警察官の階級と役職の詳細解説:警察組織の階層とその役割【元警視庁刑事のコラム】
警察官の階級と役職
警察官には、一般の企業と同じように「係長」や「課長」などの役職が存在します。しかし、警察の階級と役職が常に一致するわけではありません。この記事では、警察官の階級や役職について詳しく解説します。
警察官の階級とは?
警察の階級は、単なる役職だけでなく、法的・行政的な責任の違いを示します。たとえば、警察署での課長が「警部」や「警視」であるように、階級によって責任の範囲が異なります。また、警察本部の課長は警視または警視正というように、本部では階級に対しての役職が一段または二段下がります。
主要な警察官の階級と役職
以下は、警視庁を基準にした警察官の階級とその役職です。県警では、若干異なる場合がありますので、ご了承ください。
1. 巡査(最初の階級)
警察官として採用され、警察学校に入校した際に与えられる最も基本的な階級です。この階級には役職はなく、「○○巡査」と呼ばれます。よく誤解されますが、警察学校を卒業して警察官(巡査)になるわけではありません。都道府県警の採用試験に合格して採用され、警察学校に入校すれば、その日から警察官であり巡査です。
2. 巡査長
巡査から約2年(大卒)または約4年(高卒)後に昇進する階級です。法的には存在しない階級(その理由についてはこちらのページで解説)であり、役職はありませんが、職場では「○○班長」と呼ばれることがあります。
蛇足ですが、不祥事で巡査部長からこの階級に分限となり、さらに不祥事で巡査に格下げになった警察官を知っています。
3. 巡査部長
警察署では「主任」の役職に相当します。呼称は「○○主任」または「○○部長」です。警視庁本部では無役職となり、「○○部長」と呼ばれます。機動隊では「分隊長」となります。巡査・巡査長がやらなくてはならない掃除などの雑用から解放される一方で、特に責任が重くなるわけでも、仕事が増えるわけでもないので、「警察で一番いい階級」と言われることがあります。私自身、この階級にどっぷり浸かり、11年やりました。捜査二課時代に有名なパワハラ上司に仕えたことで一念発起して勉強し、警部補に昇任して捜査二課から逃げ出しました。巡査部長に昇任が決まると概ね40歳以下であれば、警察庁主幹の「管区警察学校」に約1か月入校して教養と訓練を受けます。41歳以上であれば、自県の警察学校で1週間程度の教養と訓練を受けます。
4. 警部補
警部補には3級職と4級職があり、役職に違いがあります。警察署では「係長」「統括係長」として役割を担い、警視庁本部では「主任」として働きます。機動隊では「小隊長」と呼ばれます。部下の巡査・巡査部長の人事管理をしないとならない他、係の実績向上にも尽力しなくてはならず、巡査部長に比べると一気に大変になります。係内で何か問題が発生すると、課長や課長代理などから厳しく叱責されます。巡査部長と同様概ね45歳以下であれば管区警察学校に約2か月入校して教養と訓練を受けます。それ以上の年齢であれば、自県の学校に短期間入ることになります。
5. 警部
警察署では「課長代理」または「課長」としての役割を担い、警視庁本部では「係長」となります。機動隊では「中隊長」です。署長室で行われる定例会議に出席できるのはこの階級からで、何か不祥事を起こしても組織から守られることが多く、真の意味で警察幹部とはこの階級からと言えます。警部補まではペーパーテストで良い成績を取れば受かりますが、警部は人事評点の割合が高く、ペーパーテストの成績だけではなれません。警察署では、週に1回~数回の当番(宿直)勤務から解放され、月に1~3回だけ、当番責任者として宿直勤務に就くことになります。定年退職後の再就職でも、警部補以下よりも良い職場を斡旋される傾向があります。制服の帽子に金線が入るのはこの階級からです。勤務中に運転することもなくなります。警部になっても、管理職試験に受からないと警察署の課長にはなれません。この階級になれれば、警察人生は一応成功したと言えるでしょう。ただし、一昔前なら警部になれば左団扇でどっかり自席に座っていられましたが、現在は署長や課長からのパワハラ被害にあうことも珍しくありません。警部に合格すると管区警察学校ではなく、警察大学に入校して教養と訓練を受けます。十数年前までは半年だったのですが、あまりにも長すぎるということで、現在は約2か月に短縮されています。概ね50歳以上で受かると自県の学校に短期間入るのは巡査部長や警部補と同じです。警部になると警察庁への異動があります。自分の都道府県警を一度辞めて警察庁に入庁する形になります。
6. 警視
