告訴事実の書き方10(住居侵入罪)

 住居侵入罪が成立にするには「正当な理由なく」立ち入ったことが必要です。これは裏を返せば「不法な目的があった」ことになりますので、目的が判明している場合には告訴事実にもその旨を記載します。よく問題になるのが借金取りが来て帰らないというのがありますが、家の中まで同意なく入れば住居侵入罪が成立します。

 マンションなどで、個人の居室内にまで入れば住居侵入ですが、エントランスや通路等共用部分の場合は「邸宅侵入」と罪名が変わりますので注意してください。なお、罪名が変わるだけであり、条文や罰条は同じです。建造物侵入も同様です。人の居住のための建物か、それ以外かという違いだけです。

 また、住居侵入罪は未遂の処罰規定がありますので、ドアや窓を壊して入ろうとしたが、失敗して入れなかった場合は住居侵入未遂罪になります。空き巣犯人が泥棒をしようとして侵入に失敗した場合は、窃盗未遂罪ではなく本罪が適用になります。

一戸建て住宅の住居侵入

オートロック式マンションの邸宅侵入

不退去の場合

解説

 不退去罪の場合、場所への侵入自体は合法であったことが前提になります。前2例のように、不正な手段で侵入すればその時点で住居侵入罪が成立しますので、そのまま居座ったとしても新たに不退去罪が成立することはありません。また、不退去罪の成立には、その場を管理する責任者的立場にある者による明白な退去の要求が必要です。アルバイト店員や一般社員などでは役不足であり、店なら店長、会社なら社長などの代表者が直接相手に要求することが大切です。

 退去しなかった時間ですが、これについて明示した裁判例が見当たりません。10分では足りないとするものがある一方で、数十秒で成立するというものまであります。事例に挙げたように退去を求めてから90分間居続ければ成立に問題はないでしょう。


淺利 大輔

あさり だいすけ

行政書士淺利法務事務所 代表

私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。

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