元警視庁刑事が教える「刑事になる方法」

※注意 以下はあくまでも警視庁の場合です。県警の中には「講習制度」が無く上司の推薦だけで刑事になれるところがあるようです。
刑事になるには?採用試験から仕事内容まで徹底解説
質問サイトで「刑事になるにはどこの採用試験を受けたらいいのですか」という質問を見かけることがあります。刑事と制服の警察官は別物だと思っている方もいるようですが、刑事も制服警察官もスタートは同じです。
警察官採用試験と刑事への道のり
各都道府県警察の採用試験には、「警察官」と「一般行政職員(事務職)」しかなく、初めから「刑事」で採用される枠はありません(財務捜査官など極一部の特別枠を除く)。警察官として採用されると警察学校に入校し、卒業後は警察署に配置され、制服で交番勤務になります。どんなに優秀な成績で卒業しても、いきなり刑事にはなれません。
刑事になるには、まず刑事(捜査)講習を受ける必要があります。しかし、この講習は誰でも受けられるものではなく、1つの警察署で年間1人か2人しか行くことができません。警察学校での成績(注)が極めて悪かったり、職務質問や交通違反取り締まりなどの実績が悪かったり、周囲の評判が悪いと希望しても行かせてもらえません。また、運良く希望が通って申請が出せても、書類選考や面接で落とされてしまうこともあります。試験に受かると、約1か月間の講習があり、最後には試験と職場実習があります。(注:警察学校卒業試験順位は、人事記録に定年まで記載されて残ります。)
無事講習が終わっても、刑事になれるとは限りません。試験の成績が悪かったり、職場実習での評判が悪いと、刑事課員から「今度講習行った○○は使えねーな、あいつは要らねーわ」というレッテルを貼られてしまい、その署では刑事課に入れてもらえない、ということがあり得ます。その署で入れなかった場合、定期異動後で別の署に移っても入れてもらえない可能性が極めて高いです。なお、講習は刑事の他に公安講習、組対講習、生安講習、白バイ講習などもありますが、内容はほぼ同じです。
刑事になるまでの期間と必要なこと
刑事になれるまでの期間は人それぞれですが、私の場合は警察学校を卒業後、3年3か月で巡査部長になり、それから1年9か月で刑事になったので、約5年でなれたことになります。巡査のままで刑事を希望した場合、最短で3年くらいではないでしょうか。ただし、かなり実績を上げるほか、上司や同僚から相当評判が良くないと講習に行かせてもらえないと思います。(※私は大卒2回目の試験で巡査部長試験に受かったので、1回目で受かっていればトータル約4年で刑事になれた計算になります。)
晴れて刑事になっても、最初は覚えることがたくさんあって大変です。交番のお巡りさんとは仕事内容が全然違うからです。とにかく作成する書類の種類が多いです。きちんと数えたことがありませんが、ざっとですが300前後ではないでしょうか。変死の扱い一つを取っても書類は数十種類あります。今はパソコンで書類作成するのが当たり前になり、過去に先輩が作成した書類がすぐに見られるので楽になりました。昔は、書式の用紙がどこにあるのか覚えるだけで大変で、先輩が作った書類を探すのはもっと大変でした。
刑事の仕事内容と覚悟
交番のお巡りさんは非番(夜勤明けのこと)の日は遅くても正午頃には帰れます。刑事は、帰れません。遺体の遺族への引き渡し、逮捕事件の送致準備、前日発生した事件の防カメデータ回収等々、帰宅は夕方又は夜中になってしまいます。前日の朝から一睡もしてないことは珍しくありません。若いうちはいいのですが、40歳を過ぎてくると体力的にきつくなり、刑事をやめて交番のお巡りさんに戻る人もいます。刑事になるには、それなりの覚悟が必要です。
刑事の仕事のリアル
刑事というと逮捕状を持っていって犯人を逮捕したり、犯人の家の捜索差押をしたり、取調室で犯人を調べたりといったイメージが強いと思います。しかし、実際には仕事の中でデスクワークが占める率はかなり高く、丸一日部屋から出ないでひたすら捜査報告書を作成したり、証拠品のスマホを解析したり、銀行の取引明細を入力したりといったことが珍しくありません。
