告訴ってなに?【元刑事が解説】
告訴とは、簡単に言うと 警察官への捜査・送致命令書 です。検察官に提出する場合は 捜査・起訴依頼書 となり、警察と検察で扱いが異なります。警察に告訴状を提出すると、警察は必ず事件を捜査し、検察庁に送致(または送付)する義務を負います。なので「命令」に等しいのです。一方、検察官は受理しても起訴する義務がないため「依頼書」としました。
行政書士が作成できる告訴状とは?
行政書士が作成できるのは、警察に提出する告訴状 だけです。したがって、ここでは 警察に対する告訴 について詳しく解説します。
告訴の種類と親告罪の違い
告訴には 「通常の告訴」 と 「親告罪の告訴」 の2種類があります。
✅ 通常の告訴:被害者が「犯人を処罰してほしい」と強く希望する場合に行う手続きで、罪名に制限はありません。窃盗、横領、詐欺、暴行、傷害、恐喝、特商法違反、迷惑防止条例違反など、さまざまな犯罪で告訴が可能です。
✅ 親告罪の告訴:検察官が起訴するために告訴が必須となる犯罪です。例えば、器物損壊、名誉毀損、侮辱、過失傷害、著作権法違反 などが該当します。被害届だけでは、検察官は起訴することができません。
どちらの告訴も、警察が受理すれば 必ず事件を検察庁に送致 する義務があります。仮に示談が成立して告訴が取り消された場合でも、送致義務は消えません。さらに、被告訴人が死亡したとしても、送致義務は変わりません。
警察が告訴を簡単に受理しない理由
警察は、告訴事件を送致する際、検察官の厳しい事前審査 をクリアする必要があります。そのため、警察は簡単に告訴を受理しないのです。
告訴と被害届の決定的な違いとは?
最大の違いは 「送致義務」 にあります。
- 告訴:警察は受理すれば必ず検察庁へ送致しなければなりません。
- 被害届:送致義務がないため、警察の倉庫には処理されない被害届が大量に保管されています。
もしすべての被害届を送致しなければならないとすれば、刑事の人数は 現在の3倍 は必要になるでしょう。
まとめ
告訴は、警察が必ず事件を検察庁へ送致する重要な手続きです。一方、被害届には送致義務がないため、警察内で放置されるケースも少なくありません。警察と検察の仕組みを正しく理解し、適切な手続きを選ぶことが大切です。
旧記事
簡単に言うと告訴は警察官に対する捜査・送致命令書です。検察官に提出する場合は、捜査・起訴依頼書になります。警察と検察で異なってくるのは、警察に提出した場合、警察は何があっても事件を捜査して検察庁に送致(または送付)する義務を負うからです。検察官は受理しても起訴する義務は負いませんので「依頼書」としました。行政書士は、警察に提出する告訴状しか作成できませんので、ここでは対警察告訴の話しをします。
告訴は2つに分けられます。通常の告訴と親告罪の告訴です。通常の告訴は、何が何でも犯人を処罰してほしいと強く思ったときに、被害者ができる手続です。罪名に制限はありませんので、被害者が存在する犯罪であれば、窃盗、横領、詐欺、暴行、傷害、恐喝、特商法違反、迷惑防止条例違反などの告訴が可能です。親告罪とは、公訴提起(検察官による起訴)の条件として告訴が必要な罪です。器物損壊、名誉毀損、侮辱、過失傷害、著作権法違反などです。被害届では検察官は起訴することができません。どちらの告訴にしても、受理した警察は、必ず事件を検察庁に送致しないとなりません。仮に示談が成立して告訴人が告訴状を取り消しても、送致義務は消えません。被告訴人が死亡しても消えません。そして、告訴事件の送致について、検察官は事前審査で極めて厳しい要求をしてくるので、警察は簡単には送ることができません。なので、警察は簡単に告訴を受理しないのです。
告訴と被害届の一番大きな違いは、「送致義務」です。告訴は必ず送致と書きましたが、被害届には送致義務がないので、警察の刑事課倉庫内には、被害届が綴じられたドッチファイルが山のように積まれています。もしあれを全件送致しないとならないとすれば、刑事は今の3倍は必要でしょう。
淺利 大輔
あさり だいすけ
行政書士淺利法務事務所 代表
私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。
