刑事告発とは何ですか?【元刑事がわかりやすく解説】
刑事告発とは正しい言葉ではなく、刑事訴訟法上は単に「告発」と規定されています。しかし、「告発」という言葉は、組織の不正を内部の人間が公にするという意味の「内部告発」という一般用語のほうが広く使われているため、区別にするために「刑事告発」と呼ぶことが多くなっています。※以下刑事告発は単に「告発」と記載します。
告発を一言で言うと、「犯人の処罰を第三者が捜査機関に求める行為」となります。お金を盗まれたり、殴られたり、脅された被害者は、警察に被害届を出したり、告訴状を提出したりして、事件捜査と犯人の処罰を求めます。これに対して、告発は、事件の被害者ではない人が事件捜査と犯人の処罰を求める行為となります。告発は誰でもできるとされていますので、未成年者や外国人にも可能となります。犯人が自分自身を告発することは、法的には可能かもしれませんが、実務上は自首または任意出頭という形になるでしょう。
告発は、文書または口頭で行うこととされていますが、実務上は文書で行われることがほとんどです。私は32年間警察官をやりましたが、告訴や告発を口頭で受理し、刑事が告訴調書や告発調書を作成しているのを一度も見たことがありません。
告発状には決まった様式はありませんが、必ず記載しなければならない項目があります。作成日、宛先、告発人氏名・住所等、告発する犯罪事実、犯人の処罰を求める意思の5つです。匿名の告発は受理されません。被告発人(犯人)については、誰かわからなければ「不詳」で構いません。告発する犯罪事実は「いつ、どこで、何をした」という事実の摘示が必要です。例えば「○○町に住んでいる山田○○は、自宅において何らかの薬物をやっている可能性が高いと思われるので、捜査して犯行を明らかにして処罰してほしい」というのは事実の摘示ではなく「単なる推測」に過ぎませんので、受理されません。また「○○株式会社に勤めている鈴木○○は、令和2年から令和6年の間に、関東地方のどこかで、私の現金を合計10万円くらい盗んだ」では、「いつ、どこで」が曖昧すぎて事実の摘示とは言えないでしょう。
告発は、被害者が存在しない犯罪の申告にも使われます。例えば、薬物犯罪、地方公務員法違反、贈収賄事件、弁護士法違反事件などです。
告発には、ここまで話したような、任意的告発の他に、必要的告発があります。これは、公務員が「自己の所管する業務に関して犯罪を知ったときは告発しないとならない」というものです。具体的に言えば、税務署職員が脱税を認めた場合、消防官が消防法違反を認めた場合、市役所の福祉課員が生活保護費の不正受給を認めた場合などになります。あくまでも自己の所管する業務に関してなので、市役所職員が勤務中に人が殴られるのを見たとしても、告発する義務はありません。
淺利 大輔
あさり だいすけ
行政書士淺利法務事務所 代表
私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。