そして、当番(事件番の宿直勤務)となると、万引きや痴漢などの取り扱いの他に「変死」が必ず入ってきます。「変死」とは、病院等で医師に看取られて亡くなったのではなく、自宅や屋外などで死亡状態で発見されたご遺体の取り扱いを言います。医師が通常の死亡診断書を書けないので、警察が現場の状況やご遺体の外傷等を調べて事件性(殺人、保護責任者遺棄致死、死体遺棄等)の判断をします。人の命にかかわることなので、1体扱うだけで何時間もかかります。自宅の場合、貴重品や家の鍵などがあるかの確認をするのですが、ゴミ屋敷だとこれらを探すのが難航します。ひどいときは膝上までゴミがあって、正にゴミの海の中を突き進むような感じです。ひどい腐敗死体は珍しくありませんし、通過電車にひかれたご遺体は本当にバラバラになります。司法解剖や新法解剖の場合は、立ち合わないとなりません。無理心中で小さなお子さんの解剖に立ち合ったこともあります。刑事と「変死」は切っても切れない縁です。「変死」を扱いたくなければ、絶対に刑事になってはいけません。
刑事の種類と仕事内容
一般の人の多くは、私服の警察官は全員「刑事」と思われているかもしれません。実際には、私服の警察官は、刑事課員、生活安全課員、組織犯罪対策課員、公安係員などがいますが、刑事課員以外は「刑事」ではありません。刑事の仕事は、刑法の条文の罪の検挙(公然わいせつを除く)、変死、火災、交通事故以外の負傷者がいる事故、選挙違反取り締まり、食中毒などになります。刑事の扱う事件の特徴として、ほとんどの罪名には「被害者が存在する」ことです。よって被害届を受理して捜査するのは、刑事だけ(組織犯罪対策課員も犯人が暴力団員等の場合は行います)です。車にひかれたので交通課に被害届を出すなんてことはできません。刑事といえば取調べのイメージがあると思いますが、実は取調べって警察学校や刑事講習ではほとんど教わりません。便宜供与や肉体的接触など、禁止行為については教養がありますが、どうやって落とすとかしゃべらせる方法とかそういう技巧的なことは教わりません。ひたすら現場で経験を積み、先輩刑事の取調べを見て聞いて覚えるのです。
まとめ
刑事になる道は険しく、仕事内容も大変です。しかし、それに見合うだけのやりがいや達成感があるのも事実です。刑事を目指す方は、この記事を参考に、覚悟を持って挑戦してください。
※「刑事に向いている人」のコラムはこちらからご覧ください。
淺利 大輔
あさり だいすけ
行政書士淺利法務事務所 代表
私は、2024年6月までの32年間、警視庁警察官として勤務し、そのうち25年間を刑事として告訴・告発事件の捜査に携わってきました。
中でも、告訴・告発を中心に扱う知能犯捜査の経験が最も長く、数多くの事件で、実際に告訴状・告発状を受理し、捜査を進めてきました。
刑事部捜査第二課在籍時には、警視庁本庁舎(霞が関)の聴訴室において、告訴状を持参される弁護士の先生方と日々向き合い、
「事件として受理すべきか」「問題点は何か」
その現場の判断基準を、実務の中で徹底的に学び、鍛えられてきました。
だからこそ私は、警察が何を重視し、どこを見て告訴状を判断するのかを、初期段階から具体的に想定しながら作成することができます。
告訴・告発事件については、刑事の中でも専門性を持って取り組んできた分野であり、強い自負があります。
現在は、千葉県犯罪被害者支援センター会員として、
「費用面で弁護士への依頼をためらっている方」
「警察に何度も相談したが、前に進めずにいる方」
そうした犯罪被害者の力になりたいとの思いから、行政書士として告訴状・告発状の作成支援を行っています。
実際に、
「告訴、受理されました。淺利さんにお願いして本当に良かったです」
というご連絡をいただく瞬間が、何よりの喜びであり、この仕事を選んで良かったと心から思う瞬間です。
警察の内側を知る行政書士として、
“受理される可能性を高める告訴状・告発状”を、本気でサポートします。


