(刑事)告訴と告発のほぼ全てがわかるサイト【元警視庁刑事が解説】

刑事訴訟法の該当条文
第二百三十条 犯罪により害を被つた者は、告訴をすることができる。
第二百三十一条 被害者の法定代理人は、独立して告訴をすることができる。
② 被害者が死亡したときは、その配偶者、直系の親族又は兄弟姉妹は、告訴をすることができる。但し、被害者の明示した意思に反することはできない。
第二百三十二条 被害者の法定代理人が被疑者であるとき、被疑者の配偶者であるとき、又は被疑者の四親等内の血族若しくは三親等内の姻族であるときは、被害者の親族は、独立して告訴をすることができる。
第二百三十三条 死者の名誉を毀損した罪については、死者の親族又は子孫は、告訴をすることができる。
② 名誉を毀損した罪について被害者が告訴をしないで死亡したときも、前項と同様である。但し、被害者の明示した意思に反することはできない。
第二百三十四条 親告罪について告訴をすることができる者がない場合には、検察官は、利害関係人の申立により告訴をすることができる者を指定することができる。
第二百三十五条 親告罪の告訴は、犯人を知つた日から六箇月を経過したときは、これをすることができない。ただし、刑法第二百三十二条第二項の規定により外国の代表者が行う告訴及び日本国に派遣された外国の使節に対する同法第二百三十条又は第二百三十一条の罪につきその使節が行う告訴については、この限りでない。
第二百三十六条 告訴をすることができる者が数人ある場合には、一人の期間の徒過は、他の者に対しその効力を及ぼさない。
第二百三十七条 告訴は、公訴の提起があるまでこれを取り消すことができる。
② 告訴の取消をした者は、更に告訴をすることができない。
③ 前二項の規定は、請求を待つて受理すべき事件についての請求についてこれを準用する。
第二百三十八条 親告罪について共犯の一人又は数人に対してした告訴又はその取消は、他の共犯に対しても、その効力を生ずる。
② 前項の規定は、告発又は請求を待つて受理すべき事件についての告発若しくは請求又はその取消についてこれを準用する。
第二百三十九条 何人でも、犯罪があると思料するときは、告発をすることができる。
② 官吏又は公吏は、その職務を行うことにより犯罪があると思料するときは、告発をしなければならない。
第二百四十条 告訴は、代理人によりこれをすることができる。告訴の取消についても、同様である。
第二百四十一条 告訴又は告発は、書面又は口頭で検察官又は司法警察員にこれをしなければならない。
② 検察官又は司法警察員は、口頭による告訴又は告発を受けたときは調書を作らなければならない。
第二百四十二条 司法警察員は、告訴又は告発を受けたときは、速やかにこれに関する書類及び証拠物を検察官に送付しなければならない。
第二百四十三条 前二条の規定は、告訴又は告発の取消についてこれを準用する。
第二百四十四条 刑法第二百三十二条第二項の規定により外国の代表者が行う告訴又はその取消は、第二百四十一条及び前条の規定にかかわらず、外務大臣にこれをすることができる。日本国に派遣された外国の使節に対する刑法第二百三十条又は第二百三十一条の罪につきその使節が行う告訴又はその取消も、同様である。
第二百四十五条 第二百四十一条及び第二百四十二条の規定は、自首についてこれを準用する。
第二百四十六条 司法警察員は、犯罪の捜査をしたときは、この法律に特別の定のある場合を除いては、速やかに書類及び証拠物とともに事件を検察官に送致しなければならない。但し、検察官が指定した事件については、この限りでない。

告訴状(告発状)の提出先【元刑事が解説】

 告訴状(告発状)の提出先:警察署?検察庁?適切な提出先を選ぶポイント

「告訴状を提出したいけど、警察署と検察庁、どちらに提出すればいいの?」

刑事事件の被害に遭い、加害者を告訴・告発する場合、提出先で悩む方は多いのではないでしょうか。

告訴状(告発状)の提出先は、原則として警察署または検察庁の2つです。 (労働基準法など一部の特別法違反を除く)

提出先を選ぶポイント

事件の内容や種類によって、適切な提出先は異なります。

1. 検察庁への提出が考えられるケース

  • 議員や首長、公務員が被告訴人となる事件
  • 脱税事件
  • その他、社会に大きな影響を与えるような事件

2. 警察署への提出が考えられるケース

  • 個人を被害者とする事件
  • 社内犯罪
  • 薬物犯罪
  • 特別法違反事件
  • 交通関連事件

警察署を選ぶ際の注意点

告訴状は、法的にはどこの警察署に提出しても良いことになっています。 しかし、現実には、警察には管轄地域というものがあり、事件の発生場所を管轄する警察署に提出するのが一般的です。管轄外の警察署に行くと「うちは関係ないので管轄の○○署に行ってください」と門前払いを食らう可能性が高いです。

例外:ネット上の名誉毀損・侮辱の場合

発生場所という概念がない犯罪被害の場合は、以下のいずれかの警察署に提出します。

・被疑者の住居地を管轄する警察署
・被害者の住居を管轄する警察署

「刑事告訴」と「民事告訴」は法律用語として正しくない

ニュースやネット記事で「刑事告訴」や「民事告訴」という表現を目にすることがあります。しかし、実はこれらの言葉は法律的には誤用です。

告訴の正しい定義

告訴とは、刑事訴訟法第230条から第245条に規定されているものであり、刑事手続きに関するものです。そのため、民事裁判手続きで「告訴」することはあり得ません。したがって、正しい表記は単に「告訴」であり、「刑事告訴」とわざわざ表記する必要はありません。「民事告訴」に至っては完全に誤った表現です。

告発との違い

一方、「告発」は意味がやや異なります。告発も刑事訴訟法に規定されており、民事裁判では使われません。しかし、「内部告発」などの言葉が一般的に使われているため、刑事訴訟法上の「告発」とは異なる意味で広く認識されています。実際には、刑事訴訟法の「告発」の意味を正しく理解している人は少数派でしょう。

告訴と告発の問題点

個人的な意見として、告訴が告訴権者に限定されているのに対し、誰でも可能な告発という制度には課題があると考えます。実際に新聞記事や週刊誌の記事をコピーしただけの「告発状」を持ち込む人がいることもあり、その対応に苦慮することがありました。

まとめ

  • 告訴 は刑事訴訟法に基づく刑事手続きであり、「刑事告訴」という表現は不要。
  • 民事告訴 という言葉は誤用であり、民事訴訟では「告訴」は存在しない。
  • 告発 は刑事訴訟法上の手続きだが、「内部告発」など一般的な用語としても使われている。

警察に告訴・告発を考えたとき、自分で手続きを進めるか、弁護士に依頼するか、行政書士に依頼するかで迷う方も多いでしょう。本記事では、それぞれの専門家の役割や費用の違い、依頼する際のポイントについて詳しく解説します。

弁護士と行政書士の違いとは?

弁護士と行政書士では、できる業務範囲に大きな違いがあります。

  • 弁護士は法律問題全般を扱うことができ、警察への告訴の立ち会いや交渉、示談交渉、裁判対応などが可能です。
  • 行政書士は主に書類作成が専門で、告訴状の作成はできますが、警察との交渉や代理人としての活動はできません。

弁護士に依頼する場合のメリットと費用

弁護士に依頼する最大のメリットは、警察や検察との交渉が可能な点です。告訴の受理や示談、裁判手続きまでサポートを受けることができます。

弁護士費用の相場

弁護士に依頼する場合の費用は以下のようになります。

  • 着手金:40万円~
  • 警察の受理報酬:20万円~
  • 起訴または有罪報酬:20万円~
  • 合計:最低80万円~(高額な事務所では100万円を超えることも)

費用は高額ですが、警察が告訴を受理しやすくなる、交渉力がある、裁判対応が可能といった点でメリットがあります。

行政書士に依頼する場合のメリットと費用

行政書士は告訴状の作成が可能ですが、警察との交渉や裁判対応は不可です。警察が告訴を受理しない場合、自分で交渉しなければなりません。

行政書士費用の相場

  • 最低価格:3.3万円~
  • 最高価格:20万円程度

弁護士と比較すると24倍の費用差があり、リーズナブルに告訴状を作成できる点がメリットです。

警察への告訴で弁護士と行政書士はどちらが有利?

以下のポイントで比較してみましょう。

項目弁護士行政書士
告訴状の作成
告訴の立ち会い△(助言のみ)
警察との交渉・説得×
示談交渉×
検察審査会への申し立て×

弁護士に依頼すれば、警察が受理しやすくなり、示談交渉や裁判対応までカバーできます。一方で、行政書士は低コストで告訴状を作成できるため、費用を抑えたい場合に選択肢となるでしょう。

どちらを選ぶべきか?ポイントを解説

  • 確実に警察に受理してもらいたい場合:弁護士を選ぶのが無難。
  • 費用を抑えつつ、告訴状だけ作成したい場合:行政書士が選択肢に。
  • 示談交渉や裁判まで見据えるなら:弁護士一択。

まとめ

警察への告訴・告発において、弁護士と行政書士の違いを理解し、自分のケースに合った専門家を選ぶことが大切です。

  • 弁護士は費用が高いが、交渉力があり手続き全般をサポート可能
  • 行政書士は費用が安く、告訴状作成のみに特化
  • 行政書士を選ぶ場合には、「元刑事」から選ぶのが正解。

告訴をスムーズに進めるために、まずは自身の状況や予算を考慮して専門家を選びましょう。

何らかの犯罪被害に遭った場合、警察に届け出る方法として「被害届」「告訴」「告発」の3つがあります。それぞれの違いや警察の対応について詳しく解説します。


1. 被害届とは?警察の対応と受理後の流れ

被害届とは、犯罪の被害に遭った際に警察に届け出るための書類です。

  • 提出できる場所:交番や警察署
  • 主な対象となる犯罪
    • 自転車盗難
    • 置き引き
    • 万引き

警察は、事実犯罪があったのなら被害届を受理する義務がありますが、必ずしも捜査を行う義務はありません。特に、証拠が乏しい場合(防犯カメラなし、目撃者なしなど)は、受理後に捜査が進まないこともあります。

被害届が捜査されるケース

  • 盗難品が発見された場合(職務質問などで盗品が見つかった)
  • 犯人が自首した場合

被害届は「この犯罪があったことを警察に知らせる」ものに過ぎず、積極的な捜査が行われるとは限りません。


2. 告訴・告発とは?被害届との違い

告訴」や「告発」は、単なる被害の届け出ではなく、警察に捜査と送致(検察への事件送付)を求めるものです。

項目被害届告訴告発
提出者被害者被害者第三者(被害者以外)
警察の義務捜査義務あり捜査義務あり捜査義務あり
送致義務(検察へ事件送付)なしありあり
対象犯罪軽犯罪が多い全般全般

告訴とは?(被害者が行う)

告訴は、被害者が警察に対し「犯人の処罰を求める」ためのものです。

:AさんがBに殴られた場合、Aさんが警察に訴えるのが「告訴」です。(暴行罪)

告訴の特徴

  • 警察には捜査義務が発生
  • 検察に送致しなければならない
  • 時効前に捜査結果をまとめて送付する義務がある

被害届と違い、必ず捜査が行われるため、より強い対応を求める場合は「告訴」が有効です。


告発とは?(第三者が行う)

告発は、被害者ではない第三者が警察に対し「犯罪の捜査と処罰」を求めるものです。

  • AさんがBに殴られる→Cさん(目撃者)が警察に告発(暴行罪)

ただし、被害者本人が「告訴しない」と決めた場合、第三者の告発が受理される可能性はほぼありません。


3. 親告罪と非親告罪の違い

犯罪には、被害者が告訴しないと起訴できない「親告罪」と、警察や検察の判断で起訴できる「非親告罪」があります。

親告罪(告訴が必要な犯罪)

  • 名誉毀損罪
  • 器物損壊罪
  • 過失傷害罪

これらは被害者が告訴しない限り、警察が逮捕しても起訴されないため、注意が必要です。

非親告罪(告訴が不要な犯罪)

  • 傷害罪
  • 詐欺罪
  • 窃盗罪

これらは、被害者が告訴しなくても警察や検察の判断で起訴される可能性があります。


4. まとめ:どの届け出を出すべきか?

ケースおすすめの届け出
軽犯罪の被害(盗難・置き引き)被害届
犯人を処罰してほしい告訴
第三者として訴えたい告発
名誉毀損や器物損壊など親告罪の告訴が必要

被害届」はあくまで届け出に過ぎず、積極的な捜査は期待できません。犯人を確実に捜査してもらいたい場合は「告訴」を行いましょう。

 告訴(告発)は警察か検察庁のどちらかに提出することになります(給料未払いなど労働関係は労働基準監督署です)。裁判所は受け取ってくれません。基本的に検察庁は、政治家や公務員による犯罪や汚職に関する事件など、マスコミに大々的に報じられるような大型事件を除き受理しません。例えば、居酒屋で他の客とケンカになって殴られたというような暴行事件の告訴を検察庁に持って行っても「第一次捜査権は警察にあるので警察に行ってください」と言われて受理されないのが通常です。
 それでは、警察に提出する場合はどこの警察署に提出するのがいいかとなると、まず事件発生場所を管轄する警察署となります。法的には、告訴はどこの警察署に提出してもいいのですが、最終的には事件発生場所を管轄する警察署が事件捜査を担当することになるので、時間と手間を考えれば最初から管轄警察署に相談に行くのが告訴人、警察双方にとって有益です。同じ説明を2回しなくて済むからです。
 ではインターネット上の名誉毀損など、発生場所が存在しないような犯罪の告訴はどこに出すべきでしょうか。この場合、告訴人が住んでいる場所を管轄する警察署になります。また、何らかの事情で、住んでいる場所の警察署に出したくないときは、被告訴人が住んでいる場所の警察署でもいいでしょう。警察署に行くときは、できるだけ平日の昼間帯にしてください。夜間や土日祝日は、警察署には必要最低限の人員しかおらず、事件や事故で現場に臨場していると、告訴を受理してくれる刑事課員がいない場合があります。交通課や地域課の警察官に詐欺や横領の相談をしても時間の無駄になるだけです。
 また警察署の他に、各都道府県警察の本庁舎(警視庁なら霞が関)に提出する方法もあります。ただし、警察署と違って本庁舎は平日のみの業務で、休日は最低限の人数で電話番と門番だけしているような状況なので、平日以外に行くと相談すら受け付けてもらえないので注意が必要です。

 警察に提出する告訴状・告発状は行政書士が作成できます。検察庁は司法書士です。弁護士は両方に対応できます。料金は、行政書士と司法書士が数万円から十数万円、弁護士は成功報酬や実費を合わせるとほぼ100万円です。

物的証拠がないと警察は告訴状を受理しない?

「証拠がないと警察は動かない」と思われがちですが、物的証拠がなくても告訴は可能です。実際に、証拠が乏しい詐欺事件でも警察の捜査次第で犯人を逮捕し、有罪判決に持ち込めた事例があります。

【実例】医師を名乗る詐欺師を逮捕したケース

私が刑事時代に担当した事件では、建設会社の社長が「国境なき医師団の医師」を名乗り、スナックの経営者(被害者)から1,000万円を騙し取ったケースがありました。

【詐欺の手口】

  • 「海外の難民治療で資金が不足している」と嘘をつく
  • 被害者は本物の医師だと信じ、尊敬していたため、指定口座に1,000万円を振り込んだ
  • その後、詐欺師は突然店に来なくなり、連絡も取れなくなる

物的証拠なしで逮捕できた理由

この事件では、以下のような方法で証拠を集めました。

  1. 目撃証言の収集
    • 常連客が「詐欺師が医師だと話していた」と証言
    • 供述調書を作成
  2. メールの解析
    • 被害者のスマホからメールデータを抽出
    • 「アフガニスタンで治療中」との詐欺師の発言を確認
  3. 送金先の追跡
    • 1,000万円の送金履歴を調査
    • 詐欺師の口座から下請け業者へ送金されたことを特定
  4. 警察と検察の連携
    • 検事と相談し、追加捜査の指示を受ける
    • 最終的に逮捕・送致し、有罪判決を獲得

【結論】物的証拠なしでも警察は動く!

このように、詐欺事件は証拠が乏しくても捜査の工夫次第で立件可能です。もし警察に「物的証拠がないから告訴できない」と言われた場合、以下を試してください。

目撃者の証言を集める
メールやLINEのやりとりを保存する
送金履歴などの間接証拠を揃える

元刑事が解説!警察が告訴・告発を避ける理由

警察は告訴や告発の受理をできるだけ避けたがります。その理由について、元刑事の視点から詳しく解説します。

1. 告訴を受理すると発生する義務とは?

