警察官の異動(転勤)制度について【元刑事が解説】
※警視庁の場合です。他の道府県警は一部異なります。
警察官の異動制度について説明します。警察官は、警察学校を卒業すると(高卒10か月、大卒6か月)、全員警察署に配属され、交番勤務からスタートします。2年くらい経った頃に、機動隊の選考があり、内勤(刑事・公安など)に入っていない警察官の8割ほどは機動隊に異動となります。また、大卒は実務1年経過後、高卒は実務4年経過後、最初に行われる巡査部長試験(年1回)を受けることができ、合格すると関東管区警察学校に約2か月程度入校し、卒業後には「昇任配置換え」として他署に異動します。こうした異動に該当しなかった場合は、5年経過後の9月に「定期異動」として他署に異動となります。警部補以下の警察官は一つの所属にいる期間は5年と決まっています。毎年9月に定期異動が行われます。
ただし、5年経過しても異動の対象外となる警察官がいます。病気で休職したり軽勤務しかできない警察官、または何らかの事件や事故で裁判の当事者になっている警察官です。私の知っている警察官は、巡査部長の昇任試験に受かり、関東管区警察学校の入校待ち中にパトカーで事故を起こし、相手から裁判を起こされたため、関東管区警察学校への入校が取りやめとなり、裁判が終わるまで1年以上待たされました。
定期異動は5年ですが、警察署から本部(本庁舎)への異動は随時行われ、本部で欠員が生じると、警察署から吸い上げられます。警察署に異動してきてから1年以上経っている警察官が対象となります。
定期異動と異なる「希望転勤」もあります。駐在所や島部警察署への異動です。これらは年に1回程度募集があり、年齢等の条件を満たせば誰でも応募できます。駐在所とは、交番と家族住宅が一緒になったようなもので、警察官は家族と一緒にそこに居住し、住み込みで勤務する形になります。勤務時間は決まっていますが、酔っ払い等が深夜訪ねてきてドアをドンドン叩かれる等すれば、寝ていても対応せざるを得ず、警察内では全く人気のない部署です。一時期、希望者が激減したため「希望しなくても条件に合う者は強制的に行かせる」という通知まで出されたことがあります。
島部とは、警視庁管内である大島や、八丈島、小笠原島といった離島の警察署のことです。以前は家族同伴が条件でしたが、現在は単身赴任可能となっています。住民が少ないため、基本的にはヒマなのですが、夏の行楽シーズンになると一気に忙しくなるため、その時期だけ機動隊員が応援に行きます。
昔(1980年代頃まで)は、「長男で実家の跡継ぎをしないとならない」といった理由で、警視庁から道府県警に階級そのままで異動できる制度があったそうですが、現在は廃止されています。
異動は警視庁内だけではありません。警察庁、千葉県警成田空港警備隊、関東管区警察学校、警察大学校への短期異動もあります。さらに、人事交流として東京都庁、区役所、市役所、国税、外国駐留大使館等、他官庁への短期異動もあります。正確には異動ではありませんが、銀行、特許事務所など民間への外部派遣もあります。派遣中も身分はあくまでも警察官ですので、給料は都から出ます。
定年退職後、仕事をしたい人は、警視庁内に残るかそれ以外に行くかを選ぶことができます。警視庁内に残る場合は、「会計年度職員」という肩書きで、「交番相談員」「許認可窓口職員」「生活相談員」「受付係員」「スクールサポーター」などの職務に就きます。警察官ではないので、事件捜査をしたり、交通違反を取り締まったり、けん銃を持ったりすることはありません。
警視庁以外を選んだ場合は、「市町村役場等の公務所」「民間企業」のどちらかに行くことになります。人事課によって振り分けられるので、自分で選ぶことはできません。民間企業の場合は、警備会社、タクシー会社、大病院、葬儀社などが多いです。
淺利 大輔
あさり だいすけ
行政書士淺利法務事務所 代表
私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。
