窃盗事件犯人、横領事件犯人、詐欺事件犯人の性格の違い

 他人の所有物を奪うという点で同じ「財産犯」という類型に属する窃盗、横領、詐欺という罪ですが、その犯人たちの傾向はそれぞれ異なります。32年の警察人生で、たくさんの犯人と接してきましたので、この三罪の犯人たちの性格等についてお話しします。
1 窃盗犯人
 窃盗とは、置いてあったり、他人が所持している物品を勝手に持ち去る犯罪です。通常、被害者とは会話せず、犯行も短時間で終わり、頭を使うことより、手先の器用さや動作の素早さが重要です。よって、窃盗犯の多くは、あまり頭が良くなく、低学歴で、話し下手であり、内向的で友人は少ないことがほとんどです。また、圧倒的に独身者が多いのも特徴です。特に警視庁捜査三課の常習者リストに入っているような泥棒は9割以上独身ではないでしょうか。刹那的で、盗んだお金はギャンブルや遊興費ですぐに使ってしまいます。「貯める」ということは絶対にしません。無くなればまた盗むだけです。住居を持たないヤサ無しも多く、野宿したり、ネットカフェなどに寝泊まりしています。刑務所とシャバを行ったり来たりで、出てくるとまだすぐに盗みを始めます。小柄な人が多いのも特徴です。
2 横領犯人
 ここで説明する横領犯人とは、落ちている財布を拾って現金を抜く、遺失物横領犯人などではなく、会社の経理課などで勤務し、長期間にわたって会社資金をくすねる業務上横領犯人のことです。この犯人に共通して言えるのは、とにかく「暗い」性格の人ばかりということです。業務上横領犯人を何人も調べてきましたが、明るいヤツは皆無でした。そして無口です。聞かれたこと以外には答えず、雑談にもあまり乗ってきません。友人が少ない点では泥棒と同じですが、バレないように偽装工作などが必要であり、頭は悪くありません。横領した金額が何千万円と多額であっても、友人と遊びに行ったり、家族のために使うことは少なく、ギャンブルに注ぎ込んだり、風俗やホストクラブなどに通い詰めるなど、自分のためだけに使うことも特徴の一つです。普段は会社員として働いているので、この三つの罪種の犯人の中では一番まともな外見に見えます。
3 詐欺犯人
 詐欺犯人もたくさん扱ってきましたが、横領犯人と好対照で、明るくてよくしゃべり、よく笑います。取調中に調べ官であるこちらよりも多くしゃべるくらいです。そして頭が良く、機転が利き、口がとにかく上手です。調べていて「あー、これならだまされても仕方ないわ」と思ったことも一度や二度ではありません。犯罪を犯した悪いやつなのは他の罪の犯人と同じなのですが、どこかしら憎めない奴が多いです。留置施設の中でもべらべらずっとしゃべって笑っています。

 犯罪歴が30件や40件といった犯罪常習者がいますが、面白いことに、泥棒は泥棒しかやりません。詐欺犯人も詐欺しかやりません。例えば犯歴が全部で40件あって、20件が泥棒で残り20件が詐欺なんて人は見たことがありません。業務上横領犯人はそこまで犯罪歴が多数回にはならないのですが、やはり泥棒や詐欺をやったりはしません。また、泥棒の中には暴行や傷害、性犯罪といった粗暴犯の犯歴を持つ者もいますが、横領犯人や詐欺犯人にはそういった傾向はありません。


淺利 大輔

あさり だいすけ

行政書士淺利法務事務所 代表

私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。

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