告訴状が受理された後の流れ|警察の捜査から起訴・裁判まで元刑事が解説
告訴状が警察に受理されると、事件は正式な刑事事件として捜査が開始されます。
しかし、「受理された後は何が行われるのか」「犯人はすぐに逮捕されるのか」「検察へはいつ送致されるのか」など、具体的な流れを知らない方は少なくありません。
この記事では、元警視庁刑事として25年以上の捜査経験をもとに、告訴状受理後の捜査の流れを分かりやすく解説します。
告訴状が受理されると警察は正式に捜査を開始する
告訴状が受理されると、警察には捜査を行い、事件を検察庁へ送致する義務が生じます。
捜査の内容は事件によって異なりますが、詐欺罪、横領罪、暴行罪、傷害罪、性犯罪などでは、概ね次のような流れで進みます。
① 告訴人供述調書(告訴人調書)の作成
まず行われるのが、**告訴人供述調書(告訴人調書)**の作成です。
刑事が告訴人から詳しく事情を聴き取り、事件の経緯や被害状況を供述調書として記録します。
調書作成時のポイント
- 契約書・領収書・メール・LINEなどの関係資料を持参する
- 日記やメモなど時系列が分かる資料も役立つ
- 刑事の質問には事実を正確に回答する(わからない質問には「わからない」と答える)
- 犯人が触れた証拠品は素手で触らず紙袋などに入れて持参する
- スマートフォンやSDカード内の画像・動画・メールも重要な証拠となる
② 実況見分・犯行状況の再現
暴行罪、傷害罪、性犯罪などでは、現場で実況見分が実施されることがあります。
実況見分では、
- 現場の状況確認
- 距離や位置関係の測定
- 写真撮影
- 防犯カメラ映像の収集
- 証拠品の押収
などが行われます。
事件によっては警察署内で犯行状況を再現し、供述内容との整合性を確認することもあります。
③ 参考人から事情聴取を行う
警察は事件関係者や目撃者からも事情聴取を行います。
例えば、
- 社内での犯罪なら上司・同僚
- 飲食店内なら店員・他の客
- 詐欺事件なら取引先や他の被害者
などから証言を集めます。
詐欺罪や横領罪では銀行口座の入出金記録を照会することが多く、金融機関から回答が届くまで1週間から1か月程度かかる場合があります。また送金先が判明した場合は、さらにその口座にも照会をかけるため、長期間に及ぶこともあります。
④ 指紋鑑定・DNA鑑定などの科学捜査
犯人の遺留品がある場合は、
- 指紋鑑定
- DNA鑑定
- 筆跡鑑定
- 防犯カメラ映像の解析
などの科学捜査が行われます。
ただし、前科や前歴がない人物の場合は、警察のデータベースに指紋やDNA情報が登録されていないため、照合できないケースもあります。
⑤ 検察官と捜査方針を協議する(検事相談)
告訴事件は、他の一般事件と異なり、送致には検察官の事実上の許可が必要です。したがって、捜査がある程度進むと、担当刑事は検察官へ事件内容を報告します。
これを俗に**「検事相談」**と呼びます。
検察官からは、
- 追加捜査
- 証拠の補強
- 関係者の再聴取
などの指示を受けることが少なくありません。
なお、人事異動が多い3月前後は事件処理が遅れるケースも少なくありません。
⑥ 検察庁へ送致(送付)される
捜査が終了し、検察官からのOKがもらえると、事件は検察庁へ送られます。
ここで混同されやすいのが「送致」と「送付」の違いです。
送致とは
被疑者の身柄、または捜査書類を検察庁へ送ることをいいます。
送付とは
告訴事件・告発事件で、被疑者を逮捕せず、書類だけを検察庁へ送ることをいいます。
一般の方はどちらも「送検」と呼ぶことが多いですが、法律上は区別されています。
⑦ 必要に応じて逮捕・捜索差押えが行われる
逃亡や証拠隠滅のおそれがある場合には、裁判官から逮捕状・捜索差押許可状の発付を受けて、
- 被疑者の逮捕
- 自宅や会社の捜索
- パソコン・スマートフォン・書類などの押収
が行われます。
逮捕後は、
- 48時間以内に検察庁へ送致
- 最大20日間勾留
- 検察官による取調べ
という流れになります。
⑧ 検察官が起訴・不起訴を判断する
事件送致後は、検察官が最終的に
- 起訴
- 不起訴
を決定します。
起訴されると被疑者は「被告人」となり、警察署から拘置所に移送され、刑事裁判が始まります。被告人になると保釈の権利が与えられるので、裁判所が保釈を認め、保釈金を預ければ保釈されます。
事実を認めている事件では比較的短期間で判決となりますが、否認事件では証人尋問などが行われ、裁判が長期化することもあります。
告訴人も証人として出廷を求められる場合があります。
⑨ 起訴後は検察官が裁判を担当する
事件が起訴されると、主な役割は警察から検察官へ移ります。
担当刑事が裁判へ出廷することはありますが、通常は公判の傍聴まで行うことはほとんどありません。
一方で、否認事件では検察官から追加捜査を依頼されることもあります。
告訴が受理されてから送致までの期間はどれくらい?
