止すべき業務上の注意義務があるのに、不注意によりこの措置を怠り、利用客に対する同滑り台の供用を続けた過失により、同月3日午後2時0分頃、同滑り台が倒壊したことから、同滑り台の天板に立っていた告訴人の長女である間中いずみ(当時4歳)に対し、全治約1か月を要する右手示指骨折、右腰部打撲等の傷害を負わせたものである。
●参考
本罪は、警察が相談や通報を受ける件数は多いですが、実際に事件化されることはあまりありません。電車の中でうっかり他人の足を踏んでしまった
告訴事実文例 保護責任者遺棄罪
保護責任者遺棄罪とは、高齢者・幼児・障害者・病人などを保護する責任があるにもかかわらず、必要な救護義務を怠り、危険な状態にすることで成立する犯罪です。特に、被害者が死亡した場合は「保護責任者遺棄致死罪」となり、より重い刑罰が科されます。
一方で、明確な殺意を持って食事を与えず餓死させるなどした場合は、「殺人罪」が適用されるため、保護責任者遺棄罪とは区別されます。
「保護すべき責任のある者」とは?
本罪が適用されるのは、特定の関係にある人が救護義務を怠った場合です。「保護すべき責任のある者」には、以下のような人々が該当します。
- 親・家族(子どもや高齢の親の世話をする者)
- 雇い主
- 教師
実際の事件での適用例
有名な例として、某俳優が合成麻薬を摂取後、意識を失った女性を放置し、死亡させた事件があります。このケースでは、「すぐに119番通報していれば助かった可能性があった」として、保護責任者遺棄罪で有罪判決が下されました。
通行人には適用されない?
例えば、以下のようなケースでは保護責任者遺棄罪は適用されません。
- 道端で倒れている人を見ても通報しなかった
- 川で溺れている人を助けなかった
これは、通行人がその人に対して「法的な保護義務を負っていない」ためです。しかし、道徳的には救助や通報を行うことが望ましいとされています。
まとめ
通行人は保護義務がないため、本罪は成立しない
保護責任者遺棄罪は、保護義務のある者が救護を怠り、危険な状態にすることで成立
**死亡すれば「保護責任者遺棄致死罪」**に
親・家族・雇い主・教師などが該当
幼児置き去りの保護責任者遺棄罪の告訴事実記載例です。
告訴事実
刑法第218条第1項 保護責任者遺棄
被告訴人は、福島県福島市上総3丁目345番地新上総マンション205号室に居住し、前夫である新田俊郎(告訴人)との間に生まれた長女磯部かおり(当時2歳5か月)を養育していたものであるが、収入がなく、貯金も使い果たしたことから、東京に出て住み込みの風俗店で働こうとしたが、長女は足手まといになることから置き去りにしようと考え、令和6年6月8日午前10時0分頃、長女を保護すべき責任があるのに、長女を前記室内に単独で置き去りにして外出し、もって、幼年者を遺棄したものである。
告訴事実文例 逮捕監禁罪
逮捕罪・監禁罪・逮捕監禁罪の違いとは?それぞれの成立要件を解説
逮捕罪と監禁罪は同じ条文に規定されていますが、犯行の状況によって「逮捕罪」「監禁罪」「逮捕監禁罪」と異なる罪名が適用されます。ここでは、それぞれの違いと成立要件について詳しく解説します。
逮捕罪とは?成立要件と具体例
逮捕罪は、相手の身体の自由を奪う行為を指します。
- 有形力の行使:紐で縛る、手錠をかけるなど
- 無形力の行使:凶器を示して脅す、「警察に動くなと言われている」と騙す など
監禁罪とは?逮捕罪との違い
監禁罪は、被害者が一定の区域から出られないようにする行為を指します。
- 方法は問わない:物理的に閉じ込めるだけでなく、心理的な圧力(脅迫や欺罔)による監禁も成立
逮捕監禁罪とは?両罪が組み合わさるケース
逮捕監禁罪は、逮捕後に引き続き監禁が行われた場合に成立します。たとえば、手錠をかけた後に部屋に閉じ込めるようなケースが該当します。
逮捕・監禁罪と暴行・脅迫の関係
逮捕罪や監禁罪の手段として暴行や脅迫が行われた場合、それらの行為は逮捕・監禁罪に吸収され、別の犯罪とはなりません。ただし、逮捕や監禁とは別に暴行・脅迫が行われた場合は、それぞれの罪が成立します。
告訴事実
刑法第220条 逮捕
被告訴人らは、共謀の上、令和6年5月4日午後5時30分頃、東京都三鷹市西牟礼4丁目5番14号被告訴人前田和夫方において、同前田が告訴人に対し「おまえいつまで待ったら50万円返すんだよ。返すまで縛るから。」と言って、同吉田昭夫と共同して告訴人の両手両足を粘着テープで縛り上げ、約10分間にわたって身動きできない状態にさせ、もって告訴人を不法に逮捕したものである。
告訴事実
刑法第220条 監禁
被告訴人は、告訴人が被告訴人の妻と浮気をしていると思い込み、令和6年3月7日午前8時0分頃、東京都杉並区方南1丁目3番5号先路上において、告訴人に対し刃渡り約10センチメートルの包丁を示しながら、「おまえうちの女房に手出したろ。東京湾沈めるからそこ入れ。」と言って、同所に停車中の黒色乗用自動車(トヨタクラウン、足立ナンバー以下不明)のトランク内を指さした上、告訴人を同トランク内に押し込めてトランクリッドを閉め、同車をすぐに発進させて、同日午後1時0分頃、群馬県館林市東大町3丁目445番地先路上まで走行させ、その間約5時間にわたり、告訴人を同車トランク内に閉じ込めて脱出不能の状況におき、もって告訴人を不法に監禁したものである。
※事例の場合は銃刀法違反にも該当します。
告訴事実
刑法第220条 逮捕監禁
被告訴人吉田功、同近藤守、同小野伸二は、共謀の上、告訴人を逮捕監禁しようと企て、令和5年10月7日午後9時0分頃、東京都港区港南1丁目4番5号先路上において、同吉田が、帰宅途中の告訴人に対し、スタンガンようのものを示しながら、「これでしびれたくなかったら黙って乗れ。」と言って、同所に停車中の黒色ワンボックス車両に中央座席に告訴人を押し込み、同吉田と同小野が告訴人の左右に座ってそれぞれ告訴人の腕を掴んで身動きできない状態にして不法に逮捕し、運転席の同近藤が車両を発進させ、同月8日午前2時0分頃、千葉県成田市西成田4丁目765番地先路上まで走行させ、その間5時間にわたり、告訴人を同車内に閉じ込めて脱出不能の状況におき、もって告訴人を不法に監禁したものである。
告訴事実文例 名誉毀損罪 侮辱罪
名誉毀損罪と侮辱罪は、特にSNSやインターネット上で頻繁に取り上げられる犯罪です。近年、SNSやオンラインコミュニティの利用が拡大する中で、他人に対する誹謗中傷の文言が飛び交い、警察への相談も急増しています。その結果、精神疾患や自死に追い込まれるケースも見られ、社会的影響も大きくなっています。悪質な誹謗中傷に対しては厳しい罰則が求められています。
誹謗中傷と名誉毀損・侮辱の違い
誹謗中傷の内容が名誉毀損罪や侮辱罪に該当するかどうかは、被害者の立場や状況によって異なります。名誉毀損(または侮辱罪)が成立するかどうかは、具体的な発言の内容や被害者の立場によって異なり、一律の基準では判断できません。なお、名誉毀損罪は言葉だけでなく、裸体画像の公開なども対象となります。
名誉毀損罪と侮辱罪の違い
- 名誉毀損罪: 事実を摘示することで他人の名誉を傷つけた場合に適用されます。たとえば「隣の山田さんは痴漢で警察に3回捕まった」という発言は、事実を示しているため名誉毀損罪に該当します。
- 侮辱罪: 事実を摘示しない単なる評価や侮辱が該当します。たとえば「隣の山田さんはスケベだ」といった表現は、単なる意見であり、事実の提示がないため侮辱罪となります。
名誉毀損罪と侮辱罪の罰則
- 名誉毀損罪: 最大3年の懲役、または50万円以下の罰金
- 侮辱罪: 最大1年の拘禁刑、または30万円以下の罰金、拘留または科料
侮辱罪は名誉毀損罪よりも軽い罰則が適用されます。
公然性と犯罪成立
両罪が成立するためには、「公然性」が必要です。これは不特定多数または大勢に知らしめることを意味します。ネット上で公開された誹謗中傷は、多くの場合「公然性」を満たし、名誉毀損や侮辱が成立する可能性が高いです。ただし、限られたグループ内での発言は該当しません。
公訴時効とネット上の影響
インターネット上での誹謗中傷は、書き込まれた時点で犯行が開始され、削除されるまで公訴時効の進行は止まります。そのため、加害者が削除を行った後、時効が進むことに注意が必要です。
親告罪と告訴期間
名誉毀損罪と侮辱罪は親告罪であり、被害者が告訴しない限り検察は起訴できません。告訴できる期間は犯人が誰であるかを知ってから6ヶ月以内です。この期間を過ぎると告訴状は絶対に受理されません。
公共の利害に関する特例
名誉毀損罪には、公共の利害に関する特例があります。政治家の不倫や企業の不正に関する事実を公益目的で摘示した場合、その内容が事実であれば、罰則は適用されません。
名誉毀損罪と侮辱罪の法的リスクを理解し、適切に対応することで、誹謗中傷から自分を守ることができます。SNSやネット掲示板を利用する際には、言動に注意を払い、法的なトラブルを避けるための予防策を講じましょう。
名誉毀損・侮辱、ともに成立判断がとても難しい罪種です。罪に当たるかどうかに迷ったら、当職にご相談ください。
言葉による名誉毀損罪の告訴事実例です。
告訴事実
刑法第230条 名誉毀損