警察署では「課長」「副署長」「署長」のいずれかに就任します。警視庁本部では「管理官」「理事官」「課長」などの役職に就きます。機動隊では「副隊長」や「隊長」がその役職となります。同期生の中でこの階級にまで上がれるのは数%だけですので、ここまでこれれば警察人生は大成功です。この階級以上になると昇任しても学校や大学に入校することはありません。
7. 警視正
警察署では「署長」としての役職に就き、警視庁本部では「課長」に位置付けられます。この階級になると、地方公務員から国家公務員に変わり、給与は国から支払われます。ただし、全国転勤はなく、定年まで採用された都道府県警勤務のままです。高卒警察官がなれるのはこの階級までです。
8. 警視長
警視庁本部では「参事官」や「部長」に任命される階級です。警察学校長もこの階級です。地方公務員採用の警察官がなれる階級はここまでです。これより上には、警察庁採用のキャリア組しか進めません。一部の県警では本部長の階級です。
9. 警視監
警察組織の上層部であり、役職は「副総監」となります。道府県警では本部長です。
10. 警視総監
警視庁のトップです。役職も階級も同じ「警視総監」です。
11.警察庁長官
全国警察の中枢である警察庁の長である警察庁長官には階級がありません。
旧記事
警察官に階級があるのはご存じかと思いますが、一般の会社同様「係長」「課長」などの役職も存在します。理由は、「課」があれば当然責任者である「課長」が必要だからで、「係長」の存在も同じ理由です。では、階級と役職が同期しているかというと必ずしもそうでなく、警察署の課長であれば、警部の課長もいれば警視の課長もいます。さらに警察本部の課長だと警視または警視正と一段階上がるという複雑さがあります。
警察の階級には頭に「司法」または「司法警察員」が付きますが、面倒なのでここでは省略します。
※以下の役職記載は警視庁の場合です。県警の場合はこれと異なります。
1 巡査
警察官採用試験に合格し、警察学校に入校した日から警察官であり、階級は巡査となります。一番下のヒラ社員ですから役職はありません。職場では「○○」と呼び捨てか「○○巡査」と呼ばれます。
2 巡査長
巡査になってから大卒で約2年、高卒で約4年で自動的に上がる階級です。実はこの巡査長という階級、法的には存在しません。詳しくはこちらで解説していますのでお読みください。
巡査長にも役職はありませんが、名前を呼ばれるときには「○○班長」と呼ばれるようになります。
3 巡査部長
巡査部長になると、警察署では「主任」の役職となります。呼称は「○○主任」または「○○部長」です。最近は「主任」のほうが多く使われます。警視庁本部に配属されると、階級に対する役職の割り振りは一段階下がりますので、巡査部長は巡査と同じで無役職となります。よって本部での呼称は「○○部長」です。機動隊では「分隊長」です。
4 警部補
警視庁の場合、東京都の給与制度に準じている関係で同じ警部補でも3級職警部補と4級職警部補とがいます。警察署では、3級職警部補は「係長」、4級職係長は「統括係長」となりますが、同じ係内に4級職係長が複数いる場合は筆頭の1名だけが「統括係長」となります。警視庁本部では、どちらも「主任」です。機動隊では「小隊長」です。
5 警部
警察署では、「課長代理」または「課長」です。警視庁本部では「係長」です。機動隊では「中隊長」です。警部になっても管理職試験に受からないと警察署の課長になれません。
6 警視
警察署では、「課長」「副署長」「署長」のいずれかです。警視庁本部では「管理官」「理事官」「課長」のいずれかです。機動隊では「副隊長」または「隊長」です。高卒でなれるのはこの階級までと言われています。
7 警視正
警察署では「署長」です。警視庁本部では「課長」です。この階級になると地方公務員から国家公務員となり、給与は国から支払われます。ただし、他道府県警への異動はありません。警視庁勤務のままです。地方公務員採用でこの階級になるには、「大卒」「警察庁派遣経験」が必要と聞いたことがあります。
8 警視長
警察署にこの階級の警察官はいません。警視庁本部では「参事官」または「部長」です。警察学校長もこの階級です。地方公務員採用の警察官がなれる階級はここまでです。これ以上は、警察庁採用のキャリア組しか進めません。
9 警視監
副総監
10 警視総監
道府県警のトップは「警視監」または「警視長」の階級で役職は「本部長」です。警視庁の場合は、両方「警視総監」です。
淺利 大輔
あさり だいすけ
行政書士淺利法務事務所 代表
私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。