警察が告訴を受理すると、その事件について適切な捜査を行い、必ず検察庁に送致しなければなりません。つまり、告訴は警察に対する「送致命令書」とも言えるのです。

特に、被告訴人(容疑者)が明確な場合、警察が受理した時点でその人物は「被告訴人」となり、検察庁に送致が確定します。捜査の結果、犯罪が成立しないまたは告訴人の勘違いだったと判断されても送致しなければなりません。また、告訴人が告訴を取り消しても送致義務は消えないため、警察は慎重に対応せざるを得ないのです。

2. 警察の捜査負担と告訴事件の影響

犯人が特定されている場合、警察は逮捕状や捜索差押状を取得し、逮捕・捜索捜索を行った上で事件を検察庁に送致します。一方、犯人が不明または行方不明の場合、公訴時効が成立するまで犯人を捜し続けないとなりません

公訴時効は罪名によって異なり、例えば:

  • 器物損壊罪:3年
  • 詐欺・窃盗:7年
  • 傷害罪:10年

このように長期間にわたる捜査は、警察の業務負担を大きくします。

3. 告訴取り消し後も続く警察の義務

告訴事件では、告訴人と被告訴人の間で示談が成立し、告訴が取り消されることがあります。しかし、取り消しがあっても警察の送致義務は消えません。受理した以上、警察は捜査を尽くし、検察官に事件を送致しなければならないのです。

また、検察官が公訴を提起するかどうかは警察の判断ではなく、親告罪以外の事件では、告訴取り消しがあっても起訴される可能性があります。

4. 刑事の業務負担と告訴事件の優先度

刑事課の警察官は、告訴事件以外にも多くの業務を抱えています。例えば:

  • 110番通報への対応:多い警察署では1日に数百件以上の通報が入る
  • 逮捕案件の処理:48時間以内に事件を送致する必要がある
  • 変死案件の対応:不審死や事件性のある死亡案件には詳細な捜査が求められる

特に変死案件は、刑事にとって大きな負担となります。現場での検証、遺体の搬送、霊安室での見分、必要に応じた解剖の立ち会いなど、多岐にわたる業務が発生します。解剖結果によっては殺人や傷害致死事件として捜査本部が設置され、刑事課員の多くが専従となるケースもあります。そのため、通常の告訴事件は一時的に放置されることも少なくありません。

5. まとめ:警察が告訴を受理したがらない本当の理由

告訴・告発の受理には、警察にとって大きな業務負担が伴います。受理すると:

  • 必ず検察庁に送致しなければならない
  • 公訴時効まで捜査義務が発生する場合がある
  • 示談や告訴取り消しがあっても捜査を続行しなければならない
  • 日々の業務(逮捕案件や変死対応など)との兼ね合いで処理が遅れる可能性がある

こうした理由から、現場の刑事はできる限り告訴を受理したくないのが実情なのです。

親告罪の告訴期間はいつまで?

親告罪の告訴期間は、刑事訴訟法第235条により、
犯人を知った日から6か月以内」と定められています。

この期間を過ぎると告訴ができなくなるため、早めの対応が重要です。なお、「公訴時効」と勘違いをされる方が多いのですが、全くのベツモノです。


親告罪とは?具体的な犯罪の例

親告罪とは、被害者が告訴しなければ検察官が起訴できない犯罪のことです。
代表的な親告罪には以下のものがあります。

  • 名誉毀損罪・侮辱罪(SNS・ネット掲示板の書き込みも含む)
  • 過失傷害罪
  • 器物損壊罪
  • 秘密漏示罪
  • 信書開封罪
  • 親族間の窃盗罪・詐欺罪・横領罪・背任罪

これらの犯罪は、「告訴がなければ公訴を提起することができない」と刑法に明記されています。


「犯人を知った日」とは?告訴期間の起算点

犯人を知った日」とは、以下の条件を満たした日を指します。

犯人の氏名や住所が判明した日
顔をはっきり記憶し、後で特定できる状態になった日

暗闇で顔の輪郭しか分からないような場合は、「知った日」には該当しません。

また、刑事訴訟法第55条により、日数の計算方法は以下のルールがあります。

  • 初日は含めず、翌日から1日目とカウント
  • 最終日が土日祝の場合は、翌営業日が期限

この計算方法は、公訴時効の計算とは異なるため注意が必要です。


ネット上の名誉毀損・侮辱罪と告訴期間の関係

SNSや掲示板などのインターネット上の書き込みによる名誉毀損・侮辱罪の場合、特別なルールがあります。

🕒 書き込みが削除されない限り、告訴期間は進まない!

例えば、1年前に書かれた投稿であっても、まだ閲覧可能な状態なら告訴可能です。
これは「犯行が継続している」とみなされるため、公訴時効も告訴期間も進行しません。


特殊ケース:未成年者の被害と親権者の告訴

未成年者が親告罪の被害に遭い、告訴期間(6か月)を過ぎてしまった場合でも、親権者がその後に事件を知れば、親権者の告訴期間が新たに開始されます。

⚖ **最高裁判例(昭和28年5月29日)**によると、親権者は法定代理人として告訴が可能です。


共犯事件と告訴期間

共犯者が複数いる場合、1人の犯人を知った時点全員分の告訴期間が開始します。

そのため、告訴期間が過ぎると、他の共犯者も告訴できなくなる点に注意しましょう。


まとめ:親告罪の告訴期間を過ぎる前に対応を!

親告罪の告訴期間は「犯人を知った日から6か月」
ネットの書き込みは削除されない限り告訴可能
未成年者の親権者は別途告訴できる
共犯者がいる場合、1人の特定で全体の告訴期間が開始

告訴状を郵送しても受理されない? 刑事告訴の流れと注意点

告訴状の郵送は可能?

刑事訴訟法241条では「告訴・告発は書面又は口頭で行わなければならない」と規定されており、告訴状の郵送自体は禁止されていません。しかし、実際には郵送された告訴状が受理されることは稀です。

なぜ郵送では受理されないのか?

警察は、告訴状の要件を確認し、虚偽告訴を防止する責任があります。そのため、告訴人が本人であることを確認する必要があり、原則として告訴人本人に身分証持参の上、警察署への出頭を求めています。もしも、偽の告訴人が、非告訴人をおとしいれようとして、嘘の犯罪事実を記載した告訴状を送ってきたとしたなら、それは明らかな虚偽告訴罪であり、警察官はその犯行を制止する義務があるのです。

郵送した場合の流れ

  1. 警察署から電話連絡があり、本人確認のため出頭を求められる。
  2. 出頭に応じない場合、告訴状は返送される。

どうしても警察署に行けない場合

代理人に告訴状を提出してもらう方法もありますが、告訴受理後には刑事による「告訴人調書」作成が必須のため、いずれにしても最低1回は警察署に行く必要があります。

「告訴人調書」作成を拒否した場合

刑事は電話や手紙で出頭を求め、それでも応じない場合は自宅や勤務先まで呼び出しに来ます。それでも拒否すると、「告訴人不協力」として処理され、検察に送致されます。しかし、この場合、検察が被告訴人を不起訴とする可能性が非常に高く、告訴しても意味がなくなってしまいます。

刑事告訴を成功させるためには

  • 警察の指示に従い、速やかに警察署に出頭し、本人確認と「告訴人調書」作成に協力する。
  • 代理人に依頼する場合は、告訴状の内容を十分に理解させ、刑事の質問に適切に答えられるように準備する。

まとめ

告訴状を郵送しても、最終的には警察署への出頭が必要となります。刑事告訴を成功させるためには、警察の捜査に協力的な姿勢を示すことが重要です。

告訴受理とは?

告訴状が警察に受理されると、捜査が正式に開始されます。特に詐欺、傷害、性犯罪などの事件では、迅速かつ正確な手続きが求められます。

1. 告訴人調書の作成

告訴状が受理されると、最初に「告訴人供述調書」の作成が行われます。これは告訴人本人の供述を基に事件内容を詳細に記録する重要な書類です。

ポイント

  • 関係書類や日記帳など、関連資料を持参する。
  • 刑事の質問には正確に答える。
  • 証拠品(犯人のサインした書類、遺留品など)は指紋やDNA鑑定のため、直接触らず紙袋に入れて持参。
  • スマホやSDカード内の証拠データ(メール、画像など)も持参。

2. 実況見分と犯行再現

暴行罪、傷害罪、性犯罪などの事件では、犯行現場で実況見分が行われます。

実況見分の流れ

  • 告訴人と警察官が現場で状況を確認。
  • メジャーで位置を特定し、写真を撮影。
  • 防犯カメラの映像を取得。
  • 重要証拠を押収。

また、警察署内で環境を再現し、警察官が告訴人役・被告訴人役に分かれ、犯行状況を再現することもあります。

3. 参考人聴取

事件の目撃者や関係者から事情を聴取します。

例:

  • 社内犯罪 → 上司や同僚。
  • 飲食店内の犯罪 → 店員や客。
  • 詐欺・横領罪 → 銀行の入出金明細を捜査。

銀行口座の照会には1週間から1か月かかることがあり、資金の流れを詳しく分析します。

4. 指紋・DNA鑑定

被告訴人の遺留品があれば、指紋採取やDNA鑑定を行います。ただし、過去に犯罪歴がない場合、警察データベースに登録されていないため、照合が困難な場合もあります。

5. 検察官との協議(検事相談)

ある程度捜査が進むと、検察官に捜査状況を報告し、事件の送致可否を判断します。

注意点:

  • 検察官は事件の送致を慎重に判断する。
  • 異動時期(特に3月)は送致が遅れることがある。

6. 送致と逮捕の判断

検察官の指示を受け、被告訴人を逮捕するか、**任意捜査(書類送致)**とするかを決定します。

送致と送付の違い

  • 送致:被疑者を逮捕し、身柄と書類を送る or 書類のみを送る。
  • 送付:告訴・告発事件において、被疑者を逮捕せず書類のみを送る。

7. 逮捕と捜索差押

逮捕する場合、裁判所に逮捕状を請求し、証拠品の押収も同時に行います。

逮捕後の流れ

  • 48時間以内に地方検察庁に送致。
  • 最大20日間留置施設で勾留。
  • 検察官の取り調べを受け、供述調書を作成。

8. 公判請求と裁判

起訴(公判請求)されると

  • 被疑者は「被告人」となり、拘置所へ移送。
  • 保釈金(数百万円)を払えば保釈可能。
  • 事実を認めている場合 → 2~3回の公判で判決。
  • 否認・黙秘する場合 → 証人尋問が必要。

告訴人は必要に応じて証言を求められます。

9. 刑事の役割とその後

刑事の仕事は起訴までが主であり、裁判の傍聴にはほとんど参加しません。ただし、否認事件では公判担当検察官から追加捜査を指示されることがあります。

10. まとめ

 告訴事件は時間がかかるものの、証拠をしっかり準備し、警察や検察と連携することで適切な処罰を求めることができます。特に詐欺、傷害、性犯罪の被害者の方は、証拠保全と供述の正確性が重要です。
 告訴が受理されてから検察庁に送致されるまでの期間ですが、これはその警察署刑事課がどれだけ忙しいか、事件が単純か複雑か、被告訴人が単独か複数か、などの状況によって全く異なります。早くて数か月、遅いと何年もかかります。

告訴を検討している方へ

  • 事前に証拠を整理。
  • 警察・検察と連携。
  • 長期化する可能性を考慮。

告訴の流れを正しく理解し、適切な対応を進めましょう。

被告訴人(犯人)がわからなくても告訴は可能!【元刑事が解説】

犯人が特定できていない場合でも、告訴(告発)は可能です。その際、告訴状の被告訴人欄には、犯人について分かる範囲の情報を記載してください。もし一切分からなければ「不詳」と記載すれば問題ありません。

警察はどのように捜査を進めるのか?

告訴状が受理されると、警察は提出された証拠や情報をもとに被告訴人の特定を進めます。具体的な捜査手順は公務員の守秘義務により公開できませんが、一般的に行われる流れを紹介します。

1. 電話番号からの追跡

被告訴人の電話番号が分かっている場合、警察は電話会社に照会し契約者情報を取得します。以前は郵送での照会が必要でしたが、現在は警察専用端末と電話会社のシステムが連携しており、迅速な情報取得が可能です。

ただし、特殊詐欺などではレンタル番号(飛ばし携帯)を使用するケースが多く、契約者を辿っても真犯人に到達できない場合がほとんどです。このような悪質な業者には強制捜査(ガサ入れ)を行うこともありますが、完全な摘発には至らないこともあります。

2. 名前が分からない場合の捜査方法

被告訴人の名前が分かっている場合、警察はさまざまな方法で捜査を進めます。しかし、名前が不明、もしくは偽名を使っている場合は、本名を特定する必要があります。

例えば、

  • 特徴的な手口の犯罪の場合、過去の類似事件の犯人写真を告訴人に確認してもらうことがあります。
  • **詐欺事件(地面師詐欺・取り込み詐欺)**では、同一犯による繰り返し犯行が多いため、類似事件の調査が有効です。

3. 住所が不明な場合の追跡方法

仮に被告訴人の名前や生年月日が分かっても、住所が不明なケースは珍しくありません。特に、犯罪者は住民登録を行わずに逃亡していることが多いため、住民票を取得しても実際の居場所が判明しないことがほとんどです。

その場合、以下のような調査が行われます。

  • 銀行口座の利用履歴から、使用しているATMの場所を特定し、大まかな居住地域を推測する。
  • 車両のナンバーを調査し、その車両の移動履歴を追跡する。

4. 住居が判明したら逮捕へ

被告訴人の住居が特定できた場合、警察は捜索差押許可状と逮捕状を裁判所に請求します。

かつては張り込み捜査が主流でしたが、現在は遠隔カメラの活用が一般的です。録画データを高速再生することで、効率的に出入りの時間を把握し、逮捕のタイミングを見極めることができます。

まとめ

犯人が特定できていなくても、告訴は可能です。警察はさまざまな方法で被告訴人を特定し、捜査を進めます。

  • 電話番号の照会
  • 過去の犯罪データとの照合
  • 銀行口座や車両ナンバーからの追跡
  • 遠隔カメラによる監視

法人による告訴は可能

法人(会社)が被害者となる犯罪に対して告訴を行うことは可能です。特に、横領や窃盗などの社内犯罪が発生した場合、適切な手続きを踏むことで警察に受理されやすくなります。本記事では、法人を告訴人とする告訴の流れや注意点について詳しく解説します。

法人による告訴の方法

法人が告訴を行う際は、代表取締役の名前を並記して告訴状を作成する必要があります。具体的には、以下のようなフォーマットで作成します。

          告 訴 状

                 令和○年○月○日

○○県○○警察署長  殿

                    告訴人
                    所在地:○○県○○市○○町1丁目3番5号
                    法人名:新庄開発株式会社(代表取締役 ○○○○)
                    電話:0429-00-0000

法人番号や事業目的等の詳細は告訴状に記載する必要はなく、法人登記簿(必要に応じて定款写し)を添付することで対応できます。

代表取締役が会社資金を横領した場合の対応

会社の社長、すなわち代表取締役が会社資金を横領した場合、次のような対応が必要となります。

  1. 臨時株主総会の開催
    • 横領した代表取締役を解任する。
    • 新しい代表取締役を選任する。
  2. 新代表取締役による告訴
    • 新代表取締役が法人を代表し、旧代表取締役個人を被告訴人として告訴を行う。

社内犯罪の告訴をスムーズに進めるためのポイント

警察の担当者は、社内犯罪に関する詳細な情報を求めることが多いため、以下の点に注意しましょう。

  1. 警察との連携強化
    • 社内で事件をよく知る人物を警察との担当窓口として指定する。
  2. 証拠の確保
    • 被疑者が犯行を認めた場合、できるだけ早く「自認書」または「顛末書」を本人に書かせ、署名を取る。
    • こうした文書があることで、警察の告訴受理の判断が大きく変わる。
  3. 適切なタイミングでの対応
    • 横領や窃盗などが発覚した際、警察への相談や解雇が決定すると、被疑者が会社に来なくなるケースがある。
    • そのため、早めの対応が重要。
  4. 示談する場合は慎重に
    「毎月○万円返済します」などと示談を交わし、その条件として警察への告訴を見送ったとします。被疑者は、数か月だけ支払い、その後支払わずにどこかに逃亡してしまうことがあります。こうなると、お金は返ってこず、警察に相談に行っても「示談してお金も一部返済されているなら事件化できない」と断られ、泣き寝入りになることがあります。示談する場合は、被疑者の収入見込みの確認、被疑者の親や兄弟を保証人とするなど、慎重に行わないとなりません。

まとめ

法人が告訴を行う際は、適切な手続きを踏み、必要な証拠を確保することが重要です。特に、社内犯罪においては警察との連携を強化し、証拠を残すことが告訴受理のポイントとなります。

親族相盗例(刑法244条)とは?

親族間で発生した特定の財産犯罪について、刑が免除される特例が「親族相盗例」です。刑法244条に基づき、以下の犯罪が該当します。

  • 窃盗
  • 不動産侵奪
  • 詐欺
  • 恐喝
  • 横領
  • 背任

これらの罪(未遂を含む)が、夫婦、直系血族(親子・祖父母と孫など)、同居の親族の間で行われた場合、刑が免除され、逮捕や起訴がされることがないため、告訴も受理されません。

なお、民法725条の規定により「親族」とは 6親等以内の血族、3親等以内の姻族 を指します。

親族相盗例が適用されないケース

  • 同居していない親族間の犯罪 → 告訴があれば処罰される
  • 殺人、傷害、名誉毀損などの犯罪 → 一切適用なし
  • 内縁関係や事実婚の夫婦間 → 適用なし

親族相盗例の理由

この規定が存在する背景には、以下のような考え方があります。

  1. 親族間の紛争に国家が介入すべきではない
  2. 親族間の財産関係が不明確であり、法益侵害が小さい
  3. 親族関係により犯罪責任が軽減されるべきである

相対的親告罪とは?

親族相盗例が適用される6つの財産犯罪は、告訴があった場合にのみ処罰される「相対的親告罪」に分類されます。これに対し、名誉毀損や過失傷害などは告訴が必須の「絶対的親告罪」にあたります。

告訴の不可分とは?

