警察はなぜ告訴・告発を受理したがらないのか?元刑事が本当の理由を解説
「警察に告訴状を持って行ったら受理してもらえなかった」「警察が告訴を避けようとしているように感じた」という相談は少なくありません。
実際、警察は告訴や告発の受理に非常に慎重になる傾向があります。しかし、それは単に「面倒だから」という理由ではありません。警察には告訴を受理した後に法律上の重い義務が発生するためです。
ここでは、32年間警視庁で刑事として勤務した経験をもとに、警察が告訴・告発の受理を慎重に判断する理由を詳しく解説します。
1.警察が告訴を受理すると発生する法律上の義務
警察が告訴を受理すると、その事件について必要な捜査を行い、最終的に事件を検察庁へ送致(送検)しなければなりません。
つまり、告訴は単なる相談や被害届とは異なり、警察に対して正式な捜査を開始させると同時に検察官への送致を義務づける非常に重い法律行為なのです。
さらに捜査の結果、
- 犯罪が成立しない
- 証拠が不足している
- 告訴人の思い違いだった
という結論になった場合でも、受理した以上は事件を捜査して送致しなければなりません。
また、示談が成立するなどして、告訴人が途中で告訴を取り消した場合でも、警察の送致義務はなくならないため、警察は受理に慎重にならざるを得ないのです。
2.告訴事件は警察に大きな捜査負担が生じる
告訴を受理すると、警察は通常の事件以上に多くの捜査を行う必要があります。
犯人が判明している場合は、
- 被疑者の取調べ
- 関係者からの事情聴取
- 証拠収集
- 必要に応じた逮捕状・捜索差押許可状の請求
- 事件の送致
など、多くの手続が必要になります。
一方、犯人が分からない事件では、公訴時効が完成するまで犯人を追跡する必要があります。
例えば公訴時効は次のようになっています。
- 器物損壊罪:約3年
- 詐欺罪・窃盗罪:約7年
- 傷害罪:約10年
このような長期間に及ぶ捜査は、警察にとって大きな人的・時間的負担となります。
3.示談や告訴取り消しがあっても警察の義務は終わらない
告訴事件では、途中で示談が成立し、告訴が取り消されることがあります。
しかし、一度受理した事件については、告訴が取り消されたからといって警察の送致義務がなくなるわけではありません。
警察は必要な捜査を行い、事件を検察官へ送致する必要があります。
また、起訴・不起訴を決定するのは検察官であり、警察ではありません。
そのため、親告罪以外の事件では、告訴が取り消されても起訴される可能性があります。
4.刑事は告訴事件以外にも多くの事件を担当している
刑事課の警察官は、告訴事件だけを担当しているわけではありません。
日常的に次のような業務を並行して処理しています。
- 110番通報への対応
- 現行犯事件・逮捕事件の捜査
- 48時間以内の送致手続
- 強盗・傷害などの重要事件
- 変死事案の現場対応
- 行方不明者の捜索
- 各種捜査書類の作成
特に変死事案が発生すると、
- 現場検証
- 遺体搬送
- 司法解剖への立会い
- 遺族対応
- 医師との協議
- 関係者への事情聴取
など、多くの刑事が長時間拘束されます。
さらに、事件性が認められれば殺人事件や傷害致死事件として捜査本部が設置され、多数の刑事が専従となることもあります。
その結果、通常の告訴事件の捜査が停滞することが珍しくありません。そして、その間にも「騙されたので告訴したい」との相談が次から次にやってくるのです。
5.警察が告訴を受理したがらない本当の理由
警察が告訴・告発の受理に慎重なのは、受理した後に非常に重い法的義務と実務上の負担が発生するためです。
具体的には、
- 必ず事件を検察庁へ送致しなければならない
- 長期間にわたる捜査が必要になる場合がある
- 告訴が取り消されても送致義務はなくならない
- 他の重大事件と並行して捜査しなければならない
といった事情があります。
そのため、警察は受理前に「犯罪が成立するか」「証拠が十分か」「告訴の要件を満たしているか」を慎重に確認します。
しかし、法律上の要件を満たした適法な告訴については、本来、警察は受理しなければなりません。
受理を拒否された場合でも、その理由が法的に妥当かどうかを確認し、必要に応じて告訴状の内容や証拠を整理・補強することで受理される可能性は十分あります。
○警察への告訴状・告発状の作成は元警視庁刑事の行政書士にお任せください。こちら
淺利 大輔
あさり だいすけ
行政書士淺利法務事務所 代表
私は、2024年6月までの32年間、警視庁警察官として勤務し、そのうち25年間を刑事として告訴・告発事件の捜査に携わってきました。
中でも、告訴・告発を中心に扱う知能犯捜査の経験が最も長く、数多くの事件で、実際に告訴状・告発状を受理し、捜査を進めてきました。
刑事部捜査第二課在籍時には、警視庁本庁舎(霞が関)の聴訴室において、告訴状を持参される弁護士の先生方と日々向き合い、
「事件として受理すべきか」「問題点は何か」
その現場の判断基準を、実務の中で徹底的に学び、鍛えられてきました。
だからこそ私は、警察が何を重視し、どこを見て告訴状を判断するのかを、初期段階から具体的に想定しながら作成することができます。
告訴・告発事件については、刑事の中でも専門性を持って取り組んできた分野であり、強い自負があります。
現在は、千葉県犯罪被害者支援センター会員として、
「費用面で弁護士への依頼をためらっている方」
「警察に何度も相談したが、前に進めずにいる方」
そうした犯罪被害者の力になりたいとの思いから、行政書士として告訴状・告発状の作成支援を行っています。
実際に、
「告訴、受理されました。淺利さんにお願いして本当に良かったです」
というご連絡をいただく瞬間が、何よりの喜びであり、この仕事を選んで良かったと心から思う瞬間です。
警察の内側を知る行政書士として、
“受理される可能性を高める告訴状・告発状”を、本気でサポートします。


