警察官になるには?大卒・高卒の違い【元警視庁刑事が解説】

警察官を目指す場合、都道府県警の採用試験を受験する必要があります。採用試験には「大卒(またはその見込み)」と「高卒(またはその見込み)」の2つの枠があり、専門学校卒は高卒枠で受験することになります。高校生の中には、どちらの枠で受験すべきか迷う方も多いため、ここでは大卒・高卒それぞれの違いについて詳しく解説します。

警察官の給料:大卒と高卒でどのくらい違う?

給料については、基本的に大卒警察官の方が高いです。しかし、具体的な金額は年度や都道府県警ごとに異なるため、各自で確認することが重要です。

高卒で警察官になれば、大卒より4年早く給料をもらい始めることができます。また、大学進学には学費が必要ですが、高卒なら学費の負担がなく、さらに4年分の退職金加算も考慮すると、トータルで見ると高卒の方が金銭的にお得な場合もあります。

警察学校の入校期間の違い

警察学校の入校期間は以下の通りです。

  • 高卒警察官:10か月(以前は12か月)
  • 大卒警察官:6か月

どちらも警察学校入校時から給料が支給されるため、経済的には安定したスタートを切ることができます。

昇任試験の受験資格:大卒と高卒の差

警察官としてキャリアを積む上で重要なのが昇任試験です。

  • 巡査部長試験:大卒は2年、高卒は4年で受験資格取得
  • 警部補試験:大卒はさらに2年、高卒は4年で受験資格取得

試験の合否は学歴ではなく、純粋に試験の点数によるため、大卒・高卒に関係なく昇進のチャンスは平等です。ただし、最終的な昇進の上限については、一般的に「大卒は警視長」「高卒は警視正」と言われています。しかし、高卒警察官でも警察署長や本部課長といった重要な役職に就くことは可能です。

現場での違いはある?

実際の警察業務では、大卒・高卒の違いはほとんど感じられません。特に刑事や公安といった部署を希望する際も、学歴が直接影響することはありません。

ただし、過去には高卒警察官が多数派だったため、大卒警察官に対する風当たりが強い時代もありました。しかし、現在では大卒採用の方が多いため、そういった問題も少なくなっていると考えられます。

高卒・大卒どちらで警察官になるべきか?

どちらが正解かは一概には言えませんが、個人的には大学に行ける環境にあるなら大学への進学をおすすめします。

18歳から22歳は、学びや遊びを通じて視野を広げる大切な時期です。この期間を警察の仕事一色で過ごすと、価値観が警察社会に限定されてしまう可能性があります。実際、筆者は大学卒業後に民間企業で4年間勤務した経験があり、その比較を通じて警察社会の良い面・悪い面を客観的に見ることができました。また、警察が合わずに早期退職した場合に、大卒のほうが再就職には有利でしょう。

一方、高卒で警察官になれば、より早くキャリアをスタートできるメリットがあります。経済的にも安定し、大学の学費負担がない点は大きな魅力です。

まとめ

  • 給料:大卒の方が基本給は高いが、高卒は4年分の収入と退職金加算がある
  • 警察学校:高卒は10か月、大卒は6か月
  • 昇任試験:大卒は2年、高卒は4年で受験資格取得
  • 現場での違い:ほとんどなし
  • キャリアの選択:大学に行けるなら進学を推奨

警察官になる方法として「高卒」と「大卒」にはそれぞれメリットがあります。自分のライフプランや価値観に合わせて最適な選択をしてください。

旧記事
 都道府県警警察官になるには、各都道府県警の採用試験を受けることになります。試験には枠が二つあり、「大卒またはその見込み」「高卒またはその見込み}となります。専門学校は高卒枠となります。質問サイトなどを見ると、高校生がどちらで受けるべきか悩むケース多いようなのでざっくりその違いを説明したいと思います。
 まず、給料ですが、当然大卒のほうが高いです。具体的な金額はその年その年で異なりますし、都道府県警によっても違いますので、ご自分で確認してください。大卒のほうが高いとはいえ、高卒新卒で入れば単純に大卒より4年早く給料をもらうことができます。また大学に通う学費は当然要りません。さらに退職金の金額も4年長い分の加算はそれなりにあるでしょう。学費の高い大学に行ったならば、トータルで考えれば高卒のほうがお得ということになりそうです。
 警察学校の入校期間が違います。現在、高卒は10か月、大卒は6か月です。私が入校した1990年代は高卒は12か月でしたが、何年か前に短縮されました。なお、当然ですが、給料は入校したときから出ます。
 警察学校を卒業して、警察署に配置された後、昇任試験を受けられる期間が違います。巡査部長で大卒2年、高卒4年です。その後の警部補試験も同様に大卒2年、高卒4年です。合否に関しては純粋に点数なので学齢は影響しません。最終的になれる階級ですが、大卒警視長、高卒警視正と言われています。高卒でも警察署長や本部の課長など所属長になることは十分に可能です。私の知っている高卒の方は、署長→本部課長→署長と所属長を3箇所やられました。
 さて、実際に勤務していく上で高卒と大卒でどれだけ差があるかといえば、ほとんどありません。例えば早稲田、慶應を出ているとしても、先輩の高卒警察官からは「おい、○○、これやっとけ!」「お前何回言ってもわからないなバカか」とか平気で言われます。私が警察官になった頃は高卒採用数のほうが多かったので、大卒警察官にだけ嫌がらせをしてくる高卒の警察官が結構いたものです(現在は大卒採用数のほうが多いのでそういうことはないかと思います)。刑事や公安といった内勤を希望する際にも高卒、大卒は影響しません。
 では、高卒と大卒とでどちらで警察官になるべきか? これ絶対に正解はないと思いますが、個人的には大学行ける環境にあるなら大学に行ってから入ったほうがいいと思います。18歳から22歳という人生で最も学んだり遊んだりしたい年代にどっぷり警察の仕事漬けというのは、その後の人生観に大きな影響を受けると思います。価値観が警察社会だけのものですり込まれてしまう感じです。私は大学卒業後、民間企業で営業職として4年間勤務した経験がありましたので、その経験との比較で警察社会のいいところと悪いところが両方見えました。高卒で真っすぐ入った人には、警察社会が全て是と見えてしまうかもしれません。あくまでも私個人の意見です。


淺利 大輔

あさり だいすけ

行政書士淺利法務事務所 代表

私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。

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