例えば、AとBが共犯 だった場合、Aに対する告訴はBにも影響を及ぼします。これを 「告訴の不可分」 といいます。

ただし、親族相盗例が適用される場合、Bが親族であるならば告訴の効力は及ばず、Bを処罰するためには AとBの両名を告訴状に記載する 必要があります。

まとめ

親族相盗例は、特定の財産犯罪に限り、親族間での刑罰を免除する規定です。しかし、同居していない場合や特定の犯罪には適用されず、告訴の有無によって処罰が決まる相対的親告罪として扱われます。親族間の犯罪に関する法律を理解し、適切に対処することが重要です。

告訴取り消しの基本

刑事訴訟法第237条第1項に基づくと、「告訴は、公訴の提起があるまで取り消すことができる」と定められています。この規定は主に親告罪に関するものであり、名誉毀損、侮辱、過失傷害、器物損壊などが該当します。親告罪以外の告訴については、起訴後でも取り消しが可能であり、その後に再告訴を行うことも法的に認められています。警視庁ではなぜか上条文と異なる「取下げ」という言葉を使っていますが、意味は全く同じです。

親告罪における告訴取り消し

同条第2項には、「告訴の取り消しをした者は、更に告訴をすることができない」とありますが、これは親告罪にのみ適用されます。つまり、親告罪においては告訴は起訴前にしか取り消しできず、一度取り消すと再告訴ができなくなります。

示談と告訴取り消し

告訴取り消しを示談の一環として行う場合、重要な点があります。例えば、被告訴人との間で「示談金を支払い、告訴を取り消す」という合意があった場合、示談金の支払いを確認する前に告訴を取り消すと、そのまま示談金が支払われなくても再告訴ができなくなります。このため、示談金が支払われたことを確認した後に告訴取り消しを行うことが非常に重要です。

共犯者と告訴取り消し

共犯者がいる場合、告訴取り消しは「告訴不可分の法則」により、取り消しが一人に対して行われると、共犯者全員にも適用されます。これにより、「一人だけ処罰しないでほしい」という希望は通らないことになります。

「取下げ」と「取り消し」

警視庁では告訴の取り消しを「取下げ」と呼ぶことがありますが、これは他県では一般的でない表現です。実務においては、「取り消し」と「取下げ」の意味合いに違いがある可能性があるため、用語の違いに注意が必要です。

告発の取り消し

告発については特に規定がなく、基本的にいつでも取り消しが可能で、再告発も可能です。告発の取り消しは法的には口頭でも行えますが、実務では告訴取り消し書の提出が一般的です。代理人が取り消し書を作成する場合、委任状には「告訴及び取り消し」の記載が必要です。

 


「告訴するぞ」という発言は、正当な権利の行使としての予告や警告と考えられ、一見すると脅迫罪には該当しないように思われます。しかし、過去の判例を見てみると、次のような判断が示されています。

【判例】大正3年12月1日 大審院判決

この判例では、以下のような趣旨の判決が下されました。

「実際には告訴する意思がないにもかかわらず、相手を畏怖させる目的で『告訴する』と通知した場合、それは権利行使の範囲を超え、脅迫罪が成立する。」

つまり、

  • 本当に告訴する意思がある場合脅迫罪にはならない
  • 告訴する意思がないのに、脅す目的で発言した場合脅迫罪に該当する可能性がある

しかし、実務上「告訴する」と発言した本人に本当にその意思があったのかを立証することは極めて困難です。そのため、現実の裁判で脅迫罪が成立するケースは多くありません。


まとめ

「告訴するぞ」「裁判するぞ」という発言が脅迫罪に該当するかどうかは、発言者の意思と目的によります。

  • 正当な権利行使として告訴を宣言する場合問題なし
  • 実際に告訴する気がないのに、相手を脅すために発言する場合脅迫罪に該当する可能性あり

ただし、実務上は証明が難しいため、実際に脅迫罪が成立するケースは少ないと言えます。

告訴権者とは、犯罪により害を受けた人が告訴を行う権利を持つ人物を指します。一般的に告訴できるのは、「犯罪により被害を受けた者」に限られます。以下に具体的な例を挙げます。

告訴権者の具体例

  • 物品を盗難にあった者
  • 金品を騙し取られた者
  • 暴行を受けた者
  • 脅迫を受けた者
  • 壊された物の所有者
  • 名誉を毀損された者

告訴権者の範囲

告訴権は原則として被害を受けた本人にしか認められません。例えば、「名誉を毀損された妻」の夫は、妻が生きている限り告訴権者とはなりません。しかし、器物損壊罪などでは、物の所有者だけでなく、利用者にも告訴権が認められることがあります。例えば、賃貸マンションの窓ガラスが割られた場合、オーナーだけでなく、賃貸居住者にも告訴権があります。これは、昭和45年の判決により確立された重要なポイントです。

告訴権者の年齢

告訴権者の年齢に関する明確な基準はありませんが、一般的には13歳以上の者が告訴権を持つとする裁判例が多いです。それ以下の年齢の場合、両親のいずれかが告訴権者となります。

法定代理人が告訴する場合

被害者が告訴できない場合、法定代理人(未成年者の両親、養親、後見人など)が告訴権者となり、告訴を行うことができます。ただし、認知者や継父母は告訴権者にはなりません。また、法定代理人が被疑者である場合には、他の親族が告訴権者となることがあります。

皇族に対する名誉毀損の告訴権者

皇族に対する名誉に関する罪の場合、告訴権者は内閣総理大臣となります。

被害者が存在しな犯罪の場合

 贈収賄、公然わいせつ、薬物犯罪、銃刀法、公職選挙法といった被害者が存在しない犯罪は告訴することはできません。(刑事)告発状を提出ことになります。

警察官の階級と告訴状の受理権限

警察官にはさまざまな階級がありますが、一般的に使われる「巡査」や「警部」などの呼称は略称であり、正式な階級名ではありません。

正式な警察の階級は以下の通りです。

  • 司法巡査(受理不可)
  • 司法警察員巡査部長(受理可能)
  • 司法警察員警部補(受理可能)
  • 司法警察員警部(受理可能)

※階級名の先頭に「司法」または「司法警察員」が付きます。

つまり、司法巡査以外の階級であれば、告訴状や告発状を受理できることになります。

しかし、例外的に捜査員(私服警察官)として刑事課や生活安全課で勤務する巡査は、特別に「司法警察員」としての権限を持ち、告訴状を受理できます。一方、交番勤務の若手警察官(巡査)は「司法巡査」に該当するため、告訴状を受理することはできません。


「巡査長」という階級は法律上存在しない?

「巡査長」という階級は、実は正式な警察階級ではありません

例えば、漫画『こちら葛飾区亀有公園前派出所』の両津巡査長は「巡査長」と呼ばれていますが、法律上の正式な階級は「司法巡査」となります。それでは、なぜ「巡査長」という階級が存在するのでしょうか?

この制度が誕生したのは、昭和40年前後(1960年代)。ある警察官の娘が警視総監宛に手紙を送りました。

「私のお父さんは何十年も警察官として働き、毎日遅くまで一生懸命勤務しています。でも階級はずっと巡査のままです。お父さんがかわいそうなので、何とかしてもらえませんか?」

この手紙を読んだ警視総監は感動し、一定期間巡査として勤務し功績を挙げた者が無試験で昇進できる「巡査長」という階級を創設しました。

しかし、警察の階級は**「警察法第62条」**によって定められており、警視総監の権限ではこの法律を改正することはできませんでした。そのため、現在でも「巡査長」は正式な警察階級としては存在しないのです。


特別司法警察員も告訴状・告発状を受理可能

警察官以外にも、「特別司法警察員」と呼ばれる公務員が存在し、一定の権限を持っています。例えば、以下の職種が該当します。

  • 自衛隊の警務官
  • 労働基準監督官

これらの特別司法警察員は、自身の所管する業務に関連する犯罪に限り、告訴状や告発状を受理できます。

例えば、労働基準監督官は労働基準法違反に関する告訴状を受理できますが、それ以外の刑事事件については受理することができません。


まとめ

  • 告訴状は被害者が提出するもの、告発状は誰でも提出できるもの。
  • 告訴状・告発状を受理できるのは「検察官」または「司法警察員」。
  • 警察の階級によって受理権限が異なり、「司法巡査」には権限がない。
  • 刑事課などの私服警察官(捜査員)は例外的に司法警察員扱い。
  • 「巡査長」という階級は法的には存在せず、内部的な昇格制度としてのみ運用されている。
  • 警察官以外の「特別司法警察員」も、所管業務に関する犯罪については告訴状・告発状を受理できる。

このように、警察の階級と告訴状・告発状の関係は少し複雑ですが、制度の背景を理解することで、より深く警察の仕組みを知ることができます。

告訴は事件全体に及ぶ

告訴は、被告訴人(犯人)個人に対してではなく、事件そのものに対して行われるものです。そのため、告訴の効力は事件全体に及び、共犯者のうち一人だけを対象にすることや、事件の一部だけを切り取って告訴することはできません。これを「告訴の不可分」と言います。

告訴の主観的不可分とは?

例えば、告訴の際に「山田」という男一人が犯人だと思い、被告訴人欄に「山田」だけを記載して提出したとします。しかし、その後の捜査で共犯者が他に3人いることが判明した場合、告訴の効力はその3人にも及びます。

仮にその3人の中に自分の親友「横山」がいたとして、警察に「横山だけは処罰しないでほしい」と頼んだとしても、それは無効です。また、告訴の取消しについても同様に不可分の原則が適用されます。例えば、4人の共犯のうち3人と示談が成立した場合、示談しなかった1人を除いて取消すことはできず、取消しの効力は全員に及びます。

このように、特定の人物だけを対象に告訴したり取消したりすることができない不可分性を「告訴の主観的不可分」と言います。

例外:親族相盗例

ただし、例外として「親族相盗例」に該当する親族が犯人の中にいる場合、その親族以外の犯人に対して行った告訴の効力は親族には及びません。これが告訴の主観的不可分の例外です。

告訴の客観的不可分とは?

告訴は事件の一部を切り取って行うこともできません。これを「告訴の客観的不可分」と言います。

例えば、自宅に侵入してきた犯人に不同意わいせつ行為を受けた場合、事件としては「住居侵入」と「不同意わいせつ」の2つの罪名が発生します。このとき、「住居侵入」だけを告訴し、「不同意わいせつ」は告訴しないといった部分的な告訴は認められません。また、取消しについても同様のルールが適用されます。

告発にも適用される不可分性

これらの「告訴の不可分」は、基本的に告発にも当てはまります。告発とは、告訴権を持たない第三者が犯罪事実を捜査機関に申告する行為ですが、その効力に関しても告訴と同様に、事件全体に及びます。

まとめ

告訴には「主観的不可分」と「客観的不可分」があり、特定の犯人や犯罪の一部分だけを対象にすることはできません。ただし、親族相盗例に該当する場合は例外となります。これらの原則は告発にも適用され、事件の全体を通じた法的手続きが求められることになります。

このように、告訴と告発の不可分性を理解することで、適切な法的対応を行うことが重要です。

このような不可分性の原則は、告発にも概ね適用されます。告発者は事件全体に対して告発を行うことになり、その効力は事件の全体に及びます。

警察に受理してもらいやすい告訴状作成法

一度でも告訴状を警察に提出したことがある方は、そのハードルの高さに驚いたことがあるでしょう。実際、警察は告訴状を簡単に受理しません。その理由については、以前のコラムで詳しく解説しましたので、興味があればそちらもご覧ください。

初めて告訴状を警察に提出する際のポイント

初めて警察に告訴状を持参した場合、刑事はまず「告訴状を受理しない理由」を探します。例えば、次のような致命的な要素があれば、告訴状は受理されません。

1. 公訴時効が超過している

公訴時効が過ぎている場合、検察官は起訴できませんので、当然に告訴も受理されません。

2. 告訴権がない

告訴権を持つ者でなければ、告訴は認められません。

3. 親告罪における告訴期間が超過している

犯人を知った日から6ヶ月以内に告訴しなければならない親告罪の告訴期間が過ぎている場合、受理されません。

4. 処罰意思が記載されていない

告訴状に処罰を望む意志が記載されていなければ、受理されることはありません。

5. 明らかに犯罪として成立しない

告訴状の内容が犯罪として成立しない場合、受理されることはありません。

受理されるために必要な事前準備

告訴状が受理されるために最も重要なのは、事実を正確に記載し、証拠を示すことです。例えば、告訴する内容が複数の罪状にわたる場合、そのすべての罪状が成立するかどうかは慎重に確認する必要があります。もし、いずれかの罪について疑わしい事実があれば、その部分は削除して告訴状を提出することをお勧めします。

裁判例や報道を活用する

刑事が「これは事件にはならない」と言ったとしても、過去に同様の事例で有罪判決が下された裁判例や、犯人が逮捕されたという報道を提示することが有効です。これにより、刑事は告訴状を受理せざるを得なくなります。

告訴状を受理してもらうための注意点

告訴事実が多い場合、そのすべてが成立するかどうかに疑問を抱かれることもあります。この場合、事実をしっかりと精査し、確実に成立する事実のみを告訴することが重要です。告訴事実が10件あったとしても、2件が疑わしい場合には、疑わしい事実を削除し、確実な事実で告訴することが望ましいです。

告訴状が受理されなければ、犯人は処罰を受けることがありません。告訴が受理されることこそが最も重要な第一歩です。

告訴のメリット・デメリットとは?被害届との違いを比較【元刑事が解説】


告訴とは?被害届との違いをわかりやすく解説

「告訴」と「被害届」は、どちらも犯罪被害を警察に届け出る方法ですが、法的な意味や効果が異なります。この記事では、告訴のメリット・デメリットを詳しく解説し、被害届との違いを比較します。


告訴のメリット4つ

1. 100% 検察庁に送致される

警察が告訴を受理すると、必ず事件を検察庁に送致しなければなりません。
示談や告訴取り消し、被告訴人の死亡に関係なく送致される
被害届の場合は、警察の判断で送致されないことも

2. 起訴される可能性が高い

告訴された事件は、被害届よりも起訴される確率が高いとされています。
検察も慎重に対応するため、起訴率が上がる傾向

3. 相手に対するプレッシャーが強い

告訴されると、被害届よりも加害者に与える精神的ダメージが大きいです。
民事訴訟と並行すれば、示談交渉を有利に進められる

4. 検察庁から処分結果の通知がもらえる

告訴をすると、検察庁から「処分結果通知書」が届き、
起訴・不起訴の結果が正式にわかる
被害届では通知されない


告訴のデメリット3つ

1. お金がかかる

✅ 被害届は警察官が作成するため無料
⛔ 告訴状を弁護士に依頼すると最低35万円~
💰 行政書士・司法書士なら数万円~

2. 時間がかかる

✅ 被害届は即日受理されることもある
告訴は受理まで1か月以上かかることも
⚖️ 検察との調整も必要

3. 取り消しても相手が送致される

被害届なら取り下げ可能
告訴は一度受理されると送致を止められない
⚠️ 取り消しても起訴される可能性あり


まとめ|告訴と被害届、どちらを選ぶべき?

🔹 確実に事件を検察庁に送致し、相手にプレッシャーをかけたいなら「告訴」
🔹 手続きの手軽さと費用面を重視するなら「被害届」

警察官は告訴状を作成してくれないのですか

「警察官は告訴状を作成してくれますか?」という疑問をお持ちの方も多いでしょう。結論から言うと、一部の例外を除いて警察は告訴状を作成してくれません。法的義務がないのが理由の一つですが、自ら業務負担を増やす行為はしたくないのが本音です。

例えば、警察署の刑事課に行き「○○罪で告訴したいので、告訴状を作成してください」と依頼しても、「弁護士に相談してください」と冷たくあしらわれることがほとんどです。さらに「弁護士に頼むと費用がかかるので、告訴状の書き方を教えてください」と尋ねても、「決まった書式はなく、指導も行っていない」と断られるケースが一般的です。

しかし、ご安心ください!当事務所のサイトでは、告訴状(告発状)の書き方やテンプレートを無料ダウンロードできるよう提供しています。自分で作成したい方は、ぜひご活用ください。

警察が告訴状を作成する例外ケースとは?

一部のケースでは、警察官が告訴状を代筆することがあります。例えば、**器物損壊罪(親告罪)**に該当する事件では、被害者の告訴がなければ検察官が起訴できません。

具体的な例として、

  • 酔っ払いが居酒屋のガラスを割る
  • タクシーのドアを蹴ってへこませる

このようなケースでは、警察官が現行犯逮捕を行い、迅速に送致する必要があるため、告訴状を簡易的に作成することがあります。内容はシンプルで、1〜2枚程度の簡単なものです。

まとめ:警察官は告訴状を作成してくれません。当事務所の無料ダウンロードを使ってご自分で作成するか、当職にご相談ください。6.6万円からお受けしております。

告訴・告発の費用は?

