親告罪の「告訴期間」とは?公訴時効との違い

親告罪の告訴期間は、刑事訴訟法第235条により**「犯人を知った日から6か月以内」**と定められています。

この6か月を経過すると、原則として告訴することができなくなります。そのため、親告罪の被害に遭った場合は、できるだけ早く告訴の準備を進めることが重要です。※非親告罪には告訴期間がないため、公訴時効内であれば法的にはいつでも告訴可能です。

なお、「告訴期間」と「公訴時効」を混同している方が少なくありませんが、両者は全く異なる制度です。

  • 告訴期間:親告罪について被害者が告訴できる期間
  • 公訴時効:検察官が起訴できる期間

それぞれ起算日や制度の目的が異なるため、混同しないよう注意しましょう。


親告罪とは?告訴がなければ起訴できない犯罪

親告罪とは、被害者などの告訴がなければ検察官が起訴できない犯罪です。

代表的な親告罪には次のようなものがあります。

  • 名誉毀損罪(SNS・ブログ・掲示板への投稿を含む)
  • 侮辱罪
  • 過失傷害罪
  • 器物損壊罪
  • 秘密漏示罪
  • 信書開封罪
  • 親族間で行われた窃盗罪・詐欺罪・横領罪・背任罪

これらの犯罪は、法律上「告訴がなければ公訴を提起することができない」と規定されています。


「犯人を知った日」とは?告訴期間の起算点

親告罪の告訴期間は、「犯人を知った日」から6か月です。

では、「犯人を知った日」とはどのような日をいうのでしょうか。

例えば、次のような場合には「犯人を知った」と判断されます。

  • 犯人の氏名や住所などが判明した日
  • 顔を明確に認識し、後から特定できる状態になった日

一方で、次のような場合は「犯人を知った日」には該当しません。

  • 暗闇で顔の輪郭しか見えなかった
  • 犯人のハンドルネームやID,メールアドレスなどを知った
  • 犯人の車のナンバーを見た

つまり、「誰が犯人なのかを具体的に認識できた日」が告訴期間のスタートになります。


告訴期間6か月の数え方

告訴期間は、刑事訴訟法第55条の期間計算によって計算されます。

具体的には次のルールです。

  • 初日は算入せず、翌日から1日目となる
  • 最終日が土曜日・日曜日・祝日の場合は翌開庁日まで延長される
  • 犯人を知った日が犯行終了日より前の場合は、犯行終了日の翌日から6か月となる

この計算方法は、公訴時効とは異なるため注意が必要です。


ネット上の名誉毀損・侮辱罪は告訴期間が進行しない場合がある

SNSやインターネット掲示板への投稿による名誉毀損罪・侮辱罪では、通常の事件とは異なる考え方が問題となる場合があります。

書き込みが現在も公開され続けている場合は、犯行が継続していると評価されます。

そのため、投稿から1年以上経過していても、削除されず閲覧可能な状態であれば、告訴期間や公訴時効が完成していないケースがあります。

ネット上の名誉毀損事件では、投稿日時だけで判断せず、現在も閲覧できるかどうかを確認することが重要です。


未成年者が被害者の場合の告訴期間

未成年者が親告罪の被害に遭った場合には、法定代理人である親権者も告訴権を有しています。

そのため、未成年者本人の告訴期間が経過していても、親権者が後日事件や犯人を知った場合には、その時点から親権者自身の告訴期間が開始される場合があります。

この点については、最高裁判所昭和28年5月29日判決でも示されています。


共犯事件の告訴期間に注意

共犯事件では、犯人が複数いることも珍しくありません。

しかし、共犯者のうち1人の犯人を知った時点で、原則として全員について告訴期間が進行します。

そのため、

  • Aだけ分かった
  • B・Cは後から判明した

という場合でも、Aを知った日から6か月を過ぎると、BやCについても告訴できなくなります。これは、本来、告訴は犯人に対してではなく、事件についてするものとの考え方によります。

共犯事件では、告訴期間を誤解しやすいため特に注意が必要です。


親告罪の告訴期間でよくある勘違い

親告罪では、次のような誤解が非常によく見られます。

  • 「事件が起きてから6か月」と思っている
  • 「公訴時効と同じ制度」と考えている
  • 「犯人の名前が分からなければ告訴期間は始まらない」と思っている

実際には、**「犯人を知った日から6か月」**というルールが基本です。

そのため、事件発生から時間が経過していても、まだ告訴できるケースは少なくありません。


まとめ|親告罪の告訴期間は早めの確認が重要

親告罪の告訴期間について、重要なポイントをまとめると次のとおりです。

  • 親告罪の告訴期間は**「犯人を知った日から6か月」**
  • 告訴期間と公訴時効は全く異なる制度
  • 「犯人を知った日」が告訴期間の起算日になる
  • ネット上の名誉毀損・侮辱罪では、投稿が公開され続けている限り告訴期間が進行しない場合がある
  • 未成年者の事件では親権者の告訴権が問題となることがある
  • 共犯事件では、1人の犯人を知った時点で全員の告訴期間が開始される
  • 「被害に気付いた日」ではない

親告罪は、告訴期間を過ぎると原則として刑事手続を進めることができなくなります。 被害に遭われた方は、「まだ間に合うだろう」と自己判断せず、早めに告訴の可否を確認することをおすすめします。

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淺利 大輔

あさり だいすけ

行政書士淺利法務事務所 代表

私は、2024年6月までの32年間、警視庁警察官として勤務し、そのうち25年間を刑事として告訴・告発事件の捜査に携わってきました。
中でも、告訴・告発を中心に扱う知能犯捜査の経験が最も長く、数多くの事件で、実際に告訴状・告発状を受理し、捜査を進めてきました。
刑事部捜査第二課在籍時には、警視庁本庁舎(霞が関)の聴訴室において、告訴状を持参される弁護士の先生方と日々向き合い、
「事件として受理すべきか」「問題点は何か」
その現場の判断基準を、実務の中で徹底的に学び、鍛えられてきました。
だからこそ私は、警察が何を重視し、どこを見て告訴状を判断するのかを、初期段階から具体的に想定しながら作成することができます。
告訴・告発事件については、刑事の中でも専門性を持って取り組んできた分野であり、強い自負があります。
現在は、千葉県犯罪被害者支援センター会員として、
「費用面で弁護士への依頼をためらっている方」
「警察に何度も相談したが、前に進めずにいる方」
そうした犯罪被害者の力になりたいとの思いから、行政書士として告訴状・告発状の作成支援を行っています。
実際に、
「告訴、受理されました。淺利さんにお願いして本当に良かったです」
というご連絡をいただく瞬間が、何よりの喜びであり、この仕事を選んで良かったと心から思う瞬間です。
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