刑事事件の「検事相談」とは?告訴・告発事件で送致前に行われる重要な協議を元刑事が解説
詐欺事件、業務上横領事件、背任事件などの知能犯事件では、警察が独自の判断だけで検察庁へ事件を送致することは、実務上ほとんどありません。
特に告訴事件・告発事件では、送致前に必ず行われるのが**「検事相談」**です。
この記事では、元警視庁刑事として実際に数多くの検事相談を経験した立場から、検事相談の流れや重要性、検察官の異動による影響まで詳しく解説します。
検事相談とは?送致前に行われる重要な協議
検事相談とは、事件を担当する刑事が検察庁を訪れ、担当検察官に事件の内容や証拠関係を説明し、今後の捜査方針について協議する手続きです。
刑事は、事件概要、捜査経過、関係者相関図、事件チャート、証拠資料などを持参し、
- 強制捜査(逮捕・捜索差押え)が必要か
- 任意捜査で十分か
- 書類送致で対応できるか
- どの罪名で送致すべきか
などについて検察官の意見を求めます。
特に詐欺罪、業務上横領罪、背任罪などの知能犯事件では、検事相談は事件の方向性を決める極めて重要なプロセスです。
検事相談で「このまま送致してください」と言われることは少ない
検事相談では、検察官から
「問題ありません。このまま送致してください。」
と言われるケースは決して多くありません。
実際には、
- 追加の裏付け捜査
- 新たな証拠収集
- 関係者の事情聴取
- 被害額の立証
- 契約書や銀行資料などの追加提出
といった**追加捜査(現場では「宿題」と呼ばれることもあります。)**を指示されることが一般的です。
警察としては十分と思える証拠でも、検察官は起訴後の裁判で有罪を維持できるかという視点で事件を見ています。
そのため、警察が考える捜査水準よりも、さらに高いレベルの立証を求められることが少なくありません。
検察官の異動時期は検事相談のタイミングに大きく影響する
検事相談では、検察官の定期異動も重要なポイントになります。
一般的に3月は検察官の異動時期であるため、1月から2月頃に検事相談を行っても、
「私はもう異動しますので、後任へ申し送りしておきます。」
という対応になることがあります。
この場合、十分な検討が行われず、実質的な進展が得られないケースもあります。
さらに、実務では前年11月頃から新規事件の送致を積極的に受けなくなる検察官も存在し、事件処理が翌年度へ持ち越されることもあります。
検事が交代すると事件の評価が変わることもある
4月以降、新しい担当検察官が着任すると、改めて検事相談を実施しなければならないことがあります。
その際には、
- 事件概要の説明
- 証拠関係の確認
- 捜査方針の見直し
を一からやり直す場合もあります。
さらに、新任検察官の判断によって、
- 業務上横領罪
- 詐欺罪
- 背任罪
など適用する罪名自体が変更されることも珍しくありません。
罪名が変われば、告訴人や参考人の供述調書を取り直す必要が生じることもあり、警察・検察双方にとって大きな負担となります。
事件送致後も検察から追加捜査を指示されることがある
検事相談が終わり、逮捕や事件送致が完了した後でも安心はできません。
送致後に担当検察官が事件記録を精査した結果、
- 新たな証拠収集
- 関係者への追加事情聴取
- 証拠資料の補充
など、再び追加捜査を指示されることがあります。
このような追加捜査も現場では「宿題」と呼ばれ、知能犯事件では珍しいことではありません。
検察官は裁判で有罪判決を得られるだけの証拠が揃っているかを厳しく確認するため、送致後も捜査が続くケースは数多くあります。
告訴事件・告発事件では検事相談を前提に証拠を準備することが重要
告訴状や告発状を提出する際には、警察が検事相談で説明しやすいように、
- 事件経過を時系列で整理する
- 被害状況を明確にする
- 証拠を体系的にまとめる
- 関係者の役割を整理する
ことが非常に重要です。
証拠や事実関係が整理されていれば、警察による検事相談もスムーズになり、追加捜査の負担を減らせる可能性があります。
まとめ|検事相談は刑事事件の成否を左右する重要な手続き
詐欺事件や業務上横領事件、背任事件などの知能犯事件では、検事相談は送致前に行われる極めて重要な手続きです。
検察官は、単に事件を受理するかどうかではなく、「裁判で有罪を立証できる証拠が十分か」という視点から事件を審査します。そのため、追加捜査を求められることは珍しくありません。
また、検察官の異動時期によって事件処理が遅れたり、担当検事が交代することで罪名や捜査方針が変更されたりすることもあります。
告訴・告発事件では、検事相談を見据えて、警察や検察が理解しやすい形で証拠を整理し、完成度の高い告訴状・告発状を作成することが、事件を円滑に進める重要なポイントになります。
○警察への告訴状・告発状の作成は元警視庁刑事の行政書士にお任せください。こちら
淺利 大輔
あさり だいすけ
行政書士淺利法務事務所 代表
私は、2024年6月までの32年間、警視庁警察官として勤務し、そのうち25年間を刑事として告訴・告発事件の捜査に携わってきました。
中でも、告訴・告発を中心に扱う知能犯捜査の経験が最も長く、数多くの事件で、実際に告訴状・告発状を受理し、捜査を進めてきました。
刑事部捜査第二課在籍時には、警視庁本庁舎(霞が関)の聴訴室において、告訴状を持参される弁護士の先生方と日々向き合い、
「事件として受理すべきか」「問題点は何か」
その現場の判断基準を、実務の中で徹底的に学び、鍛えられてきました。
だからこそ私は、警察が何を重視し、どこを見て告訴状を判断するのかを、初期段階から具体的に想定しながら作成することができます。
告訴・告発事件については、刑事の中でも専門性を持って取り組んできた分野であり、強い自負があります。
現在は、千葉県犯罪被害者支援センター会員として、
「費用面で弁護士への依頼をためらっている方」
「警察に何度も相談したが、前に進めずにいる方」
そうした犯罪被害者の力になりたいとの思いから、行政書士として告訴状・告発状の作成支援を行っています。
実際に、
「告訴、受理されました。淺利さんにお願いして本当に良かったです」
というご連絡をいただく瞬間が、何よりの喜びであり、この仕事を選んで良かったと心から思う瞬間です。
警察の内側を知る行政書士として、
“受理される可能性を高める告訴状・告発状”を、本気でサポートします。