警察への告訴を弁護士や行政書士に依頼する際の費用はどのくらいかかるのでしょうか?告訴を検討する際に、費用は最も気になる点の一つです。そこで、弁護士に告訴を依頼した場合の費用について詳しく調査しました。

なお、司法書士も告訴状の作成は可能ですが、司法書士は検察庁に提出する告訴状しか作成できません。料金的には行政書士とほぼ同じです。

調査方法

調査は、Googleで「弁護士  告訴」と検索し、検索結果の1ページ目に表示された弁護士事務所のうち、告訴依頼の費用を掲載している事務所を抽出しました。その後、検索結果の1ページ目から10ページ目までの10か所の弁護士事務所について、着手金と成功報酬を調査しました。

検索上位の事務所だけを対象にすると、告訴に特化した事務所に偏る可能性があるため、10ページ分の事務所を対象としました。また、成功報酬については「警察受理報酬」のみ設定している事務所と「起訴(処罰)報酬」も設定している事務所がありましたので、そのまま掲載しています。

弁護士費用の調査結果

ページ事務所名着手金受理報酬起訴(処罰)報酬合計費用
1ページ目A法律事務所45.1万円23.1万円23.1万円91.3万円
2ページ目B法律事務所70万円30万円-100万円
3ページ目C法律事務所44万円22万円-66万円
4ページ目D法律事務所33万円33万円3.85万円(事務手数料)69.85万円
5ページ目E法律事務所40万円40万円-80万円
6ページ目F法律事務所33万円33万円-66万円
7ページ目G法律事務所55万円22万円33万円110万円
8ページ目H法律事務所44万円33万円-77万円
9ページ目I法律事務所44万円20万円-66万円
10ページ目J法律事務所55万円-55万円110万円
  • 最高費用:110万円
  • 最低費用:66万円
  • 平均費用:83万6150円

行政書士による告訴状作成の費用

当事務所では、犯罪被害者支援の立場から、できるだけ低価格で告訴状を作成することを目指しています。告訴状作成の費用は 6.6万円 から受任しており、成功報酬は一切いただきません。

料金に関するポイント

  • ご依頼時に料金表記載の金額のみお支払いいただき、それ以上の追加費用は不要です。
  • 警察署への同行をご希望の場合は、別途料金が発生します。
  • 警察への提出後に修正を求められた場合、5回まで無料で対応。
  • 相談も無料で対応。

弁護士と行政書士の費用比較まとめ

弁護士に依頼すると、着手金や成功報酬を含めると 66万円〜110万円 の費用がかかるのが一般的です。一方、当行政書士事務所に依頼される場合は 6.6万円 から告訴状を作成可能で、追加費用が発生しないのが特徴です。

ただし、示談交渉や警察・検察官との交渉など、弁護士にしかできない業務もあるため、単純に金額だけで比較するのではなく、ご自身の状況に応じた依頼先を選ぶことが重要です。

告訴を検討されている方は、費用やサービス内容をしっかり確認し、適切な専門家に相談することをおすすめします。

告訴と提訴と起訴の違い
告訴・提訴・起訴の違いを分かりやすく解説

「告訴」「提訴」「起訴」は字面が似ているため、混同されやすい用語です。しかし、それぞれ意味や使われる場面が異なります。簡単に分類すると、

   ・告訴、起訴:刑事事件に関する手続き

   ・提訴:民事事件に関する手続き

本記事では、それぞれの意味と違いを詳しく解説します。


提訴とは?(民事裁判)

**提訴(ていそ)**とは、裁判所に対して民事上の法的紛争の解決を求めることを指します。法律上は「訴えの提起」または「訴訟の提起」と呼ばれます。

提訴の特徴

   ・誰でも可能(一般人・法人・官公署)
   ・主なケース:損害賠償請求、不動産明け渡し請求 など
   ・手続きの流れ:提訴 → 裁判 → 判決 or 和解

民事裁判では、途中で和解に至ることもあります。


起訴とは?(刑事裁判)

**起訴(きそ)**とは、検察官が犯罪を犯した疑いのある者(被疑者)について、裁判所に公判(裁判)の開廷を求める刑事手続きのことです。正式には「公判請求」と言います。

起訴の特徴

   ・起訴できるのは検察官のみ(警察や裁判官、被害者は起訴できない)

   ・裁判の構図:検察官 vs. 被告人

   ・判決の確定:民事裁判のような和解はなく、必ず有罪・無罪の判決が出る

刑事裁判では、被告人が途中で死亡するなどの特別な事情がない限り、裁判は進行します。


告訴とは?(刑事事件の申立て)

**告訴(こくそ)**とは、犯罪被害者(告訴権者)が捜査機関(警察・検察など)に対し、加害者の処罰を求める手続きのことです。

告訴の特徴

   ・刑事訴訟法に基づく手続き

   ・告訴権者のみが行える(例:被害者の夫が代わりに告訴することは不可)

   ・告訴を受理した警察は、必ず検察庁に送致する義務がある

告訴を受けた検察官は、起訴するか不起訴にするかを決定し、結果を告訴人に通知します。


告訴・提訴・起訴の違いまとめ

項目提訴(民事)起訴(刑事)告訴(刑事)
意味民事裁判を起こす検察官が刑事裁判を開始する被害者が犯罪の処罰を求める
誰ができる?一般人・法人・官公署検察官のみ被害者(告訴権者)
進行先裁判所(民事部)裁判所(刑事部)捜査機関(警察・検察)
判決・結果和解の可能性あり必ず有罪・無罪が決まる検察官が起訴するか決定

告訴・告発された場合の対処法|行政書士が解説

告訴・告発とは?

告訴や告発を受けた場合、どのように対応すべきか悩まれる方は多いでしょう。私は行政書士であり、弁護士ではないため、被告訴人の弁護を行うことはできません。しかし、刑事事件に関する知識や経験をもとに、告訴された場合の対応についてアドバイスいたします。

告訴されたかどうかを確認する方法

自分が告訴されたかどうかを知る方法はいくつかあります。

  • 被害者と面識がある場合:被害者から直接聞かされることがあります。
  • 弁護士が介入している場合:被害者側の弁護士から連絡を受ける可能性があります。示談が目的の場合があります。
  • 被害者と面識がなく、弁護士の連絡もない場合:事件の発生場所を管轄する警察署の刑事課で直接確認する方法がありますが、教えてくれるとは限りません。ただし、警察の対応はケースによるため、問い合わせた際にそのまま取調べになることもあります。そうなれば告訴されている可能性が高いことになります。

取調べの流れと対応

警察の取調べが始まると、被疑者(容疑者)の場合、まず「供述拒否権」(『言いたくないことは言わなくていい権利があなたにあります』と言われます)が告知されます。これにより、自分が被疑者(被告訴人)であるかどうかが明確になります。 取調べにおいて、事実関係を正直に話し、告訴人の供述内容と一致する場合は、逮捕されずに書類送検(送付)される可能性があります。

自主的に出頭するメリット

もし告訴されたことが判明したら、自ら警察署に出頭し、刑事の取調べを受けることで有利に働く場合があります。

  • 刑事の印象が変わる:「素直に認めているなら、逮捕せず任意捜査にする」という判断になる可能性があります。
  • 逮捕リスクの軽減:特に軽微な犯罪では、反省の態度を示すことで逮捕を回避できることがあります。

ただし、1000万円を超える業務上横領や重傷を負わせた傷害事件など、重大な犯罪では逮捕の可能性が高いため、慎重に対応しましょう。

示談・弁済の重要性

お金に余裕がある場合、可能な限り被害者に対して返済や弁済を行うべきです。

  • 刑事手続きへの影響:示談が成立すると、刑事の逮捕判断や検察官の起訴判断、裁判官の判決に有利に働きます。
  • 告訴の取り下げ:示談が成立すれば、告訴が取り消され、逮捕や起訴を回避できる可能性が高まります。

仕事や家族への対応

  • 仕事は続けるべき:逮捕される可能性があるとしても、働けるうちは働き、できるだけ貯蓄しておくことが重要です。
  • 家族には早めに話す:いずれ発覚するため、自分の口から説明したほうがよいでしょう。

刑事事件に強い弁護士への相談

  • 私選弁護士の活用:資金がある場合は、刑事事件に詳しい弁護士を探して依頼する。
  • 示談交渉の支援:弁護士を通じて示談交渉を行い、告訴を取り下げてもらう。

スマホやPCの押収対策

事件の内容によっては、スマホやPCが押収される可能性があります。常にクラウドにバックアップを取っておくことで、万が一の事態に備えましょう。

まとめ

告訴・告発を受けた場合の適切な対応は、事件の内容によって異なります。警察の取調べに冷静に対応し、示談や弁護士の活用を検討することが重要です。特に、逮捕を避けるためには、誠実な態度と適切な示談交渉がカギとなります。

告訴とは、簡単に言うと 警察官への捜査・送致命令書 です。検察官に提出する場合は 捜査・起訴依頼書 となり、警察と検察で扱いが異なります。警察に告訴状を提出すると、警察は必ず事件を捜査し、検察庁に送致(または送付)する義務を負います。なので「命令」に等しいのです。一方、検察官は受理しても起訴する義務がないため「依頼書」としました。

行政書士が作成できる告訴状とは?
行政書士が作成できるのは、警察に提出する告訴状 だけです。したがって、ここでは 警察に対する告訴 について詳しく解説します。

告訴の種類と親告罪の違い

告訴には 「通常の告訴」「親告罪の告訴」 の2種類があります。

通常の告訴:被害者が「犯人を処罰してほしい」と強く希望する場合に行う手続きで、罪名に制限はありません。窃盗、横領、詐欺、暴行、傷害、恐喝、特商法違反、迷惑防止条例違反など、さまざまな犯罪で告訴が可能です。

親告罪の告訴:検察官が起訴するために告訴が必須となる犯罪です。例えば、器物損壊、名誉毀損、侮辱、過失傷害、著作権法違反 などが該当します。被害届だけでは、検察官は起訴することができません。

どちらの告訴も、警察が受理すれば 必ず事件を検察庁に送致 する義務があります。仮に示談が成立して告訴が取り消された場合でも、送致義務は消えません。さらに、被告訴人が死亡したとしても、送致義務は変わりません。

警察が告訴を簡単に受理しない理由

警察は、告訴事件を送致する際、検察官の厳しい事前審査 をクリアする必要があります。そのため、警察は簡単に告訴を受理しないのです。

告訴と被害届の決定的な違いとは?

最大の違いは 「送致義務」 にあります。

  • 告訴:警察は受理すれば必ず検察庁へ送致しなければなりません。
  • 被害届:送致義務がないため、警察の倉庫には処理されない被害届が大量に保管されています。

もしすべての被害届を送致しなければならないとすれば、刑事の人数は 現在の3倍 は必要になるでしょう。

まとめ

告訴は、警察が必ず事件を検察庁へ送致する重要な手続きです。一方、被害届には送致義務がないため、警察内で放置されるケースも少なくありません。警察と検察の仕組みを正しく理解し、適切な手続きを選ぶことが大切です。

遠方の警察署への告訴状提出で困っていませんか?

詐欺や性犯罪などの被害を受けた際、告訴状を提出する必要があります。しかし、もし以前北海道で被害に遭い、現在大阪に住んでいる場合、大阪府警に告訴状を提出しようとしても「当署では管轄権がないため、発生場所である北海道警○○警察署に相談してください」と対応されることが一般的です。

告訴状は全国どこの警察署にも提出可能?

法律上、告訴状はどの警察署にも提出可能です。しかし、実務上は告訴状を受理した警察署が事件の捜査を行う必要があり、大阪府警が北海道で発生した事件を扱うのは負担が大きくなります。

告訴状を受理した警察署が捜査を担当する「受理処理の原則」や、事件が発生した警察署で捜査を行う「認知処理の原則」という警察の内部慣習があり、管轄外の警察署に告訴状を提出しても受理されないケースがほとんどです。

遠方の警察署に告訴状を提出する方法

告訴状を確実に受理してもらい、無駄な出費や労力を抑えるための方法をご紹介します。

① 事前に被害地の警察署へ電話相談

北海道警○○警察署に電話し、「詐欺(または性犯罪)の被害に遭い、告訴状を提出したいが、現在大阪に住んでいるため直接訪問が難しい」と相談しましょう。

② 告訴状のコピーを郵送

警察が対応可能なら、「まずは告訴状のコピーを郵送するので、内容を審査してもらいたい」と伝えます。警察の指示に従い、必要書類とともに送付します。

③ 受理の確認とスケジュール調整

郵送後、警察から「受理しますので原本と身分証明書を持参してください」との連絡があれば、「飛行機代の負担が大きいため、原本の受理と告訴人供述調書の作成を同時に行いたい」と伝えます。多くの場合、警察も柔軟に対応してくれるでしょう。

遠方への移動回数を減らす工夫

通常の手順では、北海道警に3回も出向く必要があります。

  1. 告訴状コピーの提出(1回目)
  2. 受理後、原本と証拠品を提出(2回目)
  3. 告訴人供述調書の作成(3回目)

1回の飛行機代が約5万円と仮定すると、合計で15万円もの交通費がかかります。しかし、事前相談と郵送を活用すれば、1回の訪問で済ませることができ、大幅な負担軽減が可能です。

まとめ|告訴状をスムーズに提出するコツ

  • 事前に被害地の警察署に電話で相談
  • 告訴状のコピーを郵送して審査を依頼
  • 原本提出と供述調書作成を同時に行うよう調整

この方法を活用すれば、告訴状の受理をスムーズに進められるだけでなく、遠方への移動回数を減らし、費用と時間を節約できます。

告訴状の提出方法でお悩みの方は、ぜひこの手順を参考にしてください。

 警察が受理しない告訴・告発には、いくつかの基準があります。本記事では、**警察が受理を拒否するケースとその可能性(%)**について詳しく解説します。

 公訴時効超過、親告罪の告訴期間(犯人を知ってから6か月)超過、明らかに犯罪ではない事案、告訴人が匿名、犯人に対する処罰意思不明といった告訴要件を満たさない告訴状が不受理とされるのは当然、他にも警察側が受理しないまたは受理する可能性が極めて低い告訴・告発があります。私の経験上、警察側が受け取らない告訴・告発について説明いたします。

1 被害弁済清み事件(受理可能性0~70%)


 詐欺や横領といった財産犯で被害額を被疑者が全額または一部弁済している場合や、暴行、傷害等で治療費や慰謝料を被疑者が支払っている場合です。もちろんお金を払ったからといって罪が消えるわけではないので、告訴の提出は可能です。ただし、財産犯の場合で、被害金額の全額を弁済済みの場合は、実務上、検察官が起訴することはあり得ず、警察もこれを理由に告訴の受理を断ります。では、一部だけ弁済していればどうかといえば、これは弁済の程度によると思います。なので、受理可能性を幅広くしたのです。例えば100万円を騙し取ってそのうち10万円だけ返して逃げている場合、普通の刑事なら不受理の理由にはしません(「一部でも返していれば詐欺ではない」と明白な間違いを言う刑事がいるかもしれません。もちろんそんなことはあり得ません)。しかし、半分以上返済していれば、不受理の可能性はかなり高くなります。決して基準があるわけではないのですが、実務ではこの「半分」が一つの目安となります。さらに、今後返済が受けられる見込みの有無も判断材料になります。結論としては、全額支払いを受けていれば不受理、1~2割程度なら受理が見込める。その中間なら他の状況と合わせて刑事の判断次第ということになるでしょう。


2 被害者に処罰意思がない事件の第三者告発(受理可能性0%)


 財産犯や傷害、住居侵入といった被害者が存在する犯罪で、その被害者に犯人に対する処罰意思がなく被害届も告訴状も提出しない場合、その犯罪を知った第三者が処罰を求めて告発することは法的には可能です。ただし、こうした告発状を受理しても、検察官が不起訴とするのは明白なことと、事件処理に一番重要な被害者の協力が得られない可能性が高いことから、警察は100%受理しません。私も現役時代にこのような告発相談を受け、被害者に確認したところ「被害申告しません」とのことだったため、相談人に対し「被害者が告訴状を提出すればあなたの告発も受理しますが、そうでない限りはできません」と断ったことがあります。

3 海外発生事件(受理可能性1%)


 日本人を被害者とする国外発生事件の告訴は法的には可能です。しかし、日本警察の捜査権は国外には及ばず、事実上何の捜査もできないことになります。海外警察に捜査を依頼するとすれば、告訴状等を英訳して警察庁経由でICPOに依頼し、現地警察に捜査を依頼するという形になりますが、殺人や誘拐といった重大犯罪以外は受け付けてくれないでしょう。したがって、詐欺や横領などであれば、受理は事実状不可能だと思われます。


4 公訴時効切迫事件(受理可能性0~30%)


 殺人罪などを除き、全ての犯罪に公訴時効があります。詐欺、窃盗で7年、単純横領5年、名誉毀損3年です。通常、告訴する場合、犯罪発生から1年以内にする方がほとんどです。ですが、たまに時効間近になってから告訴相談に来られる方がいます。民事訴訟で敗訴して、せめて刑事で処罰させたいというケースが多いです。警察と検察との間では、告訴・告発事件について、どんなに遅くとも時効の6か月前までには送致するという取り決めがあります。告訴・告発事件は複雑な事件が多くて処理に何か月もかかるのが普通です。また、ほとんどの警察署刑事課では、告訴・告発事件を複数抱えており、時効が近い順番に処理していくというスケジュールがあります。ところがここに時効が1年を切った告訴事件が割り込むと、処理予定のスケジュールが大きく崩れてしまうため、時効間近な告訴・告発は非常に嫌がられます。さらに、発生から何年も経っている事件では、防カメデータが消去済みだったり、クレジットカード会社の取引明細が消去済みだったり(カード会社によっては保存期間が3年のところもあります)、関係者の記憶が薄れているなど、犯罪立証状の問題も多々あります。以上から、公訴時効が残り1年を切っているような事件は、受理を拒まれる可能性がかなり高いです。


5 証拠が告訴人の記憶以外何もない事件(受理可能性0~50%)


 警察が告訴状の受理を拒否する理由で一番多いのがこの「証拠が無い」です。例えば詐欺事件で、犯人とのやり取りが100%口頭だけであって、契約書がない、パンフレットがない、領収書がない、名刺がない、メールがない、防カメがない、目撃者も参考人もいないとなればさすがに受理は厳しいです。警察側からすれば「本当にそんな事実があったのか?」「相談人の作り話ではないのか?」といった疑問すら湧くことがあります。ただし、被疑者やその関係者が何らかの証拠資料を持っている蓋然性が高いなど、警察が押収することによって証拠が得られる見込みがあるなら受理される可能性はあります。また、性犯罪のように密室で行われる犯罪で、はじめから証拠資料が乏しいことが前提である犯罪であれば、告訴人の証言を慎重に判断して受理・不受理を決めます。こうした犯罪の場合は、有形・無形の証拠資料がないことが多いので、受理可能性は20~50%となります。


6 ネット上の名誉毀損や侮辱で既に当該書き込み等が消去され画像データ等の記録も一切残っていない場合(受理可能性0%)

 既に消去されていても、画像データ等が残っていれば受理の可能性はあります。しかし、データが何もなく、URLすら記録してないとなると、事実上何の捜査もできないことから、不受理となるでしょう。


7 文書偽造罪で偽造文書の原本がない場合(受理可能性0%)

 文書偽造罪の場合、筆跡鑑定はもちろんやりますが、紙からの指掌紋採取、凹みからの筆圧鑑定、書き順鑑定、紙質鑑定などを行うため、偽造文書原本の存在が必須です。現在手元になくても、銀行や法務局等に保存されており、警察が押収することで入手できる見込みがあれば受理の可能性はありますが、原本自体が廃棄される等して地球上に存在しない場合は不受理となります。


8 被告訴人が死亡している場合(受理可能性0%)

 法的には被告訴人死亡の場合でも告訴は可能ですが、不起訴100%であり、警察は絶対に受理しません。

9 発生場所管轄ではなく、告訴人、被告訴人の居住地の管轄でもない警察署に提出した場合(受理可能性0%)


