警察に受理された告訴・告発事件が検察庁に送致されるまでの期間【元刑事が解説】
告訴・告発事件の送致までにかかる期間は、その警察署刑事課の多忙さ・既に受理して未処理となっている告訴・告発事件の数、その事件の複雑さなどによって全く異なります。例えばですが、未処理の告訴・告発事件がゼロの警察署で、単純な事件(窃盗、器物損壊等)であれば、1か月程度で捜査を終えて送致となるでしょう。反対のケースですが、以前私が勤務していた警視庁麹町警察署(管内に主要官庁や大手企業の本社が多数ある)刑事課知能犯係では、未処理の告訴・告発事件が20件を超えた時期がありました。しかも、いずれも官庁や大手企業が告訴人(被害者)の事件ばかりで、被害額も少なくて数百万円、多いものは億単位と処理に時間がかかるものばかりでした。古い事件から処理していかないと公訴時効が来てしまうため、古いものから順番に捜査・送致していました。したがって、受理したばかりの事件は後回しになります。1件の事件捜査に3か月かかると計算した場合、一番新しい事件に着手できるのは60か月後、つまり5年後ということになります。実際、私が担当して検察庁に送致した事件は、いずれも5年くらい前に受理したものでした。
麹町警察署の例は極端かもしれませんが、よほど田舎の警察署でもない限り、未処理の告訴・告発事件は数件抱えているのが普通でしょう。よって、今日受理された告訴・告発事件が送致されるのは1年後くらいが平均と思います。
【告訴・告発の送致までの期間】警察の対応と事件処理の実情とは?
告訴・告発事件が送致されるまでにかかる期間は?
告訴や告発が警察に受理された後、事件が検察庁に送致されるまでにかかる期間は一律ではありません。これは、警察署の刑事課の忙しさや、未処理事件の数、事件の内容・複雑さなど、さまざまな要因によって大きく左右されます。
たとえば、未処理の事件がほとんどない警察署で、内容が比較的単純な事件(窃盗や器物損壊など)の場合、おおよそ1か月程度で捜査が完了し送致されるケースもあります。
複雑な事件や都心部の警察署では数年かかることも
一方、都心部や大規模な警察署では状況が大きく異なります。筆者が勤務していた警視庁麹町警察署では、刑事課知能犯係において20件以上の未処理告訴・告発事件を抱えていた時期がありました。
告訴人は主に官公庁や大手企業で、被害金額も数百万円から億単位と大きく、捜査に多大な時間と労力が必要でした。また、公訴時効の関係から古い事件から優先的に処理する必要があり、新たに受理された事件は後回しにされるのが実情でした。
たとえば、1件あたり3か月かかると仮定すると、20件処理するには約60か月(=5年)。実際に、私が担当して送致した事件も、受理から5年後というケースがほとんどでした。
一般的な告訴・告発事件の送致期間の目安
このような都心部の警察署の例はやや極端かもしれませんが、地方であっても通常、警察は複数の未処理告訴・告発事件を抱えているのが一般的です。
そのため、今日受理された告訴事件が送致されるまでの期間は、平均しておよそ1年程度かかると考えるのが現実的です。
【まとめ】告訴・告発から送致までは予想以上に時間がかかる可能性も
告訴・告発した後、すぐに事件が動くとは限りません。事件の処理は警察の状況や事件の性質によって大きく変動します。特に、複雑な事件や都心部の警察署では、数年単位で待つことも珍しくありません。
告訴・告発を検討している方は、このような現実も踏まえて、今後の対応を考えることが重要です。
淺利 大輔
あさり だいすけ
行政書士淺利法務事務所 代表
私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。