被告訴人は、令和6年1月30日午後1時30分頃、東京都世田谷区西桜町1丁目7番4号先世田谷区立西桜小学校校庭内において、同小学校児童の保護者である横山千夏(当時35歳)ほか23名に対し、「山岡○○くんのお母さん(告訴人)は、常習の万引き犯で先週も世田谷警察署に捕まっています。」などと大声で話し、もって、公然と事実を摘示し、告訴人の名誉を毀損したものである。
インターネット上の名誉毀損罪告訴事実例
告訴事実
刑法第230条 名誉毀損
被告訴人は、株式会社IEOが運営するインターネット上の○○掲示板に虚偽情報を掲載して告訴人の名誉を毀損しようと企て、令和6年6月6日頃、告訴人が、告訴人の勤務する株式会社横山通販において、約5年間にわたって同社の売上金の中から合計3000万円を横領したとする内容虚偽情報を、東京都大田区又はその周辺から、インターネット回線を使用し、前記IEO社のサーバーコンピュータに送信し、そのころ、前記○○掲示板を利用する不特定かつ多数の利用者をして、前記内容虚偽情報を閲覧させ、もって、公然と事実を摘示し、告訴人の名誉を毀損したものである。
口頭による侮辱罪の告訴事実記載例
告訴事実
刑法第231条 侮辱
被告訴人は、令和6年5月3日午後9時0分頃、群馬県高崎市東高崎1丁目56番地居酒屋金時店内において、同店店内にいた店員や客約30名に対し、告訴人を指さした上、「この男は群馬でナンバーワンのすけべ野郎です。」などと放言し、もって、公然と告訴人を侮辱したものである。
告訴事実文例 信用毀損罪
信用毀損罪とは?名誉毀損罪との違いや成立要件を解説
信用毀損罪とは、虚偽の風説(うわさ)を流したり、偽計を用いたりして、個人や法人の信用を傷つけた場合に成立する犯罪です。ここでいう「信用」とは、主に 支払能力・支払意思 や 商品の品質 に関する社会的信頼を指します。
信用毀損罪と名誉毀損罪の違い
信用毀損罪と名誉毀損罪はよく混同されますが、保護法益が異なります。
- 名誉毀損罪:名誉(社会的評価)を保護する
- 信用毀損罪:経済的な信用(支払能力・商品の品質)を保護する
例えば、「○○社長は人使いが荒くて社員がかわいそう」という噂を流しても、経済的信用を直接損なうものではないため、信用毀損罪には該当しません。
信用毀損罪の成立要件
- 虚偽の情報であること
- 名誉毀損罪は「真実か虚偽かを問わず事実の摘示が必要」ですが、信用毀損罪は 「虚偽」であることが条件 です。
- 事実無根である場合はもちろん、部分的に虚偽の情報でも成立します。
- 例えば、実際の製品の欠点を指摘することは虚偽ではないため、信用毀損罪には当たりません。
- 人または法人の信用を毀損すること
- 「信用」とは、経済的取引や商取引に関わる社会的信頼を意味します。
- 非親告罪であること
- 名誉毀損罪や侮辱罪は親告罪(被害者の告訴が必要)ですが、信用毀損罪は 非親告罪 であり、告訴がなくても立件される可能性があります。
- 未遂は処罰されない
- たとえ信用を毀損しようとした行為が未遂に終わった場合、罪には問われません。
まとめ
信用毀損罪とは、経済的な信用(支払能力や商品の品質)に関する虚偽情報を流布し、個人や法人の社会的信頼を損なう犯罪 です。名誉毀損罪とは異なり、虚偽の情報であることが成立条件であり、非親告罪であるため告訴なしでも起訴される可能性があります。
信用毀損罪の告訴事実記載例です。
告訴事実
刑法第233条 信用毀損
被告訴人は、JR常磐線北松戸駅前においてラーメン店「しむろ」を経営するものであるが、同駅前の近隣に在する告訴人が代表取締役を務める株式会社紅葉「ラーメン店添加一品」が人気であることを妬み、同店の信用を失墜させようと企て、令和5年10月1日頃、株式会社ゼロワンが運営するインターネットサービスである食べマルの前記「添加一品」のクチコミ欄に、「添加一品は出汁に保健所でと殺された犬や猫の肉を使ってます。」などと書き込み、嘘を言って虚偽の風説を流布し、もって、前記「ラーメン店添加一品」の信用を毀損したものである。
告訴事実文例 業務妨害罪
業務妨害罪は、虚偽の風説(うわさ)を流布し又は偽計を用いて、若しくは威力を用いて、他人の業務を妨害することで成立します。「業務」については、「人が社会的地位に基づき、反復・継続して行う仕事」とされ、趣味の活動や家事は含まれないとされています。
偽計業務妨害になるか、威力業務妨害になるかは、妨害行為が公然的明示的であるか否かで分けられると言われますが、実務上はどちらにすべきか悩むケースが多く、個別に判断しないとなりません。刑法各論などを見ますと、裁判実務上でも両者を分けることはあまり意味がないとする指摘がされているようで、個人的にも刑法改正の際に刑法233条(偽計業務妨害罪)と刑法234条(威力業務妨害罪)は統合したほうがいいと考えますが、みなさんはいかがでしょうか。
業務妨害罪は、結果の発生を必要とせず、業務が妨害される蓋然性・危険性が発生した時点で既遂となります。
偽計業務妨害罪の告訴事実記載例です。
告訴事実
刑法第233条 偽計業務妨害
被告訴人は、東京都新宿区新宿西2丁目3番4号所在の告訴人が経営するラーメン店「天狗」の業務を妨害しようと企て、令和6年3月23日午後3時0分頃、同店を訪れ、店内で仕込み中だった告訴人に対し、「昨日この店でラーメンを食べてからお腹を壊し、病院に行ったらコレラだと言われた。」などと虚偽の事実を申し向け、もって、偽計を用いて告訴人の業務を妨害したものである。
迷惑電話による偽計業務妨害の告訴事実記載例です。
告訴事実
刑法第233条 偽計業務妨害
被告訴人は、栃木県小山市立木1丁目3番に所在する告訴人である株式会社名神北関東支店の業務を妨害しようと企て、令和5年10月2日から令和6年5月1日までの間、同県宇都宮市戸祭4番5号被告訴人方から、前記支店の代表電話番号(0286-334-○○○○)に1万2823回の無言電話をかけ、もって、偽計を用いて同支店の業務を妨害したものである。
威力業務妨害罪の告訴事実記載例です。
告訴事実
刑法第234条 威力業務妨害
被告訴人は、東京都文京区西春日3丁目4番5号所在の株式会社SEO(告訴人)の顧客であったものであるが、告訴人会社の提供するインターネット集客サービスシステムがインチキであると一方的に決めつけ、令和6年4月4日午後3時30分頃から同日午後4時0分頃までの間、同社1階正面入り口前付近において、出入りしようとする同社社員や来訪客ら約50名に対し、大声で怒鳴り散らしたり、ホースで水をかけたりするなどして暴れ、もって威力を用いて同社の業務を妨害したものである。
告訴事実文例 不動産侵奪罪
不動産侵奪罪は、窃盗罪と同様に刑法第235条に規定された犯罪であり、通称「土地の事実上の窃盗」と呼ばれます。この犯罪は、土地の所有権が法務局への登記によって移転されることに関連しません。侵奪罪の処罰対象となる行為は、土地の所有者の承諾なしに勝手に土地を物理的に占有することです。
不動産侵奪罪の行為例
一般的に、不動産侵奪罪に該当する行為は、空き地に建造物を建てることや、大量の建築残土を積み上げることです。これらは、土地の所有者の承諾なしに行われるため、違法とみなされます。
賃貸物件の占有は不動産侵奪罪に該当しない
なお、賃貸物件において賃貸契約終了後に居座り続ける行為は、不動産侵奪罪には該当しません。この場合、別の法律が適用される可能性があります。
不動産侵奪罪の未遂規定
不動産侵奪罪には未遂規定もあります。つまり、実際に土地を占有しなくても、占有しようと試みた段階で罪が成立することがあります。
他人の土地に勝手に車庫を建てた場合の告訴事実記載例です。
告訴事実
刑法第235条の2 不動産侵奪
被告訴人は、令和6年2月3日頃、東京都八王子市北八王子4丁目4番5号所在の告訴人所有の約156平方メートルの空き地上に、無断で約120平方メートルのアルミパネル製車庫1棟を建築し、もって、告訴人所有の土地約156平方メートルを侵奪したものである。
外周に塀を設置した場合の告訴事実記載例です。
告訴事実
刑法第235条の2 不動産侵奪
被告訴人は、令和5年3月3日頃、埼玉県草加市南草加町4番34号所在の告訴人所有の土地約120平方メートルの土地外周に、無断でブロック塀と鍵付きアルミ製門扉を建築して他人の出入りをできなくさせ、もって、上記告訴人所有の土地約120平方メートルを侵奪したものである。
告訴事実文例 強盗罪
一口に強盗罪と言っても、刑法での条文は第236条から第243条まで8つもあり、また罪名も態様によって幾つにも分かれています。主な罪名は、強盗罪、強盗予備罪、事後強盗罪、強盗致傷(傷人)罪、強盗致死(殺人)罪、強盗・不同意性交等罪、強盗・不同意性交等致死傷罪などがあります。
警察内部では強盗罪は指定重点犯罪となっており、いざ発生すると現場には、捜査一課やら機動捜査隊やら現場鑑識やらが来て大騒ぎになり、被害者から状況聴取後はすぐに被害届を取って捜査が進みます。告訴する機会はあまりないかもしれません。
強盗予備罪の告訴事実記載例です。
告訴事実
刑法第237条 強盗予備
被告訴人は、強盗の罪を犯す目的で、令和6年5月7日午後10時30分頃、出刃包丁1本を所持し、東京都杉並区杉並本町2丁目3番5号吉田義男方前路上において、同宅に侵入しようと金品強取の機会をうかがい、もって強盗の予備をしたものである。
