告訴の不可分とは?主観的不可分・客観的不可分を元刑事がわかりやすく解説

告訴は、被告訴人(犯人)個人に対して行うものではなく、「犯罪事実(事件)」に対して行う手続きです。

そのため、告訴の効力は事件全体に及び、一部の犯人だけを告訴したり、事件の一部だけを対象に告訴したりすることはできません。この原則を**「告訴の不可分」**といいます。

告訴の不可分には、次の2つがあります。

  • 主観的不可分
  • 客観的不可分

それぞれ詳しく解説します。


告訴の主観的不可分とは?

主観的不可分とは、共犯事件で一部の犯人だけを対象に告訴したり、取消したりすることはできないという原則です。

例えば、詐欺事件で「山田」という人物だけが犯人だと思い、告訴状の被告訴人欄に山田だけを記載して提出したとします。

しかし、その後の警察の捜査によって、実際には4人の共犯による犯行だったことが判明した場合、告訴の効力は山田以外の共犯者3人にも及びます。

仮に、その共犯者の一人が親友の「横山」であったとしても、「横山だけは処罰しないでほしい」と希望しても法的な効力はありません。

告訴の取消しも主観的不可分

この原則は、告訴の取消しにも適用されます。

例えば、4人の共犯事件で3人とは示談が成立したものの、残る1人とは示談できなかった場合でも、示談した3人だけについて告訴を取り消すことはできません。

告訴を取り消す場合は、その効力は共犯者全員に及びます。

このように、特定の犯人だけを対象に告訴・取消しができないという原則を「主観的不可分」といいます。


主観的不可分の例外|親族相盗例

主観的不可分には例外があります。

それが親族相盗例です。

例えば、共犯者の中に親族相盗例が適用される親族が含まれている場合には、その親族以外の共犯者に対する告訴の効力は、その親族には及びません。

つまり、親族相盗例は告訴の主観的不可分の例外として扱われます。

親族相盗例については、別記事で詳しく解説しています。


告訴の客観的不可分とは?

客観的不可分とは、事件の一部だけを切り取って告訴することはできないという原則です。

例えば、自宅に侵入した犯人から不同意わいせつの被害を受けた場合、通常は次の2つの犯罪が成立します。

  • 住居侵入罪
  • 不同意わいせつ罪

この場合、

「住居侵入罪だけ告訴して、不同意わいせつ罪は告訴しない」

というような一部だけの告訴は認められません。

告訴は事件全体に対して行われるため、関連する犯罪事実全体に効力が及びます。

なお、この原則は告訴の取消しについても同様です。


告発にも不可分の原則は適用される?

告発とは、犯罪の被害者以外の第三者が、捜査機関に犯罪事実を申告し、処罰を求める手続きです。

告発についても、基本的には告訴と同様に不可分の考え方が及ぶとされています。

つまり、

  • 特定の共犯者だけを対象とする告発
  • 事件の一部だけを対象とする告発

は原則として認められず、告発の効力も事件全体に及ぶと考えられています。


告訴の不可分に関するよくある質問

共犯者の一人だけを告訴できますか?

できません。

告訴は事件に対して行われるため、共犯事件では告訴の効力は他の共犯者にも及びます。

示談した相手だけ告訴を取り消すことはできますか?

できません。

告訴を取り消す場合は、主観的不可分の原則により、取消しの効力は共犯者全員に及びます。

親族だけ例外になることはありますか?

あります。

親族相盗例が適用される場合は、主観的不可分の例外として扱われます。


まとめ

告訴には、**「主観的不可分」と「客観的不可分」**という重要な原則があります。

  • 共犯者の一人だけを告訴することはできない(主観的不可分)
  • 犯罪事実の一部だけを告訴することはできない(客観的不可分)
  • 告訴の取消しにも同じ原則が適用される
  • 親族相盗例には例外がある
  • この考え方は告発にも概ね適用される

告訴状を作成する際には、これらの原則を正しく理解しておくことが重要です。特に共犯事件や複数の犯罪が成立する事件では、告訴の対象や効力について誤解しているケースも少なくありません。不安がある場合は、告訴手続きに詳しい専門家へ相談することをおすすめします。

○警察への告訴状・告発状の作成は元警視庁刑事の行政書士にお任せください。こちら


淺利 大輔

あさり だいすけ

行政書士淺利法務事務所 代表

私は、2024年6月までの32年間、警視庁警察官として勤務し、そのうち25年間を刑事として告訴・告発事件の捜査に携わってきました。
中でも、告訴・告発を中心に扱う知能犯捜査の経験が最も長く、数多くの事件で、実際に告訴状・告発状を受理し、捜査を進めてきました。
刑事部捜査第二課在籍時には、警視庁本庁舎(霞が関)の聴訴室において、告訴状を持参される弁護士の先生方と日々向き合い、
「事件として受理すべきか」「問題点は何か」
その現場の判断基準を、実務の中で徹底的に学び、鍛えられてきました。
だからこそ私は、警察が何を重視し、どこを見て告訴状を判断するのかを、初期段階から具体的に想定しながら作成することができます。
告訴・告発事件については、刑事の中でも専門性を持って取り組んできた分野であり、強い自負があります。
現在は、千葉県犯罪被害者支援センター会員として、
「費用面で弁護士への依頼をためらっている方」
「警察に何度も相談したが、前に進めずにいる方」
そうした犯罪被害者の力になりたいとの思いから、行政書士として告訴状・告発状の作成支援を行っています。
実際に、
「告訴、受理されました。淺利さんにお願いして本当に良かったです」
というご連絡をいただく瞬間が、何よりの喜びであり、この仕事を選んで良かったと心から思う瞬間です。
警察の内側を知る行政書士として、
“受理される可能性を高める告訴状・告発状”を、本気でサポートします。

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