 法的には告訴状・告発状はどこの警察署に出してもいいことになっていますが、実際に捜査を担当するのは、発生場所を管轄する警察署が大原則です。したがって、全然関係のない警察署に持っていっても「当署には管轄権がないので捜査できないため、管轄である○○警察署に持って行ってください」と言われて受理を拒否されます。いくら「刑事訴訟法に書いてある」と言っても折れないことでしょう。刑事訴訟法には罰則規定が一切ないため、条文に従わなくても処罰されることはありません。ネット上の名誉棄損や侮辱のように、発生場所という概念がない犯罪の場合は、被害者(告訴人)の住居地を管轄する警察署または被疑者(被告訴人)の住居地を管轄する警察署が担当となります。発生場所が遠方である場合はこちらを参考にしてください。


10 既に他署に相談したのと同じ事件(受理可能性0%)

 例えばA署に告訴状を持ち込んだところ、断られてしまったことから、隣のB署に持ち込んだ場合ですが、「すでにA署にご相談されているので、引き続きA署に相談してください」と門前払いを受けます。警察の相談システムで、相談人の名前を入力すると、すでに相談をしている場合にはすぐわかるからです。

1. 告訴・告発が受理されない主な理由

警察が告訴・告発を受理しない理由には以下のようなものがあります。

  • 公訴時効の超過
  • 親告罪の告訴期間超過(犯人を知ってから6か月)
  • 明らかに犯罪ではない事案
  • 告訴人が匿名である
  • 犯人に対する処罰意思が不明

こうした要件を満たさない告訴状は当然ながら不受理となります。しかし、これ以外にも警察が受理を拒否する、または受理可能性が極めて低いケースが存在します。私の経験をもとに、受理可能性のパーセンテージ付きで解説していきます。

2. 受理可能性別の具体的なケース

① 被害弁済済みの事件(受理可能性:0~70%)

詐欺や横領などの財産犯で、被疑者が全額または一部弁済している場合、警察は受理を拒否する傾向があります。特に全額弁済済みの場合、検察官が起訴することはなく、警察もこれを理由に不受理とします。

受理可能性の目安

  • 全額弁済済み → 受理可能性0%
  • 1~2割のみ弁済 → 受理可能性あり
  • 半額以上弁済 → 不受理の可能性が高い

② 被害者に処罰意思がない事件の第三者告発(受理可能性:0%)

財産犯や傷害事件で被害者が告訴状を提出しない場合、第三者が告発しても警察は100%受理しません。

③ 海外で発生した事件(受理可能性:1%)

日本の警察には国外での捜査権がないため、基本的に告訴は受理されません。ICPO経由で海外警察に依頼するケースもありますが、重大犯罪以外では対応されません。

④ 公訴時効が迫っている事件(受理可能性:0~30%)

公訴時効が近い事件は、警察が受理を嫌がる傾向があります。例えば、詐欺や窃盗の時効は7年、名誉毀損は3年。告訴事件の処理には数ヶ月かかるため、時効間近の案件は警察のスケジュールを乱すことになり、受理されにくいです。

⑤ 証拠が告訴人の記憶だけの事件(受理可能性:0~50%)

証拠がない場合、警察は「本当に事実があったのか?」と疑念を抱くため、不受理の可能性が高まります。ただし、被疑者側が証拠を持っている可能性がある場合性犯罪のように証拠が乏しいことが前提の犯罪であれば、受理される可能性があります。

⑥ ネット上の名誉毀損・侮辱の書き込みが既に削除済み(受理可能性:0%)

画像データやURLの記録がなければ、警察は捜査を進めることができないため、不受理となります。

⑦ 文書偽造罪で原本がない場合(受理可能性:0%)

偽造文書の原本がないと筆跡鑑定や指紋検出、紙質鑑定等ができないため、警察は受理しません。

⑧ 被告訴人が死亡している場合(受理可能性:0%)

法的には告訴可能ですが、不起訴が確定しているため警察は絶対に受理しません。

⑨ 管轄外の警察署に提出した場合(受理可能性:0%)

原則として事件発生場所を管轄する警察署が担当するため、関係のない警察署に持ち込んでも受理されません。

⑩ 既に他の警察署で相談した事件を別の警察署に持ち込んだ場合(受理可能性:0%)

警察の相談システムで過去の相談履歴が共有されているため、別の警察署に持ち込んでも「すでに相談済み」として門前払いされます。


まとめ:告訴・告発の受理可能性を理解して適切な対応を

警察に告訴・告発を受理してもらうには、

  • 公訴時効内であること
  • 明確な証拠を提示できること
  • 被害者本人が告訴意思を持っていること
  • 適切な警察署に提出すること

といったポイントを押さえることが重要です。

 告訴状を警察に提出しても、その場ですぐに受理されることはほとんどありません。通常、警察はコピーを取り、原本を返却したうえで「検討させていただきます。結果は後日ご連絡します」と言うはずです。場合によっては、コピーに「参考資料として提出」と記載を求められることもあります。その後、担当刑事は告訴状をよく読んだ後、受理するか、不受理とするか、それとも一部捜査を開始して受理・不受理の判断材料を入手するかを判断し、署長までの決裁を受けます。

1. 受理の可能性がある場合

数日~数週間後、警察から「説明がありますので再度警察署にお越しください」と連絡があれば、受理の見込みがあります。一方で、「○○○○のため、この告訴は受理できません」と伝えられた場合は、不受理が確定します。ただし、警察は「不受理」という言葉を避け、「受けられない」「無理です」といった表現を使うことが一般的です。

2. 訂正や追加資料の提出を求められた場合

警察署に呼ばれた際には、以下の対応が求められることがあります。

  • 警察側の疑問点に対する説明
  • 追加資料の提出
  • 告訴状や添付資料の加除訂正

このような修正や追加が求められた場合、基本的には告訴が受理される流れとなります。なぜなら、警察が訂正を指示した後で不受理にすれば、告訴人は無駄な手続をさせられたと怒ることでしょう。したがって、訂正や追加資料を求められた場合、指示通りに手続をしてください。その後受理されるはずです。

ポイント:

  • 犯行回数や被害額が減らされることがあっても、警察の指示に従う方が受理されやすい
  • 追加資料の提出や訂正の依頼があれば、前向きに対応する

まとめ

告訴状の提出後、警察からの指示があった場合は、適切に対応することでスムーズに受理される可能性が高くなります。警察官の指示には柔軟に対応し、適切な修正や追加資料の提出を行いましょう。

告訴手続きの詳細や対策についてさらに知りたい方は、専門家への相談をおすすめします。

 「告訴をした場合、相手に知られるのか?」と不安に思う方は多いでしょう。結論としては、告訴が受理されると、最終的に相手(被告訴人)に知られる可能性が極めて高いです。では、どのタイミングで告訴が伝わるのか、具体的に説明します。

1. 告訴前の相談段階で相手に知られるケース

告訴の相談段階(受理前)に、警察が事実確認のために相手に電話をかけたり、呼び出すことがあります。これは、

  • 事件が複雑で事実関係が不明確な場合
  • 告訴人の話に不自然な点があり、虚偽告訴罪の可能性が疑われる場合

このような場合、警察が相手に「どの事件に関する事情聴取か」を伝えるため、告訴人の情報が相手に伝わってしまうことがあります。

2. 告訴受理後に相手に知られるタイミング

相手を呼び出さずに告訴を受理した場合、警察はすぐに相手へ告知することはありません。しかし、捜査が進むと、

  • 事件の証拠が揃い、相手を逮捕する段階
  • 逮捕せず、任意の事情聴取を行う段階

このいずれかのタイミングで、取調べの際に告訴事実が告げられるため、告訴人が誰かが推定等される可能性があります。

3. 例外的に告訴人の情報が伏せられる場合

性犯罪などの一部のケースでは、被害者(告訴人)の名前や住所を秘匿したまま捜査が進められることがあります。ただし、

  • 被告訴人側に弁護士がついた場合、検察官から告訴状の写しを入手できるため、名前が判明する可能性があります。

まとめ

告訴は一定のプロセスを経て進められるため、最終的に相手に知られることがほとんどです。特に、刑事事件の流れでは、警察の捜査段階や取調べ時に告訴人の情報が相手に伝わることになります。性犯罪など一部の例外を除き、完全に秘匿することは難しいため、告訴を検討する際には十分な準備と理解が必要です。

告訴の流れや対策について詳しく知りたい方は、当職にご相談ください。

被害届提出済み事件の告訴状は提出できますか」という質問に対する答えは、「はい、可能です」
刑事訴訟法、犯罪捜査規範、警察庁通達・通知・例規、各都道府県警の通達・通知・例規には、「被害届受理事件は告訴状を受理しなくてよい」 という規定は一切ありません。


被害届提出後に告訴状を提出するべき場合

被害届を提出しただけでは、警察は検察庁への送致義務を負いません。たとえば、以下のようなケースがあります。

  • 被疑者を特定して被害届を提出したが、被疑者が犯行を否認している
  • 証拠不十分で事件が進展しない
  • こうした場合、警察の**裁量で「不送致」**処分となる可能性がある

このようなとき、告訴状を追加提出することで、事件が確実に検察庁へ送致されます。これは、告訴状を受理した警察には、事件を必ず検察庁に送致する義務があるためです。


実際の事例:被害届後の告訴状提出

私自身、現役刑事時代被害届提出済み事件で後から告訴状を受理したことが複数回あります。特に、詐欺事件などの知能犯での事例が多く、以下の理由で告訴状の受理を行いました。

  • 捜査の結果、被疑者の犯行が明らかになった
  • 被害届よりも告訴状の方が、警視庁本部刑事部の評価が高い
  • 被害者に依頼して、私が告訴状を作成し提出してもらった

被害届提出後に告訴状提出を検討すべき場合

被害届を提出しているのに、

  • 捜査が進展しない
  • 被疑者が検察庁へ送致されない

こうした状況が続く場合は、告訴状の提出を検討してください。もし、刑事から「被害届を受理しているから、重ねて告訴状を受理する意味がない」と言われた場合は、上記の理由を説明してみてください。

 行政書士に告訴状・告発状の作成をご依頼される際は、その行政書士に「刑事」の経験があるかどうかを確認されることをお勧めいたします。「警察官」ではなく「刑事」です。一般の警察官は告訴・告発事件を扱わないからです。

【元刑事が解説】告訴・告発が不受理となった場合の具体的対処法

告訴状や告発状が警察や検察に受理されなかった場合、どのように対応すればよいのでしょうか?
この記事では、実際に現場で何百件もの告訴・告発を受理・不受理してきた元刑事の立場から、告訴・告発が不受理となる主な理由とその対策を詳しく解説します。


【理由1】「犯罪事実ではない」または「事実が明確でない」と言われた場合

このケースは非常に多く、告訴・告発が不受理となる典型的な理由です。

対処法:

  • 担当刑事に「なぜ犯罪とならないのか」「どの点が不明確か」をしっかり聞いてメモを取りましょう。
  • 書き方に問題がある場合は、「告訴状の書き方」や「告訴・告発事実集」などの参考資料をもとに修正してください。(→告訴状の書き方はこちら
  • 「起こった事実だけを書く」ことが基本です。
     「極めて悪質」「卑劣な犯行」などの感情表現は控えましょう。

【理由2】「証拠がない」と言われた場合

証拠が乏しい場合でも、工夫次第で告訴が受理される可能性はあります。

対処法:

  • 契約書や領収書がなくても、次のようなものが証拠になり得ます:
    • メールやLINEのやり取り
    • 会話の録音
    • 手書きのメモ
    • 第三者の証言
    • 同様の被害者の存在
  • これらをしっかり整理・書類化することで、受理の可能性が高まります。
  • ただし、文書偽造罪などで原本がない場合はコピーだけでは証拠不十分と判断されることがあります。

【理由3】「事件発生から時間が経ちすぎている」と言われた場合

概ね1年以上前の事件は受理を渋られる傾向がありますが、公訴時効が成立していなければまだ可能性はあります。

対処法:

  • なぜ今になったのかを説明できるよう、経緯を整理しておきましょう。
  • 例えば「被害に気づかなかった」「証拠集めに時間がかかった」など、やむを得ない事情がある場合は正直に説明を。

【理由4】「公訴時効が成立している」と言われた場合

公訴時効は犯行が終了した時点からカウントされます。被害に気づいた日ではないので注意が必要です。

代表的な公訴時効一覧:

  • 暴行・脅迫・器物損壊・名誉毀損・侮辱:3年
  • 横領(単純)、私文書偽造、背任:5年
  • 詐欺、窃盗、恐喝、業務上横領:7年

※時効を過ぎていれば、基本的に告訴・告発はできません。


【理由5】「告訴期間が過ぎている」と言われた場合(親告罪)

親告罪(名誉毀損、侮辱、器物損壊、過失傷害など)では、**「犯人を知った日から6か月以内」**に告訴しなければなりません。

「犯人を知った日」の定義:

  • 犯人の名前や住所を知った日
  • 顔をしっかり確認して、本人を特定できる状態になった日

この日から6か月を過ぎると告訴できなくなるため、注意が必要です。


【理由6】「当署の管轄ではない」と言われた場合

法律上はどの警察署でも告訴・告発を受け付けられることになっていますが、実務上は「事件の発生場所が管轄」である警察署に行く必要があります。

対処法:

  • 担当者に正しい管轄署を確認して、そちらに出向きましょう。
  • ただし、「○○署に行けと言われた」と伝えるのは避けましょう(守秘義務に関わる可能性があります)。

まとめ|告訴・告発が不受理になったときの相談先

告訴や告発が不受理となった場合でも、諦める必要はありません。不受理の理由に応じた対策をとることで、受理される可能性を高めることができます。

ご自身で対応が難しい場合は、刑事事件に強い弁護士や、元刑事の行政書士に相談するのも有効です。

当サイトでは、告訴状の書き方や各種犯罪事例ごとのフォーマットも掲載していますので、ぜひご活用ください。

【元刑事が解説】被害者が多数いる詐欺事件で告訴するには?効果的な告訴状の提出方法

全国で被害者が発生する投資詐欺副業詐欺など、被害者多数の詐欺事件では、効率的かつ効果的に警察に告訴状を提出する方法が重要になります。

被害者多数の詐欺事件で個別に告訴するのは非効率

例えば、全国各地に被害者が点在している場合、各自が居住地の警察署に個別で告訴状を提出するのは、被害者側にも警察側にも大きな負担となります。弁護士や行政書士に依頼して告訴状を作成する場合、費用もかさむため、特に負担が大きくなります。

告訴状は「連名」でまとめて提出できる

こうしたケースでは、被害者が連絡を取り合い、「被害者の会」などの組織を作ることで、告訴人を連名にした1通の告訴状を提出することが可能です。告訴人の人数に制限はありません。

この方法により、以下のようなメリットがあります:

  • 警察は1カ所に情報を集中させて捜査が可能
  • 弁護士・行政書士費用を複数人で分担できるため、費用負担が軽減

告訴状を提出する最適な警察署とは?

重要なのは、「どこの警察に告訴状を提出するか」です。

一般的におすすめされるのは、

  • 被告訴人(加害者)が法人であれば、その本店所在地の都道府県警察に提出
  • 被害者が数人(2〜3人)の場合は、所轄の警察署でもOK
  • 被害者が多数であれば、**都道府県警本部(本庁)**に提出するのがベスト

現在、多くの都道府県警には「警察相談センター」が設置されており、告訴状の相談に対応しています。

都道府県警本部の注意点

  • 土日祝・夜間は対応していない(平日のみ対応)
  • 警察署のように常時開いているわけではない
  • 一部の県警では相談のみ受け付け、告訴状の受理は所轄署を案内されることもある

その場合は、指示に従って所轄署へ提出しましょう。

大規模事件は「合同捜査本部」が立ち上がる可能性も

告訴状が受理され、大規模な被害が認められた場合、都道府県警が主導し、他県の警察と連携した「合同捜査本部」が設置されることもあります。より広範囲で徹底した捜査が期待できます。


まとめ:被害者多数の詐欺事件では「集団での告訴」が効果的

  • 告訴状は連名で提出可能
  • 都道府県警本部に相談・提出が基本
  • 費用を抑え、捜査効率もアップ
  • 提出先・受付時間には注意

被害者同士で連携をとり、効率よく警察に訴える方法を取ることが、被害回復の第一歩になります。

【元刑事が解説】被害届・告訴と示談の流れと注意点|弁護士は必要?

犯罪被害に遭った際、被害者が警察に被害届や告訴状を提出することがあります。その後、加害者側が弁護士を通じて「示談(じだん)」を提案してくるケースも少なくありません。

示談とは?~民法上の「和解」と同じ意味

示談とは、民法上の「和解」と同義であり、加害者が被害者に謝罪と示談金の支払いを行う代わりに、被害者が**被害届や告訴状を取り下げる(取消す)**手続きです。これにより、加害者の刑事処分が軽減されることもあります。


示談交渉に弁護士は必要か?

よくある疑問が「被害者側も弁護士を雇うべきか?」という点です。結論から言うと、必ずしも必要ではありません

着手金として数十万円を請求されることもあるため、以下のようなケースでない限り、自身で対応することも可能です:

  • 示談金が相場よりも明らかに低い
  • 相手側弁護士が高圧的な態度を取る

ほとんどのケースで、被害者に落ち度はありません。冷静かつ毅然とした対応を心がけましょう。不当な要求に応じる必要はありませんし、納得できなければ示談を拒否して問題ありません。


示談を受け入れるかは被害者次第

「ここまで捜査してくれた警察に申し訳ない」と感じる方もいらっしゃいますが、お金での解決は悪いことではありません。警察官もそのようなケースには慣れています。自分の気持ちを最優先にして示談を判断してください。


示談金支払い前に被害届を取り下げてはいけない理由

最も重要な注意点は、示談金が支払われる前に被害届や告訴状を取消さないことです。

まれに「取り下げたのに示談金を支払わない」加害者も存在します。この場合、次のような違いがあります:

  • 非親告罪(例:傷害、窃盗など):取消しても再度告訴が可能
  • 親告罪(例:名誉毀損、器物損壊、過失傷害など):一度取消すと二度と告訴できない(再告訴禁止)

このため、最悪の場合、示談金を一円も受け取れず、加害者が処罰を免れるという事態も起こり得ます。

対策:入金確認後に取消状を提出する

示談が成立しても、示談金の全額入金を確認するまでは絶対に被害届や告訴状を取り下げないでください。警察へは、入金後に正式な「取消状」を提出することで問題ありません。


まとめ|被害届・告訴と示談の正しい知識を

被害届や告訴後に持ちかけられる示談には、法的リスクと注意点があります。冷静な判断を持ち、示談金の支払いを確実に受けた上での対応が重要です。元刑事としての経験からも、感情に流されず、確実に権利を守ることを強くおすすめします。

親告罪を第三者が告発できるのか?【元刑事がわかりやすく解説】

親告罪とは?被害者の告訴が必要な犯罪

「親告罪(しんこくざい)」とは、被害者本人の告訴がなければ起訴できない犯罪のことを指します。代表的なものとして、以下の罪が挙げられます。

  • 名誉毀損罪
  • 侮辱罪
  • 器物損壊罪
  • 過失傷害罪 など

刑事訴訟法の規定により、これらの犯罪では被害者が警察や検察に対して「告訴状」を提出しなければ、検察官は犯人を起訴(裁判にかけること)できません。つまり、被害者が処罰を望まなければ、加害者は刑罰を受けることがないのが親告罪の特徴です。

第三者が親告罪を「告発」することは可能か?

