警察が被害届・告訴状を受理しない理由と対処法|元刑事がケース別に解説
「警察に被害届や告訴状を提出したのに受理してもらえなかった」「事件にならないと言われてしまった」と悩んでいませんか。
警察が被害届や告訴状を受理しない理由は一つではありません。理由によって取るべき対応は大きく異なります。
私は警視庁で32年間勤務し、25年間にわたり刑事として数多くの被害届・告訴・告発を取り扱ってきました。その経験を踏まえ、警察が受理しない主な理由と、それぞれの具体的な対処法を分かりやすく解説します。
まず確認|どんなに相談しても受理されないケース
次のような場合は、法律上の理由から被害届や告訴状が受理されない、または受理されても事件として進めることができません。
- 公訴時効が完成している場合
- 公訴時効は、被害者が被害に気付いた時ではなく、犯罪行為が終了した日から進行します。
- 主な公訴時効年数:詐欺罪7年、窃盗罪7年、傷害罪10年、暴行罪3年、器物損壊罪3年
- 犯人が死亡している場合
- 犯人が死亡していると当然ですが処罰を与えることはできません。
- 財産犯で完全に被害弁償が行われた場合
- 窃盗、詐欺、横領などの財産犯罪では、被害金が全額弁済されている場合、告訴受理は困難です。
- 親族相盗例が適用される場合
- 直系血族、配偶者、同居親族間の窃盗・詐欺・横領などは、刑法上の特例により処罰されない場合があります。
- 同じ事件が既に他の警察署や検察庁で受理されている場合
- 同一事件を重複して受理することは通常ありません。
- 親告罪の告訴期間を過ぎている場合
- 名誉毀損罪、侮辱罪、器物損壊罪、過失傷害罪などの親告罪は、犯人を知った日から6か月を経過すると告訴できません。
これらに該当しないにもかかわらず受理されない場合は、次の対策を検討してください。
1.「事件にならない」「犯罪が成立しない」と言われた場合
警察官が「犯罪ではありません」と説明しても、その判断が必ずしも正しいとは限りません。
まずは事件内容をキーワードにして検索し、同様の事件で有罪判決となった判例や裁判例が存在しないか調べてみましょう。また、同様事件で容疑者が逮捕または書類送検されたとの報道記事も有効です。
過去に有罪判決が出ている事件であれば、警察も犯罪成立を否定しにくくなります。
なお、
- 判例=原則として最高裁判所(旧大審院を含む)の判断
- 裁判例=高等裁判所・地方裁判所などの判決
を指します。
もっとも、裁判例は判断が分かれることもあります。例えば、「娼婦を騙して性交した場合に詐欺罪が成立するか」については、異なる裁判例が存在します。
対策
- 類似事件の判例・裁判例を提示する
- 犯罪の成否について弁護士などの専門家へ相談する
2.「証拠がない」と言われた場合
被害届や告訴状の受理において、証拠は極めて重要です。
次のような資料をできるだけ揃えましょう。
- 写真・動画
- 音声データ
- LINEやメールのやり取り
- 通帳・振込記録
- 契約書
- 被害状況を時系列で整理した書面
- 日時・場所・経過をまとめたメモ
直接証拠だけでなく、複数の間接証拠を組み合わせることで事件化できるケースも少なくありません。
対策
- 新たな証拠を収集して再度提出する
- 証拠収集の方法について専門家へ相談する
3.「犯人が見つからない」と言われた場合
「犯人が見つからないから受理できない」という説明を受けることがあります。
しかし、犯人が判明するかどうかは、実際に捜査を始めなければ分かりません。
例えば、
- 他事件で逮捕された犯人が余罪を自供する
- 防犯カメラ映像から判明する
- DNAや指紋が一致する
- 犯人が自首・出頭する
といったケースは珍しくありません。
対策
「犯人が見つかる可能性は低くても構いません。可能な範囲で捜査してください」と伝え、まずは受理を求めましょう。
