告訴、被害届と示談について【元刑事が解説】
犯罪被害にあって被害者が警察に被害届や告訴状を提出した後、犯人側が弁護士に依頼するなどして、「示談」を持ちかけてくることがあります。「示談」とは、民法上の「和解」と同じです。具体的には、犯人側が謝罪すると同時にお金(示談金)を被害者に支払い、被害者はその代わりに被害届または告訴状を取消し(取下げともいいます。同じ意味です。)、犯人の処罰希望を撤回するというものになります。
このような場合に、被害者側も弁護士を立てたほうがいいかという質問をよく目にしますが、着手金だけで何十万円も取られます。示談金が相場よりもはるかに安く、相手側弁護士の態度が高圧的であるなどの場合を除き、依頼する必要はないと思います。通常、犯罪の被害者側に落ち度はないことがほとんどですから、相手の不当な要求に動じることなく、毅然とした態度で対応し、納得いかなければ断れば良いだけです。
示談するかしないかは被害者の気持ち次第です。「せっかくここまで捜査してくれた警察に悪い」とおっしゃる方もいらっしゃいますが、お金で解決することは決して悪いことではありませんし、警察官はそうした取り扱いに慣れていますので気にすることはありません。ご自分の気持ちで示談するしないを決めてください。
示談に際して注意しないといけない点があります。お金をもらう条件として、被害届または告訴状の取消しをする場合、「取り消したのに犯人が示談金を払わない」ことが希にあります。この場合、非親告罪であれば、被害届または告訴状の取消しを取り消す、または再度告訴状を提出することが可能です。しかし、親告罪(器物損壊、名誉毀損、侮辱、過失傷害等)の場合、一度告訴を取り消すと二度と告訴ができません(再告訴の禁止)し、取消しを取り消すこともできません。最悪の場合、示談金を1円ももらえず、犯人は無罪放免となってしまいます。したがって、示談が成立した場合は、示談金が全額支払われる前には、絶対に被害届や告訴状を取り消してはいけません。必ず、示談金の入金が確認できてから警察に取消状を提出してください。
淺利 大輔
あさり だいすけ
行政書士淺利法務事務所 代表
私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。