では、被害者ではない第三者が、親告罪に関して「告発」することはできるのでしょうか?

結論から言えば、法的には第三者による告発は可能です。刑事訴訟法上、第三者の告発を禁止する規定は存在しません。被害者が既に告訴している場合、さらに第三者が告発状を提出することで、「この犯人を処罰してほしい」と望む人が複数いるという事実が、検察の判断や量刑に微妙な影響を与えることもあります。

被害者が告訴していない親告罪で第三者が告発するとどうなる?

では、被害者が処罰を望んでおらず、告訴もしていない親告罪に対して、第三者が告発状を提出した場合はどうなるのでしょうか?

1. 告発が受理された場合の捜査の流れ

仮に警察が第三者の告発を受理したとすると、以下のような手続きを取る必要があります:

  • 被害者からの事情聴取(被害届の有無にかかわらず)
  • 被害者供述調書、実況見分調書の作成
  • 証拠品の収集と分析
  • 被害状況の再現調査

しかし、被害者が協力を拒否した場合、これらの捜査は非常に困難になります。

2. 被告人への対応は?逮捕できる?

親告罪では、被害者の告訴がなければ逮捕状の請求もできません。そのため、加害者を警察署に呼び出しても、本人が拒否すればそれ以上は強制力を行使できません。

3. 結局、第三者の告発で起訴されるのか?

最終的に、たとえ告発状が受理され、捜査が行われたとしても、被害者の告訴がなければ起訴は100%されません。第三者の告発によって事件が動いたとしても、検察から「不起訴処分通知」が届くだけで、犯人は処罰されることはないのです。

結論:親告罪の第三者告発は現実的ではない

  • 被害者がすでに告訴している場合、第三者の告発は意味を持つ可能性があります。
  • しかし、被害者が告訴をしていない親告罪については、第三者の告発は実質的な効果を持ちません。
  • 警察や検察も受理しないことがほとんどで、捜査が無駄に終わるケースが多いのが現実です。

よくある質問(FAQ)

Q. 親告罪に該当する犯罪はどんなものがありますか?

A. 名誉毀損、侮辱、過失傷害、器物損壊、ストーカー規制法違反の一部などがあります。

Q. 第三者でも告発は可能なのですか?

A. 法的には可能ですが、被害者の告訴がなければ起訴されないため、実質的な意味はほとんどありません。

Q. 被害者が後から告訴すればどうなりますか?

A. 告訴の有効期限(原則6ヶ月)内であれば、告訴によって起訴が可能になる場合もあります。

【元刑事が解説】刑事告発とは?告発の意味・やり方・告発状の書き方まで徹底解説!

刑事告発とは?法律上の正しい意味

「刑事告発」という言葉は、実は法律用語としては正式なものではありません。刑事訴訟法では単に「告発」と表現されており、「刑事告発」は一般的な用語です。特に、「内部告発」などの言葉と区別するために「刑事告発」という表現がよく使われています。

この記事では「刑事告発=告発」として、元刑事の視点から分かりやすく解説していきます。

告発の定義|被害者以外が行う犯罪申告

告発とは、「犯罪が行われたことを被害者以外の第三者が捜査機関(警察や検察)に知らせ、犯人の処罰を求める行為」です。

例えば、お金を盗まれた被害者は警察に被害届や告訴状を提出します。一方、告発は事件の当事者でない第三者が行うもので、誰でも行うことが可能です。未成年者や外国人でも告発できます。

ただし、自分自身を告発することは理論上は可能でも、実際は「自首」や「任意出頭」として扱われます。

告発の方法|基本的には文書で提出

刑事告発は「文書」または「口頭」で行うことができますが、実務上はほとんどが文書での提出です。私(元警察官)も、32年間の勤務中に口頭で告発を受理した例を見たことはありません。

告発状の書き方|必要な5つの記載事項

告発状には定型フォーマットはありませんが、以下の5つの項目を必ず記載する必要があります:

  1. 作成日
  2. 宛先(警察署や検察庁)
  3. 告発人の氏名・住所
  4. 告発する犯罪の具体的事実
  5. 犯人の処罰を求める意思

匿名の告発はNG

告発状は匿名では受理されません。必ず氏名・住所を記載してください。

犯人が不明な場合は「不詳」でOK

被告発人(犯人)が誰か分からない場合は、「不詳」と記載すれば問題ありません。

告発の内容は具体的な事実を

「○○が薬物をやっていると思う」などの推測や憶測では告発は受理されません。「いつ、どこで、何をしたか」といった客観的な事実の提示が必要です。

【NG例】
「鈴木○○がどこかで私のお金を10万円くらい盗んだ」
→ いつ、どこで、どのように盗まれたのか不明でNG。

告発が使われる主なケース

告発は、被害者が特定できないような以下のような犯罪にも活用されます:

  • 薬物犯罪
  • 地方公務員法違反
  • 贈収賄事件
  • 弁護士法違反 など

必要的告発とは?公務員に課される義務

告発には、任意的告発のほかに「必要的告発」と呼ばれるものがあります。これは、公務員が自分の業務に関わる犯罪を知ったときに必ず告発しなければならないという義務です。

具体例

  • 税務署職員が脱税を把握した場合
  • 消防署員が消防法違反を発見した場合
  • 市役所の職員が生活保護費の不正受給を知った場合

ただし、職務と無関係な場面で見た犯罪については、告発の義務はありません。


まとめ|刑事告発は誰でもできる社会正義の手段

刑事告発は、正義を実現するために誰もが行える法的な手段です。内容が正確で具体的であれば、被害者でなくても捜査を求めることができます。適切に告発状を作成し、正しいルートで提出すれば、警察や検察が捜査に乗り出す可能性があります。

小学生でもわかる!「告訴(こくそ)」とは?

告訴(こくそ)」という言葉を聞いたことがありますか?これは、だれかにたたかれたり、お金をぬすまれたりしたときに、そのことをけいさつに伝えて、「はんにんをつかまえてください」とお願いすることを言います。

たとえば、お金をぬすまれた人(これを**被害者(ひがいしゃ)といいます)は、「ぬすんだ人をつかまえてほしい!」とけいさつにお願い(=告訴)**できます。

告訴のしかた

けいさつには、口で話して告訴することもできますし、「告訴状(こくそじょう)」という手紙のようなものを書いて出すこともできます。

でも、「告訴状」は少しむずかしいので、大人でもべんごし(弁護士)さんという法律にくわしい人に作ってもらうことがあります。ただし、べんごしにたのむとお金がたくさんかかることもあります。

そんなときは、**行政書士(ぎょうせいしょし)**という人にたのむと、もっと安く作ってもらえることもあります。

警察はどうするの?

警察官(けいさつかん)は、告訴を受けると、被害者から話をしっかり聞いて、しょうこを集めます。
その後、書類をたくさん作って、もし「これは大変な事件だ!」と思ったら、**裁判所(さいばんしょ)**に行きます。

そこで「逮捕状(たいほじょう)」というものを作ってもらい、それを持って、犯人(はんにん)を逮捕します。逮捕された人は、けいさつ署で取り調べを受けて、そのあと裁判になります。

裁判で有罪になると?

裁判で「この人は悪いことをした」と決まると、その人は**罰(ばつ)**を受けます。
たとえば:

  • ちょうえき(=けいむしょに入る)
  • ばっ金(お金をはらう)

などがあります。


まとめ:こくそは「正しいことをお願いする」大事なしくみ

「こくそ(告訴)」は、だれかにひどいことをされたときに、それを正しく伝えて、悪い人にちゃんとばつを受けてもらうためのしくみです。小学生でも、「悪いことを見のがさない」「こまったら大人やけいさつに相談する」ことがとても大切です!

告訴・告発事件が警察から検察庁に送致されるまでの期間とは?【元刑事が詳しく解説】

告訴・告発が受理された後、事件が警察から検察庁に送致されるまでにかかる期間は、実はケースバイケースです。その理由は、警察署の捜査状況や事件の内容、告訴・告発事件の件数によって大きく異なるためです。

告訴・告発事件の送致までの平均期間とは?

一般的に、単純な事件(例:窃盗や器物損壊など)であれば、警察が迅速に捜査を行い、1か月程度で検察庁に送致されるケースもあります。特に、未処理事件が少ない警察署ではスムーズに進む傾向があります。

しかしながら、現実には多くの警察署が複数の未処理告訴・告発事件を抱えているのが実情です。都市部では特にその傾向が強く、事件処理の順番待ちが発生します。

【実例】警視庁麹町警察署での実際の送致期間

私がかつて勤務していた警視庁麹町警察署刑事課知能犯係では、告訴人が官庁や大企業であるような複雑で高額な事件を数多く抱えていました。中には、被害額が数千万円から億単位にのぼる告訴事件もありました。

未処理事件が20件以上ある中で、1件の事件に3か月程度かかると仮定すると、新しく受理した事件の着手は5年後という計算になります。実際、私が検察に送致した事件も、受理から5年が経過していたケースが多くありました。

地方と都市部での違い

こうした状況は都市部に限った話ではありませんが、地方の小規模な警察署であれば、事件の件数も少なく、送致までの期間が比較的短くなる可能性もあります。

しかし、多くのケースでは、告訴・告発が警察に受理されてから検察庁へ送致されるまでに1年程度かかると考えておくと現実的でしょう。


まとめ:告訴・告発事件の送致期間はどれくらい?

  • 単純事件で処理が早ければ1か月程度
  • 都市部では平均して1年前後が一般的
  • 事件が複雑で未処理案件が多いと、送致までに数年かかる場合もあり

元刑事の視点から見ると、事件の送致期間には非常に多くの要因が影響しています。告訴・告発を検討されている方は、この現実を知っておくことが大切です。

【元刑事が徹底解説】警察への告訴・告発相談で失敗しない!若手刑事の失言事例と注意点

警察署に「告訴相談」や「告発相談」を検討されている方へ。対応する刑事、特に経験の浅い若手巡査の発言には注意が必要です!知識や経験不足から、事実と異なる説明を受け、後悔するケースも少なくありません。

この記事では、元刑事の視点から、告訴・告発相談時に注意すべき重要なポイントと、若手刑事が陥りがちな誤った発言例を具体的にご紹介します。警察とのやり取りで不利な状況にならないために、ぜひ最後までお読みください。

なぜ若手刑事の言動に注意が必要なのか?経験豊富な刑事との違い

一般的に、40代以上で巡査部長(主任)や警部補(係長)といった階級の刑事は、豊富な経験に基づいた的確な説明が期待できます。しかし、20代の若手巡査刑事は、対応に不慣れなため、誤解を招くような説明や不用意な発言をしてしまう可能性があります。

【重要】告訴・告発相談で身を守るための3つの鉄則

  1. 刑事の発言は必ずメモに残す: 日時、担当者の氏名、発言内容を詳細に記録しましょう。
  2. 違和感を覚えたらその場で質問する: 曖昧な点は必ず確認し、納得いくまで説明を求めましょう。
  3. 判断に迷ったら専門家(弁護士など)に相談する: 刑事の説明に不安を感じたら、第三者の意見を聞くことが大切です。

要注意!若手刑事が言いやすい「誤解を招く発言」5選と正しい知識

  1. 「事務所があるなら詐欺じゃない」
    • 誤解ポイント: 実態のある事務所が存在しても、詐欺は成立します。「副業詐欺」や「取り込み詐欺」のように、信用を得るために巧妙に事務所を構えているケースは少なくありません。
    • 正しい知識:👉 事務所の有無は詐欺の成立要件ではありません!
  2. 「一部でも返金があれば事件ではない」
    • 誤解ポイント: 詐欺罪は、欺罔行為によって財物を取得した時点で成立する犯罪です。一部返金があったとしても、既に成立した詐欺罪が消滅するわけではありません。
    • 正しい知識:👉 返金の有無と詐欺事件の成立は全く別の問題です!
  3. 「時間が経ちすぎて捜査できない」
    • 誤解ポイント: 犯罪には公訴時効があり、一定期間が経過すると起訴できなくなる場合があります。しかし、被害発生から数か月~1年程度で捜査を諦めるのは不適切です。
    • 正しい知識:👉 時効期間内であれば、時間が経過していても告訴は可能です!
      • 参考:主な犯罪の公訴時効
        • 暴行罪:3年
        • 詐欺罪・窃盗罪:7年
        • 傷害罪:10年
  4. 「証拠が無ければ捜査できない」
    • 誤解ポイント: 捜査には証拠が必要ですが、物的証拠だけが証拠ではありません。LINEやメールの記録といったデジタル証拠、被害者の証言、目撃者の証言なども重要な証拠となります。暴行や傷害事件であれば、診断書やケガの写真も有力な証拠です。
    • 正しい知識:👉 証拠が全くない場合を除き、安易に告訴を拒否することはできません!
  5. 「○○警備で対応できない」
    • 誤解ポイント: 大規模な警備などで警察の人員が不足している場合でも、告訴・告発の相談を無下に対応を遅らせることは正当な理由とは言えません。
    • 正しい知識:👉 警備終了後、改めて相談に行く権利があります。同じ担当者に改めて対応を求めましょう!

警察への告訴・告発相談で後悔しないために:具体的な対策

  • 相談内容を事前に整理しておく: いつ、どこで、誰に、何をされたのか、具体的な事実関係をまとめておきましょう。
  • 関連資料を持参する: 契約書、メール、写真、診断書など、事件に関わる証拠となりうるものを持参しましょう。
  • 冷静に、論理的に説明する: 感情的にならず、事実に基づいて分かりやすく説明することが大切です。
  • 若手刑事の対応に不安を感じたら: その場で上司(巡査部長や警部補など)に交代してもらうことを検討しましょう。

まとめ:冷静な対応と正しい知識が、あなたの権利を守る

警察への告訴・告発相談は、勇気のいる行動です。しかし、刑事の発言を鵜呑みにせず、ご自身でも正しい知識を持つことが、不利益を避けるための第一歩となります。元刑事の知識を参考に、冷静かつ主体的に対応することで、事件解決への道が開けるはずです。

もし、詐欺、暴行、横領などの被害に遭われた場合は、泣き寝入りせず、勇気をもって警察に相談してください。適切な対応が、あなたの権利と安全を守ります。

警察に「証拠がない」と言われたら?元刑事が教える【告訴・被害届】

警察に告訴状や被害届を提出しようとした際、「証拠がないため受理できない」と言われて困っていませんか?本当にその事件には証拠がないのでしょうか?