屋外強盗罪の告訴事実記載例です。
告訴事実
刑法第236条第1項 強盗
被告訴人は、令和6年7月5日午後11時0分頃、埼玉県志木市本志木5丁目4番先路上において、帰宅中だった告訴人に対し、やにわに両手で告訴人の首を絞め、「金出せよ。声出したら殺すよ。」と申し向けて脅迫し、その反抗を抑圧した上、告訴人所有の手提げバッグ内から現金5万円を強取したものである。
万引き犯人による事後強盗罪の告訴事実記載例です。
告訴事実
刑法第238条、同法第240条 事後強盗致傷
被告訴人は、令和6年5月7日午後2時0分頃、埼玉県吉川市南吉川町4丁目45番地所在のスーパー吉川南吉川店において、ウイスキー1本他2点(販売価格合計5300円)を窃取し、同店正面出入口を出たところで保安員安田加奈子(当時44歳)から「レジを通してない商品がありますよね。」と声をかけられるや、逮捕を免れるため、同人の顔面を両手の手拳で数回殴打し、その場に転倒した同人の背中付近に数回足蹴りするなどの暴行を加え、同人に対し全治約1か月を要する顔面打撲、肋骨骨折、背部打撲傷の傷害を負わせたものである。
はじめから強盗と不同意性交の犯意があって実行してケガを負わせた場合の告訴事実記載例です。
告訴事実
刑法第241条第1項 強盗・不同意性交等致傷 ※240条は付きません。
被告訴人は、告訴人から現金を強奪するとともに告訴人と性交しようと考え、令和6年6月4日午後11時0分頃、神奈川県厚木市厚木町1丁目3番55号告訴人方において、告訴人に対し、両手手拳で告訴人の顔面を数回殴る暴行を加え、その反抗を抑圧して、告訴人所有の財布内から現金4万円を強取するとともに、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせて告訴人と性交し、その際、前記暴行により、告訴人に加療約20日間を要する顔面打撲等の傷害を負わせたものである。
告訴事実文例 背任罪
背任罪は、他人のために事務を行う者が、自己または第三者の利益を図り、または被害者に損害を与える目的で、その任務に反する行為をして、被害者に財産上の損害を与える犯罪です。特に、自己の利益を追求する場合、横領罪に似ている部分が多いため、両者の違いを理解することが重要です。
横領罪と背任罪の違い
横領罪と背任罪の違いを見極めるポイントは、事件の内容によって異なります。例えば、組織の金銭を自分のものとして使用し、組織に損害を与えた場合、通常は横領罪が成立します。しかし、例外的なケースもあります。例えば、組織の現金を家に持ち帰り、1円も使わずに捨ててしまった場合、これは横領罪には該当しませんが、背任罪が適用されることになります。
横領罪と背任罪の違い:不法に得た財産の扱い
横領罪や窃盗罪は、財産犯であり、不法に得た財産をどのように扱うかが重要なポイントです。不法に得た金品を破壊または捨てる行為は、窃盗罪ではなく器物損壊罪に該当します。一方、横領罪では、不法に得た財産を捨てる行為が、背任罪における「被害者に損害を与える目的」に該当し、その結果として背任罪が成立することになります。
実務での背任罪の適用
実際の法務で背任罪が適用されるケースは非常に稀です。ほとんどの場合、横領罪が成立します。しかし、背任罪は横領罪が成立しない場合の最後の手段として重要な役割を果たします。特に組織内での財産管理や経営に関わる事案で、横領罪と背任罪の線引きを理解しておくことは、法的な判断を下す上で非常に重要です。
なお特別背任罪は刑法ではなく会社法に規定された犯罪です。会社の取締役が背任罪を行うことで成立します。犯罪の態様自体は刑法の背任罪と全く同じです。
まとめ
実務では背任罪は稀だが、横領罪が成立しない場合に重要となる。
背任罪は横領罪と似ているが、目的が異なる。
横領罪が適用される場合が多いが、特定のケースでは背任罪が成立する。
不法に得た財産を捨てる行為が背任罪につながる場合がある。
銀行員による不正融資背任罪の告訴事実記載例です。
告訴事実
刑法第247条 背任
被告訴人は、東京都稲城市に本店を置く株式会社稲城銀行(告訴人)本店営業部長として、同部の業務全般を統括し、顧客に営業資金を貸し付けるに当たっては、関係法令及び同行定款や規定に基づいて、融資先の経営状態等について厳正に審査し、また確実な担保を設定して、同行のために融資金回収に万全の措置を取るべき任務を有していたものであるが、令和5年4月3日、上記本店営業部において、株式会社印度の利益を図る目的をもって、被告訴人の任務に背き、同社には債務返済能力が無く、さらに担保となるべく資産も無く、近い将来にまとまった資金の入金予定も無いことを知りながら、何の担保も設定せず、同社に対して5億5000万円を貸し付け、もって、同行に同額の財産上の損害を加えたものである。
説明で挙げた現金投棄の告訴事実記載例です。
告訴事実
刑法第247条 背任
被告訴人は、東京都品川区大井町1丁目4番6号株式会社アドレ(告訴人)の経理課員として勤務し、同社のため、同社の預貯金及び現金の保管と管理、経費や公租公課の支払、給与計算とその支払などの業務に従事していたものであるが、その任務に背き、同社の資金を投棄して同社に損害を与えようと企て、令和6年4月4日午後2時30分頃、同区大井町1丁目4番18号所在の三井銀行大井町支店において、同支店に開設された同社名義口座(当座1234567)から現金1000万円を引き出した上、これを東京都大田区仲六郷1丁目56番地被告訴人方に持ち帰り、翌4月5日午前6時30分頃、同現金を大田区指定の可燃ゴミ袋に入れた上で、告訴人方前路上に設置されたゴミ集積場にゴミとして投棄して回収不能ならしめ、もって、同社に同額の財産上の損害を与えたものである。
告訴事実文例 建造物損壊罪
建造物損壊罪は、家屋や建物、艦船などの構造物を損壊することにより成立する罪です。この「建物」とは、壁や柱で土地に固定されており、内部に人が入れる構造を持つものを指します。したがって、物置やテントは建造物損壊罪には該当しません。
建物の損壊部分と判例
過去には、「取り外しできる箇所の損壊は建造物損壊罪ではなく、器物損壊罪である」とされてきました。この「取り外しできる箇所」とは、例えば雨戸、門、障子、畳などが含まれます。ドアも取り外し可能なため、以前は器物損壊罪とされていました。しかし、平成19年の判例において、「ドアは建物と構造上一体である」と認定され、これをきっかけにドアの損壊も建造物損壊罪に該当することとなりました。
外観損壊と判例
また、公園のトイレの外側壁面にカラースプレーで塗りつぶす行為について、判例では「損壊は物理的破壊だけでなく、外観を著しく汚損する行為も含まれる」とされています。これにより、物理的な破壊行為だけでなく、外観の損傷も建造物損壊罪に該当することが明確となりました。
不法侵入罪との違い
不法侵入に関する罪名は、「住居侵入罪」「建造物侵入罪」「邸宅侵入罪」など、建物の用途に応じて細かく分類されています。一方、建造物損壊罪は、たとえその建物が住居であっても、すべて一律に「建造物損壊罪」となります。一方は分けて、他方は分けない。刑法の不思議な部分です。
居酒屋壁の建造物損壊告訴事実記載例です。
告訴事実
刑法第260条前段 建造物損壊
被告訴人は、令和6年5月6日午後10時50分頃、東京都中野区新中野1丁目5番6号所在の告訴人が経営する居酒屋八兵衛店内において、注文した料理がすぐに出てこないことに激高し、「いつになったら俺にタコ食わすんだ。」などと怒号しながら、客席テーブルを持ち上げて同店客席の西側壁面に勢いよく叩きつけ、これにより同壁面に直径約70センチメートルの穴を開け、もって、他人の建造物を損壊したものである。
前述したカラースプレーによる汚損の事例です。
告訴事実
刑法第260条前段 建造物損壊
被告訴人は、令和6年3月4日午前2時0分頃から同日午前2時20分頃までの間、東京都世田谷区桜町1丁目5番世田谷区立すずめ公園内に設置された同区所有の公衆トイレの白色外壁に、ラッカースプレー4本を使用して、赤色及び黄色の塗料を吹き付けて、「SEX」「FUCK YOU」などと落書きし(損害額約150万円相当)、もって、他人の建造物を損壊したものである。
告訴事実文例 器物損壊罪
器物損壊罪は、他人の物を壊し、又は他人の飼っている動物を傷害することで成立します。本罪の対象になる「物」とは手で触れる物質のことですので、パソコン内の電磁的データを消去させた場合には、本罪ではなく刑法第234条第2項の「電子計算機損壊等業務妨害罪」になります。
「損壊」の意味については、「物の効用を害する一切の行為」とされていますが、拭けばすぐに落ちるような汚れを付けたり、はめれば容易に元に戻るような分解行為は含まれません。また、絶対に見つからないような場所に隠匿、投棄した場合にも成立します。有名な判例で、食器に放尿した行為が本罪に当たるとされたケースもあります。
動物の「傷害」については、ケガを負わせることは当然、帰巣する習慣のない個体を野に放して逃がす行為も含まれます。
本罪には未遂規定はなく、過失罰もありません。
本罪は、親告罪ですので、公判請求のためには告訴が必要で、犯人を知ってから6か月以内という告訴期間の規定があります。
