告訴事実の書き方7(詐欺3 結婚詐欺)
結婚詐欺は、妻帯者であるのに独身であると偽って交際し結婚を匂わせてお金を騙し取る場合、独身ではあるが職業等を偽って資産家であるように思わせて一時金などの名目で騙し取る場合と二つに分けられます。上記2例に分けて告訴事実の記載例を挙げます。
1 独身を装った場合
告訴事実
刑法第246条第1項 詐欺
被告訴人は、妻子があるのに独身であると偽って告訴人と交際し、真実は告訴人と婚姻する意思がないのに、令和6年7月下旬頃、告訴人に対し婚約を申し込みその受諾を得たところ、告訴人がこの婚約の申し出を信じ込んでいることに乗じて現金を騙し取ろうと考え、令和6年9月25日午後8時0分頃、東京都板橋区北板橋1丁目4番6号イタリア料理パルチ店内において、「結婚後は会社を辞めるから、フランス料理店を開いて一緒にお店をやろう。僕が1000万円出すからきみは残りの1000万円を出してほしい。」と申し向け、告訴人をして、1000万円を出せば告訴人と結婚してフランス料理店を開業できるものと誤信させ、よって、当月30日午後0時10分、告訴人の○○銀行○○支店に開設された告訴名義口座(普通1234567)から被告訴人が管理する○○銀行○○支店に開設された被告訴人名義口座(普通1234567)に現金1000万円を送金させ、もって人を欺いて財物を交付させたものである。
解説
詐欺罪は、どうしても「言った」「言わない」になってしまうので、事実中の欺罔文言(騙し言葉)はできれば会話ではなく、証拠が残っているメール文などを引用したほうが得策です。事例は、そうしたものが無いと仮定して会話文だけで構成しました。事例は、現金の交付方法として銀行振込を想定し、1項詐欺としました。本来預金債権の増加は現金受取ではありませんので、財産上利益の2項詐欺だと思うのですが、最近は起訴状でもこのように1項詐欺とすることが多いのでそれに倣っています。
2 職業を偽った場合
告訴事実
刑法第246条第1項 詐欺
被告訴人は、医師資格は無いのに医師であるかのように装って告訴人に接近し、医師であると信じた告訴人が被告訴人と結婚したがっていることに乗じて現金を騙し取ろうと考え、令和6年1月6日午後7時0分頃、東京都荒川区新荒川1丁目7番8号告訴人方において、「新橋駅前にクリニックを開業するのにあと1000万円足りません。1000万円出してくれれば、クリニックを開業してその後に君と結婚できます。」なとど嘘を言い、真実は被告訴人は医師ではなく無職であり、クリニックの開業予定もなく、結婚の意思もないのにこれらがあるように装い、告訴人をして1000万円支払えば開業医の妻となれる旨誤信させ、よって、令和6年2月8日午前10時0分、告訴人をして、三菱銀行荒川支店に開設された告訴人名義口座(普通1234567)からさくら銀行新橋支店に開設された被告訴人名義口座に現金1000万円を振込送金させ、もって、人を欺いて財物を交付させたものである。
淺利 大輔
行政書士淺利法務事務所 代表
私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。