告訴の不可分

 告訴は、被告訴人(犯人)に対して成されるものではなく、事件に対して成されるものです。そしてその効力は、事件全体に及び、共犯者のうちの一人だけを告訴したり、事件の一部だけを切り取って告訴することはできません。これを告訴の不可分と言います。
 告訴した段階で、犯人が「山田」という男一人だと思って告訴状の被告訴人欄に「山田」だけを記載して提出したが、その後の捜査で共犯者が山田以外に3人判明した場合、告訴の効力は他の3人にも及びます。例えばこの3人の中に自分の親友である「横山」がいたとします。そこで警察に対し「この横山だけは告訴しませんので、検察庁に送致しないでください。」とお願いしても無効です。告訴の取消しについても不可分は適用されます。例えば4人の共犯のうち3人と示談が成立し、示談しなかった一人を除いて取消しすることはできず、取消しの効力は全員に及びます。この、人にたいする告訴の不可分を「告訴の主観的不可分」と言います。この告訴の主観的不可分には例外があり、犯人の中に親族相盗例に該当する親族がいる場合、他の犯人のみに行った告訴はこの親族には及びません。
 犯罪の一部だけを切り取って告訴できないことは「告訴の客観的不可分」と言います。例えば自宅に侵入してきた犯人に不同意わいせつ行為を受けた場合、罪名は「住居侵入」と「不同意わいせつ」になりますが、「住居侵入」だけを告訴することはできません。取消しも同様になります。
 この不可分については、告発にもおおよそ当てはまります。


淺利 大輔

あさり だいすけ

行政書士淺利法務事務所 代表

私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。

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