建物の壁や屋根を壊すと建造物損壊罪になりますが、建造物のうち取り外せて建物と一体でない部分(雨戸、障子、窓ガラス、門など)を壊すと本罪が適用されます。
本罪は、旧来「器物毀棄罪」という罪名でしたが、言葉が古くてわかりにくいという理由で刑法改正の際に罪名変更されました。
※※重要※※ 本罪は「親告罪」です。「告訴」が無いと検察官は起訴することができません。また「告訴期間」という決まりがあり、「犯人を知ってから6か月」を過ぎると「告訴」できなくなります。犯人が誰かわかっており、弁済の示談交渉をしているうちに、うっかり6か月が経過してしまうと「告訴」できなくなり、その犯人を処罰すること永久にできなくなってしまいますので注意が必要です。
器物損壊罪の告訴事実記載例です。
告訴事実
刑法第261条 器物損壊
被告訴人は、令和6年5月9日午後11時0分頃、東京都西東京市本町1丁目5番6号島田屋ビル2階所在の告訴人が経営する居酒屋春店内において、店のサービスが悪いと因縁を付け、店内壁面に設置されていた液晶テレビ(シャープ製、50型、時価約5万円相当)を床に叩きつけて液晶画面を割る等し、もって、告訴人所有の器物を損壊したものである。
動物の傷害については、人間の傷害事実を参考にしてください。
告訴事実文例 信書開封罪
信書開封罪は、他人宛に送られた手紙や封書を無断で開封することで成立します。ここで重要なのは、手紙が実際に送付されたかどうかは関係ない点です。信書開封罪が成立するためには、封を破る、または封を開ける行為が必要となります。したがって、封筒が既に破れている、または封がされていないはがきなどは、この罪に該当しません。
信書開封罪の成立要件には、封を開ける行為が含まれており、中身を読むことは成立要件ではありません。そのため、封を破った時点で罪は成立します。文書が空であっても成立することに変わりはなく、開封した時点で既遂となります。
また、他人の郵便ポストを無断で開けて信書開封罪を犯し、封書を元に戻した場合は信書開封罪のみが成立します。しかし、封書を自宅に持ち帰ると、信書開封罪に加え、窃盗罪も成立する可能性があります。
この罪は「親告罪」です。検察官が起訴するためには告訴状の提出が必要です。また「告訴期間」といって犯人を知った日から6か月を過ぎると告訴できなくなりますので注意が必要です。
告訴事実
刑法第133条 信書開封
被告訴人は、令和6年3月2日午前11時0分頃から同日午後2時0分頃までの間、東京都練馬区東練馬1丁目5番6号告訴人方玄関前に設置された郵便ポスト内にあった山上達郎から告訴人宛の封書1通を取り出し、同所において、同封書の封を破って開け、もって、正当な理由がないのに、封をしてある信書を開封したものである。
告訴事実文例 公然わいせつ罪
公然わいせつ罪は、公共の場でわいせつな行為を行った場合に成立する犯罪です。ここで「公然」とは、不特定多数の人々が認知する可能性があれば成立し、実際に誰かが目撃する必要はありません。この点は、名誉毀損罪の「公然性」とは異なる解釈がされるため、注意が必要です。
また、通常、刑法に基づく犯罪は刑事課が担当しますが、公然わいせつ罪だけは警視庁の生活安全課が取り扱っています。この違いについて調べたものの、具体的な規定や通達が見つからず、理由は未だに不明です。一般的に「被害者がいないから」という説明がありますが、贈収賄や文書偽造、偽札など、被害者がいない犯罪も刑事課が担当するため、この説明には疑問が残ります。公然わいせつ罪に関する詳しい情報をお持ちの方がいれば、ぜひ教えていただけると幸いです。
告訴事実
刑法第174条 公然わいせつ
被告訴人は、令和6年3月7日午後4時0分頃、東京都墨田区西町2丁目5番4号先路上において、通行中の告訴人などに対し、自己の陰茎をしごきながらことさらに露出して示し、もって、公然とわいせつな行為をしたものである。
告訴事実文例 不同意わいせつ罪
もし被害にあってしまったら:ただちに110番通報して警察官を呼んでください。その際、着ている衣服、下着を洗濯しないでください→微物を採取します シャワーを浴びないでください→犯人が触れたりなめたりした部位からDNAを採取します
不同意わいせつ罪とは?
定義と成立要件、刑法改正後のポイント
不同意わいせつ罪は、被害者を「同意しない意思を形成できない状態」または「表明・実行することが困難な状態」にし、またはその状態を利用してわいせつな行為を行うことで成立します。
簡単に言うと、「抵抗できない」または「『嫌だ』と言えない状態」にすることがこの罪の成立要件です。
不同意わいせつ罪を成立させる手段とは?
以下のような方法で被害者を抵抗できない状態に陥れることができます:
- 暴行や脅迫による強制
- 心身の障害を利用
- 過度のアルコールや薬物を与えて抵抗不能にする
- 睡眠や昏倒など意識不明の状態を利用
- 同意を表明する時間を与えない
- 恐怖や驚愕により抵抗できない状態にする
- 過去の暴行・虐待による無力感を利用
- 経済的・社会的圧力を利用し、抵抗できない状態にする
痴漢行為における違法性の判断基準
公共の場で発生する痴漢行為は、不同意わいせつ罪に該当するか迷惑防止条例違反に該当するかが議論されます。
警察の判断基準は次の通りです:
- 衣服の上からの触れる行為 → 迷惑防止条例違反
- 衣服の上からの強いもみしだき → 不同意わいせつ罪
- 下着内に手を入れ陰部に触れる行為 → 不同意わいせつ罪
また、室内で発生した場合は、迷惑防止条例の適用はなく、不同意わいせつ罪のみの成立を問擬することになります。
不同意わいせつ罪と強制わいせつ罪の違い
「強制わいせつ罪」として知られていた罪は、令和5年の刑法改正により現在の「不同意わいせつ罪」に変更されました。これにより、犯罪の適用範囲や定義が明確化され、被害者の意思を無視した行為に対する処罰が強化されています。
暴行脅迫による不同意わいせつ罪の告訴事実の記載例です。
告訴事実
刑法第176条第1項第1号 不同意わいせつ
被告訴人は、令和6年7月6日午後8時0分頃、埼玉県吉川市西町5丁目5番3号吉川マンション403号室被告訴人居室内において、告訴人に対し、右手拳で告訴人の左側頭部を1発殴打し、「やらせないと殺して埋めるぞ。」などと言って脅迫して、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ、両手で告訴人の胸や尻を強くもむなどのわいせつな行為をしたものである。
心身障害の場合の告訴事実記載例です。
告訴事実
刑法第176条第1項第2号 不同意わいせつ
被告訴人は、令和5年4月3日午後4時10分頃、東京都豊島区池袋4丁目5番6号障害者支援施設「かがやき」2階リハビリセンター内において、両腕と両足に障害があって自由に動かすことができない告訴人に対し、それらの障害により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にあることに乗じて、両手で告訴人の陰部をもてあそぶなどのわいせつな行為をしたものである。
酒を飲ませた犯行の告訴事実記載例です。
告訴事実
刑法第176条第1項第3号 不同意わいせつ
被告訴人は、令和6年3月5日午後10時0分頃、神奈川県相模原市中央区中央1丁目3番5号所在のカラオケまねき犬相模原店内において、長時間にわたって多量のレモンサワーなどを飲酒させた告訴人に対し、告訴人がアルコールの影響により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にあることに乗じて、右手を告訴人の下着の中に入れて陰部に指を入れるなどのわいせつな行為をしたものである。
睡眠その他意識が明瞭でない場合の告訴事実記載例です。
告訴事実
刑法第176条第1項4号 不同意わいせつ罪
被告訴人は、令和6年3月5日午後11時0分頃、東京都豊島区池袋4丁目5番6号池袋西マンション102号室告訴人方居室において、睡眠薬により熟睡していた告訴人に対し、睡眠により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にあることに乗じて、告訴人に口づけし、両手で胸をもむなどのわいせつな行為をしたものである。
電車内犯行(いとまがない場合)の告訴事実記載例です。
告訴事実
刑法第176条第1項第5号 不同意わいせつ
被告訴人は、令和6年9月30日午前7時0分頃、東京都渋谷区神南4丁目4番5号JR渋谷駅1番ホームに停車中の山手線内回り電車内において、告訴人に対し、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うするいとまがないことに乗じて、告訴人の下着の中に右手を入れ、陰部をもてあそぶなどのわいせつな行為をしたものである。
恐怖、驚愕させた場合の告訴事実記載例です。
告訴事実
刑法第176条第1項第6号 不同意わいせつ
被告訴人は、令和6年5月7日午後5時0分頃、東京都豊島区池袋4丁目5番6号池袋西ビル3階所在の足もみ屋池袋店内において、足もみの施術を受けていた告訴人に対し、いきなり下着を脱がせて陰部をもてあそび、もって、予想と異なる事態に直面させて恐怖若しくは驚愕させてわいせつな行為をしたものである。
