弾丸が入ってないけん銃を警察官から奪いその警察官に向けて引き金を引いたら何罪?【元刑事が解説】
「弾丸が入っていないけん銃を警察官から奪い、その警察官に向けて引き金を引いたら何罪になるのか?」
結論から言うと、殺人未遂罪が成立します。
法律に詳しい方の中には、「弾が入っていないなら人を殺せないのだから“不能犯”では?」と思う方もいるかもしれません。
しかし、日本の裁判例では、通常、警察官が所持するけん銃には弾丸が装填されているのが一般的であり、たまたま弾が入っていなかったため発射しなかったに過ぎない場合、殺意を持って引き金を引けば殺人未遂罪が成立すると判断されています。
つまり、実際に弾が入っていたかどうかではなく、犯人に人を殺す意思(殺意)があったかどうかが重要になるのです。
弾が入っていないけん銃でも「殺人未遂罪」になる理由
刑法では、人を殺そうとして実行行為に及んだものの、結果として死亡させなかった場合に殺人未遂罪が成立します。
今回のケースでは、
- 警察官からけん銃を奪う
- 警察官に銃口を向ける
- 引き金を引く
という一連の行為が明確な殺害行為と判断されます。
たとえ結果として弾が発射されなかったとしても、**「通常なら発射される状況だった」**と評価されれば、殺人未遂罪は成立します。
この考え方は刑法上「不能犯」と「未遂犯」の違いとしてよく議論されるポイントです。
実際に起きた警視庁での事件
実は、このような事件は日本で実際に発生しています。
今から約15年前、警視庁麻布警察署の管内で、実務修習中の若い警察官が同様の被害に遭いました。
実務修習生とは、警察学校で訓練を受けている警察官が、実際の警察署に約1週間派遣され、現場の仕事を体験する制度です。
まだ正式な現場勤務員ではないため、
- けん銃には弾丸を装填しない
- 必ず指導役の警察官と二人一組で行動する
というルールがあります。
犯人にけん銃を奪われた緊迫の瞬間
当時、ある男が警察官の対応中に突然逃走しました。
警察官2人が追跡しましたが、途中で離れてしまい、実務修習生の警察官が先に男へ追いつきました。
その後、激しいもみ合いとなり、男は実務修習生のけん銃を奪取。
さらに、奪ったけん銃の銃口を警察官の頭に突きつけ、数回「カチカチ」と引き金を引いたのです。
幸い、その場に別の警察官が駆けつけ、男はその場で現行犯逮捕されました。
結果として、犯人には殺人未遂罪が成立し、有罪判決が確定しています。
元刑事が解説|この事件からわかること
このケースで重要なのは、「弾が入っていなかった」という結果ではありません。
重要なのは、
『犯人が本気で相手を殺そうとしていたか』
という点です。
刑事事件では、結果だけでなく**行為の危険性や犯意(殺意)**が非常に重要視されます。
「発射しなかったから軽い罪になる」と考えるのは大きな誤解です。
まとめ|警察官のけん銃を奪って引き金を引けば何罪?
結論を整理すると、
警察官からけん銃を奪い、その警察官に向けて引き金を引いた場合、たとえ弾が入っていなくても殺人未遂罪になる可能性が極めて高いです。
理由は、
- 通常、警察官のけん銃には弾丸が装填されている
- 犯人に明確な殺意がある
- 実際に殺害行為に及んでいる
からです。
刑法では、「結果」だけでなく「何をしようとしたか」が厳しく問われるのです。
○警察への告訴状・告発状の作成は元警視庁刑事の行政書士にお任せください。こちら
淺利 大輔
あさり だいすけ
行政書士淺利法務事務所 代表
私は、2024年6月までの32年間、警視庁警察官として勤務し、そのうち25年間を刑事として告訴・告発事件の捜査に携わってきました。
中でも、告訴・告発を中心に扱う知能犯捜査の経験が最も長く、数多くの事件で、実際に告訴状・告発状を受理し、捜査を進めてきました。
刑事部捜査第二課在籍時には、警視庁本庁舎(霞が関)の聴訴室において、告訴状を持参される弁護士の先生方と日々向き合い、
「事件として受理すべきか」「問題点は何か」
その現場の判断基準を、実務の中で徹底的に学び、鍛えられてきました。
だからこそ私は、警察が何を重視し、どこを見て告訴状を判断するのかを、初期段階から具体的に想定しながら作成することができます。
告訴・告発事件については、刑事の中でも専門性を持って取り組んできた分野であり、強い自負があります。
現在は、千葉県犯罪被害者支援センター会員として、
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「警察に何度も相談したが、前に進めずにいる方」
そうした犯罪被害者の力になりたいとの思いから、行政書士として告訴状・告発状の作成支援を行っています。
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