刑事になる方法
※注意 以下はあくまでも警視庁の場合です。地方県警には「講習制度」は無く、上司の推薦だけで刑事になれます。
ネットを見ていますとたまに「刑事になるにはどこの採用試験を受験したらいいのですか」といった質問に当たることがあります。刑事と制服の警察官が別物だと思っている方がいるようです。
刑事も制服警察官もスタートは同じです。各都道府県警察の採用試験には、大きく分けて「警察官」と「一般行政職員(事務職)」しかなく、初めから「刑事」で採用される枠はありません(財務捜査官など極一部の特別枠を除く)。警察官として採用されると警察学校に入校し、卒業後は警察署に配置され、制服で交番勤務になります。どんなに優秀な成績で卒業しても、いきなり刑事なんていうことはありません。
刑事になるには刑事(捜査)講習を受け、刑事に適する者としての名簿に登載される必要があります。しかし、この講習は誰でも受けられるものではなく、1つの警察署で年間1人か2人しか行くことができないので、実績が悪かったり、周囲の評判が悪い者は希望しても行かせてもらえません。また、運良く希望が通って申請が出せても、書類選考等で落とされてしまうこともあります。講習期間は約1か月で、最後には試験と職場実習があります。
こうして無事講習が終わっても、刑事になれるとは限りません。試験の成績が悪かったり、職場実習での評判が悪いと、刑事課員から「今度講習行った○○は使えねーな」というレッテルを貼られてしまい、その署では刑事課に入れてもらえない、ということもあり得ます。なお、講習は刑事の他に組対講習、生安講習、白バイ講習などもあります。内容は同じです。
晴れて刑事になっても、最初は覚えることがたくさんあって大変です。交番のお巡りさんとは仕事内容が全然違うからです。とにかく作成する書類の種類が多いです。きちんと数えたことがありませんが、ざっとですが300前後ではないでしょうか。変死の扱い一つを取っても書類は数十種類あります。今はパソコンで書類作成するのが当たり前になり、過去に先輩が作成した書類がすぐに見られるので楽になりました。昔は、書式の用紙がどこにあるのか覚えるだけで大変で、先輩が作った書類を探すのはもっと大変でした。
交番のお巡りさんは非番(夜勤明けのこと)の日は遅くても正午頃には帰れます。刑事は、帰れません。遺体の遺族への引き渡し、逮捕事件の送致準備、前日発生した事件の防カメデータ回収等々、帰宅は夕方又は夜中になってしまいます。前日の朝から一睡もしてないことは珍しくありません。若いうちはいいのですが、40歳を過ぎてくると体力的にきつくなり、刑事をやめて交番のお巡りさんに戻る人もいます。刑事になるには、それなりの覚悟が必要です。
追記
刑事というと逮捕状を持っていって犯人を逮捕したり、犯人の家の捜索差押をしたり、取調室で犯人を調べたりといったイメージが強いと思います。しかし、実際には仕事の中でデスクワークが占める率はかなり高く、丸一日部屋から出ないでひたすら捜査報告書を作成したり、証拠品のスマホを解析したり、銀行の取引明細を入力したりといったことが珍しくありません。そして、当番(事件番の宿直勤務)となると、万引きや痴漢などの取り扱いの他に「変死」が必ず入ってきます。「変死」とは、病院等で医師に看取られて亡くなったのではなく、自宅や屋外などで死亡状態で発見されたご遺体の取り扱いを言います。医師が通常の死亡診断書を書けないので、警察が現場の状況やご遺体の外傷等を調べて事件性(殺人、保護責任者遺棄致死、死体遺棄等)の判断をします。人の命にかかわることなので、1体扱うだけで何時間もかかります。自宅の場合、貴重品や家の鍵などがあるかの確認をするのですが、ゴミ屋敷だとこれらを探すのが難航します。ひどいときは膝上までゴミがあって、正にゴミの海の浅瀬を突き進むような感じです。刑事と「変死」は切っても切れない縁です。「変死」を扱いたくなければ、絶対に刑事になってはいけません。
淺利 大輔
行政書士淺利法務事務所 代表
私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。