虐待に起因する心理的反応を利用した場合の告訴事実記載例です。
告訴事実
刑法第176条第1項第7号 不同意わいせつ
被告訴人は、令和6年5月7日午後5時0分頃、東京都豊島区池袋4丁目5番6号池袋西マンション302号室告訴人方において、その養女である告訴人に対し、かねてから、殴る蹴るの暴行を加え、強く脅していたため、被告訴人に恐怖心を抱いており、抵抗しても無意味と考える心理状態であることに乗じて、告訴人に口づけしたり、両手で陰部をもてあそぶなどのわいせつな行為をしたものである。
経済的、社会的地位利用の告訴事実記載例です。
告訴事実
刑法第176条第1項第8号
被告訴人は、株式会社令和商事の名誉会長の役職にあったものであるが、令和6年5月7日午後5時0分頃、東京都豊島区池袋4丁目5番6号池袋西マンション302号室告訴人方居室において、同社社員である告訴人に対し、逆らえば被告訴人の擁護を受けられず同社を解雇等されないかと憂慮していることに乗じて、告訴人に口づけしたり、臀部を強くもむなどし、もって、社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮していることに乗じて、わいせつな行為をしたものである。
告訴事実文例 不同意性交等罪
不同意性交等罪とは?:定義、成立条件、そして刑法改正後の変化
不同意性交等罪は、被害者が「同意しない意思を形成し、表明し、またはその意思を全うすることが困難な状態」にさせられ、その状態を利用して性交等行為が行われると成立します。従来の「強制性交等罪」や「強姦罪」に相当し、2023年の刑法改正により、罪名が変更されました。この記事では、不同意性交等罪の定義や成立条件、そして刑法改正の影響について詳しく解説します。
不同意性交等罪の定義と成立条件
不同意性交等罪が成立するためには、以下の条件が必要です。
- 被害者が同意しない意思を形成できない状態にあること
- その状態を利用して性交等行為が行われること
具体的には、以下の手段を用いて被害者が「抵抗できない、または『嫌だ』と言えない状態」に追い込まれることが該当します。
不同意性交等罪の具体的な手段
- 暴行または脅迫を加える
- 心身の障害を利用する
- 過度のアルコールや薬物を与え、抵抗できない状態にする
- 睡眠や昏倒など、意識がもうろうとしている状態を利用する
- 同意する時間を与えない(意思表明をする時間を与えない)
- 恐怖や驚愕などで抵抗できない状態にする
- 過去の暴行や虐待による無力感を利用する
- 経済的または社会的地位に基づく不利益への不安感を利用する
性交等の定義
本罪における性交等とは、以下の行為を指します。
- 膣に陰茎、指、または物を挿入する行為
- 肛門に陰茎、指、または物を挿入する行為
- 口に陰茎を挿入する行為
これらの行為が行われることにより、不同意性交等罪が成立します。
刑法改正による変更点
令和5年に行われた刑法改正により、従来の「強制性交等罪」は「不同意性交等罪」に改められました。これにより、性犯罪に関する法律がより詳細に定義され、被害者を守るための措置が強化されています。
暴行脅迫による不同意性交等罪の告訴事実の記載例です。
告訴事実
刑法第177条第1項第1号 不同意性交等
被告訴人は、令和6年7月6日午後8時0分頃、埼玉県吉川市西町5丁目5番3号吉川マンション403号室被告訴人居室内において、告訴人に対し、右手拳で告訴人の左側頭部を1発殴打し、「やらせないと殺して埋めるぞ。」などと言って脅迫して、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ、告訴人と性交をしたものである。
心身障害の場合の告訴事実記載例です。
告訴事実
刑法第177条第1項第2号 不同意性交等
被告訴人は、令和5年4月3日午後4時10分頃、東京都豊島区池袋4丁目5番6号障害者支援施設「かがやき」2階リハビリセンター内において、両腕と両足に障害があって自由に動かすことができない告訴人に対し、それらの障害により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にあることに乗じて、告訴人と性交をしたものである。
酒を飲ませた犯行の告訴事実記載例です。
告訴事実
刑法第177条第1項第3号 不同意性交等
被告訴人は、令和6年3月5日午後10時0分頃、神奈川県相模原市中央区中央1丁目3番5号所在のカラオケまねき犬相模原店内において、長時間にわたって多量のレモンサワーなどを飲酒させた告訴人に対し、告訴人がアルコールの影響により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にあることに乗じて、告訴人と性交をしたものである。
睡眠その他意識が明瞭でない場合の告訴事実記載例です。
告訴事実
刑法第177条第1項4号 不同意性交等
被告訴人は、令和6年3月5日午後11時0分頃、東京都豊島区池袋4丁目5番6号池袋西マンション102号室告訴人方居室において、睡眠薬により熟睡していた告訴人に対し、睡眠により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にあることに乗じて、告訴人と性交をしたものである。
いとまがない場合の告訴事実記載例です。
告訴事実
刑法第177条第1項第5号 不同意性交等
被告訴人は、令和6年9月30日午前7時0分頃、東京都渋谷区神南4丁目4番5号渋谷道玄坂東ビル2階所在のカラオケまねき犬店内において、告訴人に対し、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うするいとまがないことに乗じて、告訴人の背後から抱きつき、告訴人と性交をしたものである。
恐怖、驚愕させた場合の告訴事実記載例です。
告訴事実
刑法第177条第1項第6号 不同意性交等
被告訴人は、令和6年5月7日午後5時0分頃、東京都豊島区池袋4丁目5番6号池袋西ビル3階所在の足もみ屋池袋店内において、足もみの施術を受けていた告訴人に対し、いきなり下着を脱がせて陰部をもてあそび、もって、予想と異なる事態に直面させて恐怖若しくは驚愕させ、告訴人と性交をしたものである。
虐待に起因する心理的反応を利用した場合の告訴事実記載例です。
告訴事実
刑法第177条第1項第7号 不同意性交等
被告訴人は、令和6年5月7日午後5時0分頃、東京都豊島区池袋4丁目5番6号池袋西マンション302号室告訴人方において、その養女である告訴人に対し、かねてから、殴る蹴るの暴行を加え、強く脅していたため、被告訴人に恐怖心を抱いており、抵抗しても無意味と考える心理状態であることに乗じて、告訴人と性交をしたものである。
経済的、社会的地位利用の告訴事実記載例です。
告訴事実
刑法第177条第1項第8号 不同意性交等
被告訴人は、株式会社令和商事の名誉会長の役職にあったものであるが、令和6年5月7日午後5時0分頃、東京都豊島区池袋4丁目5番6号池袋西マンション302号室告訴人方居室において、同社社員である告訴人に対し、逆らえば被告訴人の擁護を受けられず同社を解雇等されないかと憂慮していることに乗じて、告訴人と性交をし、もって、社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮していることに乗じて性交をしたものである。
告訴事実文例 殺人罪
殺人罪の告訴事実に関しては、厳しい罰則が科せられます。罰則としては、死刑、無期懲役、または5年以上の懲役が含まれます。さらに、未遂や予備も処罰対象となります。
また、過失によって死亡させた場合は、刑法第210条に基づく過失致死罪として処罰されます。この場合、罰金は最高50万円であり、殺人罪に比べてかなり軽い罰則となっています。
2010年の刑法改正により、殺人事件の公訴時効が撤廃されました。これにより、2010年以降の殺人事件については、公訴時効が存在せず、永遠に逮捕、送致、起訴が可能となりました。
その後、警察内部で「殺人事件の証拠品を永遠に保管する必要があるのか」という議論が起きましたが、80年保管という結論に達しました。この期間は、「80年経てば犯人は生きていないだろう」という理由によるものです(警視庁の方針であり、他の都道府県警の方針は異なる可能性があります)。
包丁を使った殺人事件の告訴事実記載例です。
告訴事実
刑法第199条 殺人
被告訴人は、東京都品川区大井4丁目3番4号大井荘4号室に単身居住していたところ、顔見知りであった山田五郎(当時23歳)が同室に居座って同居するようになったが、家賃や光熱費を一切払わない上、被告訴人に対して命令口調で話すようになったことから憤怒の念を抱き、同人を殺害しようと決意し、令和6年5月7日午後8時0分頃、同室内において、被告訴人所有の刃体の長さ約19センチメートルの出刃包丁1丁を寝ていた前記山田の頸部及び胸部に合計10回にわたり突き刺すなどし、よって、その頃、同所において、同人を心臓等刺創に基づく失血により死亡させて殺害したものである。
ナイフを準備しての殺人予備
告訴事実
刑法第201条