元刑事の私がお答えします。諦める前に、もう一度考えてみましょう。直接的な証拠がなくても、事件を証明できるものはあります。

詐欺事件で「証拠がない」と言われた場合に考えられる証拠

詐欺事件では、以下のようなものが証拠となり得ます。

  • 契約書、領収書、パンフレット、名刺:直接的な取引を示す証拠
  • 録音データ:犯人とのやり取りを記録したもの
  • メールやSNSのメッセージ:犯人との連絡内容
  • 銀行の取引明細:犯人に渡したお金の記録
  • 第三者の証言:事件について知っている人の話

暴行・傷害事件で「証拠がない」と言われた場合に考えられる証拠

暴行・傷害事件では、以下のようなものが証拠となり得ます。

  • 録画・録音データ:事件の状況を記録したもの
  • 目撃者の証言:事件を目撃した人の話
  • 被害箇所の写真:怪我の状況を示すもの(治る前のものが特に重要)
  • 医師の診断書:怪我の状態を証明するもの

直接的な証拠がなくても諦めないで!警察の捜査義務

もし、上記のような証拠がない場合でも、落胆する必要はありません。証拠を収集することも警察の重要な役割です。

「証拠がない」と言われたとしても、諦めずに以下の点を警察に強く伝え、捜査を依頼してください。

  • 事件の具体的な内容と経緯
  • 考えられる証拠の所在(もし分かれば)
  • 警察による捜査で証拠が見つかる可能性

警察は、あなたの訴えに基づき、捜査を進める義務があります。泣き寝入りせずに、勇気をもって行動しましょう。

被害届・告訴状を警察が受理してくれない?元刑事が教える対応方法と諦めるしかないケース

警察に被害届や告訴状の提出を試みたものの、受理してもらえなかった経験はありませんか?警察が受理しない場合、その理由によって取るべき対策は異なります。元刑事の視点から、理由別の具体的な対応方法を解説します。

ただし、以下のケースでは、残念ながら何度警察に相談しても受理されることはありません。

  • 公訴時効の成立: 犯罪行為が終了した時点から時効期間は進行します。被害者が被害に気づいた時ではないので注意が必要です。
  • 犯人の死亡: 犯人が既に亡くなっている場合、刑事責任を問うことはできません。
  • 財産犯における完全弁済: 窃盗、横領、詐欺などの財産に関する犯罪で、犯人が被害額を全額弁済した場合。
  • 親族間の財産犯: 窃盗、横領、詐欺などの財産に関する犯罪が、直系血族・配偶者・同居の親族間で行われた場合。
  • 同一事件の重複受理: 同じ事件が既に他の捜査機関で受理されている場合。
  • 親告罪の告訴期間超過: 過失傷害、器物損壊、名誉毀損、侮辱などの親告罪は、犯人を知ってから6ヶ月の告訴期間を過ぎると告訴できません。

上記に該当しないにも関わらず受理してもらえない場合は、以下の対応を試みてください。

1.「事件にならない」「犯罪が成立しない」と言われた場合

まずは、ご自身のケースにおけるキーワードでインターネット検索を行い、類似の事件で有罪判決が出ている「判例」または「裁判例」がないか探しましょう。過去の裁判で有罪となった事例が見つかれば、警察も受理せざるを得なくなる可能性が高まります。「判例」とは原則として最高裁判所(かつては大審院)の判決を指し、「裁判例」は高等裁判所や地方裁判所の判決を指します。

もし同様の判例・裁判例が見当たらない場合は、本当に事件が成立しないのか、弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。「判例」は非常に強力な判断基準となりますが、「裁判例」は必ずしも絶対ではありません。例えば、「娼婦を騙して性交した場合に詐欺罪が成立するか」という事例では、異なる裁判例が存在し、統一的な見解は出ていません。

【対策】 類似事件の判例・裁判例を提示する、または専門家に相談する。

2.「証拠がない」と言われた場合

証拠の重要性は言うまでもありません。可能な限り、日時、場所、状況などを具体的に記録した書面や、写真、動画、音声データなどを準備しましょう。当サイト内にも証拠収集に関する情報がありますので、ぜひ参考にしてください。

【対策】 具体的な証拠を改めて提示する、証拠収集の方法について相談する。

3.「犯人が見つかりそうにない」と言われた場合

犯人が見つかるかどうかは、実際に捜査を行ってみなければ断言できるものではありません。他の事件で逮捕された犯人が余罪を供述したり、犯人が自ら出頭してくる可能性もゼロではありません。「見つかる可能性が低いとしても、できる限りの捜査をお願いします」と強く訴え、受理を求めましょう。

【対策】 捜査の必要性を訴え、受理だけでもしてもらうよう交渉する。

4.「(公訴)時効までの残り日数が少ない」「発生から日にちが経ちすぎ」と言われた場合

犯罪の種類によって公訴時効の期間は異なります。主な犯罪の時効期間は以下の通りです。

  • 暴行罪:3年
  • 傷害罪:10年
  • 横領罪:5年
  • 窃盗罪・詐欺罪・業務上横領罪:7年

時効までの期間が1年以上残っていれば、十分に捜査を行うことは可能です。「たとえ1年間だけでも良いので捜査してください」と粘り強くお願いしてみましょう。

【対策】 時効までの期間が残っていることを強調し、捜査を依頼する。

5.「忙しい」「人がいない」と言われた場合

警察の人員不足は深刻な問題ですが、事件の受理は警察の義務です。「今すぐ捜査を開始してくれなくても構いませんので、まずは被害届(または告訴状)だけでも受理してください」と丁寧に説得しましょう。受理されないまま時間が経過し、犯人が逃げ得となる事態は避けるべきです。

【対策】 まずは受理だけでもしてもらうよう丁寧に交渉する。

6.「民事訴訟で敗訴しているからダメ」と言われた場合

民事裁判と刑事裁判は、その目的、手続き、証拠などが全く異なる法的手続きです。民事裁判で敗訴したとしても、それが刑事事件の受理を拒否する正当な理由にはなりません。この点を明確に説明し、刑事事件としての捜査と受理を改めて求めましょう。

【対策】 民事裁判と刑事裁判は別物であることを説明し、受理を求める。

 告訴するときに告訴状を作成するのは当然ですが、告訴状に添付すべき「証拠資料」としてどのようなものが必要かは、初めて告訴する人にはなかなか難しいと思います。必要とされる「証拠資料」は罪名によって異なりますので、告訴されることが多い罪種について説明します。

1.傷害罪(暴行罪)

 犯行状況が撮影された動画があればいいのですが、自治体や商店街が設置した防犯カメラ画像データは、個人が請求しても提供してもらえることはまずないので、設置場所を確認できたら警察に入手を依頼しましょう。暴行を受けた体の部位は、何枚か撮影しておきます。出血して床や道路に血痕が落ちた場合はそれも撮影します。衣服に血が付着した場合は、脱がずに着たままの状態で撮影します。被告訴人が道具を使って暴行した場合はその道具も撮影し、可能ならそのままできるだけ触れないようにして保管しておいてください。警察から提出を求められた場合は提出してください。なるべく早く病院で診察を受け、診断書を発行してもらいます。その際、左頬を殴られたのに「右顎の打撲傷」などと傷害の部位が矛盾した部位になっていないかよく確認してください。警察で費用を払ってくれる場合がありますので、診断書代の領収書(レシート)は必ずもらっておいてください。
 目撃者がいて協力してくれる場合は、「陳述書」などの書類を作成し署名・押印してもらってください。本文は印刷で構いません。

2.(業務上)横領罪

 預けておいて横領されたのが現金の場合は、その現金の出所を明らかにする資料が必要です。銀行から引き出したなら、その取引を証明する口座取引明細書またはスマホ画像などです。物品(腕時計、絵画など)の場合は、購入時の領収書、保証書、鑑定書など。一連の製造番号があるものはその番号を記載したものが必要です。被告訴人に預けるに際して期間等を定めた契約書、依頼書、メールなどがあれば証拠になります。
 業務上横領の場合は、これらに加えて、被告訴人の業務性を証明するために、雇用契約書、会社内規、任務分担表、社内配置図、名刺など、被告訴人が「業務上」(継続反復して)現金や物品を取り扱う職にあったことを証明するものが必要です。
 現金の横領罪の場合、費消先(使い途)が重要になります。被告訴人に聞ける場合は、なるべく詳細に聴取して告訴状等に記載してください。例えば「ホストに使った」といった場合ならどこのホストクラブなのか、「競馬に使った」なら○○競馬場または○○場外、パチンコならパチンコ店名とパチンコなのかスロットなのか等。

3.詐欺罪

 被告訴人が騙しに使ったパンフレット、名刺、契約書、請求書、領収書など書類関係は全て証拠になります。指紋採取する場合があるのでなるべく素手では触らないようにしてください。録音や録画があれば当然証拠になります。録音がある場合は、なるべく文字起こしをして資料化します。文字起こしをしてくれ業者があります。料金はそれほど高額ではありません。
 被告訴人とやり取りしたメールがあれば印字して資料化します。LINEトークは、簡単にテキストデータ化できます。やり方はネットで検索すると簡単に出てきます。ただし、やり取りに画像やスタンプを多用している場合、テキストだけではさっぱり意味がわからない場合があります。このようなときは画面のスクリーンショットを撮って印刷することになりますが、やり取りが多い場合は非常に多大な労力とプリンターインクが必要となりますので、全体のテキストデータ+重要部分だけのスクリーンショットでいいかと思います。
 犯人に騙し取られたのが現金の場合、そのお金の出所を明らかにする必要がありますので、銀行口座から引き出したならその明細書が要ります。物品の場合は、その購入履歴、保証書、領収書などがあれば添付します。

4.名誉毀損罪・侮辱罪

 インターネット上の犯罪の場合、画面のスクリーンショット(ただしサイトのURLが確認できること)を撮って印刷します。犯行にかかる画面の他に、そのサイトのトップページのスクリーンショットも撮ってください。掲示板などで複数の閲覧者が書き込んでいる場合は、話の前後関係によって犯罪となるかどうかが変わってくることがありますので、省略せずに一連の流れを全て印刷します。
 インターネットではなく、被告訴人が複数の人の前で「公然と」発言した場合は、それを聞いていた人の協力が必要です。「陳述書」「説明書」などその方から一筆書いてもらってください。人数が多ければ多いほどいいです。本文は印刷で構いませんが、名前は自筆で印鑑もあったほうがいいでしょう。録音があれば文字起こしが必要です。業者に依頼することもできます。料金はそれほど高額ではありません。

 告訴状が警察で最終的に「不受理」となった場合、他の警察署に行っても「始めに行った○○署に行ってください」と門前払いにあいます。検察庁に行っても「第一次捜査権のある警察に行ってください」と言われて断られる可能性が極めて高いです。警察署で「不受理」が確定した場合の対策について説明します。

1.被害届に変更する

 希にですが、「被害届なら受理しますよ」となるケースがあります。被害届では警察に「送致義務」が生じないので、犯人の処罰可能性は告訴状より下がりますが、それでも出さないよりはマシですから、被害届でもあっても受理してくれるなら提出しましょう。警察が捜査を開始した後、他に被害者がいるなど悪質性が判明した場合、「やっぱり告訴状も受理しますから、持って来てください」と言われる可能性もあります。

2.その都道府県警の本部(本庁舎)に提出する

 警察署で不受理となった場合でも、あまり期待はできないのですが、都道府県警本部で受理されるケースも無くはありません。私自身、警察署で断られた告訴を警視庁本部捜査二課聴訴室で受理したことがあります。ダメ元くらいの気持ちで相談に行ってみてください。ただし、土日祝日は一切やってないので平日昼間のみです。

3.弁護士に相談する

 弁護士さんの中には「告訴を警察に必ず受理させます!」とゴリ押しを自慢している先生がいます。料金は何十万円とかかりますが、払えるなら相談してみてください。なお、行政書士には交渉権が無いため、そのようなサービスは提供できません。

4.民事訴訟を提訴する

 警察への告訴と違い、裁判所に民事で訴える場合、「不受理」ということはありません。提訴する金額が60万円以下であれば、手続が極めて簡単で弁護士も不要な「少額訴訟制度」が利用できます。

警察署に告訴状を提出したのに「不受理」となった場合、多くの方が途方に暮れてしまいます。しかも、他の警察署に行っても「最初に行った○○署に行ってください」と取り合ってもらえず、検察庁でも「第一次捜査権がある警察署に行ってください」と門前払いされるケースが非常に多いのです。

ここでは、告訴状が不受理となった場合の対応策について詳しく解説します。被害者の権利を守るために、できる限りの対応を検討しましょう。


1.「被害届」に切り替えて提出する

告訴状が不受理となっても、被害届なら受理される可能性があります。

告訴と異なり、被害届では警察に「送致義務」が発生しないため、犯人が処罰される可能性は若干下がります。しかし、まったく行動を起こさないよりは遥かにマシです。

また、警察が捜査を始めた結果、他にも被害者が見つかったり、事件の悪質性が明らかになると、「やはり告訴状も受理します」と言われるケースもあります。

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2.都道府県警察本部に相談・提出する

地域の警察署で不受理となっても、都道府県警本部(警視庁など)では受理される可能性があります。

私自身、ある案件で地域の警察署では断られましたが、最終的に警視庁本部・捜査二課聴訴室で受理された経験があります。可能性は高くありませんが、「ダメ元」で相談してみる価値はあります。

注意点として、都道府県警本部の窓口は平日の昼間のみ対応しています。土日祝日は対応していないため、事前に確認してから訪問しましょう。

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3.弁護士に依頼する

告訴状の受理を警察に強く働きかけてくれる弁護士もいます。

一部の弁護士は、「必ず警察に告訴状を受理させます」と公言していることもあります。費用は数十万円かかることがありますが、費用をかけても確実に動きたい場合は検討する価値があります。

ただし、行政書士は交渉権がないため、告訴状の提出交渉などはできません。

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4.民事訴訟を提起する

警察に告訴できなくても、民事訴訟で損害賠償請求は可能です。

民事訴訟には「不受理」という概念がなく、訴状が形式的に整っていれば提訴できます。特に、請求金額が60万円以下であれば、少額訴訟制度を利用することで、手続きも簡易化され、弁護士なしで対応することも可能です。

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【まとめ】告訴状が不受理でも諦めない!取るべき行動4選

  • 被害届として提出することで受理される可能性あり
  • 都道府県警本部に直接持ち込む
  • 弁護士に依頼して強力にサポートしてもらう
  • 民事訴訟で損害賠償請求を行う

警察に告訴状を受理してもらえないからといって、泣き寝入りする必要はありません。上記の方法を踏まえて、適切な手続きを進めていきましょう。

1.送致率100%、不起訴でも相手は前歴1件に

 告訴状が受理されると警察は何があっても事件(被告訴人)を検察庁に送致(マスコミ用語でいう送検)しないとなりません。最終的に検察官が事件を不起訴とした場合であっても、送致前に警察官は被告訴人を呼んで取り調べますし、逃亡や証拠隠滅の可能性があれば逮捕します。これにより警察での前歴1件となるので、相手に対して一定のダメージを与えることができます。一方、被害届では警察には送致義務が生じないため、捜査の結果、事件性が認められなければ、署長までの「不送致決裁」を取って事件は不送致とされます。

2.警察は慎重かつ精密に捜査します

 被害届と違い、告訴事件は送致前に検察官による非常に厳しい審査があり、その審査を通過しないと送致させてもらえないため、警察は、通常の事件よりもより緻密に、一層念入りな捜査をします。被告訴人の取調べも、巡査や巡査部長ではなく係長(警部補)が担当することがほとんどです。

3.「被害届」と「告訴」の言葉の重みの違い

 被害届と告訴では、警察に受理されたことを知ったときの相手の受けるイメージは全く異なります。当然「告訴」のほうがはるかに大きく重く感じることでしょう。

4.民事上の請求を有利に進められます

 手元に完成した告訴状があり、いつでも警察に提出できる状態にあれば、相手に対する被害弁済や示談の交渉を有利に進めることができるでしょう。※重要:「金を払わないと警察に告訴する」は判例上、濫用した場合は脅迫になる可能性が示唆されています。過度な利用にはご注意ください。

5.検察官の対応も慎重

 検察官も告訴状作成には、告訴人の手間と費用がかかっていることを十分承知していますので、一般事件よりはずっと慎重に対応・捜査します。起訴・不起訴の決定後、その内容は文書により告訴人に通知されます(刑事訴訟法上の検察官の義務です)。

刑事事件に巻き込まれたとき、「告訴状の提出にはどんなメリットがあるのか?」「被害届との違いは?」と疑問に感じる方も多いのではないでしょうか。

この記事では、元刑事の視点から告訴状の効果やメリットを具体的に解説します。加えて、被害届との違いや、民事・刑事両面での活用法についても紹介します。


1. 告訴状は送致率100%|不起訴でも「前歴1件」が残る

告訴状が警察に受理されると、原則として事件は必ず検察に送致(送検)されます。これは被害届との最大の違いです。たとえ最終的に不起訴となった場合でも、警察は被告訴人(相手)を取り調べ、逃亡や証拠隠滅の恐れがある場合は逮捕する可能性もあります。

この一連の流れにより、相手は警察の記録上「前歴1件」として登録され、一定の心理的・社会的ダメージを受けることになります。

✅ ポイント:被害届では警察に送致義務がないため、「不送致」として終わるケースも少なくありません。


2. 告訴事件は警察が慎重かつ丁寧に捜査

告訴状を提出すると、警察はより慎重に捜査を行います。なぜなら、告訴事件は検察官の厳しい審査を経て送致されるためです。

通常の事件に比べて、緻密な捜査や証拠収集が行われ、取り調べも巡査ではなく警部補クラスのベテラン捜査官が担当することが多くなります。


3. 「被害届」と「告訴」では相手に与える心理的プレッシャーが違う

同じように警察に提出する書類でも、「被害届」と「告訴」では重みが全く異なります

「告訴された」と知った被告訴人にとっては、社会的信用や立場への影響が非常に大きく、強いプレッシャーとなります。この心理的効果も、告訴状提出の大きな利点といえるでしょう。


4. 民事での示談交渉を有利に進められる

手元に作成済みの告訴状があることで、相手との示談や損害賠償の交渉を有利に展開することが可能です。

相手に対し、「いつでも警察に告訴できる」という状況は大きな交渉材料となり、被害弁済を受けやすくなる場合があります。

⚠ 注意:「金を払わなければ告訴する」と過度に主張すると、脅迫に該当する恐れがあります。あくまで合法的な範囲での利用が前提です。


5. 検察官も真剣に対応する|告訴人には正式な通知あり

告訴状の作成には費用と手間がかかるため、検察官も一般事件よりも慎重かつ丁寧に取り扱う傾向があります。

さらに、刑事訴訟法により、起訴・不起訴の結果は文書で告訴人に通知される義務があり、透明性のある対応が期待できます。


まとめ|告訴状は「刑事・民事」両面で有効な武器

告訴状の提出は、単なる書類ではなく、相手に対する強力な法的手段となります。警察や検察の対応を引き出すだけでなく、民事での損害賠償請求を円滑に進めるための交渉ツールとしても活用できます。

**「泣き寝入りしたくない」「相手にきちんと責任を取らせたい」**という方は、専門家のサポートを受けて、告訴状作成を検討してみてはいかがでしょうか。

告訴状・告発状が警察に受理されたことを証明する方法

警察では、税務署などに提出するための「警察証明書」を発行する制度があります。これは、会社の財産が盗難や遺失などによって損失を受けた場合に、税務申告で損失控除を受ける際に必要となる書類です。

しかしながら、「警察証明書」は告訴状や告発状の受理に関しては発行対象外とされており、告訴の事実を証明する書類としては使用できません。そのため、警察は告訴状の受理証明書を発行していないのが現状です。

告訴人が警察に対して受理の確認を行った場合には、「受理番号」が告訴状の表紙に押印された上で回答されます。この受理番号は、告訴人本人のみに提供され、保険会社の調査員など第三者が警察署を訪れ、身分証や名刺を提示して「○○罪で告訴された○○○○に関する告訴状は受理されていますか?」と質問した場合には、警察は「はい、受理しています」といった簡易な回答にとどまります。

また、これ以外の第三者、特に被告訴人本人やその関係者が警察に問い合わせても、受理の有無は一切教えられません。これは、告訴が受理された事実が被告訴人に伝わることで、逃亡や証拠隠滅、関係者への口止め、あるいは自死、告訴人への報復行為などのリスクがあるためです。

そのため、仮に告訴人が被告訴人に対して「あなたを告訴し、受理されました」と伝えた場合に、被告訴人から「それを証明してほしい」と求められても、告訴人が受理を証明する手段は存在しないということになります。


このように、警察証明と告訴状の受理証明はまったく別物であり、警察は告訴受理の証明書を発行していません。警察証明書が必要なケースと、告訴状の扱いについて正しく理解することが重要です。

被害者が不起訴処分に対して国家賠償請求できるか?最高裁の判例解説

不起訴処分に対して被害者が国家賠償請求できるか」という疑問について、最高裁判所の判例(平成2年2月20日判決・最高裁判所判例集1380号)では、以下のように明確に「できない」と判断されています。

この判例では、次のように述べられています。

「犯罪の捜査および検察官による公訴権の行使は、国家および社会の秩序維持という公益を目的として行われるものであり、犯罪被害者の被害回復を直接の目的とするものではない。また、告訴は捜査機関に捜査の端緒を与えるものであって、被害者や告訴人が捜査または起訴により得る事実上の利益は、法律上保護される利益ではない。したがって、被害者や告訴人は、捜査が不適正であることや検察官の不起訴処分を理由に、国家賠償法に基づく損害賠償請求をすることはできない。」

このように、検察の不起訴処分や捜査の不備を理由に被害者が損害賠償請求することは、法的には認められていないとされています。

未成年者の告訴は可能?

