警視庁と県警の違い
名称のせいで警視庁が特別な警察組織だと思ってる方がたまにいますが、実態は東京都警察であり、各県警とは対等な関係であり、警視庁が県警を監督、指導するようなことはありません。それは警察庁の役割です。とはいえ、規模の違いや事実上日本の首都である東京都を守る警察組織であるため、県警とは異なる部分が多々あります。私が知っている範囲で警視庁と県警の違いを述べてみます。
①4部制と3部制の違い
交番(パトカー含む)勤務のお巡りさんは、交代制で勤務しています。駐在所という交番と似たものがありますが、あれは職員住宅を兼ねているので、警察官が家族と一緒に暮らしており、交代制ではありません。
警視庁の地域課員(交番勤務員)は4部制です。4日サイクルの勤務体制です。第1当番は日勤です。普通の役所のように午前8:30に出勤し、午後5:15分で終業です。翌日第2当番は宿直勤務です。午後2:30出勤で、翌日午前10:30までの勤務です。宿直明けの日を警察では非番といいます。一般の人は「非番」と言うと休みだと思っている人が多いですが、警察で休みは「週休」と言います。非番の翌日は週休となり、基本的には休みですが、管内でお祭りやデモがあれば出勤になります。週休の翌日は最初の第1当番に戻ります。永遠にこのサイクルを繰り返します。
県警の地域課員は3部制です。当番は午前8:30出勤で、翌日の午前10:30までの長い宿直勤務となります。非番日の次は基本的に週休ですが、警視庁同様何かあれば出勤です。3部制はこの当番、非番、週休の3日サイクルを続けることになります。警視庁のように日勤がないので、仕事の帰りに同僚とちょっと一杯みたいなことはできません。3日に1回休みと聞くと、うらやましく思う方がいるかもしれませんが、連続24時間以上の当番勤務はきつく、歳を取ってくると週休日にどこか行って遊ぼうという元気はなく、家でゴロゴロしている人が少なくありません。
②出勤場所の違い
警視庁の場合、全署員が必ず所属する警察署に出勤します。そこで朝練の柔道または剣道の練習後、制服に着替えて署長の訓授を受け、各交番またはパトカーに向かいます。午後になって第2当番員が交番に来れば交代して、署に戻ります。
県警の場合は、自宅からまっすぐ交番に行って、勤務終了後はまっすぐ自宅に帰るところもあるようです。警視庁にはそういう交番はありません。
③出勤方法の違い
これは警察に限らず、一般の役所も企業も同じだと思いますが、地方の足は車です。県警の警察官も車で通勤するのが普通です。警視庁の場合は、車やバイクの通勤は禁じられています。公共交通機関が発達していることと、そもそも東京の警察署には外来用の駐車場がゼロの署もあるくらいで、署員が車通勤なんかしたら大変なことになります。
④住居の違い
警視庁の警察署には必ず独身寮があり、警察学校を卒業した独身の警察官は強制的にそこに入れられます。管内で子どもが行方不明になったり、大きな事件が発生すると、寮にいる警察官は休みでも非番で駆り出されて配置に就かないとなりません。
県警の場合は、独身寮がある署もありますが、無い署もあり、無い署では署の近くの一般のアパートやマンションなどに居住します。
警察官は5年に1回異動があります。警視庁は警察署が101署もあり、公共交通機関が発達していることもあって、自宅から通える(概ね1時間以内)範囲の署にしか異動しません。県警の場合は、自宅の場所に関係なく遠方の署に異動することが普通にあるので、引っ越さないとなりません。家族持ちで住宅を購入している場合は、単身赴任となります。
③給与の違い
警察では残業手当のことを超過勤務と言います。警視庁の場合、超過勤務は実際に働いた分を請求し、支給割合はおおよそ60%です。県警の場合は、県によって異なるとは思いますが、私が以前聞いたある県警では、予算がないために、例えば1か月に100時間超過勤務をしたとしてもて、毎月一律4、5時間分しか出ないということでした。気の毒過ぎます。
④移動手段の違い
警視庁の交番のお巡りさんの足と言えば何と言っても白チャリです。23区内の交番だとほとんど白チャリしかありません。三多摩地区の署の交番に行くと、バイクや車もあります。県警の場合はバイクや車が多く、白チャリはあまり使われていません。確か北海道警には1台もないと聞いた記憶があるのですが、知っている人がいたら教えてください。
⑤駐車場の違い
③の出勤方法のところでも触れましたが、警視庁の特に23区内の警察署には外来用の駐車場が全くない署もあります。あってもせいぜい2,3台のところが多く、最大でも5、6台ではないでしょうか。県警の田舎のほうの警察署は100台くらい置けそうな大駐車場が署の脇にあったりします。
⑥署員数の違い
日本で一番大きな警察署は新宿警察署で常時700人以上の警察官がいます。昔、刑事課が組織犯罪対策課と分かれる前の新宿警察署刑事課は課員が120人以上いて、刑事課長は第一課長と第二課長と二人いました。同期生が新宿の刑事課にいましたが、同じ刑事課員でも顔と名前が一致しない人がいると言っていました。県警の小さい署だと署員が30~40人程度のところが少なくありません。ちなみに日本で一番署員が少ない署は警視庁の小笠原警察署で約10人です。
⑦刑事や生活安全課など内勤に入る方法
警視庁や比較的大きな県警では、内勤に入るためには講習を受けないとなれません。しかし、一部の県警では、上司の推薦だけで入れます。
⑧内勤員の制服着用
警視庁の場合、刑事、生活安全課員、組織犯罪対策課員、公安係員などの内勤員は、普段制服を着ることはまずありません。サミットなど大きな警備があったときに方面機動隊員に召集されたときくらいです。一方、県警は、宿直勤務の際は、内勤員も全員制服を着るところがあります。
⑨警察行政職員(事務職員)の宿直勤務
警視庁の場合、署の事務や会計、遺失物などを担当する警察官以外の署員は、年間を通して宿直勤務に就くことはありません。休日や祝日に出勤することも希です。一方、県警の全てかどうかはわかりませんが、事務職員も警察官と一緒に数日に1回宿直勤務に就くところがあります。警察官ではないので、事件事故があっても現場に行くことはありませんが、受付で一晩中酔っ払いの相手や迷惑電話の対応をするのはなかなか大変です。
⑩課長の下に課長代理がいる(警視庁)
警視庁の場合は、ほとんどの署で課長の下に課長代理が1人から4人います。階級は警部です。県警はほとんどの警察署に課長代理はいません。
⑪交番での着帽
警視庁では、交番勤務員は休憩時間以外は帽子をかぶっていないとなりません。県警の多くは交番内で誰も帽子をかぶっていません。内規が異なると思われます。
淺利 大輔
行政書士淺利法務事務所 代表
私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。