指名手配について【元刑事が解説】
交番の掲示板や警察署で、写真付きで公開されている犯人の正式名称をご存じでしょうか。一般に「指名手配」と呼ばれていますが、正式には**「全国第一種指名手配」**といいます。
この全国第一種指名手配に登録されるには、簡単な手続きではありません。各都道府県警の捜査共助部門による厳格な審査があり、
- 逮捕状が正式に発付されていること
- 指紋やDNAなどの客観的証拠があること
- 防犯カメラ画像や写真鑑定などで本人特定が確実であること
- 誤認逮捕のおそれが極めて低いこと
といった条件を満たす必要があります。
これは、無関係な人を誤って逮捕するという重大なミスを防ぐためです。
登録されると、その情報は警察庁の全国システムに共有され、全国どこの警察署でも即座に「指名手配犯」であることが確認できます。
指名手配犯を発見したらその場で逮捕されるのか?
では、全国指名手配犯が発見された場合、どうなるのでしょうか。
結論から言うと、発見した警察官がその場で逮捕するか、一旦警察署へ任意同行した上で逮捕します。
ここで疑問になるのが、「逮捕状はどうするのか?」という点です。
実は逮捕状の原本は通常、事件を担当している警察署が保管しており、全国の警察署にコピーがあるわけではありません。
そのため、遠方で犯人が見つかった場合は、
- 逮捕状の内容を確認
- 緊急執行の手続き
- 後から正式な逮捕状原本を補完
という流れで対応します。
これは、犯人を目の前にしながら「逮捕状が届くまで待つ」という非現実的な事態を避けるためです。
指名手配犯は誰が護送する?意外なルール
逮捕された犯人は、法律上、逮捕から48時間以内に必要な取調べを行い、検察庁へ送致する必要があります。
そのため、手配した警察署の警察官が全国どこへでも迎えに行っていたのでは、時間的に間に合わないケースがあります。
そこで全国第一種指名手配では、原則として、
逮捕した警察署の警察官が、犯人を手配元の警察署まで護送する
というルールになっています。
たとえば、
- 那覇警察署が指名手配
- 犯人が札幌で発見・逮捕
この場合、札幌の警察官が那覇まで犯人を護送することになります。
距離を考えるとかなり大変な任務です。
昔は護送してくれた警察官を宴会で歓迎していた?
これは今ではほとんど見られませんが、2010年頃までは少し違いました。
遠方から指名手配犯を護送してきてくれた警察官に対して、手配元の警察署が感謝の意味で“席を設ける”ことが珍しくありませんでした。
私の同僚が新潟県の警察署へ犯人を護送した際には、新潟の有名な日本酒が大量に用意されており、大歓迎を受けたそうです。
当時の警察組織にはそうした文化が残っていました。
もっとも、現在は警察署内で飲酒する文化そのものがほぼなくなり、このような光景を見ることはまずありません。
成田国際空港警察署だけは例外
この「逮捕した警察署が護送する」というルールには例外があります。
それが成田国際空港警察署です。
成田国際空港警察署
なぜ例外なのか。
成田空港では、
- 指名手配犯が海外逃亡を図る
- 海外から日本へ戻ったところで発見される
といったケースが非常に多く、日常的に指名手配犯の検挙があります。
もし成田空港警察署の署員が毎回全国へ護送していたら、本来の空港警備業務が回らなくなってしまいます。
そのため、ここだけは特例として、
手配した警察署が成田まで迎えに行く
という運用になっています。
私も現役時代、一度だけ成田まで迎えに行ったことがありますが、空港警察の方々は完全に“慣れた対応”でした。
まとめ
全国第一種指名手配は、単に「写真を公開して探す制度」ではありません。
- 厳格な審査を経て登録
- 全国警察で即時情報共有
- 発見時は緊急逮捕対応
- 原則は発見した警察署が護送
- 成田国際空港警察署だけは例外
こうした仕組みによって、日本全国どこでも迅速に指名手配犯を確保できる体制が整えられているのです。
元刑事として見ると、ニュースで「指名手配犯逮捕」と一言で報じられても、その裏ではかなり複雑な運用が行われています。
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淺利 大輔
あさり だいすけ
行政書士淺利法務事務所 代表
私は、2024年6月までの32年間、警視庁警察官として勤務し、そのうち25年間を刑事として告訴・告発事件の捜査に携わってきました。
中でも、告訴・告発を中心に扱う知能犯捜査の経験が最も長く、数多くの事件で、実際に告訴状・告発状を受理し、捜査を進めてきました。
刑事部捜査第二課在籍時には、警視庁本庁舎(霞が関)の聴訴室において、告訴状を持参される弁護士の先生方と日々向き合い、
「事件として受理すべきか」「問題点は何か」
その現場の判断基準を、実務の中で徹底的に学び、鍛えられてきました。
だからこそ私は、警察が何を重視し、どこを見て告訴状を判断するのかを、初期段階から具体的に想定しながら作成することができます。
告訴・告発事件については、刑事の中でも専門性を持って取り組んできた分野であり、強い自負があります。
現在は、千葉県犯罪被害者支援センター会員として、
「費用面で弁護士への依頼をためらっている方」
「警察に何度も相談したが、前に進めずにいる方」
そうした犯罪被害者の力になりたいとの思いから、行政書士として告訴状・告発状の作成支援を行っています。
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「告訴、受理されました。淺利さんにお願いして本当に良かったです」
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