弾丸が入ってないけん銃を警察官から奪いその警察官に向けて引き金を引いたら何罪?【元刑事が解説】
結論から言えば「殺人未遂罪」になります。法律に詳しい人なら「不能犯じゃないの?」と思うかもしれませんが、裁判例では「通常、警察官の所持するけん銃には弾丸が装填されており、たまたま弾丸が入っていなかったために発射という結果が生じなかっただけであり、殺意を持って引き金を引いた以上、殺人未遂罪が成立する」とされています。
実はこの事例は実際に日本で何件か発生しています。今から15年ほど前に、警視庁麻布警察署の管内で、実務修習生である警察官がこの被害にあいました。実務修習生とは、警察学校に入校して訓練中の警察官であり、実際の職場の雰囲気を味わうために、1週間程度警察署に派遣されて、第一線の仕事を体験するというものです。まだ一人前の警察官ではないので、けん銃に弾丸は1発も入れず、指導役の警察官と必ず二人一組で動くことになっています。
しかし、このときは、何かの扱いで男が走って逃げ出し、追いかける途中で二人はバラバラになってしまい、なぜか実務修習生のほうが追いついてしまい、男ともみ合いになった末、けん銃を奪われて頭に銃口を当てられた状態で数回「カチカチ」と引き金を引かれたというものでした。すぐに駆けつけた別の警察官によって男は現行犯逮捕されたのですが、先に述べたように殺人未遂の刑が確定しました。この警察官がその後どうなったか知らないのですが、どこかで元気にがんばっていてほしいものです。
淺利 大輔
あさり だいすけ
行政書士淺利法務事務所 代表
私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。
