ある捜査一課管理官の言葉(刑事と息子の会話)【元刑事のコラム】
大井警察署で4ヶ月間に4件の殺人事件が発生したとき、夜中、捜査本部で一杯やっているときに、50歳代後半の捜査一課管理官(警視)がボソッと話した言葉を今でも覚えています。この管理官は、巡査からずっと刑事一筋で、捜査一課の勤務経歴も長く、ずっと第一線で犯罪と戦ってきた人でした。結婚して息子ができましたが、休みもろくに取らず、長年仕事漬けの毎日で、息子さんを遊園地や観光地に連れていったり、旅行に行ったことはほとんどなかったそうです。
この管理官がある警察署の刑事課長になったとき、息子さんは高校生になっていたそうです。課長になると宿直勤務は月に1回か2回程度になり、土日祝日はだいたい休みになります。そこで、今まで息子さんをこれといった場所に連れていってなかったことを思い出し、その息子さんに「今まで仕事ばかりで、お前をどこにも連れて行ってやらなくて悪かった。これからは結構休みを取れるようになったから、どこかに連れていってやるよ。行きたい場所を言ってごらん。」と話しかけたそうです。すると息子さんは「お父さん、ぼくは、小さい頃や小学生の頃に、友だちが親にいろんな場所に連れていってもらっているのがすごくうらやましかったけど、我慢してたんだよ。でも、もう高校生なんだ。もう、お父さんと一緒にどこかに行きたい歳じゃないんだよ。遅すぎなんだよ。」と言われたそうです。最後に管理官は、「息子に喜んでもらえると思ったのに、もうね、ショックでね、何も言えなかったよ。」とつぶやきました。
現代は警察内部でも「ワークライフバランス」が提唱され、刑事でもほぼ安定して休みが取れるようになっています。この管理官のような刑事はほとんどいないはずです。
淺利 大輔
あさり だいすけ
行政書士淺利法務事務所 代表
私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。


