告訴・告発の取消
刑事訴訟法第237条第1項には「告訴は、公訴の提起があるまでこれを取り消すことができる。」とありますが、これは申告罪(名誉毀損、侮辱、過失傷害、器物損壊など)についてとするのが通説です。したがって、非親告罪の告訴は起訴後でも取消ができますし、さらにその後に再告訴することも法的には可能です。
同条第2項には、「告訴の取消しをした者は、更に告訴をすることができない。」とあります。これは前記同様、申告罪についてのみとされています。よって、申告罪の取消は、起訴前にしかできず一度取り消したら二度と告訴できないことになります。ここで気をつけなくてはならないのは、示談との関係です。被告訴人との間で「被告訴人○○は示談金として○○○万円を告訴人○○に支払い、告訴人は本件告訴を取り消す。」となっていた場合、先に告訴を取消し、その後被告訴人が示談金を払わないとなると、再告訴ができないために、秘告訴人はお金を払わない上に、起訴されないので何らの処罰も受けないことになり、完全に逃げ得になってしまいます。よって、示談で申告罪を取り消す場合には、示談金の支払いを確認してからにすることが最重要となります。
共犯者がいる場合、告訴不可分の法則により、一人に対する取消は共犯者全員に及びますので、「一人だけ処罰しないでほしい」という希望は通りません。
警視庁では、取消をなぜか「取下げ」と呼称しています。他県から来た検察官から「なんで警視庁だけ『取下げ』って言ってるの?」と聞かれたことがありますが、私にもわかりません。
告発については、特に規定がないので、いつでも取消ができて、再告発も可能となります。
取消は、法的には口頭でも可能と解されますが、実務上は告訴取消書の提出をもって行われます。代理人が取消書を作成する場合、委任状に「○○を○○罪で告訴する件」しか書いてないと検察官から指摘を受けることがあります。よって委任状には、「及び取り消す件」の記載も必要です。
淺利 大輔
行政書士淺利法務事務所 代表
私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。