闇バイト事件の犯人

 2024年11月現在、闇バイトによる悪質な強盗事件が後を絶ちません。この闇バイト自体は、今に始まったものではなく、かれこれ20年近く前からあります。元々は、特殊詐欺(オレオレ詐欺)の出し子や受け子として募集されていましたが、犯行に欠かせない銀行口座の闇相場での値段がどんどん上がり、犯行形態が振込から現金狙いに変化し、その結果として詐欺から強盗に流れたものと思われます。銀行口座の値段ですが、当初は1口座2~3万円だったのが、銀行の新規口座開設の審査が厳しくなったことにより、現在では1口座十数万円にまで上がっていると言われています。
 私は、この闇バイトに応募して特殊詐欺の出し子や受け子をやって捕まってきた犯人を何人も調べてきました。彼らに共通するのは「人生終わった感ありあり」な人たちという印象です。具体的には、家族に見放されている、仕事がない、仕事をする気がない、取り柄がない、努力する気が無い、友だちがいない、彼女もいない、借金がある、学歴がない、自分の将来を全く考えていない(今日のことしか考えていない)、自暴自棄となります。彼らは「1日数時間だけで○万円!」「書類を運ぶだけで○万円!」といった闇バイトの募集を見て応募したわけですが、それについて質問すると、全員が「何らかの犯罪だと最初からわかっていた」と答えました。最近の報道では、闇バイトで捕まった犯人が「免許証などの写真を送らされて、家族に危害を加えられるなどと脅されて仕方なくやった。」などと言っているとされていますが、嘘です。少しでも自分の罪を軽くしようと言い逃れしているだけで、彼らは全員最初から犯罪をやってお金をもらおうと思って応募しています。先に書いたとおり、彼らは今のことしか考えておらず、さらに自暴自棄になっているので、捕まって刑務所に行っても、もうどうでもいいやという心境なのです。なので、逮捕されても、特にがっかりするようなこともなく、取調べに対してはうつろな目をしてボソボソと答えます。言い方は悪いかもしれませんが、「廃人」だと感じました。
 こうした実行犯である闇バイト員はかなりの人数が逮捕されていますが、残念ながら犯行を計画している幹部クラスは未だに捕まっていません。これは、シグナルなどの暗号アプリが使われていることと、飛ばし携帯の存在が理由です。通常、携帯電話を新規で購入するには、店舗に行って写真付きの身分証明証を提示しないとなりません。飛ばし携帯は複数のレンタル業者を介して利用されており、末端契約者にたどり着いても、偽造免許証で契約されていたり、闇バイト員が契約して公園の植え込みの中に隠して別な闇バイト員に手渡すなどの方法で使われており、上につながらないのです。さらに最近は、かけ子や指示役の居場所が国内から東南アジアに移っており、その検挙が一層困難になってきています。都内を歩いていると、20歳代でフェラーリやランボルギーニといった数千万円もするスーパーカーに乗っている者たちがいます。全員とはもちろん言いませんが、彼らの中には闇バイト詐欺や強盗の幹部クラスがいることは間違いないと思います。いずれ、画期的な捜査手法が生まれて、幹部クラスが一網打尽になる日が来ることを祈らずにはいられません。


淺利 大輔

あさり だいすけ

行政書士淺利法務事務所 代表

私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。

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