虚偽告訴罪とは
虚偽告訴罪とは、他人に刑事上の処罰を与えること又は懲戒の処分を受けさせる目的で、捜査機関(警察、検察等)や公務所調査部署等に対して、嘘の申し立て(通報、申告)することで成立します。刑事上の処罰とは、懲役刑や罰金刑のことです。懲戒とは、公法(国家公務員法、地方公務員法)に基づく懲戒処分のことなので、民間企業従事者には適用がありません。罪名に「告訴」が入っているので、虚偽内容で告訴することが必要と思われる方もいるかもしれませんが、その必要はなく、単に申告や通報だけで成立します。罰則は3月以上10年以下の懲役で罰金はなく、意外と重くなっています。
具体的な例を上げるなら、知人の山田に刑罰を与えてやろうと考え、警察署に電話して「本町1丁目2番の有明マンション203号室の山田○○は自宅で覚醒剤をやってるからすぐに行って逮捕してくれ」と全く嘘の通報をするような場合です。実際に警察官が行って取調べ等をする必要はなく、嘘の通報をした時点で犯罪は成立します。電話ではなく、直接警察官に話した場合はもちろん、文書やメールでも成立します。
懲戒の場合は、市役所職員である鈴木に懲戒処分を受けさせてやろうと考え、市役所の監察室に電話して「住民課の鈴木○○は市に内緒で副業して年に2000万円の収入があるのを隠している」などと嘘の通報をする場合です。連絡手段については刑事罰の場合と同じです。
申告については、自ら自発的にされたことが必要です。捜査員の取調べに対してなされた場合は本罪は成立しません。また、故意が必要であるため、真実は他人が犯罪を行っていなかったとしても、本人が勘違いしてそう思っていた場合にも成立しません。
本罪は、「他人の処罰や懲戒を求める」という目的犯であるため、何も事件が起きていないのに「殺人事件が起きた」とだけ通報した場合は本罪は成立せず、軽犯罪法1条16の虚構申告罪のみが成立します。
淺利 大輔
行政書士淺利法務事務所 代表
私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。