嘘をついたら犯罪になる?【元刑事が解説】
「知り合いに騙された。嘘をつかれたので処罰してほしい」
現役の刑事時代、このような相談を何十件も受けてきました。
日本では、多くの人が子どもの頃から「嘘をついてはいけない」「嘘は泥棒の始まり」と教えられて育ちます。そのため、「嘘をつくこと=犯罪」と考える方も少なくありません。
しかし、結論から言えば、単に嘘をついただけでは犯罪にならないケースがほとんどです。
日本には「嘘つき罪」という犯罪は存在しません。
例えば、
- 明日は晴れだと分かっていながら「明日は雪が降るよ」と嘘をつく
- 「有名歌手の○○が急病で亡くなった」とデマを流す
- 「アメリカでUFOが着陸して宇宙人が捕まった」と作り話をする
このような発言は、道徳的には問題があっても、それだけで直ちに犯罪になるとは限りません。
では、どんな嘘なら犯罪になるのでしょうか?
元刑事の視点から、代表的なケースを分かりやすく解説します。
1. 詐欺罪|お金や財産を騙し取る嘘
嘘が犯罪になる代表例が詐欺罪です。
詐欺罪が成立するには、単なる嘘では足りません。
相手を騙して、お金・物・財産上の利益を得る目的が必要です。
例えば、
「明日は雪が降るよ」
と冗談で言ったところ、相手が親切で
「それならこの傘をあげるよ」
と渡してくれた場合。
このケースでは、最初から傘を騙し取る目的で嘘をついたわけではないため、通常は詐欺罪になりません。
一方、
- 架空の投資話でお金を振り込ませる
- 商品を送る気がないのに代金だけ受け取る
- 恋愛感情を利用して金銭を要求する
こうしたケースでは詐欺罪が問題になります。
**「嘘+財産を騙し取る目的」**がポイントです。
2. 偽計(威力)業務妨害罪|嘘で相手の仕事を妨害する
嘘によって相手の業務を妨害すると、偽計(威力)業務妨害罪になることがあります。
典型例は、
- 商業施設に「爆弾を仕掛けた」と電話する(威力)
- 飲食店に他人になりすまして大量注文する(偽計)
- 企業に虚偽のクレームを繰り返す(偽計)
といった行為です。
例えば、蕎麦屋に電話して
「本町2-2の鈴木だけど、カツ丼10個届けて」
と嘘の注文をすれば、店の営業を妨害するため犯罪となる可能性があります。
3. 虚偽告訴罪|嘘の犯罪をでっち上げて他人を処罰させようとする
これは非常に悪質な犯罪です。
例えば、
「知人が覚醒剤を売っているので逮捕してください」
と、事実無根の内容で警察に申告し、相手を処罰させようとするケースです。
これが虚偽告訴罪です。
ポイントは、
実際には犯罪がないのに、他人を刑事処分させる目的で嘘をつくこと。
被害届や告訴状という正式書類でなくても成立します。
- 口頭
- 電話
- その他の方法
でも成立し得ます。
4. 虚構申告(軽犯罪法違反)|嘘の110番・119番通報
嘘の通報も犯罪になります。
例えば、
- 110番して「銀行で強盗事件です」
- 119番して「川の堤防が決壊しました」
など、存在しない事件・事故・災害を公務員に通報する行為です。
これは軽犯罪法の虚構申告に該当します。
虚偽告訴罪との違いは、
特定の犯人を名指しして処罰を求めるかどうか
です。
5. 偽証罪|裁判で宣誓した証人が嘘をつく
裁判では、宣誓した証人が嘘をつくと偽証罪になる可能性があります。
例えば、
本当は被告人をよく知っているのに、
「全く知りません」
と証言するケースです。
注意点として、
原告・被告本人は証人ではありません。
そのため、当事者本人の虚偽発言は、通常この罪にはなりません。
6. 不実告知(特定商取引法違反)|訪問販売などでの嘘
訪問販売や電話勧誘販売などで、
- 商品の性能を偽る
- 契約条件について嘘をつく
- 事実と違う説明で契約させる
こうした行為は、**特定商取引法違反(不実の告知)**になる可能性があります。
さらに、相手から金銭を騙し取る意図があれば、詐欺罪も成立する場合があります。
7. 風説の流布|株価を動かすための嘘
金融の世界では、嘘の情報を流すことが重大な犯罪になります。
例えば、
- 企業買収の虚偽情報を流す
- 倒産デマを拡散する
- 株価操作目的で虚偽情報をSNS投稿する
こうした行為は**金融商品取引法違反(風説の流布)**に該当する可能性があります。
「嘘をつかれた=犯罪」とは限らない
ここが非常に重要です。
嘘をつかれたからといって、必ず警察が事件として扱うわけではありません。
法律上重要なのは、
- 何の目的で嘘をついたのか
- 誰にどんな被害が出たのか
- 法律上の犯罪要件を満たすか
です。
単なる人間関係のトラブル、口約束の食い違い、誇張表現などでは犯罪にならないことも多いのです。
「騙された気がする」=即犯罪ではありません。
元刑事のひとこと
「嘘をつかれたので逮捕してほしい」という相談は珍しくありません。
しかし、刑事事件になるかどうかは感情ではなく法律で決まります。
もし、
- お金を騙し取られた
- 嘘の通報をされた
- 虚偽の申告で自分が疑われた
といった具体的被害があるなら、ご相談ください。
○当事務所では、元警視庁刑事の経験を活かし、刑事が一読して理解しやすい告訴状や、供述調書スタイルの陳述書を作成します。まずは無料相談をご利用ください。
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淺利 大輔
あさり だいすけ
行政書士淺利法務事務所 代表
私は、2024年6月までの32年間、警視庁警察官として勤務し、そのうち25年間を刑事として告訴・告発事件の捜査に携わってきました。
中でも、告訴・告発を中心に扱う知能犯捜査の経験が最も長く、数多くの事件で、実際に告訴状・告発状を受理し、捜査を進めてきました。
刑事部捜査第二課在籍時には、警視庁本庁舎(霞が関)の聴訴室において、告訴状を持参される弁護士の先生方と日々向き合い、
「事件として受理すべきか」「問題点は何か」
その現場の判断基準を、実務の中で徹底的に学び、鍛えられてきました。
だからこそ私は、警察が何を重視し、どこを見て告訴状を判断するのかを、初期段階から具体的に想定しながら作成することができます。
告訴・告発事件については、刑事の中でも専門性を持って取り組んできた分野であり、強い自負があります。
現在は、千葉県犯罪被害者支援センター会員として、
「費用面で弁護士への依頼をためらっている方」
「警察に何度も相談したが、前に進めずにいる方」
そうした犯罪被害者の力になりたいとの思いから、行政書士として告訴状・告発状の作成支援を行っています。
実際に、
「告訴、受理されました。淺利さんにお願いして本当に良かったです」
というご連絡をいただく瞬間が、何よりの喜びであり、この仕事を選んで良かったと心から思う瞬間です。
警察の内側を知る行政書士として、
“受理される可能性を高める告訴状・告発状”を、本気でサポートします。


