殴られてケガをしたため店を休業したから傷害罪と業務妨害罪で告訴できるか?【元刑事が解説】
ラーメン店を経営するAさんは、居酒屋で酒を飲んでいたところ、他の客に絡まれ、殴られてケガをし、そのせいでラーメン店を1週間休業せざる得ませんでした。このため、犯人に対して、ケガの治療費と慰謝料、ラーメン店の収入1週間分の休業補償を求めて裁判所に提訴するとともに、処罰を求めて傷害罪と業務妨害罪で警察に告訴しようと思いました。この告訴は受理されるでしょうか?
正解は「不受理」です。民事裁判上、Aさんが殴られてケガをしたことと、それによりラーメン店を休業したことは因果関係が明らかですので、請求は認められるでしょう。しかし、刑事事件として考えると、犯人が居酒屋においてAさんに暴行を加えたことは、あくまでもAさんの身体に向けた有形力の行使であり、店舗またはその営業に向けたものではありません。また、犯人自体、Aさんがラーメン店を経営していることは露も知らず、ラーメン店の営業を妨害してやろうという故意は全く認められません。よって、Aさんが告訴できるのは傷害罪1罪のみということになります。
淺利 大輔
あさり だいすけ
行政書士淺利法務事務所 代表
私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。
