物的証拠がないと警察は告訴状を受理しない?証拠がなくても告訴できるケースを元刑事が解説

「物的証拠がないので警察は告訴状を受理してくれないのではないか…」

そのような不安を抱えている方は少なくありません。

確かに、警察は犯罪の立証に必要な証拠を重視します。しかし、物的証拠がないことだけを理由に告訴ができないわけではありません。

実際には、目撃証言やメール、LINEのやり取り、送金履歴などの間接証拠を積み重ねることで、警察が捜査を開始し、犯人を逮捕・起訴できるケースも数多くあります。

私は警視庁で25年間刑事として勤務しましたが、物的証拠がほとんどない状態から事件を立件した経験が何度もあります。


【実例】物的証拠がなくても詐欺事件で逮捕・有罪になったケース

私が刑事時代に担当した事件では、建設会社の社長が「国境なき医師団の医師」を名乗り、スナック経営者の女性から約1,000万円をだまし取った詐欺事件がありました。

詐欺の手口

犯人は被害者に対し、

  • 「海外で難民医療をしている」
  • 「医療活動の資金が不足している」
  • 「帰国したら必ず返済する」

などと嘘を重ねました。

被害者は本物の医師だと信じ込み、尊敬していたことから、指定された銀行口座へ約1,000万円を振り込みました。

その後、犯人は突然店に来なくなり、電話やメールも途絶えたため、詐欺であることが判明しました。


物的証拠がなくても逮捕できた理由

この事件では、「詐欺を認める録音」や「犯行を直接示す契約書」「医師と記載された名刺」などの決定的な物的証拠はありませんでした。

そこで、次のような証拠を積み重ねて立件しました。

① 目撃者の証言を集めた

スナックの常連客から事情を聴取したところ、

  • 犯人が医師であると話していたこと
  • 海外医療活動について説明していたこと

などの証言が得られました。

これらを参考人供述調書として証拠化しました。

② メールを解析した

被害者のスマートフォンを確認すると、

「現在アフガニスタンで治療中」

など、犯人が医師であることを装うメールが幾つか保存されていました。

メールは詐欺の故意を立証する重要な証拠となりました。

③ 銀行の送金履歴を調査した

被害者が1,000万円を送金した銀行記録を確認すると、その資金は犯人の口座へ入金された直後、建設会社の下請業者への支払いなど、本来の説明とは異なる用途に使われていることが判明しました。

この資金の流れは、詐欺の重要な裏付けとなりました。

④ 検察官と協議しながら追加捜査を実施した

事件の途中では、担当検事と何度も協議を重ね、必要な追加捜査を実施しました。

証拠を一つずつ積み上げた結果、犯人を逮捕・送致し、最終的には実刑の有罪判決となりました。


「証拠がないから警察は動かない」は誤解

「証拠がないから警察は動いてくれない」と言われることがあります。

しかし実際には、捜査とは証拠を集めるために行われるものです。

もちろん、何の手掛かりもない状態では捜査が困難になることもありますが、物的証拠がないという理由だけで告訴状が受理されないとは限りません。

重要なのは、現時点で存在する証拠を整理し、警察が捜査を進めやすい形で提出することです。


物的証拠がない場合に集めたい証拠

物的証拠がない場合でも、次のような資料は有力な証拠になります。

  • 目撃者や関係者の証言(陳述書化)
  • メールやLINEなどのやり取り(テキスト化して印刷)
  • SNSやDMの履歴
  • 録音・録画データ(文字起こし)
  • 銀行振込や送金履歴
  • 領収書や契約書
  • 時系列を整理したメモや日記

これらを組み合わせることで、事件全体を裏付ける証拠となる場合があります。


元刑事からのアドバイス

警察へ相談した際に「物的証拠がないので難しいですね」と言われても、それだけで諦める必要はありません。

刑事事件では、複数の間接証拠を組み合わせることで犯罪事実を立証するケースは珍しくありません。

告訴状を作成する際には、証拠の有無だけで判断するのではなく、「どのような証拠を整理すれば警察が捜査しやすくなるか」という視点が重要です。

元刑事の経験から言えることは、証拠は最初から揃っているものではなく、捜査によって集めていくものだということです。

○警察への告訴状・告発状の作成は元警視庁刑事の行政書士にお任せください。こちら


淺利 大輔

あさり だいすけ

行政書士淺利法務事務所 代表

私は、2024年6月までの32年間、警視庁警察官として勤務し、そのうち25年間を刑事として告訴・告発事件の捜査に携わってきました。
中でも、告訴・告発を中心に扱う知能犯捜査の経験が最も長く、数多くの事件で、実際に告訴状・告発状を受理し、捜査を進めてきました。
刑事部捜査第二課在籍時には、警視庁本庁舎(霞が関)の聴訴室において、告訴状を持参される弁護士の先生方と日々向き合い、
「事件として受理すべきか」「問題点は何か」
その現場の判断基準を、実務の中で徹底的に学び、鍛えられてきました。
だからこそ私は、警察が何を重視し、どこを見て告訴状を判断するのかを、初期段階から具体的に想定しながら作成することができます。
告訴・告発事件については、刑事の中でも専門性を持って取り組んできた分野であり、強い自負があります。
現在は、千葉県犯罪被害者支援センター会員として、
「費用面で弁護士への依頼をためらっている方」
「警察に何度も相談したが、前に進めずにいる方」
そうした犯罪被害者の力になりたいとの思いから、行政書士として告訴状・告発状の作成支援を行っています。
実際に、
「告訴、受理されました。淺利さんにお願いして本当に良かったです」
というご連絡をいただく瞬間が、何よりの喜びであり、この仕事を選んで良かったと心から思う瞬間です。
警察の内側を知る行政書士として、
“受理される可能性を高める告訴状・告発状”を、本気でサポートします。

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