被害届・告訴後の示談とは?取り下げる前に知っておくべき注意点【元刑事が解説】
犯罪被害に遭い、警察へ被害届や告訴状を提出した後、加害者やその弁護士から「示談をしたい」と連絡が来ることがあります。
「示談に応じるべきなのか?」
「告訴を取り下げるとどうなるのか?」
「示談金はいつ受け取ればよいのか?」
このような疑問を持つ被害者は少なくありません。
この記事では、被害届・告訴後の示談の流れ、示談を受けるメリット・デメリット、絶対に注意すべきポイントについて、32年間刑事として勤務した経験をもとに詳しく解説します。
示談とは?民法上の「和解」と同じ意味
示談とは、民法上の和解契約のことをいいます。
一般的には、
- 加害者が被害者へ謝罪する
- 示談金(損害賠償金)を支払う
- 被害者が被害届や告訴を取り下げる、または処罰を望まない意思を示す
という内容で合意することが多くなります。
示談が成立すると、事件の内容によっては検察官や裁判所が情状として考慮し、加害者の刑事処分に影響を与える場合があります。
被害届・告訴後に示談を持ちかけられる理由
加害者側が示談を希望する最大の理由は、刑事処分を軽くしたいからです。
例えば、
- 不起訴処分を目指したい
- 起訴されても執行猶予を希望したい
- 刑をできるだけ軽くしたい
といった事情から、弁護士を通じて示談交渉が行われるケースが多くあります。
一方、被害者にとっては、
- 損害賠償を受けられる
- 精神的な区切りをつけられる
- 民事裁判を避けられる
というメリットがあります。
被害者も弁護士に依頼すべき?
「相手が弁護士を付けたので、自分も弁護士を依頼した方がいいですか?」という相談をよく受けます。
結論からいえば、必ずしも弁護士へ依頼する必要はありません。
弁護士へ依頼すると、着手金として数十万円程度かかることもあります。
ただし、次のようなケースでは弁護士への相談を検討した方がよいでしょう。
- 示談金が相場より著しく低い
- 相手方弁護士の対応が高圧的である
- 後遺障害や高額な損害賠償が問題となっている
- 示談内容が複雑で判断が難しい
それ以外であれば、被害者本人が冷静に対応できるケースも少なくありません。
納得できない条件であれば、無理に示談へ応じる必要はありません。
示談を受け入れるかどうかは被害者が決める
「ここまで捜査してくれた警察に申し訳ないので示談しない方がよいでしょうか」
このような相談もあります。
しかし、示談をするかどうかは被害者自身が決めることです。
警察官も示談によって事件が解決するケースを数多く経験しています。
示談による解決は決して珍しいことではありません。
刑事処分を望むか、経済的な補償を優先するかなど、自分自身が納得できる判断をすることが重要です。
示談金が支払われる前に被害届・告訴を取り下げてはいけない
最も重要なのが、この点です。
示談金の入金を確認する前に、被害届や告訴を取り下げてはいけません。
実際には少数ですが、
「告訴を取り下げた後に示談金を支払わないまま逃げられた」
という悪質なケースも存在します。
その場合、被害者は非常に不利な立場になります。
親告罪と非親告罪では大きな違いがある
非親告罪の場合
例えば、
- 傷害罪
- 窃盗罪
- 詐欺罪
などでは、告訴を取り消した場合でも、状況によっては再度告訴できる可能性があります。
親告罪の場合
一方、
- 名誉毀損罪
- 侮辱罪
- 器物損壊罪
- 過失傷害罪
などの親告罪では、一度適法に告訴を取り消すと再告訴は禁止されています。
つまり、
- 示談金が支払われない
- 告訴もできない
- 加害者が処罰されない
という最悪の結果になる可能性があります。
安全な対応方法は「入金確認後」に取消状を提出すること
被害者が取るべき最も安全な方法は非常にシンプルです。
示談金の全額が実際に銀行口座へ入金されたことを確認してから、被害届や告訴の取消状を警察へ提出してください。
この順番であれば、
- 示談金未払いのリスク
- 親告罪で再告訴できなくなるリスク
を避けることができます。
焦って取消状を提出する必要はありません。
まとめ|被害届・告訴後の示談は慎重に判断することが重要
被害届や告訴状を提出した後に示談を提案された場合は、感情だけで判断せず、法的な影響も理解したうえで対応することが大切です。
特に重要なポイントは次のとおりです。
- 示談を受けるかどうかは被害者が自由に決められる
- 必ずしも被害者側が弁護士へ依頼する必要はない
- 納得できない条件なら示談を拒否しても問題ない
- 示談金の全額入金を確認するまで、被害届や告訴を取り下げない
- 親告罪では一度告訴を取り消すと再告訴できないため、特に慎重な対応が必要
元刑事として数多くの示談事案を見てきましたが、最も多い失敗は「相手を信用して先に取消状を提出してしまうこと」です。
ご自身の権利を守るためにも、示談金の入金確認後に取消手続きを行うことを強くおすすめします。
○警察への告訴状・告発状の作成は元警視庁刑事の行政書士にお任せください。こちら
淺利 大輔
あさり だいすけ
行政書士淺利法務事務所 代表
私は、2024年6月までの32年間、警視庁警察官として勤務し、そのうち25年間を刑事として告訴・告発事件の捜査に携わってきました。
中でも、告訴・告発を中心に扱う知能犯捜査の経験が最も長く、数多くの事件で、実際に告訴状・告発状を受理し、捜査を進めてきました。
刑事部捜査第二課在籍時には、警視庁本庁舎(霞が関)の聴訴室において、告訴状を持参される弁護士の先生方と日々向き合い、
「事件として受理すべきか」「問題点は何か」
その現場の判断基準を、実務の中で徹底的に学び、鍛えられてきました。
だからこそ私は、警察が何を重視し、どこを見て告訴状を判断するのかを、初期段階から具体的に想定しながら作成することができます。
告訴・告発事件については、刑事の中でも専門性を持って取り組んできた分野であり、強い自負があります。
現在は、千葉県犯罪被害者支援センター会員として、
「費用面で弁護士への依頼をためらっている方」
「警察に何度も相談したが、前に進めずにいる方」
そうした犯罪被害者の力になりたいとの思いから、行政書士として告訴状・告発状の作成支援を行っています。
実際に、
「告訴、受理されました。淺利さんにお願いして本当に良かったです」
というご連絡をいただく瞬間が、何よりの喜びであり、この仕事を選んで良かったと心から思う瞬間です。
警察の内側を知る行政書士として、
“受理される可能性を高める告訴状・告発状”を、本気でサポートします。


