刑事と鑑識の関係【元刑事が解説】

 刑事と鑑識は、互いに協力しながら事件捜査に当たります。警察内部ではよく「捜査の両輪」という言葉でその協力関係が表現されます。
 ただし、両者の関係が常に上手く働いているかといえば必ずしもそうではありませんでした。特に2010年代頃までは、刑事になるのに受ける「捜査講習」と、鑑識になるための「鑑識講習」が別れていたため、その身分関係もはっきり別れていたからです。したがって、鑑識から刑事になる警察官はあまりいませんでしたし、その逆はもっといませんでした。現在は、刑事になるにも鑑識になるにも「捜査講習」に一元化されたので、そうした身分意識はほとんどなくなり、鑑識から刑事になるのは当たり前にありますし、その逆も希望すれば通るようになっています。
 私が大井署で巡査部長として駆け出し刑事だった当時、宿直勤務のメンバーは、暴力犯の係長(警部補)、私、鑑識係のベテラン班長(巡査長)のたった3人だけでした。島部警察署を除き、警視庁の警察署で刑事課員の宿直員が3人というのは最低レベルの人数です。傷害や万引事件で現行犯逮捕となったとき、係長は犯人の取調べ担当なので取調室に入ったきりになります。私は、被害者から被害届を取った後、被害者供述調書を作成しないとなりません。またこれをやりながら地域課員の現行犯人逮捕手続書の作成も手伝う必要があります。そこにさらに目撃者がいる場合は、目撃者からも参考人供述調書を作成しないとなりません。そこで、鑑識の班長に「班長、申し訳ないのですが、マル目(目撃者)の調書取ってもらっていいですか」と低姿勢で頼んでも「俺は刑事じゃなくて鑑識だから調書はやらないよ」と言って応じてくれないのです。一事が万事こんな感じでしたから、刑事課の宿直員は3人ではなく、2.5人といった感じでひどく苦労した思い出があります。鑑識講習出の鑑識さんもあと5年程度で全員定年で絶滅すると思いますので、その後はこんなことを言う鑑識もいなくなるでしょう。


淺利 大輔

あさり だいすけ

行政書士淺利法務事務所 代表

私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。

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