勝手に取締役を辞任登記されたら?成立する犯罪と対処法を元刑事が解説

「辞任していないのに、勝手に辞任届を作られ、いつの間にか会社の取締役を辞任したことになっていた……。」

刑事として現場にいた頃、この種の相談は珍しくありませんでした。特に会社の内紛や経営権争い、親族経営のトラブルで発生しやすいケースです。

意見の合わない取締役を排除するため、本人に無断で辞任届を作成し、法務局で役員変更登記をしてしまう――これは単なる社内トラブルでは済まず、重大な刑事犯罪になる可能性があります。

勝手に辞任届を作ると何罪になる?

本人の了承を得ずに、第三者が本人の署名や印鑑を無断で使用して辞任届を作成した場合、成立する可能性が高いのが有印私文書偽造罪です。

有印私文書偽造罪とは、他人名義の文書を本人の意思に反して作成し、その文書が権利義務や事実証明に関する内容を持つ場合に成立する犯罪です。

取締役の辞任届は、会社の登記に直接影響する重要文書ですから、当然この対象になります。

さらに、その偽造した辞任届を役員変更登記の申請書類として法務局へ提出すると、偽造有印私文書行使罪も成立します。

通常、この2つはセットで行われるため、実務上は

「有印私文書偽造・同行使」

とまとめて表記されます。

勝手な取締役辞任登記で成立する犯罪

法務局の登記官が、その辞任届が偽造だと知らずに申請どおり登記を完了すると、さらに別の犯罪が成立します。

それが、

電磁的公正証書原本不実記録罪

です。

会社の登記情報は、法務局のコンピュータシステムに記録される公的データです。そこへ虚偽の内容(「取締役が辞任した」という事実に反する情報)を登録させる行為が、この犯罪にあたります。

さらに、その虚偽の登記情報が外部から閲覧可能な状態になった時点で、

不実電磁的公正証書原本供用罪

も成立します。

こちらも通常セットなので、

「電磁的公正証書原本不実記録・同供用罪」

と表現されます。

刑罰と公訴時効は?

これらの犯罪の法定刑は、いずれも5年以下の拘禁刑です。

そのため、公訴時効は犯罪行為が終了した時から5年となります。

この種の事件では、一般的に登記が完了した日が重要な基準になります。

「かなり前の話だからもう無理かも」と思っていても、時効が完成していない可能性があります。

勝手に取締役を辞任登記されたらどうする?

もし、

  • 取締役を辞任した覚えがない
  • 辞任届に署名した記憶がない
  • 印鑑を勝手に使われた疑いがある
  • 会社の登記簿を見たら自分が役員から消えていた

という場合は、早急な対応が必要です。

主な対応としては、

  • 警察への刑事告訴
  • 法務局で登記内容の確認
  • 会社法上の地位確認請求
  • 損害賠償請求
  • 証拠保全(登記簿、申請書類、印影確認など)

が考えられます。

時間が経つほど証拠収集が難しくなるため、早めの対応が重要です。

まとめ

勝手に取締役を辞任登記する行為は、単なる社内の嫌がらせではなく、複数の刑事犯罪に発展する重大な違法行為です。

成立し得る犯罪は主に以下のとおりです。

  • 有印私文書偽造罪
  • 偽造有印私文書行使罪
  • 電磁的公正証書原本不実記録罪
  • 不実電磁的公正証書原本供用罪

「会社の内部問題だから警察は動かない」と思われがちですが、文書偽造や虚偽登記は明確な刑事事件です。

もし被害にあった場合は、泣き寝入りせず、速やかに対応しましょう。

○警察への告訴状・告発状の作成は元警視庁刑事の行政書士にお任せください。こちら


淺利 大輔

あさり だいすけ

行政書士淺利法務事務所 代表

私は、2024年6月までの32年間、警視庁警察官として勤務し、そのうち25年間を刑事として告訴・告発事件の捜査に携わってきました
中でも、告訴・告発を中心に扱う知能犯捜査の経験が最も長く、数多くの事件で、実際に告訴状・告発状を受理し、捜査を進めてきました。
刑事部捜査第二課在籍時には、警視庁本庁舎(霞が関)の聴訴室において、告訴状を持参される弁護士の先生方と日々向き合い、
「事件として受理すべきか」「問題点は何か」
その現場の判断基準を、実務の中で徹底的に学び、鍛えられてきました。
だからこそ私は、警察が何を重視し、どこを見て告訴状を判断するのかを、初期段階から具体的に想定しながら作成することができます。
告訴・告発事件については、刑事の中でも専門性を持って取り組んできた分野であり、強い自負があります。
現在は、千葉県犯罪被害者支援センター会員として、
「費用面で弁護士への依頼をためらっている方」
「警察に何度も相談したが、前に進めずにいる方」
そうした犯罪被害者の力になりたいとの思いから、行政書士として告訴状・告発状の作成支援を行っています。
実際に、
「告訴、受理されました。淺利さんにお願いして本当に良かったです」
というご連絡をいただく瞬間が、何よりの喜びであり、この仕事を選んで良かったと心から思う瞬間です。
警察の内側を知る行政書士として、
“受理される可能性を高める告訴状・告発状”を、本気でサポートします。

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