4.「時効まで残りが少ない」「時間が経ちすぎている」と言われた場合
事件発生から時間が経過していても、公訴時効が完成していなければ捜査は可能です。
例えば、
- 暴行罪:3年
- 横領罪:5年
- 窃盗罪:7年
- 詐欺罪:7年
- 業務上横領罪:7年
- 傷害罪:10年
時効まで1年以上残っていれば、十分に捜査できる事件も多くあります。
対策
「まだ公訴時効まで期間がありますので、受理して捜査をお願いします」と粘り強く求めましょう。
5.「忙しい」「人手不足」と言われた場合
警察の人員不足は全国的な課題です。
しかし、人手不足は受理を拒否する法的理由にはなりません。
すぐに捜査できなくても、まず事件を受理しておけば、その後に捜査を進めることは可能です。
対策
「今すぐ捜査していただかなくても結構ですので、まずは被害届(告訴状)だけ受理してください」と冷静かつ丁寧にお願いしましょう。
6.「民事裁判で負けたから刑事事件にはできない」と言われた場合
民事裁判と刑事事件は全く別の制度です。
民事裁判では、
- 損害賠償請求
- 契約関係
- 金銭トラブル
などを判断します。
一方、刑事事件では、
- 犯罪の成否
- 故意の有無
- 刑事責任
を判断します。
そのため、民事裁判で敗訴したことだけを理由に被害届や告訴状の受理を拒否することは適切ではありません。
対策
民事裁判と刑事事件は目的も判断基準も異なることを説明し、改めて受理を求めましょう。
まとめ|警察が受理しない理由を見極めることが重要
警察が被害届や告訴状を受理しない理由は様々ですが、そのすべてが法的に正当な理由とは限りません。
まずは**「なぜ受理しないのか」**を明確に確認し、その理由に応じた対応を取ることが重要です。
受理を断られたからといって、すぐに諦める必要はありません。証拠の補強、判例・裁判例の提示、法的根拠の説明などにより、受理につながるケースも数多くあります。
元刑事としての経験上、適切な準備を行って再度相談した結果、受理された事例は少なくありません。受理を断られた場合でも、理由を分析し、適切な対策を講じることが事件解決への第一歩となります。
○警察への告訴状・告発状の作成は元警視庁刑事の行政書士にお任せください。こちら
淺利 大輔
あさり だいすけ
行政書士淺利法務事務所 代表
私は、2024年6月までの32年間、警視庁警察官として勤務し、そのうち25年間を刑事として告訴・告発事件の捜査に携わってきました。
中でも、告訴・告発を中心に扱う知能犯捜査の経験が最も長く、数多くの事件で、実際に告訴状・告発状を受理し、捜査を進めてきました。
刑事部捜査第二課在籍時には、警視庁本庁舎(霞が関)の聴訴室において、告訴状を持参される弁護士の先生方と日々向き合い、
「事件として受理すべきか」「問題点は何か」
その現場の判断基準を、実務の中で徹底的に学び、鍛えられてきました。
だからこそ私は、警察が何を重視し、どこを見て告訴状を判断するのかを、初期段階から具体的に想定しながら作成することができます。
告訴・告発事件については、刑事の中でも専門性を持って取り組んできた分野であり、強い自負があります。
現在は、千葉県犯罪被害者支援センター会員として、
「費用面で弁護士への依頼をためらっている方」
「警察に何度も相談したが、前に進めずにいる方」
そうした犯罪被害者の力になりたいとの思いから、行政書士として告訴状・告発状の作成支援を行っています。
実際に、
「告訴、受理されました。淺利さんにお願いして本当に良かったです」
というご連絡をいただく瞬間が、何よりの喜びであり、この仕事を選んで良かったと心から思う瞬間です。
警察の内側を知る行政書士として、
“受理される可能性を高める告訴状・告発状”を、本気でサポートします。