「告訴状が受理されたら、どのくらいで結果が出ますか?」という質問をよく受けます。
結論からいうと、一概には言えません。
例えば、
- 刑事課の持っている事件数
- 捜査員の人数
- 事件の複雑さ
- 被疑者が複数いるか
- 鑑定や口座照会の有無
などによって大きく変わります。
比較的早い事件では数か月程度ですが、複雑な詐欺事件や経済事件では1年以上、場合によっては数年かかることもあります。
告訴を成功させるためのポイント
告訴が受理された後も、事件を適切に進めるためには次の点が重要です。
- 証拠を整理して提出する
- 供述内容を一貫させる
- 警察からの連絡には迅速に対応する
- 捜査は長期間になる可能性を理解しておく
十分な証拠と正確な供述が、適正な捜査と処罰につながります。
まとめ|告訴状受理後の流れを理解して適切に対応しましょう
告訴状が受理されると、警察は正式な捜査を開始し、事情聴取、実況見分、証拠収集、参考人聴取、検事相談などを経て事件を検察庁へ送致します。その後は検察官が起訴・不起訴を判断し、起訴された場合には刑事裁判へ進みます。
告訴事件は一般の刑事事件より時間がかかることも珍しくありません。しかし、証拠を十分に準備し、警察の捜査に協力することで、事件の真相解明と適正な処罰につながる可能性が高まります。
○警察への告訴状・告発状の作成は元警視庁刑事の行政書士にお任せください。こちら
淺利 大輔
あさり だいすけ
行政書士淺利法務事務所 代表
私は、2024年6月までの32年間、警視庁警察官として勤務し、そのうち25年間を刑事として告訴・告発事件の捜査に携わってきました。
中でも、告訴・告発を中心に扱う知能犯捜査の経験が最も長く、数多くの事件で、実際に告訴状・告発状を受理し、捜査を進めてきました。
刑事部捜査第二課在籍時には、警視庁本庁舎(霞が関)の聴訴室において、告訴状を持参される弁護士の先生方と日々向き合い、
「事件として受理すべきか」「問題点は何か」
その現場の判断基準を、実務の中で徹底的に学び、鍛えられてきました。
だからこそ私は、警察が何を重視し、どこを見て告訴状を判断するのかを、初期段階から具体的に想定しながら作成することができます。
告訴・告発事件については、刑事の中でも専門性を持って取り組んできた分野であり、強い自負があります。
現在は、千葉県犯罪被害者支援センター会員として、
「費用面で弁護士への依頼をためらっている方」
「警察に何度も相談したが、前に進めずにいる方」
そうした犯罪被害者の力になりたいとの思いから、行政書士として告訴状・告発状の作成支援を行っています。
実際に、
「告訴、受理されました。淺利さんにお願いして本当に良かったです」
というご連絡をいただく瞬間が、何よりの喜びであり、この仕事を選んで良かったと心から思う瞬間です。
警察の内側を知る行政書士として、
“受理される可能性を高める告訴状・告発状”を、本気でサポートします。


