下着泥棒のガサに行った話【元刑事のコラム】
某署刑事課にいたときに、常習の万引き犯人が逮捕されてきました。犯人は20歳代の頼りげない感じの暗い男でした。男は、衣料品店の女性下着売り場で、ブラジャーを数点万引きした事実で逮捕されていました。「下着泥棒」というと、ベランダに干してあったり、コインランドリーで洗濯中の「使用済み中古」を盗むのが通例で、「未使用新品」を盗むというのは滅多にない珍しい手口でした。
余罪が見込まれたことから、検察官から自宅のガサをするように下命がありました。早速、ガサ状の令状請求をしてその発付を受け、犯人宅に向かいました。両親との3人暮らしであったことから、立会人は両親のどちらかにすることにしました。自宅に着いて、ピンポンすると、50歳代の母親が出てきたので、事情を説明した後、ガサ状を示してガサを開始しました。順次ガサを進めていき、あるクローゼットに近づくと、母親はその前に立ち塞がり、「ここには何もありませんから」と言いました。「はい、そうですか、では見ませんね」なんて刑事が言う訳がありません。職務質問でもそうですが、相手が「ない」と言った場合は何かあることが多いのです。「お母さん、いいからそこをどいてください」と言って説得して母親をどかせ、クローゼットを開けた瞬間…「ドドドッと大量のブラジャーが中から落ちてきました。全部値札が付いたままの新品で、サイズはGとかHとかの特大サイズばかりでした。母親は「あーこれ私のー」などとっさの言い訳をしましたが、サイズが異なることは明らかですし、50歳代の主婦が新品のブラジャーを5、60本も買ってストックしておく訳がありません。すぐにうなだれて息子のものであることを認めたので、全部差し押さえました。
ちなみにこの犯人ですが、逮捕されたときにブラジャーをしていたのは言うまでもありません。
淺利 大輔
あさり だいすけ
行政書士淺利法務事務所 代表
私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。


