告訴状か告発状か迷うケース【元刑事が解説】

 告訴状か告発状かをざっくり分けると、被害者が存在する犯罪でその被害者がするのが「告訴」、全ての犯罪について被害者以外がするのが「告発」となります。したがって、暴行、傷害、窃盗、詐欺、横領、恐喝、業務妨害などの罪で、被害者が提出するのは告訴状です。これらの罪で被害者以外が提出する場合は告発状です(受理される可能性はほぼありませんが)。文書偽造、贈収賄、公然わいせつ、覚醒剤、銃刀法、道交法など、被害者が存在しない犯罪も同じく告発状になります。
 迷うのは、被害者が誰なのか(存在するのか)わかりにくい犯罪や本来告発すべき犯罪なのに実害が発生しているようなケースです。具体的には、商品の意匠をパクられた商標法違反、悪徳リフォーム工事を受けた特商法違反、差押物件を隠匿された強制執行妨害などです。商標法と特商法については、告訴状・告発状どちらでも可だと思います。ただし、受ける刑事によっては、「告訴状ではなく告発状にしてください」などと変更を求めてくる場合があるかもしれません。その場合は、おとなしく従ってください。タイトルがどちらであっても、受理されれば効果に違いはありません。
 強制執行妨害については、差押ができなくなった債権者である訴え出人の告訴になりそうな気もしますが、この罪は平成23年に刑法が改正された際に、刑法の「第5章 公務の執行を妨害する罪」の章に編入されました。このことから明らかなとおり、同法は、債権者の権利を保護するものではなく、第一義的には「公務の執行」を保護法益とするものとなります。したがって、同法の場合は告発状が妥当でしょう。
 生活保護費の不正受給を市町村役場の職員が訴え出るような場合は、その職務に関連して認知した犯罪の届け出になりますので、刑事訴訟法に規定された「義務としての告発」になりますので、告発状になります。


淺利 大輔

あさり だいすけ

行政書士淺利法務事務所 代表

私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。

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