被告訴人は、令和5年10月まで、告訴人(当時28歳)と交際していた者であるが、その頃、告訴人が別れを告げて連絡が取れなくなったことを恨み、告訴人を殺害しようと決意し、令和6年2月5日午後8時40分ころ、東京都杉並区杉並本町2丁目3番5号セブンイレブン○○店前路上において、告訴人を刺し殺す目的で、サバイバルナイフ1本を所持して、告訴人の帰宅を待ち伏せ、もって、殺人の予備をしたものである。
告訴事実文例 公務執行妨害罪
公務執行妨害罪は、公務員(みなし公務員を含む)が職務を遂行している際に、暴行や脅迫を加えることによって成立する犯罪です。この罪の本質は「公務員」ではなく、**「公務」**を守ることにあります。
公務の定義と公務執行妨害罪の成立条件
「公務」とは広義に捉えられ、具体的な行動が求められるわけではありません。たとえば、窓口業務において公務員が何もせずにただ立って待機している場合でも、それは**「公務執行中」**と見なされます。この場合、暴行が加えられると、公務執行妨害罪が成立します。
私服刑事の場合と公務執行妨害罪
もし私服の刑事が勤務中であることを知らずに暴行を加えた場合、公務執行妨害罪の故意が認められないため、本罪は成立しません。その場合、単純暴行罪が成立します。
暴行と脅迫の関係
公務執行妨害罪を犯す際に行われた暴行や脅迫は、あくまで本罪の手段としての行為となり、これらは別個に罪として成立しません。
都営バス運転手に対する公務執行妨害の記載例です。
告訴事実
刑法第95条第1項 公務執行妨害
被告訴人は、令和6年6月7日午後1時0分頃、東京都新宿区新宿4丁目5番先新宿通りを走行中の都営バス(第34系統新宿駅発中野行き第12号車)車内において、被告訴人の運転が下手だと因縁をつけ、右手拳で告訴人の左側頭部を2回殴る暴行を加え、もって告訴人の職務の執行を妨害したものである。
告訴事実文例 放火罪
放火罪は、火災を引き起こす行為に関連する罪であり、刑法第108条から第118条までの11条にわたる規定が存在します。これには現住建築物等放火罪、非現住建造物等放火罪、建造物等以外放火罪、そして失火罪などが含まれます。
放火は「公共危険罪」の一つとして分類され、火が勢いを増すと周囲に大きな危険をもたらします。火災が広がることで多数の建物を焼損する恐れがあり、そのため、放火罪の罰則は非常に厳しく設定されています。特に、現住建造物等放火罪の場合、罰則は死刑、無期懲役、または5年以上の懲役となり、殺人罪と同様の重い刑罰が課せられることになります。
放火罪の種類と罰則の詳細
失火罪 - 過失による火災発生についての規定で、刑罰は軽度である場合が多いです。
現住建築物等放火罪 - 最も重い罰則が適用され、死刑や無期懲役が科せられることがあります。
非現住建造物等放火罪 - 刑罰は軽減される場合がありますが、依然として重大な犯罪として扱われます。
建造物等以外放火罪 - 車両やその他の物品への放火について規定されています。
現住建造物等放火罪の告訴事実記載例です。
告訴事実
刑法第108条 現住建造物等放火
被告訴人は、令和6年3月4日午後10時10分頃、東京都文京区湯島西1丁目2番4号被告訴人方前路上において、告訴人から被告訴人宅内のテレビの音量について注意を受けたことに憤慨し、告訴人方住居に放火しようと企て、同日午後11時0分頃、同区湯島西1丁目2番5号告訴人方住居玄関ドア付近に灯油をまいた上、ライターで点火して放火し、その火を同住居全体に燃え移らせ、よって、現に告訴人らが住居に使用している木造瓦葺家屋1棟(床面積合計約105平方メートル)を全焼させて、これを焼損したものである。
建造物等以外放火罪の告訴事実記載例です。
告訴事実
刑法第110条第1項
被告訴人は、令和6年3月4日午後6時0分頃、東京都文京区湯島東1丁目4番5号セブンマート湯島店において、つけ払いの商品購入を断れたことに憤慨し、同店が配達用に使用している軽自動車を焼損しようと決意し、同日午後6時30分頃、同店から約2メートル離れた場所に駐車していた同店所有に係る軽自動車(スズキ、エブリイ、練馬40は1234、時価30万円相当)の運転席窓ガラス付近に灯油をかけた上、ライターで点火して同車に放火し、よって、同車全体を炎上させてこれを焼損させ、そのまま放置すれば、同店及びこれに隣接した建造物に延焼するおそれのある危険な状態を発生させ、もって公共の危険を生じさせたものである。
建造物等失火罪の告訴事実記載例です。
告訴事実
刑法第116条第1項 建造物等失火
被告訴人は、令和6年3月4日午後6時30分頃、東京都文京区湯島東3丁目4番5号所在のホテル湯島107号室内において、喫煙した後は吸い殻の火を確実に消した上で灰皿等に捨てるなど失火の危険のないように処置すべき注意義務があるのにこれを怠り、吸い終わったたばこの火を消さずにそのまま同室内のゴミ入れに投棄し、同室を出て外出した過失により、同日午後7時0分頃、同たばこの火から同室内に燃え移らせてこれを全焼させ、もって、これを焼損したものである。
告訴事実文例 往来妨害罪
往来妨害罪は、陸路、水路、橋を損壊または閉塞することで、交通の妨害を引き起こすと成立します。この法律は、明治40年に刑法が成立して以降、一度も改正されておらず、そのため「往来」「陸路」「閉塞」などの古語が現在も使用されています。
現代社会において、往来妨害罪が適用される事例としては、道路に障害物を置いて車両の通行を不可能にする、もしくは通行が極めて困難になる状態を作り出すことが挙げられます。一方、紙ゴミをまき散らす程度では、車両の通行にほとんど支障をきたさないため、往来妨害罪は成立しません。さらに、本罪には未遂処罰規定は存在しません。
なお、蛇足ですが、車両を誘導する際に使用される「オーライ」という言葉は、英語の「all right」が訛ったものであり、本条の「往来」には関連しません。
告訴事実
刑法第124条 往来妨害
被告訴人は、令和6年4月5日午後2時30分頃、埼玉県草加市草加町1丁目3番4号先幅員6メートルのアスファルト舗装道路上において、ドラム缶6個を横倒しにして放置し、車両等の通行を困難とさせ、もって、陸路を閉塞して往来の妨害を生じさせたものである。
告訴事実文例 電子計算機損壊等業務妨害罪
電子計算機損壊等業務妨害罪は、業務に使用するコンピュータ(パソコン)そのものを物理的に破壊する行為、その内部に記録された電磁的記録を損壊(消去)する行為、何らかの方法により正常に動作しなくさせる行為によって業務を妨害することで成立します。3番目の態様は、コンピュータウイルスを想定したものになります。
罰条は5年以下の懲役又は100万円以下の罰金であり、器物損壊罪(3年以下の懲役又は30万円以下の罰金)と比べると重くなっています。
人の直接操作によってデータを消去した場合の告訴事実記載例です。
告訴事実
刑法第234条の2 電子計算機損壊等業務妨害
被告訴人は、栃木県小山市生方2番45号所在の株式会社日本SEO(告訴人)に勤務し、同社開発部員として、集客ソフト等のプログラム開発に従事していたものであるが、上司から勤務態度のことで叱責されたことを逆恨みし、同社の業務を妨害しようと企て、令和6年9月20日午後9時0分頃、同部事務室内にあった電子計算機であるパーソナル・コンピュータ(ICM製、型式RR-125)を操作し、同コンピュータ内部のハードディスクに記録された開発部フォルダのデータを消去して復元できない措置を取り、もって、同社の業務に使用する電子計算機の用に供する電磁的記録を損壊し、同社の開発業務を妨害したものである。
コンピュータウイルスによる業務妨害の告訴事実記載例です。
告訴事実
刑法第234条の2 電子計算機損壊等業務妨害
被告訴人は、インターネット上のサーバーに侵入して、不正プログラムをインターネット上に拡散させ、多数のサーバーの業務を妨害しようと企て、令和6年5月3日午後10時0分頃、東京都三鷹市内に設置されたパーソナル・コンピュータから、BBB株式会社(告訴人)が東京都品川区大井1丁目5番6号に設置した同社の業務に使用する電子計算機であるサーバー・コンピューターに対し、電気通信回線等を介して、その作動障害を起こさせる不正な指令を含む上記不正プログラムを送信して、同社のデータベース提供サービスを著しく停滞させてその業務に支障を生じさせ、もって、人の業務に使用する電子計算機に不正な指令を与えてその使用目的に沿った動作をさせないとともに、使用目的に沿わない動作をさせて人の業務を妨害したものである。
告訴事実文例 危険運転致死傷罪
アルコールの影響で正常運転できない状態の運転
告訴事実
被告訴人は、令和6年3月4日午後2時0分頃、栃木県鹿沼市鹿沼町1丁目3番付近道路において、運転開始前に飲んだウイスキーの影響により、前方注視及び運転操作が困難となり、意識朦朧状態で軽自動車を時速70キロメートルで走行させ、もって、アルコールの影響により正常な運転が困難な状態で同車を走行させたことにより、同車を歩道上に進行させ、同歩道上を歩いていた中田喜子(当時65歳)を跳ね飛ばし、よって同人に加療約4か月を要する両足骨折等の傷害を負わせたものである。
高速走行運転
告訴事実
