被害届・告訴・告発の違いとは?警察への届け出方法と捜査の流れ【元刑事が解説】

何らかの犯罪被害に遭った場合、警察に届け出る方法として「被害届」「告訴」「告発」の3つがあります。それぞれの違いや警察の対応について詳しく解説します。


1. 被害届とは?警察の対応と受理後の流れ

被害届とは、犯罪の被害に遭った際に警察に届け出るための書類です。

  • 提出できる場所:交番や警察署
  • 主な対象となる犯罪
    • 自転車盗難
    • 置き引き
    • 万引き

警察は、事実犯罪があったのなら被害届を受理する義務がありますが、必ずしも捜査を行う義務はありません。特に、証拠が乏しい場合(防犯カメラなし、目撃者なしなど)は、受理後に捜査が進まないこともあります。

被害届が捜査されるケース

  • 盗難品が発見された場合(職務質問などで盗品が見つかった)
  • 犯人が自首した場合

被害届は「この犯罪があったことを警察に知らせる」ものに過ぎず、積極的な捜査が行われるとは限りません。


2. 告訴・告発とは?被害届との違い

告訴」や「告発」は、単なる被害の届け出ではなく、警察に捜査と送致(検察への事件送付)を求めるものです。

項目被害届告訴告発
提出者被害者被害者第三者(被害者以外)
警察の義務捜査義務あり捜査義務あり捜査義務あり
送致義務(検察へ事件送付)なしありあり
対象犯罪軽犯罪が多い全般全般

告訴とは?(被害者が行う)

告訴は、被害者が警察に対し「犯人の処罰を求める」ためのものです。

:AさんがBに殴られた場合、Aさんが警察に訴えるのが「告訴」です。(暴行罪)

告訴の特徴

  • 警察には捜査義務が発生
  • 検察に送致しなければならない
  • 時効前に捜査結果をまとめて送付する義務がある

被害届と違い、必ず捜査が行われるため、より強い対応を求める場合は「告訴」が有効です。


告発とは?(第三者が行う)

告発は、被害者ではない第三者が警察に対し「犯罪の捜査と処罰」を求めるものです。

  • AさんがBに殴られる→Cさん(目撃者)が警察に告発(暴行罪)

ただし、被害者本人が「告訴しない」と決めた場合、第三者の告発が受理される可能性はほぼありません。


3. 親告罪と非親告罪の違い

犯罪には、被害者が告訴しないと起訴できない「親告罪」と、警察や検察の判断で起訴できる「非親告罪」があります。

親告罪(告訴が必要な犯罪)

  • 名誉毀損罪
  • 器物損壊罪
  • 過失傷害罪

これらは被害者が告訴しない限り、警察が逮捕しても起訴されないため、注意が必要です。

非親告罪(告訴が不要な犯罪)

  • 傷害罪
  • 詐欺罪
  • 窃盗罪

これらは、被害者が告訴しなくても警察や検察の判断で起訴される可能性があります。


4. まとめ:どの届け出を出すべきか?

ケースおすすめの届け出
軽犯罪の被害(盗難・置き引き)被害届
犯人を処罰してほしい告訴
第三者として訴えたい告発
名誉毀損や器物損壊など親告罪の告訴が必要

被害届」はあくまで届け出に過ぎず、積極的な捜査は期待できません。犯人を確実に捜査してもらいたい場合は「告訴」を行いましょう。

旧記事
 何らかの犯罪被害に遭い、警察に届け出るときには一般的に被害届が使われます。自転車の盗難や置き引きなど比較的軽い犯罪の被害届は交番でも提出可能で、交番の警察官が被害者から事情を聞いてその場で作成して受理してくれます。被害届を受理した警察署は、原則的には捜査義務を負いますが、送致(事件を検察庁に送ること)義務は負わないので、現場に防犯カメラがない、目撃者もいない、証拠となる物件もないといった場合、受理された被害届はバインダーに綴じられて終わりです。盗まれた自転車や財布を持っている人が職務質問等で捕まるか、犯人が自ら出頭してこない限りその被害届は再び人の目に触れることはありません。
 告訴と告発は、被害届と違い、警察に送致(又は送付、送致と送付の違いはあまり重要ではないのでここでは触れません)義務が生じ、当然に捜査義務も生じます。つまり、被害届は犯人が見つかりそうになければそのまま時効まで放置されて終わるのに対し、告訴・告発は事件を捜査して犯人を見つけ出して取り調べ(逮捕するかどうかは事件の重大性や犯人の逃亡可能性などで判断されます)、必ず送致しないとなりません。もしどうしても犯人が見つからなかった場合でも、それまでの捜査結果をまとめて時効前に送付しないとなりません。被害届が「こういう犯罪があったので届け出ます」というだけの意味合いであるのに対し、告訴・告発は「この事件を捜査して犯人を送致し厳重に処罰してください」というものになります。ある意味、警察に対する捜査(送致)命令書のようなものともいえます。
 告訴と告発の違いは、告訴がその犯罪の被害者がするものであるのに対し、告発は被害者以外の第三者がするものということになります。例えばAさんがBに殴られたことで、暴行罪でBの処罰を求めて訴えるのが告訴です。この暴行の現場を見ていたCさんがBの処罰を求めて訴えるのが告発となります。ただし、こうした場合、Aさんの告訴があればCさんの告発はほぼ意味がありません。また、Aさんが犯人の処罰を何らかの理由で希望せず告訴しない場合、Cさんの告発もまたあまり意味を持ちません。
 さらに告訴には2種類あり、通常の告訴と親告罪の告訴があります。親告罪の告訴とは刑法の条文に「この罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない」と書いてある犯罪で、罪名で言うと名誉毀損罪や器物損壊罪、過失傷害罪などがあります。「公訴を提起することができない」とは、犯人を処罰するための裁判が開けないということですから、警察が逮捕して送致しても検察官は起訴できません。通常の告訴とは、傷害罪や詐欺罪、窃盗罪など親告罪以外の罪名の告訴を言います。


淺利 大輔

あさり だいすけ

行政書士淺利法務事務所 代表

私は、2024年6月までの32年間、警視庁警察官として勤務し、そのうち25年間を刑事として告訴・告発事件の捜査に携わってきました
中でも、告訴・告発を中心に扱う知能犯捜査の経験が最も長く、数多くの事件で、実際に告訴状・告発状を受理し、捜査を進めてきました。
刑事部捜査第二課在籍時には、警視庁本庁舎(霞が関)の聴訴室において、告訴状を持参される弁護士の先生方と日々向き合い、
「事件として受理すべきか」「問題点は何か」
その現場の判断基準を、実務の中で徹底的に学び、鍛えられてきました。
だからこそ私は、警察が何を重視し、どこを見て告訴状を判断するのかを、初期段階から具体的に想定しながら作成することができます。
告訴・告発事件については、刑事の中でも専門性を持って取り組んできた分野であり、強い自負があります。
現在は、千葉県犯罪被害者支援センター会員として、
「費用面で弁護士への依頼をためらっている方」
「警察に何度も相談したが、前に進めずにいる方」
そうした犯罪被害者の力になりたいとの思いから、行政書士として告訴状・告発状の作成支援を行っています。
実際に、
「告訴、受理されました。淺利さんにお願いして本当に良かったです」
というご連絡をいただく瞬間が、何よりの喜びであり、この仕事を選んで良かったと心から思う瞬間です。
警察の内側を知る行政書士として、
“受理される可能性を高める告訴状・告発状”を、本気でサポートします。

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