告訴と提訴と起訴の違い
告訴と提訴と起訴。字面が似ていることもあり、しばしば混同されて使われているのを見かけます。ざっくり言えば、告訴と起訴は刑事裁判のもので、提訴は民事裁判のものです。
まず、提訴から説明します。提訴は一般用語であり、法律上は「訴えの提起」又は「訴訟の提起」と言います。裁判所に対して、私人間の法的紛争の解決を求めて訴え出ることを言います。提訴は誰でもできます。一般人はもちろん、法人、官公署もできます。損害賠償請求や、不動産明渡請求など通常訴訟の他、手形・小切手訴訟、少額訴訟などがあります。裁判では、判決を求めて提訴しますが、途中で和解となることもあります。
起訴も正しくは「公判請求」と言います。検察官が、犯罪を犯したと疑われている者(被疑者)の審理を求めて、裁判所に対して公判(裁判)を開始するように求める刑事上の手続を言います。起訴できるのは検察官だけであり、警察官も犯罪被害者も起訴することはできません。民事訴訟が、一般人VS一般人、一般人VS法人、一般人VS官公署、法人VS官公署など複数の対立構図があるのに対し、刑事裁判は常に検察官VS被告人の構図となり、これ以外にはありません。公判が開始されれば、被告人が途中で死亡するなどの場合を除き、有罪か無罪かの判決が必ず出されます。民事裁判のように和解やそれに相当する制度はありません。
告訴は、刑事訴訟法に定められており、犯罪被害にあった被害者(告訴権者)が、捜査機関(警察、検察等)に対して、その犯行を行った者の処罰を求める手続を言います。報道などで「刑事告訴」という表現をされることがありますが、「民事告訴」は存在しないので、この表現は正しいとは言えません。告訴(状)は、捜査機関にしか提出することができないので、捜査機関ではない裁判所に提出しようとしても受け取ってはもらえません。告訴は、告訴権者しかできませんので、妻が名誉毀損の被害にあったからといってその夫がすることはできません。警察が告訴を受けた場合は、必ず検察庁に送致しないとならず、この点が被害届との一番大きな違いとなります。告訴を受理又は送致を受けた検察官は、起訴の責任は負わず、不起訴とすることが可能ですが、その結果は処分結果通知書で告訴人に通知する義務があります。
淺利 大輔
行政書士淺利法務事務所 代表
私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。