勤務中にゲームをしていたバカ警察官の話【元刑事のコラム】

 私は、1992年に警察学校を卒業し、3人の同期生と一緒に4人で都心のX警察署に配属されました。その中の一人にY巡査がいました。Yは小柄で小太り、眼鏡をかけて、いつもボソボソとしたしゃべり方をする、好青年とは真逆な感じの男でした。そんなYでしたが、同期だったので仲良く付き合い、研修中にはよく飲みに出かけました。
 研修期間が終わり、私は地域1係、Yは地域3係になりました。4部制交替制勤務の関係で、地域1係が宿直勤務の日は地域3係は休み、地域3係が宿直の日は地域1係は休みという関係にありました。元来の暗い性格もあって、X署内でYの評判は悪く、職質検挙などの実績も極めて低調でした。卒業してから2年ほどで私が巡査長になったのに、Yが巡査のままだったのもそうした事情からでした。卒業から3年ほどして私たち同期4人は同時に機動隊に異動になり、その後は疎遠になり、Yの消息は全くわかりません。
 それから10年以上が経ち、私が捜査第二課で勤務していたときのことです。同じく捜査二課で勤務していた、X警察署で私の1年後輩だったKと会って一緒に飲む機会がありました。Kは、X警察署の独身寮でYと同部屋だった者です。しばらく、昔話をした後、Yの話題になりました。するとKは、「淺利先輩、実はこの話、今まで黙っていたんですけど、今日初めて話します。Y先輩は勤務中、寮でセガサターンのゲームやっていたんです。」と言いました。びっくりして「え、どういうこと?」と聞くと、「うちの休みの日は3係は泊まりなんで、Y先輩は交番勤務でいませんでした。ところが、私が夜中に寝ていると、制服姿のY先輩がそーっと部屋に戻ってきて、ゲームをやるんです。私は気付かないふりをしていたんですが、1度や2度のことではなくて、3係の泊まりのときには毎回のようにやっていました。」とのことでした。Yは、深夜の警ら(パトロール)勤務の時間帯になると、他の勤務員には「警らに行ってきます」と言って交番を出ると、警らをせずに寮に戻り、警ら時間が終わるまでの2時間前後、自室でゲームをやっていたのです。
 これを聞いて愕然としました。私は宿直で交番勤務に就くと、毎回のように先輩班長にどやされながら、暑い中、寒い中、ほとんど寝ずに交通違反取り締まりや、職務質問、110番取扱などで飛び回っていました。もちろん、寮の自分の部屋に戻ったことなど一度もなく、そんなことは夢にも考えたことはありませんでした。それなのに、Yは毎回のように勤務放棄して寮に戻り、自室でゲーム三昧だったというのです。これではYが実績低調だったのも当然のことでした。
 その後、Yとは会うこともなく、噂すら聞きません。もし、辞めていなければ定年まであと5年近くある計算になりますが、おそらくはとんでもないダメ警察官になっていることでしょう。都民のため、警視庁のためにも、Yがとっくに辞めていることを祈ります。


淺利 大輔

あさり だいすけ

行政書士淺利法務事務所 代表

私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。

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