昔、郵便局に特別司法警察職員がいた話【元刑事が解説】
厳密に言えば郵便局で勤務していたわけではありませんが、当時の郵政省や日本郵政公社には「郵政監察官」という特別司法警察職員が存在しました。似たような存在として、国鉄時代の「鉄道公安官」や、現在も存在する「麻薬取締官」などがあります。この郵政監察官が何をしていたかと言うと、郵便や宅配物の窃盗、切手や小為替の偽造などの捜査とされています。1995年に私が巡査部長昇任試験に合格して関東管区警察学校に入学したとき、この郵政監察官の方が2名、同時に入校してきました。彼らに聞いた話では、実際の仕事のほとんどは、郵便局員による郵便物からの現金抜き取り、つまり内部犯行の犯人を捕まえることだったそうです。本来現金は現金書留で送ることになっているのですが、料金が高いことから、普通郵便で送る人が結構多く、それを狙って盗む局員がいたとのことです。利用者が「手紙が付着だ」と苦情を言っても、普通郵便には送った証拠が残らないため、泣き寝入りするしかなく、そこを狙った犯行です。
このとき入校した郵政監察官ですが、他の学生が30歳代が多い中、二人とも年齢が50歳前後、小柄で、とても警察権を持つ公務員には見えませんでした。それもそのはず、「特別司法警察職員」とはいっても、元々は郵政省に「普通の公務員」として採用された人たちです。希望したのかどうかはわかりませんが、たまたま郵政監察官になってしまったという人たちなのです。周囲の学生が全員警察官の制服を着ている中、彼らには制服が存在しないため、二人だけぽつんとスーツ姿だったため、余計に違和感がありました。一番気の毒だったのは、柔道や逮捕術の訓練でした。おそらく生まれて初めて着る柔道着で、やったことのない受け身などをやらされてヒーヒー言っていました。確か盾を持っての駆け足もやらされたはずなので、さぞかしキツかったことと思います。
その後、国鉄民営化で鉄道公安官が廃止されたように、郵政民営化で郵政監察官制度も廃止されました。鉄道公安官の何割かは全国警察に警察官として再就職しましたが、郵政監察官は一般の社員として日本郵政に残りました。
淺利 大輔
あさり だいすけ
行政書士淺利法務事務所 代表
私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。
