「告訴するぞ」「裁判するぞ」は脅迫罪になるか?【元刑事が解説】
「告訴するぞ」という発言は、正当な権利の行使としての予告や警告と考えられ、一見すると脅迫罪には該当しないように思われます。しかし、過去の判例を見てみると、次のような判断が示されています。
【判例】大正3年12月1日 大審院判決
この判例では、以下のような趣旨の判決が下されました。
「実際には告訴する意思がないにもかかわらず、相手を畏怖させる目的で『告訴する』と通知した場合、それは権利行使の範囲を超え、脅迫罪が成立する。」
つまり、
- 本当に告訴する意思がある場合 → 脅迫罪にはならない
- 告訴する意思がないのに、脅す目的で発言した場合 → 脅迫罪に該当する可能性がある
しかし、実務上「告訴する」と発言した本人に本当にその意思があったのかを立証することは極めて困難です。そのため、現実の裁判で脅迫罪が成立するケースは多くありません。
まとめ
「告訴するぞ」「裁判するぞ」という発言が脅迫罪に該当するかどうかは、発言者の意思と目的によります。
- 正当な権利行使として告訴を宣言する場合 → 問題なし
- 実際に告訴する気がないのに、相手を脅すために発言する場合 → 脅迫罪に該当する可能性あり
ただし、実務上は証明が難しいため、実際に脅迫罪が成立するケースは少ないと言えます。
旧記事
犯罪被害者が加害者に対し「警察に通報するぞ」「被害届を出すぞ」「告訴するぞ」と言ったり、お金を返さない相手に「返さないなら訴えるぞ」「裁判にするぞ」などと言うことがよくあります。脅迫罪は、相手に対して害悪の告知を行うことで成立します。「害悪の告知」とは
生命に対する害悪 ~「殺すぞ」
身体に対する害悪 ~「殴るぞ」
自由に対する害悪 ~「ここから出さないぞ」
名誉に対する害悪 ~「裸の写真をばらまくぞ」
財産に対する害悪 ~「車燃やすぞ」
になります。これらは限定列挙とされているため、これに該当しない場合は、脅迫罪になりません。例えば、「死んでやる」と自死をほのめかした場合などです。
さてタイトルの「告訴するぞ」の件ですが、正当な権利行使の予告または警告であり、一見脅迫罪にならないようにも思われます。これには古いのですが有名な判例があります。大正3年12月1日大審院判決で「誣告ヲ受ケタル者カ眞ニ誣告罪ノ告訴ヲ爲ス意思ナキニ拘ハラス誣告者ヲ畏怖セシメル目的ヲ以テ之ニ對シ該告訴ヲ爲ス可キ旨ノ通告ヲ爲シタリトスレハ固ヨリ權利實行ノ範囲ヲ超脱シタル行為ナルヲ以テ脅迫ノ罪ヲ構成ス可キハ疑ヲ容レス」とあります。旧字体でわかりにくいのですが、要約すると「本当は告訴する意思がないのに、相手を畏怖させる目的で告訴すると通知した場合は、権利実行の範囲を超えており脅迫罪になり得る。」となります。つまり、告訴する予定があって「告訴する」と言えば違法性はなく、告訴する意思も予定もないのに「告訴する」と言えば脅迫罪になるということになります。しかし、実務上、「告訴する」と言った時点で、言った本人に告訴する意思があったかなかったかを立証することは不可能に近いと思います。この大審院で判決を出した裁判官にあの世で会う機会があったら、その辺をどう考えて判決したのか聞いてみたいところです。
淺利 大輔
あさり だいすけ
行政書士淺利法務事務所 代表
私は、2024年6月までの32年間、警視庁警察官として勤務し、そのうち25年間を刑事として告訴・告発事件の捜査に携わってきました。
中でも、告訴・告発を中心に扱う知能犯捜査の経験が最も長く、数多くの事件で、実際に告訴状・告発状を受理し、捜査を進めてきました。
刑事部捜査第二課在籍時には、警視庁本庁舎(霞が関)の聴訴室において、告訴状を持参される弁護士の先生方と日々向き合い、
「事件として受理すべきか」「問題点は何か」
その現場の判断基準を、実務の中で徹底的に学び、鍛えられてきました。
だからこそ私は、警察が何を重視し、どこを見て告訴状を判断するのかを、初期段階から具体的に想定しながら作成することができます。
告訴・告発事件については、刑事の中でも専門性を持って取り組んできた分野であり、強い自負があります。
現在は、千葉県犯罪被害者支援センター会員として、
「費用面で弁護士への依頼をためらっている方」
「警察に何度も相談したが、前に進めずにいる方」
そうした犯罪被害者の力になりたいとの思いから、行政書士として告訴状・告発状の作成支援を行っています。
実際に、
「告訴、受理されました。淺利さんにお願いして本当に良かったです」
というご連絡をいただく瞬間が、何よりの喜びであり、この仕事を選んで良かったと心から思う瞬間です。
警察の内側を知る行政書士として、
“受理される可能性を高める告訴状・告発状”を、本気でサポートします。


