防犯カメラの普及で刑事が帰れなくなっている話【元刑事が解説】
コンビニやスーパー、飲食チェーンなどは元より、最近では交差点、公園、駐車場、駐輪場、一般民家などにも防犯カメラの設置が進み、都心部では数十メートルに1台くらいの割合で設置があります。また、画像も高解像度になり、犯人の顔や服装の特徴が鮮明に記録されるようになりました。昔のVHSテープに録画していた時代の画像と比べると雲泥の差です。そのおかげで街頭犯罪等の検挙率は大幅に向上していると思います。被害者と犯人に関係性がない通り魔事件などは、20年前であれば犯人の特定は非常に困難でしたが、現代であれば「リレー方式」という防犯カメラをたどり続ける手法によりスピード検挙が可能になっています。
このように、警察捜査にとって非常に有力な武器となっている防犯カメラですが、反面、事件が発生すると、設置があるからこそ、その画像データを回収しないとならないことになりました。例えば、自転車が盗まれた場合、昔は防犯カメラが無かったことから、被害者から被害届の提出を受け、盗難システムに防犯登録番号を登録すればそれで終わりでした。しかし、最近ではそこら中に防犯カメラがあり、被害者の多くもそれがわかっているため「お巡りさん、盗まれた場所に防犯カメラがあったので、犯人が写っているはずですからちゃんと見て捕まえてください」と言ってきます。そう言われれば、もちろん捜査関係事項照会書を作成して防犯カメラの管理会社にお願いして画像データを入手しないとなりません。これは非番(夜勤明け)の刑事の仕事です。非番は本来午前9:30までの勤務なのですが、1つの警察署で自転車盗難や万引きなどの被害が全くない日はまずありません。少なくても4、5件、多ければ十数件発生します。そのうちの半分の事件で現場に防犯カメラがあったとすると、その回収には半日以上かかりますので、帰宅できるのは早くて午後2時3時といった時間になります。夜中までかかることも珍しくありません。
こうして、刑事の非番は午前中に帰れることは極めて希になり、明るいうちに帰れれば御の字となっているのが現状です。犯人が捕まること自体は素晴らしいと思いますが、現場の刑事の疲弊は昔より大きくなっている気がします。私が現役の頃から警察官のなり手は減る一方でした。最近では定員割れの県警があるとの話も聞きます。非番員による防犯カメラ画像回収は止めて、日勤員が担当するなど、非番は早く帰してあげてほしいと思います。
淺利 大輔
あさり だいすけ
行政書士淺利法務事務所 代表
私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。


