告訴状の書き方 その2【元警視庁刑事が解説】

 告訴状の書き方 その1はこちら

 下は告訴状を初めて作る方がやりがちな失敗例の告訴状を挙げてみます。

解説
注1:捜査書類は元号を使いますので、年は西暦ではなく「令和」「平成」で記載してください。作成日だけではなく、本文中の全ての事項もです。また、月と日が既に記載されていますが、告訴状はほとんどの場合、持ち込んだその日には受理されず、一旦コピーの預かりになることが多いので、空欄にしておきます。
注2:住所や所在地などは、略さず、全て都道府県から記載してください。
注3:「アルバイト」や「パート」は雇用形態であって職業名ではありません。「コンビニ店員」「スーパー店員」などのように記載してください。
注4:読みにくいお名前の場合は、ふりがなをふってください。
注5:「告訴事実」欄は、告訴状の中でも一番重要な項目です。ここには「実際に起きたこと」だけを記載します。したがってこのように、相手と知り合った経緯であるとか、事件に至るまでの状況などは一切記載してはいけません。
注6:お金を騙し取られたり、暴行を受けたなどの、犯罪の実行行為があった部分については、必ず「日時」と「場所」の記載が必要です。
注7:注6同様に「日時」と「場所」の記載が必要です。
注8:犯罪が終わった後の状況についてもここには一切記載不要です。
注9:重ね重ね、告訴事実欄には「実際に起きたこと」だけを記載します。このように犯罪を受けたときの感情や、相手の悪質性などを記載してはいけません。そうした記載は「告訴の事情」や「陳述書」に記載します。
注10:事件の構成要件や犯罪となり得る条件などの記載は基本的に不要です。特殊な犯行態様で事件として成立するかが微妙な犯行形態であれば、判例や裁判例を引用します。
注11:仮に証拠が無かったとしても「無し」と書いてはいけません。警察側に不受理の理由をわざわざ提示しているようなものです。文書や画像などが無くても、相手とのメールや共通の知人の証言、犯行現場の地図など、何かしらはありますので、記載しましょう。
注12:「取り消し」や「示談」について言及する必要は全くありません。むしろこうした記載は、処罰意思が確固たるものではないという印象を警察に与えることになります。また、告訴状は捜査機関に提出するものであり、被告訴人に向けたものではありません。

※※※※※そして、この告訴状には「犯人に対する処罰意思」がどこにも書いてありません。タイトルに「告訴状」とあっても、これが書いてなければ告訴状としての意味を成しません。告訴状のどこかに「被告訴人の厳重な処罰を希望します」などの記載が絶対に必要です。

下に、先ほどの告訴状を私ならこう作るという例を挙げましたので参考にしてください。


淺利 大輔

あさり だいすけ

行政書士淺利法務事務所 代表

私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。

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