刑事になって初めて取った逮捕状で逮捕できなかった話【元刑事のコラム】
1997年、警視庁大井警察署で盗犯係の刑事としてデビューした私が、初めて自分が担当する事件で被疑者の逮捕状を取ったのは、新聞販売店の元配達員Aによる原付バイク窃盗事件でした。Aは、新聞配達に使用する原付バイク(ホンダスーパーカブ)を無断で持ち出し、そのまま乗り逃げしたというものです。店長から相談を受けた私は、この事件が横領になるのか窃盗になるのか大いに悩みました。そこで先輩の部長刑事に質問すると、「こんなのはな、持って行き方次第でどうにでもなるんだ。俺たち盗犯デカが横領事件やってどうすんだ。どうせ逮捕するなら窃盗でやろうじゃないか」と教えてくれました。要は、被害者から被害届を受理する際に「バイクは貸し与えて自由に使わせていた」とすれば横領になってしまいます。そこで「バイクは配達時だけ使用させており、私用には一切使わせていなかった」とすれば窃盗になるのです。店長に話を聞いたところ、実態も後者に近かったため、その内容で被害届と供述調書を作成し、実況見分や現場写真撮影など、一連の捜査を行い、逮捕状請求したところ一発で窃盗の逮捕状が発付されました。たかが原付バイク1台と思う方がいるかもしれませんが、警察内部ではバイクを盗むのは「乗り物盗(自動車盗)」と言って四輪自動車を盗むのと同じ手口分類で、検挙したときの評価はそこそこ高いのです。
Aの所在捜査を行った結果、福島県須賀川市内の実家に戻っているらしいことがわかりました。さっそく須賀川市に逮捕しに行く準備を進め、Xデーに盗犯係の係長以下4名で捜査車両に乗って須賀川市に向かいました。車は、首都高速から東北自動車道に入り、渋滞もなく順調に進んでいきます。須賀川の出口まであと数キロとなり、「昼飯食ってからパクりに行くか?」なんて話をしていたときに係長の携帯電話が鳴りました。署からの電話でした。係長は「なに?うん、うん、わかった。しゃあねえな」とだけ言って電話を切ると「署に戻るぞ。出口で降りてUターンだ」と言いました。なんと、私たちが出発して東北自動車道を走っているとき、須賀川警察署の刑事課から電話があり、「先日捕まえた泥棒(A)がそちらの管内からバイク1台を盗んだことを自供したので、被害届を移牒(いちょう)してほしい」ということでした。移牒とは被害届とその事件の捜査書類一式を別の警察署に送ってその捜査を委ねることを言います。Aは、数日前に空き巣事件で須賀川警察署に逮捕され、空き巣で複数の余罪も自供しているとのことでした。
盗犯刑事にとって一番評価が高いのは空き巣や事務所荒らしなどの「侵入窃盗犯人」の検挙です。複数の余罪がある空き巣犯人を捕まえたなら、刑事部長賞は確実で、上手くいけば警視総監賞がもらえるかもしれない手柄です。たった数日遅かっただけで、その手柄を持って行かれてしまい、せっかく取った逮捕状は裁判所に返納することになりました。
淺利 大輔
あさり だいすけ
行政書士淺利法務事務所 代表
私は、2024年6月までの32年間、警視庁警察官として勤務し、そのうち25年間を刑事として告訴・告発事件の捜査に携わってきました。
中でも、告訴・告発を中心に扱う知能犯捜査の経験が最も長く、数多くの事件で、実際に告訴状・告発状を受理し、捜査を進めてきました。
刑事部捜査第二課在籍時には、警視庁本庁舎(霞が関)の聴訴室において、告訴状を持参される弁護士の先生方と日々向き合い、
「事件として受理すべきか」「問題点は何か」
その現場の判断基準を、実務の中で徹底的に学び、鍛えられてきました。
だからこそ私は、警察が何を重視し、どこを見て告訴状を判断するのかを、初期段階から具体的に想定しながら作成することができます。
告訴・告発事件については、刑事の中でも専門性を持って取り組んできた分野であり、強い自負があります。
現在は、千葉県犯罪被害者支援センター会員として、
「費用面で弁護士への依頼をためらっている方」
「警察に何度も相談したが、前に進めずにいる方」
そうした犯罪被害者の力になりたいとの思いから、行政書士として告訴状・告発状の作成支援を行っています。
実際に、
「告訴、受理されました。淺利さんにお願いして本当に良かったです」
というご連絡をいただく瞬間が、何よりの喜びであり、この仕事を選んで良かったと心から思う瞬間です。
警察の内側を知る行政書士として、
“受理される可能性を高める告訴状・告発状”を、本気でサポートします。


