警察にノルマはある?【元刑事が解説】

 交番やパトカーなどの外勤警察官(警察署地域課や自動車警ら隊等)には、「実績」があり、毎月課内での順位が1位からビリまで発表されます。民間企業で毎月、営業マンの売上順位が壁に貼られて発表されるのと同じです。「実績」は、犯罪検挙数、交通違反取締数、巡回連絡実施数などの合計点数です。一番点数が高いのは、職務質問による薬物や銃器犯罪の検挙です。警察に既に被害届が提出されている事件を検挙しても検挙率はそれほど上がりませんが、職務質問による検挙は、無の状態から事件を掘り起こす形になるので、検挙率が大きく上がるのです。
 各都道府県警内の警察署ごとの検挙数、検挙率などは、前記の外勤警察官の順位と同じように発表されます。これによって署長以下幹部の評価が決まるので、幹部は部下の警察官に対して「泥棒を捕まえろ」「薬物犯人を検挙しろ」「交通違反を取り締まれ」と尻を叩くのです。
 また、実績は、警察官自身の「昇任」「昇給」「内勤への異動」「本部への異動(栄転)」にも影響しますので、多くの警察官が職務質問や交通違反取締に励むのです。職務質問○件、交通違反取締○件、巡回連絡○件といった目標数の設定もあります。
 では、刑事などの内勤はどうかというと、これも目標数の設定はあります。刑事課全体だと重点犯罪(殺人、強盗、性犯罪、特殊詐欺など)○件、侵入窃盗(空き巣、出店荒し等)○件などです。知能犯係にはこれ以外に告訴・告発事件の処理(送致)○件という目標値もあります。さらに鑑識係には、被疑者の指紋・写真採取率という目標値もあります。逮捕した被疑者の指紋と写真は、刑事訴訟法の規定により強制的に採取できるのですが、任意捜査被疑者にはこの規定の適用がないため、説得して同意を得て採取するからです。
 以上のように、警察官に仕事の成果の目標値設定はあります。しかし、達成したかどうかによって直接給与には影響しないため。これを「ノルマ」と言っていいかどうかは意見が分かれるかもしれません。


淺利 大輔

あさり だいすけ

行政書士淺利法務事務所 代表

私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。

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