被告訴人は、令和6年5月4日午前1時50分頃、東京都品川区勝島5丁目30番先の最高速度が時速50キロメートルと指定されている道路において、その進行を制御することが困難な時速約170キロメートルの高速度で普通乗用自動車を走行させたことにより、同車を直進させることができず、暴走させて道路を逸脱し、同区勝島5丁目35番所在の告訴人方に激突させ、同宅内にいた告訴人に加療約3か月を要する両腕骨折等の傷害を負わせたものである。
割り込み運転
告訴事実
被告訴人は、令和6年3月30日午後4時0分頃、東京都足立区足立1丁目5番先道路上において、告訴人車両の走行を妨害する目的で、重大な交通の危険が生じることとなる時速約60キロメートルで走行していた告訴人車両の直前に車線変更した上で急減速して急停止することにより、回避しようと右にハンドル操作した告訴人車両を中央分離帯に衝突させ、告訴人に加療約4か月を要する両足複雑骨折等の傷害を負わせたものである。
告訴事実文例 証人等威迫罪
告訴事実
刑法第105条の2 証人等威迫
被告訴人は、友人の坂本真一が、告訴人を殴ってケガを負わせたとして警視庁深川警察署に逮捕、勾留されたことを知り、令和6年5月7日午後5時0分頃、東京都江東区深川1丁目88番55号所在の告訴人方を訪ね、示談を求めるため同人に面会を求めたが、インターフォン越しに告訴人から面会を拒まれるや、同方玄関前路上において、同人に対し「甲田、出てこいよ。出てこないとこのまま餓死して死ぬまでここ動かないからな。」などと、大声で約40分間にわたり、執拗に面会を求めて不安困惑の念を抱かせ、もって前記坂本に対する傷害被疑事件の捜査に必要な知識を有する告訴人に対し、同事件について、正当な理由がないのに面会を強請したものである。
強談威迫
告訴事実
刑法第105条の2 証人等威迫
被告訴人は、友人の坂本真一が、告訴人を殴ってケガを負わせたとして警視庁深川警察署に逮捕、勾留されたことを知り、令和6年5月7日午後5時0分頃、東京都江東区深川1丁目88番55号所在の告訴人方を訪ね、同方前路上に出た告訴人に対し、「まさか坂本を懲役行かせるわけないよな。そうなったら俺はここで日本刀で腹切るからな。それでもいいのか。早くこの示談書に名前書けや。」などと申し向けて不安困惑の念を抱かせ、もって前記坂本に対する傷害被疑事件の捜査に必要な知識を有する告訴人に対し、同事件について、正当な理由がないのに強談威迫したものである。
告訴事実文例 通貨偽造罪
通貨偽造・行使罪は重い罪です。両方ともに「無期又は3年以上の懲役」となっており、「5年以上の有期懲役」である強盗罪よりも無期刑がある分重くなっています。偽造、使用した枚数にもよりますが、前科・前歴がなくても一発で実刑となる可能性があります。
市販のスキャナーやプリンターでは、一見してすぐに偽造とわかるものしか作れません。暮れ暮れも安易な気持ちでお札をコピーしてはいけません。
通貨偽造通貨偽造、同行使
告訴事実
刑法第148条第1項、第2項 通貨偽造、同行使
被告訴人は、令和6年5月3日頃、東京都内又はその周辺で、行使の目的で、何らかの方法によって、外観上通用する金額一万円の日本銀行券1枚を偽造した上、同日午後3時25分頃、東京都国立市国立5丁目1番3号所在のコンビニ「マーク国立店」(告訴人)において、タバコ1箱を購入する際に、同店店員山岡哲夫に対し、同偽造した金額一万円の日本銀行券1枚を手渡して行使したものである。
通貨変造、同行使
告訴事実
刑法第148条第1項、第2項
被告訴人は、令和6年4月3日頃、東京都内又はその周辺において、行使の目的で、真正な日本銀行券である一万円札を縦に細く裁断した上でつなぎ合わせてかさ増しした金額一万円の日本銀行券を変造し、同日午後5時0分頃、東京都杉並区杉並本町2丁目3番5号所在の告訴人が経営する無人餃子販売店「気楽」店内に設置された餃子の自動販売機に同変造一万円札を挿入して行使したものである。
偽造通貨収得後知情行使
告訴事実
刑法第152条 偽造通貨取得後知情行使
被告訴人は、いずれかにおいて、何者かから手渡された金額千円の日本銀行券1枚が、その後に偽造であることに気付いたが、これを警察等に届け出ることなく、令和6年5月7日午後7時0分頃、東京都杉並区杉並本町2丁目3番5号所在の告訴人が経営する居酒屋「たまき」において、告訴人に対し、飲食代金として同偽造にかかる千円札を真正なもののように装って手渡してもって行使したものである。
告訴事実文例 略取・誘拐罪
告訴事実
刑法第224条 未成年者略取
被告訴人は、令和6年5月7日午後5時0分頃、山梨県甲府市本町2丁目5番5号所在の「スーパー甲府屋」内において、告訴人が目を離したすきに、告訴人の長女磯田麻耶(2歳)を抱きかかえて店外に出て、被告訴人の車両に乗せて何処かに連れ去り、その頃から同長女が発見された同日午後8時0分頃までの間、同長女を自己の支配下に置き、もって未成年者である同長女を略取したものである。
未成年者誘拐
告訴事実
刑法第224条 未成年者誘拐
被告訴人は、令和6年5月7日午後5時0分頃、山梨県甲府市本町2丁目5番5号甲府市立ひまわり公園内において、告訴人の長女磯田麻耶(6歳)に対し、何らかの嘘を言って欺罔し、同長女を車両に乗せて連れ去り、もって未成年者である同長女を誘拐したものである。
身代金目的誘拐
告訴事実
刑法第225条の2第1項 身代金目的誘拐
被告訴人は、告訴人の長男近藤琢磨(5歳)を誘拐し、その安否を憂慮する告訴人の憂慮に乗じて金員を交付させようと企て、令和6年5月7日午後5時0分頃、山梨県甲府市本町2丁目5番5号先路上で遊んでいた同長男に何らかの嘘を言って欺罔し、同長男を車両に乗せて連れ去り、もって告訴人の憂慮に乗じ告訴人から金員を交付させる目的で同長男を誘拐したものである。
告訴事実文例 贈収賄罪
私は警視庁捜査第二課で聴訴室に勤務する前に、短期間ではありますが、贈収賄(汚職)事件を担当する部署に所属していました。
贈収賄事件は、密室で行われる犯罪であり、かつ被害者不在(実質的には国民全員が被害者とも言えます)が特徴です。そのため、犯罪を認知することが極めて困難です。
当時、捜査第二課では、年間1~2件の贈収賄事件を検挙していましたが、そのほとんどが「タレ込み(内部告発)」によるものでした。
贈収賄事件のタレ込みの実態とは?
贈収賄事件のタレ込みの多くは、贈賄側の業者によるものです。業者は、公務員に現金などを渡して見返りを期待していたにもかかわらず、公務員が約束を果たさなかった場合、「仕返し」として警察に通報するのです。
しかし、業者側も自身が逮捕されるリスクを避けるために、巧妙なタイミングでタレ込みを行います。
- 贈賄罪の公訴時効は3年、収賄罪の公訴時効は5年
- 業者は、賄賂を渡してから3年以上経過するのを待ち、時効成立後にタレ込みをする
こうなると、**贈賄側の業者は捜査協力者(参考人)**となり、公務員だけが収賄容疑で逮捕されるのです。
収賄事件で逮捕される公務員の末路
収賄容疑で起訴・有罪となると、公務員は懲戒解雇処分を受け、退職金は支給されません。
例えば、数十万円~数百万円の賄賂を受け取った結果、将来的に受け取れるはずだった退職金(約2000万円)を失うことになります。
単純収賄
告発事実
刑法第197条第1項前段 単純収賄
被告発人山元寛太は、東京都足立区都市建設部長として勤務し、同区における公共施設の建設や補修工事等の発注について業者の選定や決定についての事務を行っていたものであるが、令和6年5月7日頃、東京都荒川区荒川5丁目4番3号所在の「割烹富士」店内において、株式会社山元建設代表取締役鈴木義男から、これまで同社が足立区内の公共施設の建設請負受注に際し、被告発人に便宜を図ってもらったことへの謝礼の意味と今後も同様の便宜を依頼する意味で供与されるものであることを知った上で、現金200万円の供与を受け、もって自己の職務に関して賄賂を収受したものである。
単純贈賄
告発事実
刑法第198条 贈賄
被告発人吉野武雄は、造園工事を営む株式会社東洋造園の営業部長として同社の造園工事受注等の業務に従事しているものであるが、令和6年5月8日頃、東京都足立区足立1丁目55番55号所在の「小料理はな」において、同区立公園造成工事発注等の業務に就いている東京都足立区公園緑地課長磯部春男に対し、同人が令和3年に同区立舎人公園造成工事発注の際、同社に便宜を図ってくれた謝礼の意味と今後も同様の便宜を図ってもらう趣旨で現金300万円を供与し、もって同磯部の職務に関して賄賂を供与したものである。
受託収賄
告発事実
刑法第197条第1項前段 受託収賄
被告発人は、令和3年9月15日から警視庁足立警察署に勤務し、同署刑事組織犯罪対策課知能犯捜査係長として、犯罪捜査等を担当していたものであるが、令和4年5月8日、東京都足立区千住1丁目3番4号所在の日本料理店「出雲亭」において、探偵業を営む近藤春男から別表記載の携帯電話番号20件の使用者照会とその回答書写しの提供をしてほしい旨の請託を受け、その報酬の趣旨のもとに供与されることを知った上で、現金50万円の供与を受け、もってその業務に関して請託を受けて賄賂を収受したものである。
告訴事実文例 談合罪
指名競争入札の談合
告発事実
刑法第96条の6第2項 談合
