告訴状の郵送は警察に受理されるか?【元刑事が解説】
告訴状を郵送しても受理されない? 刑事告訴の流れと注意点
告訴状の郵送は可能?
刑事訴訟法241条では「告訴・告発は書面又は口頭で行わなければならない」と規定されており、告訴状の郵送自体は禁止されていません。しかし、実際には郵送された告訴状が受理されることは稀です。
なぜ郵送では受理されないのか?
警察は、告訴状の要件を確認し、虚偽告訴を防止する責任があります。そのため、告訴人が本人であることを確認する必要があり、原則として告訴人本人に身分証持参の上、警察署への出頭を求めています。もしも、偽の告訴人が、非告訴人をおとしいれようとして、嘘の犯罪事実を記載した告訴状を送ってきたとしたなら、それは明らかな虚偽告訴罪であり、警察官はその犯行を制止する義務があるのです。
郵送した場合の流れ
- 警察署から電話連絡があり、本人確認のため出頭を求められる。
- 出頭に応じない場合、告訴状は返送される。
どうしても警察署に行けない場合
代理人に告訴状を提出してもらう方法もありますが、告訴受理後には刑事による「告訴人調書」作成が必須のため、いずれにしても最低1回は警察署に行く必要があります。
「告訴人調書」作成を拒否した場合
刑事は電話や手紙で出頭を求め、それでも応じない場合は自宅や勤務先まで呼び出しに来ます。それでも拒否すると、「告訴人不協力」として処理され、検察に送致されます。しかし、この場合、検察が被告訴人を不起訴とする可能性が非常に高く、告訴しても意味がなくなってしまいます。
刑事告訴を成功させるためには
- 警察の指示に従い、速やかに警察署に出頭し、本人確認と「告訴人調書」作成に協力する。
- 代理人に依頼する場合は、告訴状の内容を十分に理解させ、刑事の質問に適切に答えられるように準備する。
まとめ
告訴状を郵送しても、最終的には警察署への出頭が必要となります。刑事告訴を成功させるためには、警察の捜査に協力的な姿勢を示すことが重要です。
旧記事
刑事訴訟法241条では「告訴・告発は書面又は口頭で行わなければならない」と規定されており、特に書面の郵送を禁じる規定はありません。ただし、告訴の要件を確認し、虚偽告訴罪を防止する点からも、警察官は告訴人が本人であるかを確認する必要性があることから、告訴状の提出は告訴人本人が身分証明書等を持参して警察署に来署するように求めるのが普通です。
したがって告訴状を郵送した場合、警察署から電話がかかってきて「本人が身分証明書を持ってきてください」と言われます。これに応じないと最終的に告訴状はそのまま返送されることになります。
またどうしても警察署に行きたくない場合、代理人に提出してもらう方法もありますが、告訴受理後には刑事が「告訴人調書」を作成しなければならないので、どちらにしても最低1回は警察署に行く必要があります。
では、この「告訴人調書」にも応じなかったならどうなるでしょうか。おそらく刑事から執拗に電話や手紙で呼び出しがあります。それでも無視していれば直接自宅や勤務先に呼び出しに来ます。これにも応じなければ「告訴人不協力」ということで「相当処分」の意見を付けて被告訴人を送付することになります。これを受けた検察官は被告訴人を不起訴にする率が極めて高いので、被告訴人は何の処罰も受けないことになります。これでは何のために告訴したかわからなくなりますね。
淺利 大輔
あさり だいすけ
行政書士淺利法務事務所 代表
私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。
