法人(会社)が告訴できる?会社が被害にあったときに告訴する方法を元刑事が解説
法人(会社)が犯罪の被害者になった場合、法人名義で告訴することは可能です。
特に、社員による横領や窃盗、背任、業務上横領などの社内犯罪では、会社が告訴人となって警察へ告訴状を提出するケースが少なくありません。
一方で、「法人名義の告訴状はどのように書くのか」「代表取締役が犯人の場合はどうするのか」と疑問を持つ方も多いでしょう。
この記事では、元刑事の行政書士が、法人による告訴の方法、告訴状の書き方、社内横領事件で注意すべきポイントについて詳しく解説します。
法人(会社)は告訴できる
刑事訴訟法では、犯罪によって被害を受けた者は告訴をすることができると規定されています。
法人も法律上の権利義務の主体であるため、会社の財産が盗まれたり横領されたりした場合には、法人を告訴人として告訴することが可能です。
特に次のような事件では法人による告訴が行われます。
- 社員による業務上横領
- 売上金や会社資金の横領
- 社内窃盗
- 背任
- 詐欺
- 有印私文書偽造・同行使
- 電子計算機使用詐欺 など
法人の告訴状の書き方
法人が告訴人となる場合は、法人だけでは意思表示ができないため、代表取締役を併記して告訴状を作成します。
記載例は次のとおりです。
告 訴 状
令和○年○月○日
○○県○○警察署長 殿
告訴人
所在地 ○○県○○市○○町1丁目3番5号
法人名 新庄開発株式会社
代表取締役 ○○○○
電話 ○○○-○○○○-○○○○
法人番号や事業目的、資本金などを告訴状へ詳細に記載する必要はありません。
通常は、**履歴事項全部証明書(法人登記簿)**を添付すれば十分だからです。ただし、定款の写しを添付すべきでしょう。
代表取締役が会社資金を横領した場合の告訴方法
会社の代表取締役自身が会社資金を横領した場合は、そのままでは会社を代表して告訴することができません。
そのため、まず会社内部で代表権を変更する必要があります。
① 臨時株主総会を開催する
まず臨時株主総会など必要な手続きを行い、
- 横領した代表取締役を解任する
- 新しい代表取締役を選任する
ことが必要です。
② 新代表取締役が告訴する
代表権を取得した新代表取締役が、
- 告訴人:法人
- 被告訴人:旧代表取締役個人
として警察へ告訴を行います。
社内横領・社内窃盗で警察に告訴を受理してもらうポイント
社内犯罪では、警察は会社側に対して詳細な事情説明や資料の提出を求めます。
受理されやすくするためには、次の点が重要です。
① 警察との窓口を一本化する
事件の経緯を最も把握している社員を担当者として決め、警察との連絡窓口を一本化しましょう。
担当者が頻繁に変わると、捜査にも支障が生じます。
② 証拠を十分に確保する
次のような証拠をできるだけ集めておきます。
- 会計帳簿
- 銀行口座の取引履歴
- 防犯カメラ映像
- メール・チャット
- パソコンのログ
- 領収書
- 出勤記録
- 在庫管理資料 など
また、本人が犯行を認めている場合は、できるだけ早く自認書や顛末書を作成させることが重要です。なぜなら、解雇等の処分が決まった途端、出社してこなくなり、電話やメールにも返信しないようになるのが普通だからです。
自筆で署名された文書があるだけで、警察の判断に大きな影響を与えます。
③ 発覚後は迅速に対応する
横領や窃盗が発覚すると、会社が事情聴取や懲戒解雇を検討している間に、被疑者が退職したり行方をくらましたりするケースがあります。
証拠保全や警察への相談は、できるだけ早く行うことが重要です。
示談だけで終わらせる場合は慎重に判断する
社内横領では、
「毎月○万円ずつ返済します。」
という内容で示談が成立することがあります。
しかし、実際には数回だけ返済した後に支払いが止まり、そのまま逃亡してしまうケースも少なくありません。
その後に警察へ相談しても、
「示談が成立し、一部でも返済されている以上、民事上の問題」
として、事件化が難しくなる場合があります。
示談を行うのであれば、
- 本当に返済能力があるのか
- 勤務先や収入は安定しているか
- 親族を連帯保証人にできるか
などを十分確認したうえで慎重に判断することをおすすめします。
法人を告訴することはできる?
一方で、法人そのものを告訴することは原則としてできません。
傷害罪や窃盗罪、詐欺罪などの一般的な犯罪は、人が実行行為を行うことを前提としているため、通常は実行者となった役員や従業員個人が処罰の対象になります。
ただし、労働基準法や廃棄物処理法などの特別法に両罰規定が設けられている場合には、行為者だけでなく法人も処罰対象となることがあります。
このような場合は、法人に対する告発が行われることがあります。
まとめ
法人(会社)は、横領や窃盗などの社内犯罪の被害者となった場合、法人名義で告訴することが可能です。
告訴状には法人名と代表取締役を併記し、法人登記簿を添付するのが一般的です。また、代表取締役自身が犯人である場合には、新たな代表者を選任したうえで告訴を行う必要があります。
社内犯罪では、証拠の確保、迅速な対応、警察との適切な連携が告訴受理の可否を左右する重要なポイントです。
元刑事の経験からも、法人事件は初動対応によって結果が大きく変わります。被害が判明した場合は、早い段階で告訴に精通した専門家へ相談することをおすすめします。
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淺利 大輔
あさり だいすけ
行政書士淺利法務事務所 代表
私は、2024年6月までの32年間、警視庁警察官として勤務し、そのうち25年間を刑事として告訴・告発事件の捜査に携わってきました。
中でも、告訴・告発を中心に扱う知能犯捜査の経験が最も長く、数多くの事件で、実際に告訴状・告発状を受理し、捜査を進めてきました。
刑事部捜査第二課在籍時には、警視庁本庁舎(霞が関)の聴訴室において、告訴状を持参される弁護士の先生方と日々向き合い、
「事件として受理すべきか」「問題点は何か」
その現場の判断基準を、実務の中で徹底的に学び、鍛えられてきました。
だからこそ私は、警察が何を重視し、どこを見て告訴状を判断するのかを、初期段階から具体的に想定しながら作成することができます。
告訴・告発事件については、刑事の中でも専門性を持って取り組んできた分野であり、強い自負があります。
現在は、千葉県犯罪被害者支援センター会員として、
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「警察に何度も相談したが、前に進めずにいる方」
そうした犯罪被害者の力になりたいとの思いから、行政書士として告訴状・告発状の作成支援を行っています。
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