全国第一種指名手配
麹町警察署知能犯捜査係で勤務していた頃、とある詐欺事件で被告訴人を全国第一種指名手配としたことがありました。事件の内容は、裁判所から差押を受けている日本料店店舗を、差押を受けていること隠して居抜きで譲るとして数千万円を騙し取った詐欺事件でした。被告訴人2名は事件後逃亡して所在がわからず、告訴状受理から3年くらい経って塩漬け(刑事用語で放置の意)になっている事件でした。
私は、戸籍謄本を取るなど、通常の探し方をしましたが二人の行方はわかりません。そこで、一方の被告訴人の別れた奥さんが住んでいる家にダメ元で行ってみました。すると、その被告訴人が戻ってきているとのこと。急いで逮捕状を請求し、すぐに通常逮捕しました。
この被告訴人は起訴されて有罪になりましたが、もう一人の主犯である被告訴人の居場所を聞いても、事件後全く会っておらず、わからないとのことで、嘘を言っているようにも思えませんでした。そこで、この主犯の男を全国第一種指名手配としました。全国第一種指名手配とは、逮捕状が出ている被疑者の逮捕を全国の警察官に依頼し、発見した場合は逮捕して手配署まで連行してもらう制度です。
思いのほか早く、手配してから数か月で主犯の被告訴人が捕まったとの連絡が入りました。地元である鹿児島県の川内市(現在の薩摩川内市)で、パトカーのお巡りさん2名が発見して逮捕し、東京まで連行してきてくれました。パトカーのお巡りさんは50台のベテランとパトカーに乗ったばかりの20台前半のコンビでした。話しを聞くと、パトカーで警ら中、軽自動車が止まっていたので、ベテランのお巡りさんが「おい、あれ怪しいから声かけてみろ。」と言って若いお巡りさんを行かせたそうです。このとき、ベテランのお巡りさんは、それほど怪しいと思ったわけではなく、若いお巡りさんに職務質問の場数を踏ませて、慣れさせる目的だったそうです。運転席にいた男に声をかけ、免許証の提示を求めると、男は素直に免許証を出したので、無線で照会をかけたところ、警視庁から全国第一種指名手配になっているとの回答があり、若いお巡りさんは「東京から手配になっています。」と言って緊張して足の震えが止まらなかったそうです。
私たちは、被告訴人を見つけてくれた上、遠路はるばる護送してきてくれた二人に何度もお礼を言いました。年配のお巡りさんは、東京に来たのが初めてとのことで、「ビルがでかい」と驚いていました。ちょうどその頃、麹町警察署の刑事課には、皇宮警察から研修派遣になってきていた警察官がおり、その方が「せっかくだから皇居内を案内します。」と言って、お巡りさん二人を車に乗せて、一般人は絶対入れない皇居内の一部をドライブしてきてくれました。二人はそれはもう喜んでくれて、私も大変うれしくなった想い出です。
淺利 大輔
行政書士淺利法務事務所 代表
私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。