告訴状の罪名変更はできる?受理後の変更手続き・公訴時効・注意点を元刑事が解説

刑事事件では、**警察が受理した告訴状の罪名が、捜査の途中で変更されることがあります。**しかし、「告訴状そのものを書き換える」ことはできません。

例えば、当初は業務上横領罪として告訴状が受理されたものの、その後の捜査で被告訴人には資金の占有権や管理権が存在しなかったことが判明した場合、実際には担当者を欺いて送金させた行為であり、詐欺罪に該当すると判断されるケースがあります。

また、事案によっては業務上横領罪から背任罪へ変更されることもあります。

この記事では、告訴状の罪名変更の流れ、必要な手続き、公訴時効との関係、実務上の注意点について、元刑事の視点から詳しく解説します。


告訴状は受理後に訂正・差し替えできない

警察が告訴状を正式に受理すると、告訴状には受領印が押され、事件記録の一部となります。

そのため、受理済みの告訴状を訂正したり、新しい告訴状へ差し替えたりすることはできません。

罪名が変更された場合でも、最初に受理された告訴状はそのまま事件記録として保存され、検察庁へ送致されます。

つまり、変更されるのは告訴状そのものではなく、事件処理上の罪名なのです。


告訴状の罪名変更手続きの流れ

捜査の結果、罪名変更が必要になった場合は、通常、次のような手続きが行われます。

① 告訴状罪名変更願(届)の提出

まず、**「告訴状罪名変更願(届)」**を作成します。

この書類は、通常は警察が作成し、内容を説明したうえで告訴人に提出してもらいます。


② 告訴人調書を作り直す

すでに「業務上横領罪」で告訴人調書を作成している場合は、その内容では新しい罪名と一致しません。

そのため、

  • 詐欺罪
  • 背任罪
  • 単純横領罪

など、新しい罪名に合わせて告訴人調書を再度作成する必要があります。


③ 送致罪名変更捜査報告書を作成する

最後に警察では、

「送致罪名変更捜査報告書」

を作成します。

この報告書には、

  • なぜ罪名変更が必要になったのか
  • 捜査によって判明した事実
  • 変更後の法的評価

などが記載され、事件記録に添付して検察庁へ送致します。


告訴状の罪名変更で最も注意すべき「公訴時効」

罪名変更で最も注意しなければならないのが公訴時効です。

例えば、

  • 業務上横領罪 → 背任罪
  • 業務上横領罪 → 単純横領罪

へ変更すると、公訴時効期間が短くなります(それぞれ7年→5年)。

その結果、

罪名を変更した時点で公訴時効が完成してしまう

という事態が発生することがあります。

公訴時効が完成すれば、その犯罪については起訴できません。

そのため、警察では罪名変更による時効への影響を慎重に検討したうえで手続きを進めています。


公訴時効が完成する場合はどうなる?

もし罪名変更によって公訴時効が完成してしまう場合、実務上は非常に難しい判断を迫られます。

現実には、

当初の罪名(業務上横領罪)のまま検察庁へ送致する

という処理を行うしかありません。なぜなら、受理した告訴状を送致前に時効完成にしてしまうことは、「署長のクビが飛ぶ」と言われるくらい重大問題だからです。

しかし、これは捜査の結果として真実の罪名とは一致しないため、検察官が不起訴と判断する可能性が極めて高くなります。

このようなケースは、告訴時点での罪名選択の重要性を示す典型例といえるでしょう。


告訴状作成では罪名選択が極めて重要

告訴状では、犯罪事実だけでなく、**どの犯罪に該当するのかという法的評価(罪名の選択)**も非常に重要です。

もちろん、最終的な罪名を決定するのは警察・検察ですが、最初の告訴段階で適切な罪名を選択しておくことで、

  • 不要な罪名変更
  • 調書の作り直し
  • 公訴時効の問題
  • 不起訴リスク

などを避けられる可能性が高まります。

特に、詐欺罪・横領罪・業務上横領罪・背任罪は事実関係によって境界が難しく、専門的な判断が求められる犯罪類型です。


まとめ|告訴状の罪名変更は慎重な判断が必要

告訴状は、一度受理されると訂正や差し替えはできません。

その後の捜査で罪名変更が必要になった場合には、

  • 告訴状罪名変更願(届)
  • 告訴人調書の再作成
  • 送致罪名変更捜査報告書

などの正式な手続きを経て、検察庁へ送致されます。

また、罪名変更によって公訴時効が短縮されるケースもあるため、告訴状の作成段階から適切な罪名を検討することが極めて重要です。

元刑事の経験から言えば、告訴状の受理・その後の捜査を円滑に進めるためにも、事実関係と法律構成を十分に検討したうえで告訴状を作成することが、事件解決への第一歩といえるでしょう。

○警察への告訴状・告発状の作成は元警視庁刑事の行政書士にお任せください。こちら


淺利 大輔

あさり だいすけ

行政書士淺利法務事務所 代表

私は、2024年6月までの32年間、警視庁警察官として勤務し、そのうち25年間を刑事として告訴・告発事件の捜査に携わってきました。
中でも、告訴・告発を中心に扱う知能犯捜査の経験が最も長く、数多くの事件で、実際に告訴状・告発状を受理し、捜査を進めてきました。
刑事部捜査第二課在籍時には、警視庁本庁舎(霞が関)の聴訴室において、告訴状を持参される弁護士の先生方と日々向き合い、
「事件として受理すべきか」「問題点は何か」
その現場の判断基準を、実務の中で徹底的に学び、鍛えられてきました。
だからこそ私は、警察が何を重視し、どこを見て告訴状を判断するのかを、初期段階から具体的に想定しながら作成することができます。
告訴・告発事件については、刑事の中でも専門性を持って取り組んできた分野であり、強い自負があります。
現在は、千葉県犯罪被害者支援センター会員として、
「費用面で弁護士への依頼をためらっている方」
「警察に何度も相談したが、前に進めずにいる方」
そうした犯罪被害者の力になりたいとの思いから、行政書士として告訴状・告発状の作成支援を行っています。
実際に、
「告訴、受理されました。淺利さんにお願いして本当に良かったです」
というご連絡をいただく瞬間が、何よりの喜びであり、この仕事を選んで良かったと心から思う瞬間です。
警察の内側を知る行政書士として、
“受理される可能性を高める告訴状・告発状”を、本気でサポートします。

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