刑事関係マスコミ用語【元刑事が解説】

1.容疑者
 法律用語では「被疑者」です。筆記上も音声上も「被害者」と混同されやすいため、マスコミが作った言葉だとされています。「被疑者」の定義は、既に発生した事件の犯人として疑われており、検察庁に送致される見込みの者です。ただし、捜査の結果、容疑が無くなれば、被疑者ではなくなります。
2.送検
 法律用語では「送致」または「送付」です。「送致」が一般人には馴染みがないので、「検察庁に送致」を縮めて「送検」にしたものと思われます。逮捕しないで書類だけ検察庁に送ると「書類送検」と報道されます。なお、法律上は、逮捕して身柄付きで送致しても、書類だけ送っても、どちらも「送致」です(便宜的に「書類送致」と言うことはあります)。なお、「送付」とは、告訴事件・告発事件を被疑者を逮捕せず書類だけ送致する場合に使います。法的効果は送致と何の違いもありません。
3.家宅捜索
 法律用語では「捜索差押」です。会社事務所を捜索しても、一般住宅を捜索しても「捜索差押」です。警察では「家宅」という用語は使いません。
4.器物破損
 刑法の条文の罪名は「器物損壊」です。これには歴史があり、刑法改正で現在の器物損壊に変更される以前は「器物毀棄(きぶつきき)」という罪名でした。しかし、これでは書いたり読んだりするのが難しいことから、マスコミが書きやすく読みやすい「器物破損」としたのです。現在は「器物損壊」に条文が変わり、書きやすく読みやすくなったのに、マスコミは愛着があるのか(?)いまだに器物破損を使い続けています。
5.内偵捜査
 警察で内偵捜査という言葉は使いません。また、これに該当する捜査活動もありません。あえて近い言葉を挙げれば「基調(きちょう)」です。これは、被疑者として浮上した者の犯罪歴を調べたり、戸籍謄本を取ったりといった「基礎調査」の略語です。


淺利 大輔

あさり だいすけ

行政書士淺利法務事務所 代表

私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。

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