未成年者の告訴能力については、判例・裁判例に基づき判断されています。たとえば、旧強姦罪のケースでは被害者が13歳11か月(東京高裁 昭和32年9月)、旧強姦未遂罪では13歳7か月(水戸地裁 昭和34年7月)、旧強制わいせつ罪では10歳11か月(名古屋高裁 平成27年7月3日)という事例が存在します。

これらの判例からも分かるように、未成年者であっても年齢や犯罪の内容に応じて告訴能力が認められる場合があります。特に犯行態様が比較的単純である犯罪(例:強制わいせつなど)であれば、中学生以上の年齢であれば告訴能力が認められる可能性が高いと考えられます。

また、未成年者に両親がいる場合は、親権者である法定代理人(両親またはいずれか一方)によっても重ねて告訴を行うことが望ましいとされています。これは、告訴の有効性や手続きの確実性を高めるためです。

法定代理人の告訴

未成年者や成年被後見人が被害者となった場合、法定代理人は被害者本人の意思に関係なく告訴を行うことができます。これは、刑事事件における重要なポイントです。

また、親告罪における告訴期間についても注意が必要です。仮に、被害者本人の告訴期間がすでに過ぎていたとしても、法定代理人が告訴期間内であれば告訴は有効とされます。つまり、法定代理人には独自の告訴権が認められているのです。

さらに、法定代理人は告訴の取消しを行うことも可能です。これも被害者本人の意思とは別に、法的に認められた行為となります。

告訴権者(被害者)が死亡した場合の告訴

刑事事件において、告訴権者が死亡した場合の対応について疑問を持つ方も多いかと思います。結論から言えば、一定の条件を満たすことで**遺族による告訴(告訴の引継ぎ)**が可能です。

告訴権者が死亡した場合に告訴できる人は?

告訴権者が死亡した場合、以下の親族が告訴を行うことができます:

  • 配偶者
  • 直系血族(例:父母や子ども)
  • 兄弟姉妹

これらの親族が**被害者に代わって告訴を行う権利(代位告訴権)**を持ちます。

告訴できないケースとは?

ただし、以下のような場合には、遺族であっても告訴はできません:

  • 被害者が生前に告訴しない意思を明確に示していた場合(遺言や文書など)
  • 告訴の**法定期間(原則6か月)**が、被害者の生前にすでに経過していた場合

このようなケースでは、たとえ遺族であっても新たに告訴することは認められません。

すでに告訴していた場合は?

被害者が生前にすでに告訴をしていた場合、その後に告訴権者が死亡しても、その告訴は引き続き有効です。改めて遺族が告訴をし直す必要はありません。


このように、「告訴権者が死亡した場合の対応」については、法律上のルールが定められています。遺族として適切な手続きをとるためにも、早めに弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

【恋愛詐欺・貢がせ詐欺】マチアプ、パパ活、キャバ嬢、最近の警察の対応は?詐欺罪で立件されるケースとは

 一昔前までは、男性側が金銭を払って女性と交際する場合の金銭トラブルについて警察に相談しても、「お金を払って交際しているなら買春と同じ」「不倫は不法行為だから法の保護は受けられない」といった理由で、門前払いされるケースがほとんどでした。

しかし近年では、風向きが大きく変わっています。

有名事件がきっかけで警察の姿勢が変化

例えば、「紀州ドンファン事件」や「頂き女子事件」では、若い女性が中高年男性に高額な金銭を貢がせた行為が詐欺罪として立件・有罪判決となり、大きな話題になりました。

これらの事件では、騙し取られた金銭がホストクラブに流れていたことも明らかになり、社会問題として注目を集めました。その影響で、これまでなら警察が不受理としたような恋愛詐欺・貢がせ詐欺に対しても、警察は積極的に対応するようになってきています

実際に当事務所でも受理された事例

実際に当事務所へご相談いただいた案件の中にも、以前なら受理されなかったであろう可能性が高い案件が警察に受理されたケースがあります。相談当初は「受理される可能性は50%未満」とお伝えしましたが、お客様の強い処罰意思を受けて対応したところ、結果的に受理されました。

詐欺罪として成立するための条件とは?

ただし、すべてのケースが詐欺罪として成立するわけではありません。重要なのは、「明確な嘘」や「事実に基づいた騙し行為」が立証できるかどうかです。

詐欺罪が成立しやすい例

  • 「独身」と偽って実際は既婚者だった場合
  • 「母の手術費用が必要」と言って金銭を受け取り、実際には母親がすでに死亡していた場合
  • 学生と称して学費等を要求し実際は無職だった場合

このように、客観的に嘘だと証明できる要素があれば、詐欺罪として立件できる可能性があります。

一方で、「結婚をほのめかして交際し、結果的に結婚に至らなかった」といった場合には、女性側に最初から結婚の意思がなかったことを立証するのは非常に困難です。したがって、このようなケースで詐欺罪として立件するのは難しいのが現実です。


恋愛詐欺・貢がせ詐欺に遭ったかも?迷わず専門家に相談を

最近では、恋愛や男女関係に絡む詐欺行為でも、警察が動いてくれる可能性が高くなっています

もしも「明白な嘘」によって金銭を騙し取られたと感じたら、泣き寝入りせずに警察や法律の専門家に相談することを強くおすすめします。

当事務所では、詐欺被害に関するご相談・刑事告訴状の作成・警察対応のサポートも承っております。まずはお気軽にご相談ください。

【警察署の管轄と告訴状提出】他県の警察署に告訴はできるのか?

1.警察の「管轄権」とは?告訴状はどこに出せばいい?

告訴状の提出に関するルールは、「犯罪捜査規範第63条」により定められています。この規定によれば、告訴や告発は全国どこの警察署にも提出可能とされています。たとえば、沖縄の離島で発生した事件を札幌の警察署に届け出ることも、法的には認められているのです。

しかし、実務上はそう簡単にはいきません。理由は、**「受理責任」や「認知署優先」**という警察内部の慣習(不文律)が存在するからです。

  • 受理責任:一度正式に告訴を受理したなら、その警察署が最後まで対応すべきという考え。
  • 認知署優先:事件を最初に知った警察署が、責任を持って処理すべきというルール。

このため、実際には発生場所を管轄する警察署に告訴状を提出しないと、受理されないケースが非常に多いのです。

2.告訴状を他県の警察署に提出した場合の実務対応

仮に、札幌の警察署が沖縄で起きた事件の告訴状を受理したとします。しかし、札幌の刑事が沖縄まで出張して捜査するのは現実的に難しく、事件を沖縄県警に移送しようとします。

ところが、沖縄側の警察署に「受理していない事件を押しつけないでほしい」と断られることがほとんどです。結果として、「事件の発生地の警察に行ってください」と言われてしまうことになります。

また、告訴人が相談に来た段階で「移送できるか」と事前に沖縄の警察署に連絡しても、「直接こちらに来て相談するよう説得してほしい」と言われるのが一般的です。

つまり、**現実的には「事件発生地を管轄する警察署に告訴状を持参するのが最もスムーズ」**ということになります。

3.ネットトラブルなど被告訴人が遠方に住む場合の告訴(名誉毀損など)

インターネット上の名誉毀損や誹謗中傷などでは、被害者(告訴人)と加害者(被告訴人)が遠く離れて住んでいるケースが多く見られます。

たとえば、札幌在住の被害者が、沖縄在住の加害者を名誉毀損で告訴するといった場合、事件そのものは全国どこからでもネット上で発生し得るため、札幌の警察署が受理して捜査を進めることが可能です。

ただし、名誉毀損のような軽微な犯罪では逮捕までは至らないため、基本的に任意での取調べとなります。このとき、被告訴人が「札幌まで行けない」と主張すれば、刑事が沖縄まで出張して取調べを行うこともあります。

事件の捜査が終了すると、札幌の警察署は事件を札幌地検に書類送致します。ここで、検察には「受理責任」などの不文律がないため、沖縄地検に移送して処理されることが一般的です。


【まとめ】警察への告訴と管轄の注意点

  • 告訴状は原則どこの警察署にも提出可能(法的には)
  • 実務では事件の発生地の警察署に提出しないと受理されにくい
  • 遠方の相手を告訴する場合でも、ネット犯罪などは告訴人の所在地で受理される可能性がある
  • 検察庁は柔軟に移送処理を行うことが多い

**「どこの警察に告訴すればいいかわからない」「ネット上のトラブルをどう対応すればいいのか」**という場合は、まずは地元の警察署または当事務所に相談することをおすすめします。

告訴・告発事件の検察庁送致と検事相談の実態【刑事事件の流れ】

刑事事件、とくに告訴・告発事件では、警察が独自の判断で検察庁へ事件を送致することは、基本的に許されていません。これは詐欺事件業務上横領事件背任事件といった知能犯に顕著で、送致前に必ず「検事相談」が必要になります。

検事相談とは?〜事件送致前の重要なプロセス〜

検事相談とは、捜査を担当する刑事が事件に関する書類やチャートを携えて検察庁を訪れ、事件の概要説明と今後の方針(強制捜査でいくか、任意捜査で書類送致にするかなど)について検察官と協議する制度です。

しかし、多くの場合、検察官から「これで完璧です、送致して結構です」と即答されることはほとんどありません。むしろ、「追加捜査(宿題)」を求められるのが一般的です。

この追加捜査の内容は、裏付け捜査が中心で、刑事側が「この程度で十分だろう」と考える基準を120〜130%上回る厳しさが求められます。これは、検察官が起訴後の公判維持までを視野に入れているためです。

検事の異動と検事相談のタイミングの重要性

注意すべきなのは、検察官の定期異動の時期です。3月の異動時期の2〜3か月前、つまり1月から2月頃に検事相談へ行っても、相談が無駄になる可能性があります。検事から「3月で異動なので、次の担当に申し送りしておきます」と言われるだけで、実質的な進展が得られないことがあります。

さらに悪いケースでは、前年の11月頃から新規の事件送致を受け付けない検事も存在します。

検事交代による送致方針の変更リスク

新しい検事が着任した4月以降、再度検事相談を行う必要が出てきます。同じ事件について再び説明しなければならず、検事によって判断が変わることもしばしばあります。

例えば、前任の検事が「業務上横領」と判断していた事件が、新任検事の判断で「詐欺」や「背任」として扱われることもあります。こうした場合、告訴人の調書を取り直す必要が生じることもあり、捜査関係者にとっては非常に手間がかかるプロセスとなります。

逮捕・送致後も続く検察からの“宿題”

検事相談が無事に終了し、いよいよ逮捕や送致となっても、検察からの追加捜査の指示、いわゆる「宿題」が再び発生することも珍しくありません。特に知能犯事件においては、検察は極めて慎重で、詳細な裏付け資料や証拠書類の提出が求められます。


まとめ:刑事事件における検事相談は戦略とタイミングがカギ

刑事事件、とりわけ知能犯に関わる告訴・告発事件では、検事相談のタイミングと内容がその後の捜査や送致の行方を大きく左右します。検察官の異動時期や判断の違いを把握し、適切な戦略で対応することが、スムーズな事件処理への第一歩です。

告訴状の罪名変更とは?業務上横領から詐欺・背任に変わるケースとその注意点

刑事事件において、告訴状の罪名が後から変更されることがあります。例えば、最初に「業務上横領罪」として警察が告訴状を受理し捜査を開始したものの、後の調査で被告訴人に資金管理権や占有権がなかったことが判明するケースです。この場合、実際には担当者を騙して送金させた=詐欺罪に該当する可能性が出てきます。

このように、捜査の過程で罪名が「業務上横領罪」から「詐欺罪」や「背任罪」へと変更されることがありますが、重要なのは受理された告訴状そのものは訂正・差し替えができないという点です。なぜなら、警察に受理された時点で告訴状には正式な受領印が押されており、その状態のまま検察庁に送致される必要があるからです。

告訴状の罪名変更手続きの流れ

罪名が変更される場合、以下のような手続きがとられます。

  1. 「告訴状罪名変更願(届)」の提出
     これは通常、警察側が作成し、告訴人から提出してもらう書類です。
  2. 告訴人調書の再作成
     すでに「業務上横領罪」で告訴人調書が作成済みであれば、新たに「詐欺罪」などの内容で調書を取り直す必要があります。
  3. 「送致罪名変更捜査報告書」の作成
     警察は、罪名変更に至った経緯を明記した報告書を作成し、これを添えて検察へ送致します。

公訴時効に関する注意点

罪名変更には公訴時効の問題も関わってきます。たとえば、

  • 「業務上横領罪」から「背任罪」へ
  • 「業務上横領罪」から「単純横領罪」へ

といった変更では、公訴時効期間が2年短縮されるため、罪名を変更した時点で時効が完成してしまう可能性があります。そうなると、その事件について起訴できなくなります。

もしこのようなケースに陥った場合、現実的な対応としては「元の罪名(業務上横領罪)のままで送致」するしかないこともあります。ただしこれは、真実とは異なる罪名で送致するため、ほぼ確実に不起訴となることを意味します。


まとめ:告訴状の罪名変更には細心の注意が必要

罪名の変更は、捜査の進展とともに必要になることもありますが、形式的な手続き公訴時効の管理を誤ると、重大な法的リスクにつながります。

告訴調書(告発調書)と告訴人供述調書

告訴調書とは、被害者などの告訴権者が自ら警察署などに出向き、口頭で告訴の意思を示した場合に警察官が作成する文書です。これは、書面での提出ではなく、直接的な口頭告訴を記録するための書類です。

しかし、実務上はこの「告訴調書」が作成されるケースは非常に稀であり、通常は**「告訴状」と呼ばれる書面を提出する方式**が一般的です。実際、私自身が32年間にわたる警察官としての勤務経験の中で、実際に作成された「告訴調書」や「告発調書」を見たことは一度もありません。


告訴人供述調書とは?事件の詳細を記録する重要文書

一方、「告訴人供述調書」とは、正式には「供述調書(乙)」と呼ばれる文書であり、告訴状が受理された後に、告訴人から事件の詳細を聴取し、その内容を記録した調書です。

この調書には、以下のような情報が詳しく記載されます:

  • 事件の全体像と経緯
  • 被告訴人との関係性
  • 被害の具体的内容
  • 事件後の状況や影響

事件が複雑である場合、この供述調書だけで数十枚に及ぶことも珍しくなく、証拠資料などを添付すると5センチを超える厚さになることもあります。


まとめ|告訴調書・供述調書・告訴状の違いを理解しよう

  • 告訴調書は口頭告訴を記録する文書だが、現在ではほとんど使用されていない
  • 告訴状は、通常の告訴手続きで提出される書面
  • 告訴人供述調書は、告訴状提出後に行われる供述内容の詳細記録で、事件解明の鍵となる

警察への告訴を検討している方や、刑事事件手続きに関心のある方は、これらの違いを正しく理解しておくことが重要です。


被害届と告訴状の違いによる逮捕の可能性とは?|警察の判断基準を解説

同じような刑事事件において、被害届を提出した場合告訴状を提出した場合とで、警察が被疑者(被告訴人)を逮捕するかどうかの判断基準に違いはあるのでしょうか?

結論から言えば、逮捕の可否は「逃亡のおそれ」や「証拠隠滅のおそれ」があるかどうかによって判断されます。


逮捕の判断基準:「逃亡のおそれ」「証拠隠滅のおそれ」

警察が逮捕に踏み切る主な判断材料には、以下のような要素があります:

  • 一定の住居があるか
  • 定職に就いているか
  • 家族の存在
  • 健康上の問題の有無

これらの情報をもとに、「逃亡のおそれ」があるかどうかを判断します。また、「犯した罪の重さ」も重要な判断基準の一つです。一般的に、重い罪であればあるほど、刑罰を恐れて逃亡の可能性が高まるとされています。


告訴状が提出された事件では逮捕されやすい?

被害届と比べて、告訴状が提出される事件は被害金額が高額であるケースが多く見られます。そのため、逃亡のリスクが高まり、結果として逮捕される可能性が高くなる傾向にあります。

ただし重要なのは、「告訴されたから必ず逮捕される」というわけではありません。あくまで総合的な事情により、警察が判断するものです。


まとめ|被害届と告訴状の違いが逮捕に与える影響

  • 被害届と告訴状の違いだけで逮捕の有無が決まるわけではない
  • 逃亡や証拠隠滅の可能性、事件の重大性などが重要な判断材料
  • 告訴状が提出された事件は、一般的に被害が大きいため逮捕の可能性がやや高くなる傾向

淺利 大輔

あさり だいすけ

行政書士淺利法務事務所 代表

私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。

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