被告発人甲は、建築業を営む株式会社今井建設の代表取締役、被告訴人乙は、建築業を営む近藤建設株式会社の代表取締役であるが、令和6年5月7日、東京都荒川区荒川1丁目1番3号荒川区役所において、同区が予算額1億円、予定価格9000万円で同区立北小学校のプール改築工事施工のため、前記今井建設、前記近藤建設、株式会社朝日建設、株式会社明治建設を同工事の入札参加業者として指名し、同工事の指名競争入札を実施した際、
第1 被告発人甲は、同工事の入札を表面上は公正に競争入札するように装い、真実は入札業者間で不正に価格を協定した上、今井建設に落札させようと企て、同日、同区役所内において、被告発人乙に対して「プール工事の入札は今回はうちに取らせてくれ。うちは1億500で入札するから近藤さんのところは1億1000で入札してほしい。お礼は300万出します。」などと申し向け、その了承を得、乙をして1億1000万円で入札するとの協定をし、もって入札の公正な価格を害する目的で談合し、
第2 被告発人乙は、同日、同区役所内において、被告発人甲から第1記載の申し出を受けてこれを了承し、自社は1億1000万円で入札するとの協定をし、もって入札の公正な価格を害し、かつ、不正な利益を得る目的で談合し
たものである。
抵当権実行談合
告発事実
刑法第96条の6第2項、同法第60条 談合
被告発人甲及び同乙らは、共謀の上、令和6年5月7日、千葉県松戸市松戸9丁目33番55号所在の千葉地方裁判所松戸支部において、同日行われた債権者山田株式会社申し立てに係る債務者今野洋平所有の同市松戸2丁目4番3号所在の宅地(210平方メートル)に対する抵当権実行の競売期日に、競落希望者吉岡遙人からの申し出により、金300万円の不正利益を得る目的で、同吉岡との間に自己の競売申し出を放棄して同吉岡に競落させることを協定し、同吉岡からその対価として300万円の供与を受け、もって不正な利益を得る目的で談合したものである。
告訴事実文例 強制執行妨害罪
動産の隠匿
告発事実
刑法第96条の2第1号 強制執行妨害
被告発人は、告発人から借りた金1000万円の弁済を期限内にしなかったため、告訴人から千葉地方裁判所に貸金返金請求の訴えを提起され、令和6年10月4日、同裁判所において、同請求が認容され、被告発人は前記金額を告発人に支払うこと、告発人は担保を供して仮執行できることの判決言い渡しがあったことから、同判決に基づく強制執行を妨害する目的で、同月19日、千葉県柏市西柏2丁目5番地被告発人方にあった自家用普通乗用自動車(メルセデスベンツ、E320、野田330せ3399、時価300万円相当)を同市本町1丁目3番4号株式会社新光モータースに移動させ、同社に保管を依頼し、情を知らない同社をしてその敷地内に収納させ、もって強制執行を免れる目的で財産を隠匿したものである。
不動産仮装譲渡
告発事実
刑法第96条の2第1号 強制執行妨害
被告発人は、告発人から借りた金1000万円の弁済を期限内にしなかったため、告訴人から近く強制執行を受けるものと察知し、これを妨害する目的で、自己が所有する千葉県柏市西柏1丁目3番5号所在の土地(210平方メートル)の所有名義を表面上芦川恵子名義に書き換えることを企て、令和6年5月9日、千葉県柏市又はその周辺において、同土地を被告発人が同芦川に売却した旨の売買証書及びこれらに伴う所有権移転登記申請の書類一式を作成し、同日、千葉県柏市本町1丁目4番5号所在の千葉県地方法務局柏出張所において、これを情を知らない同所登記官に提出してその登記を完了させ、もって強制執行を免れる目的で財産を仮装譲渡したものである。
金銭執行財産の無償譲渡
告発事実
刑法第96条の2第3号 強制執行妨害
被告発人は、株式会社アエラスから、被告発人が所有する自家用普通乗用自動車(レクサスHI-R、松戸330せ5566、時価400万円相当)に対する強制執行を申し立てることを通知されたため、強制執行を妨害する目的で、令和6年4月3日、千葉県松戸市小金1丁目3番4号被告発人方において、同人の長男である横山裕太に同車両を贈与し、もって金銭執行を受けるべき財産について無償で譲渡したものである。
告訴事実文例 封印等破棄罪
差押表示の損壊
告発事実
刑法第96条 封印等破棄
被告発人は、千葉地方裁判所執行官横山太一が、被告発人の債権者青山葉子からの委任を受け、同裁判所令和5年第12345号仮処分決定正本に基づき、令和5年8月9日、千葉県白井市神山町9丁目5番地被告発人方において、被告発人所有の大型液晶テレビ1台につき、その占有を解いてこれを同執行官の占有に移す仮処分をし、かつ、これを公示するため同テレビにその旨記載の公示書を貼付して表示中のところ、同年9月1日、同所において、同公示書をはがして廃棄し、もって公務員が施した差押さえの表示を損壊したものである。
差押表示無効
告発事実
刑法第96条 封印等破棄
被告発人は、千葉地方裁判所執行官横山太一が、被告発人の債権者青山葉子からの委任を受け、同裁判所令和5年第12345号有体動産仮差押決定正本に基づき、令和5年8月9日、千葉県白井市神山町9丁目5番地被告発人方において、被告発人所有のトラクター1台につき、仮差押をし、これに差押物であることを示した公示書を貼付して同仮差押の表示をしてところ、同年9月1日、同所において、同物件を株式会社朝日農機具に売却して搬送させ、もって同執行官の施した差押の表示を無効にしたものである。
告訴事実文例 犯人蔵匿等罪
蔵匿・隠避の罪 とは、「罰金以上の刑に当たる罪を犯した者」または「拘禁中に逃走した者」を、その事実を知りながら 逮捕を免れさせる目的 で かくまう ことにより成立する犯罪です。
蔵匿とは?
「蔵匿(ぞうとく)」とは、犯罪者を捜査機関から隠すために、安全な場所を提供し、かくまう行為 を指します。
隠避とは?
「隠避(いんぴ)」とは、蔵匿以外の手段を用いて、犯罪者の発見や逮捕を妨げる一切の行為 を指します。具体的には、虚偽の情報を提供する、身分を偽装させる、逃亡を助ける行為などが該当します。
犯人蔵匿
告発事実
刑法第103条 犯人蔵匿
被告発人は、秋山正三が、さきに栃木県栃木市本町3丁目55番地コンビニエンスストア「リッキー栃木店」で発生した強盗事件の犯人として逮捕状が発せられ、栃木県警察により全国に指名手配されている者であることを知りながら、その逮捕を免れさせる目的で、令和6年5月7日午後5時0分頃から同月11日午後6時0分頃までの間、同人を埼玉県さいたま市中央区埼玉2丁目8番8号被告訴人方に宿泊させ、もって犯人を蔵匿したものである。
犯人隠避
告発事実
刑法第103号 犯人隠避
被告発人は、中野裕也が埼玉県内で強盗の罪を犯した者であることを知りながら、その逮捕を免れさせる目的で、令和6年5月7日午後5時0分頃から同月8日午前10時0分頃までの間、埼玉県越谷市西越谷町5丁目34番先路上から神奈川県相模原市中央区内まで、同中野を自己所有の自家用普通乗用自動車(トヨタ、カローラ、足立550さ3344)に乗車させて輸送し、もって同中野を隠避させたものである。
交通違反の身代わり申告
告発事実
刑法第103条 犯人隠避
被告発人は、秋野俊也が運転する自家用普通乗用自動車の助手席に同乗していたところ、令和6年5月7日午後5時0分頃、福島県福島市西町9丁目3番先路上において、同秋野が赤色信号無視の交通違反をし、罰金以上の刑に当たる道路交通法違反の罪を犯した者であることを知りながら、その処罰を免れさせる目的で、同日午後5時10分頃、同市北町1丁目2番先路上において、同違反を現認して追跡してきた福島県いわき警察署司法巡査山元大輔に対し、前記道路交通法違反事件の犯人は自己である旨虚偽の事実を申し立て、もって前記秋野を隠避させたものである。
○警察への告訴状・告発状の作成は元警視庁刑事の行政書士にお任せください。こちら
淺利 大輔
あさり だいすけ
行政書士淺利法務事務所 代表
私は、2024年6月までの32年間、警視庁警察官として勤務し、そのうち25年間を刑事として告訴・告発事件の捜査に携わってきました。
中でも、告訴・告発を中心に扱う知能犯捜査の経験が最も長く、数多くの事件で、実際に告訴状・告発状を受理し、捜査を進めてきました。
刑事部捜査第二課在籍時には、警視庁本庁舎(霞が関)の聴訴室において、告訴状を持参される弁護士の先生方と日々向き合い、
「事件として受理すべきか」「問題点は何か」
その現場の判断基準を、実務の中で徹底的に学び、鍛えられてきました。
だからこそ私は、警察が何を重視し、どこを見て告訴状を判断するのかを、初期段階から具体的に想定しながら作成することができます。
告訴・告発事件については、刑事の中でも専門性を持って取り組んできた分野であり、強い自負があります。
現在は、千葉県犯罪被害者支援センター会員として、
「費用面で弁護士への依頼をためらっている方」
「警察に何度も相談したが、前に進めずにいる方」
そうした犯罪被害者の力になりたいとの思いから、行政書士として告訴状・告発状の作成支援を行っています。
実際に、
「告訴、受理されました。淺利さんにお願いして本当に良かったです」
というご連絡をいただく瞬間が、何よりの喜びであり、この仕事を選んで良かったと心から思う瞬間です。
警察の内側を知る行政書士として、
“受理される可能性を高める告訴状・告発状”を、本気でサポートします。


